278:変則同盟戦はじまりました!
■シャルロット 16歳
■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主
あちらの同盟は知恵者三人という感じで、頭の回る商人が集まった同盟という印象です。
私からすると「よくそれだけ考えられるものだなぁ」と感心するばかり。
なるほどだから同期三人で知恵を出し合って、成長し続けてきたのだろうと。そう思いました。
ただ知恵者三人と言ってもアデルさん、ドロシーさん、フゥさんのほうが上だと思います。
近くに居るから贔屓目で見てしまっているかもしれませんが、あちらの同盟を見ても「頭がいい=恐ろしい」とは思えません。
もしアデルさんみたいな人が敵だったら私は戦いたいとも思いませんしね。
まぁそれでも私よりすごく頭のいい人たちには違いないとは思いますが。
さて、そんな【轟雷】同盟の皆さんは神様との立ち会いが終わってからずっと会議をし、翌日も営業しながらずっと会議、夜には
それだけ真剣に
その様子はターニアさんを通して私も把握していたのですが、いかんせん会議の内容が濃すぎまして、結局フゥさんにも手伝ってもらう形になってしまいました。
ターニアさん経由で聞いても向こうの会議の内容を全て把握できるわけもありませんし、全ての会話を私が理解できるわけもありません。
ですのでフゥさんもファムで盗み聞きしてもらって私の理解しきれない部分を補完してもらうという感じです。
私の理解度の確認と答え合わせをフゥさんにしてもらうという感覚ですね。
これは今度何かで埋め合わせしないといけません。ご飯代は任せて下さい。
こちらの戦い方は決まっています。
それに対して向こうがどのように動いてくるのか。それもある程度は分かりました。
あとはイレギュラーな事態への対処と【空白】のカラーダイスさんが持っている限定スキル次第ですね。
そこが一番重要なポイントです。決して油断はできません。
「エメリーさん、バートリさん、そちらの準備は大丈夫ですか!」
『はい、問題ありません』
『こちらも問題ない。いつでも行けるぞ』
「ではよろしくお願いします! 【女帝の塔】に勝利を!」
『『【女帝の塔】に勝利を!』』
私は一階層で準備をしている攻撃陣に声をかけました。
お二人とも戦意に満ちている感じです。
バートリさんは性格的にいつものことなのですがエメリーさんにはちゃんと手綱を握ってもらわないといけませんね。
そうこうしているうちに二の鐘が鳴りました。
――カラァン――カラァン――
『はーい準備はいいかなー! そろそろ始めるよー!
神様の号令で
エメリーさんを総指揮官とした攻撃陣の皆さんが転移門へと入っていきます。
陣容はこんな感じ。
=====
【女帝の塔】塔主:シャルロット(B)
総指揮官:エメリー(神)
ハーピィクイーン(B)2+ハーピィ(D)20、ハイフェアリー(C)20
マンティコア(A)1、ヴァルキリー(B)5+ユニコーン(B)5
サジタリアナイト(A)1+テラーナイト(B)10+デュラハン(C)30
=====
Sが1体、Aが7体、Bが22体、Cが80体。計110体と一人。
この日のために行った準備の一つがハーピィクイーンの召喚です。とりあえず二体だけですが。
それぞれ配下に十体のハーピィを従えまして、飛行戦力の部隊長として頑張ってもらいます。
もちろんクイーンの皆さんには部隊訓練をさせています。エメリーさんが。
バートリさんも【魔術師】戦の時は自分の配下だけを従える部隊長としていましたが、今は地上部隊の総指揮官という役割。
前に出たがるバートリさんがちゃんと中央で指揮をとれるかというのも私は注目しています。
地上部隊の総指揮官がバートリさんならエメリーさんは、と言いますと飛行部隊の総指揮官という役回りなのです。
今はマンティコアに騎乗しています。それも準備の一貫として行ったことです。
ヴァルキリーに騎乗を教わっていたのですがあっと言う間に<騎獣>のスキルを取得していました。恐ろしい人ですホントに。
ただエメリーさんには斥候としての役割もありますからね。
マンティコアを操りながら最前衛に行ったり、バートリさんの傍に行ったり、飛行部隊に合流したりと忙しなくなります。
斥候部隊が欲しくなりますね……エメリーさん以上の斥候系魔物なんていなさそうですけど。
せめてバートリさんが地上部隊を完璧に指揮できればエメリーさんの負担も軽くなると思うので期待したいところです。
というわけで陣形としては、地上部隊の最前衛にサジタリアナイトのアーマー部隊、中衛にバートリさんのヴァンパイア部隊、後衛にヴァルキリーとユニコーン。
飛行部隊にハーピィクイーン部隊が二つとハイフェアリーたち。遊撃がエメリーさんですね。
エメリーさんが飛行部隊として指揮する際にはハイフェアリーがエメリーさんの直属となります。
これが
転移門で向かった先は――【空白の塔】です。
【轟雷】同盟で一番戦力があるのは【轟雷の塔】。Bランクですし当然なのですが、諜報型限定スキルまで持っている厄介な塔です。
しかし今回の
やはり同盟全体に作用する限定スキルというのが厄介すぎます。
これの解除――つまり【空白】のカラーダイスさんを斃すことが最優先事項なのです。
先手必勝。まずはエメリーさんに【空白の塔】を攻略してもらいましょう。
同時に殲滅もお願いしたいのですが……さすがに虫が良すぎますかね。
■ファモン・アズール 35歳
■第493期 Bランク【轟雷の塔】塔主
『来ましたぞ! こちらです!』
「分かりました! では打ち合わせ通りにいきましょう!」
『カラーダイス殿、敵の陣容は! 画面の共有を!』
やはり【女帝】が最初に狙ってきたのは【空白の塔】だったか。
一番最初に申請していたのが【空白】だったので予期していたことではある。
体力と魔力があるうちに第一目標である【空白の塔】を殲滅するつもりだろう。
カラーダイス殿の見ている画面――【空白の塔】一階層の様子が私にも見えるようになった。
そこに映るのは【女帝】の攻撃陣なのだが……。
「メイドがマンティコアに乗っている!?」
『まさか騎獣を行える
攻撃陣の最前衛にはマンティコアに乗ったメイドの姿があった。
鞍と手綱のついた騎乗用のマンティコアなど初めて見る。と言うかそもそもマンティコアは騎乗用の魔物ではない。
それをさも当然のように繰りながら悠然と【空白の塔】に侵入してきたのだ。
あのメイドはジータと同じような近接戦闘系の
それがAランクの飛行系魔物に騎乗するというのは悪夢以外の何物でもない。
スケールこそ違うが黒竜に乗ってスタンピードを駆逐していた【黒】のノワールを思い出す。
そしてメイド以外の攻撃陣はと目を向ければ……おそらくナイトメアクイーンと思われる魔物が地上部隊の中央にいる。ヴァンパイア部隊が周りを固めているのでまず間違いないだろう。
他にはハーピィクイーンが二体いるが、こちらは眷属かどうか怪しい。
あとは地上部隊の最前衛にサジタリアナイトが部隊を率いている。
これは【女帝の塔】の魔物リストにない魔物だ。おそらくどこかの塔の
こうして見ると……眷属はメイドとナイトメアクイーンの二体というのが有力か。
総数にしても111体。これは予想よりも少ない。眷属三体、総数200体でもおかしくはないと思っていたのだ。
先遣部隊にしては精強すぎる。
となれば【空白の塔】を攻略したあとのことを考えて温存していると見るべきだろう。
今、【女帝の塔】の防衛戦力となっている部隊が、【空白の塔】攻略後に【氷海の塔】へと侵入してくるはず。第二目標は【氷海の塔】に違いないのだから。
ある意味、狙い通りではある。
カラーダイス殿は【空白の塔】の守りを固める。限定スキルも自塔に重点的に掛けるだろう。
【女帝】は【空白の塔】を殲滅しながら時間をかけて攻略していくはずだ。自塔の守りを固めたまま。
つまり私とドミノ殿の動きが重要になる。
【轟雷の塔】と【氷海の塔】は現状攻められる心配はない。戦力を動かすべきだ。
【女帝の塔】に攻め込んで敵防衛陣に圧力をかけつつ、【空白の塔】の援軍に回す。これしかない。
【空白の塔】で<白昼夢の空>を掛けている階層を狙って挟撃する。上からは【空白】の主力、下からは私と【氷海】の主力をぶつける。
それでメイドとナイトメアクイーンを潰せば、残るのはおそらく
それに加えてロイヤルナイトかBランクのクイーンもいるかもしれないが戦力の激減は間違いない。
ならばと私は眷属に指示を出し、【女帝の塔】への攻撃と【空白の塔】への援軍を出す……というところでドミノ殿から凶報が入った。
『こちらにも来た! 【女帝】の攻撃陣だ!』
「な……っ!?」
――――に、二塔同時攻略……だと……!?
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