130:私たちの同盟はいつも賑やかです!
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
『ちょおっとシャルロットさぁん! 貴女まぁたやりましたわね!?』
いきなり同盟の全体通話が繋がったと思ったらアデルさんからそんなことを言われました。
他の皆さんもいきなりすぎてビックリしてますよ。
「え、私また何かやっちゃいました……?」
『やっちゃったじゃないですわよ! 飾り盾です、飾り盾!』
えっ、あぁ、その件ですか。何かもっと変な失敗したのかと思ってドキドキしましたよ。
『新聞見ましたわ! そしてすぐ見に行きましたわよ! 何なんですのあれ!』
「いえ、あの、先日言ったじゃないですか。塔章を作るって」
『言ってましたけどぉ! あんなお綺麗な盾になるだなんて思ってませんでしたしぃ! なぁんでバベルの入口の目立つ所に飾ってるんですのぉ!』
「えっと、ああいうものってやっぱりああいう場所に飾るものかなって……城門のレリーフみたいな感じで……」
『国章のレリーフと飾り盾は全然違いますわよっ!』
でもバベルの壁にレリーフを彫りこむことなんて出来ないですしねぇ……そうなるとやはり飾り付けるくらいしか出来ないんじゃないかと……。
『なんじゃもう見に行ったのか。わしはまだじゃが』
『わ、私もまだです。そんなに興奮するくらいすごいんですか?』
『うちは見たで! あれは確かにすごいな! スマイリーさんやろ? よぉやるでホンマ』
『露骨な集客アップ狙いじゃありませんのぉ! いやらしいですわっ! シャルロットさんいやらしいですわっ!』
そんないやらしい連呼しないで下さいよ。まぁ目立つかなとは少し思いましたけど、どちらかと言えば自己満足と言うか、クイーンの皆さんと考えて形にしたものを見せびらかせたいという気持ちが強くてですね……。
『せっかくのインタビューのトリが持っていかれましたしぃ! 人気独り占めじゃないですのぉ! まぁたうちの客持っていかれますわぁ!』
「それは本当にすみません。何でしたらすぐに取り外して……」
『それはダメですわ! 今さら取り下げたらクレームが出るに決まっているでしょう! 今のわたくしたちに悪評は大敵ですわよ!』
えっと、じゃあどうすればいいんですかね。
『というわけでわたくしたちも塔章作りますわよ、皆さんっ!』
『ええなあ! うちもあれ見てちょっと興味あってん!』
『ええっ、わ、私もですか!?』
『どんな感じで作ったんじゃ? シャル、サンプルとかデザイン絵みたいのはないのか?』
「旗はもう出来てるのでちょっと持ってきます……あ、エメリーさんありがとうございます。えっと、これですね」
旗というかほぼ垂れ幕みたいな感じなんですけどね。縦長で。
これを謁見の間の柱の上の方から飾ろうと思っています。九階層から階段を上がって玉座までの道を華やかにするイメージ。
玉座の後ろにも旗や盾を飾ろうかとも思っています。
そうするとこうして画面に映っている時、『女帝の城の玉座』って感じがしていいかなぁと。
『ほお、これは見事じゃのう』
『ふわぁ~~』
『これどうやって織ったんや。どこの職人使ってん』
「あ、これはヴィクトリアさんにお願いして」
『クイーンのスペック高すぎでしょう!? どうなってますの貴女の眷属は!』
褒められるのは嬉しいですけど一応Bランクですからね? 単体戦闘能力が秀でているわけじゃないですから。
それからあーだこーだ言いながらそれぞれ塔章を考え始めました。やっぱりこういうのはアデルさんやドロシーさんが得意っぽいです。
ノノアさんは独特のセンスがありますね。全く違うデザインになりそうで面白いです。
しかしフゥさんは苦手なようで。
『シャル手伝ってくれー、わしはダメじゃー、ゼンガー爺は使えんし』
『ほっほっほ。老骨にそのようなこと求めないでくだされ』
「そしたらラージャさんにお願いしましょうか。うちの塔章もデザインまとめたのはラージャさんなので」
『だからなんでそんなスペック高いんですの貴女の眷属は!』
デザインをまとめるのはすぐに出来るものでもないということで、一度持ち帰り各々考えるという形になりました。
それから飾り盾を発注したり、ヴィクトリアさんに旗の製作をお願いする感じになりそうです。
アデルさん曰く、501期最初の塔主総会に間に合わせると。相当意気込んでいました。
スマイリーさん大丈夫ですかね。うちの飾り盾も何枚か追加発注しているのですが……。
◆
『話は全然違うのですがフッツィルさん、【群青の塔】はご存じで?』
『ああ、知っておるぞ。グリンラッドの王子じゃろ?』
『ええ。そこから申請が来たのですが受けてもよろしいかしら』
『わざとオススメリストから外したんじゃが……まぁアデルがよいのであれば問題はない』
『分かりましたわ』
『ちょいちょいちょい! 何淡々と進んでんねん! 世間話ちゃうねんぞ!』
『え? え?
どういうことかと聞いてみれば、【赤の塔】に
お相手はCランクの【群青の塔】。塔主はグリーズラック・グリンラッドさん。
グリンラッド王国の第二王子様らしいです。
『好戦的かつ金持ちということでわしも目はつけておった。しかし肩書きが邪魔でのう。特にアデルなんぞは政治的にどうかと思ってリストから抜いておったのじゃ』
グリンラッド王国はメルセドウ王国の半分程度の国力しかない小国。産業は農林業が中心で非常に穏やかな国風だとアデルさんは言います。
そんな中でグリーズラックさんは軍事推進派の筆頭だったらしく、戦争で領土を広げて国をもっと豊かにと謳っていたそうです。
十二年前に塔主に選ばれたことでその声は沈静化されたそうですが未だ軍事政策を望む貴族もおり、今もその旗頭として立ち続けていると。
塔主に旗頭させてどうするんですかね。いざ戦争の時に指揮も何もできないと思うのですが。
まぁとにかくそんな王子様から
『明らかにわたくしの反貴族発言を受けてのものでしょうね。塔主でありながら王子であり軍事推進派の貴族達の先導に立つお人なのですから。
『それにしちゃ遅ない? 申請するの』
『わたくしを討つ準備をしていたのでしょう。もしくはあの新聞を見たのが遅かった。または貴族連中にせっつかれてやっと重い腰を上げて申請した……まぁ理由はどうでもいいですわ。狙い通りではありますし』
私たちが差別反対と声に出したり、アデルさんが貴族ではないと発言したことでその反応が何かしらあるとは思っていました。
一番は【傲慢の塔】同盟に対する牽制だったわけですが、同じように王侯貴族やそれに属する人たちの中にも選民思想を持つ人はいるわけですし。
街の反応がいいことから世論は私たちに傾いていることが窺える。それに納得できないとする人もいると。
フゥさんにお聞きしましたが【聖の塔】同盟もそんな感じらしいですね。
ただあそこは力が強すぎるので無視するしかありませんが。
ともかくそれに釣られて
まさか王子様が釣れるとは思っていませんでしたがね。
『殿下からすれば一番許せないのがわたくしでしょう。貴族でありながら何を言っているのだと』
『【群青】から見れば【忍耐】か【輝翼】が狙い目なんじゃがのう。まぁ火属性相手の方が有利と見たのかもしれぬ』
『どんな塔なん? そこは』
フゥさん曰く、「青」が示すとおり水属性が多いようです。だからと言って【昏き水】のように水棲魔物ばかりではないと。
一番強くてAランク固有魔物の大蛇がいるそうですが……まぁ
『
『剣じゃな。唯一の不安要素はそこかのう』
『な、なんか最近、
ノノアさんの言うとおりですね。私もです。
実際、序盤――特にプレオープンなどは
ノノアさんのように妙な
しかし
【聖の塔】の【大軍師】さんとか戦えそうには思えないですし、【純潔の塔】の【翡翠の聖女】様も戦闘能力という意味ではどうかなと。まぁエメリーさん、ジータさん、ゼンガーさんは大当たりで間違いないです。
そして
ほとんどがいまいちな性能。局所的には有効だけど使いどころが難しいみたいなイメージがあります。
例の透明外套も姿は見えなくなりますが<気配察知><魔力感知>の前では無意味ですし、ドロシーさんの【返怨の大盾】も攻撃を受け続けないと強烈な反撃になりません。非常に危険な代物です。
しかし中には当たりの
ちゃんと戦闘に有効だったり、眷属に貸すことでちゃんと使えたり。取得してないのに【限定スキル】が使えるようなものですからね。
【千計の塔】の人の眼鏡だって反則ですからね? 塔の壁は絶対に壊せないので干渉不可のはずなのです。それを覗き見ることができるのはすごいのですよ。あれは当たりの部類でしょう。
で、グリーズラックさんは
これが当たりか外れかが分からないということです。
『まぁそこを気にしたら何もできませんわ。剣の届かないところから焼き殺す、ということでよろしいのでは』
『うむ、それが無難じゃな』
『無難で焼き殺される王子様が不憫でならないわぁ』
ともかく近々アデルさんはまた
それで集客がアップしてくれると私も罪悪感が減りますし……。
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