第七章 女帝の塔の周りはトラブルばかりⅡ
121:【バベル新聞】話題の同盟に独占取材!
この度、我々バベル新聞社は【
今や知らぬ者はいないであろう第500期の五塔同盟、すなわち【女帝の塔】シャルロット様、【赤の塔】アデル・ロージット様、【忍耐の塔】ドロシー様、【輝翼の塔】フッツィル様、【世沸者の塔】ノノア様である。
快進撃を続ける新塔主たち。様々な話題が出たロングインタビューの内容は全五回に渡ってお送りする。
第一回となる今日は前回掲載分からこれまでの活躍ぶりを振り返りながら進めたいと思う。
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――本日はどうぞよろしくお願いします。
五名:よろしくお願いします。
――新年祭をはさみ様々な
アデル様(以下、ア):簡単に言えば差別による虐めを防ごうとした結果、争いに発展したということですわね。
――彼の同盟が獣人三名によるものであるならば、つまりノノア様が関係していらっしゃるのでしょうか。
ノノア様(以下、ノ):はい。そもそもこの同盟に入れて頂いたのも助けを求めてという感じです。
シャルロット様(以下、シ):私たちは人種もバラバラ、貴族も平民もいるという集まりですのでそういった差別的思考と相容れなかったという所ですね。
――アデル様、今シャルロット様が貴族もと仰いましたがアデル様はどうお考えでしょうか。
ア:貴族とは国に寄与し領地や領民を守る者、それは当然ですが残念ながら貴族の特権に胡坐をかく者もおります。どこの国でもそうした問題はつきまとっているのが現状です。そしてそれは塔主の中にもおります。塔主となったからには国に寄与することなどできない、本来ならば貴族とは名乗れないはずなのにです。わたくしは自分のことを貴族だとは思っておりません。
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塔主となれば貴族ではない。まさかそのような強いお言葉が出るとは思わなかった。
この同盟はそうした意思を持つ者の集まりであり、だからこそ偏見や差別と闘うのだと。改めてこの方々の心の強さが読み取れた。
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――ドロシー様とフッツィル様も同調されたと。
ドロシー様(以下、ド):せやな。うちはドワーフやからやっぱり少なからず何や言われることもあるし。
フッツィル様(以下、フ):権力なり腕力なり、力に溺れた者は虐げる方向にその力を使いたがる。わしには全く理解できぬ。
シ:どこの塔主とは言いませんが私の国の一部貴族など酷いものです。アデルさんの爪の垢を煎じて飲ませて差し上げたい。
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シャルロット様がお怒りになられるのを記者は初めて見た。
パレートでも堂々と振る舞い終始冷静沈着だったシャルロット様がこのように感情を露わにするほど根深い問題だということだ。
シャルロット様のご出身は噂にあるが、その国出身の貴族となれば誰を指すのか想像できる。しかし憶測も混じるのでお名前は伏せさせて頂こう。
話を【風の塔】同盟との
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――アデル様、ノノア様は加入して初めての
ノ:私はただ圧倒されていただけ終わった感じです。皆さん本当にお強くて。
ア:わたくしもお三方の強さに驚きました。分かってはいたつもりですが本番になると強さが別物ですわね。個々でも強力なのに三人集まるとこうも凶悪かと(笑)
ド:すんなり適応したアデルちゃんもよほど凶悪やで。
シ:自分たちで言うのも何ですがコンビネーションが上手くとれ、五人が同盟として戦えていたと思います。
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仲の良さはインタビューをしている最中でもよく窺えた。
まさに前述した偏見や差別とは無縁の姿。共に並び同じ方向を見ていると感じる。
それは【
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――新年祭についてお聞かせ下さい。初めてのパレードの感想はいかがでしたか。
シ:最初こそ緊張していましたが沿道の声援が温かく、最終的にはとても楽しめました。
ア:諫めなければ調子に乗りそうで怖いほど。それくらい気持ちのよいものでしたわね。
ド:うちは最初から全力で楽しんだな。眷属のお披露目もできたし満足や。
フ:わしはああいうのが苦手なのでのう。早く終わってくれんかと(笑)
ノ:私も苦手で緊張しっぱなしだったのですが、ちゃんとしなきゃと気を張っていました。
――パレードの際、【世界の塔】のレイチェル様とお話になられていたと噂になっていましたがそれは本当なのでしょうか。
シ:はい、本当です。ご挨拶させて頂きました。
ア:どのような関係だとかどのような話だとかお聞きにならないで下さいね。レイチェル様に失礼ですから。
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釘を刺されてしまったが記者もレイチェル様のお名前を出すことすら恐れ多いので勘弁して頂きたい。
何にせよご挨拶されたのは事実とのお言葉を頂けた。それはバベルとバベリオにおける
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――そして記憶に新しい五連戦ですが、あれはどういった経緯で。
シ:
――計画された五連戦ではなかったと。
ド:そら申請したところで相手の都合もあるし思う通りの日程なんて組めんやろ(笑)
フ:思い通りに出来るのであれば日程を開けたかったくらいじゃ。
ノ:五日連続とかずっと心臓に悪いですしね。
ア:日程を自由に変えられるのであればわたくしは最終日が良かったですわ。
シ:たまたま私の日程が決まったのが一番遅かったのでそれは申し訳ないです。
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どうやら個々に計画していた
それはご本人たちにとって厳しい五日間となったことだろう。ノノア様が仰られたように休まる日がない毎日だったはずだ。
しかしそれを乗り切った今、改めてその
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――一番手はノノア様でした。相手はEランクの【千計の塔】です。
ノ:はい。
――【世沸者の塔】の謎解きはいかがだったのでしょう。
ノ:記録は更新された、とだけ言っておきます。
――年始にもリニューアルを行うなど精力的に塔運営をなさっている印象ですが
ノ:そうですね。私の塔は余所と違い知力で戦うような塔なので、侵入者の方々にとっても勝手が違い難しかったのだと思います。それがやっと慣れてきたと言いますか、だんだんと謎解きが上手くなっていってるように見えます。創っているこちらとしてもやりがいがあります。
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かつては【弱き者】と揶揄された塔も、今や知力を結集しなければ攻略不可能な塔とまで言われている。
【千計の塔】が記録を更新したとなればそこに追いつく挑戦者が現れるのか、今後も見物である。
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――二番手はフッツィル様でした。相手はDランクの【風見鶏の塔】です。
フ:塔の構成がほとんどわしの【輝翼の塔】と同じじゃな。共に鳥をよく使う、似た者同士の
――やりやすかったですか、それともやりにくかったですか。
フ:互いの塔が鳥を活かす構造になっておるから魔物を動かすのはやりやすい。しかし互いの魔物の弱点も知り尽くしておるからそういった意味ではやりにくかったのう。相手は六年も塔主経験があるのじゃ。一筋縄ではいかん。
――勝敗の決め手となったのは何でしょう。
フ:対地に慣れ過ぎたのだと思う。六年間で空対空の戦いなんぞしたことがあるまい。しかしこちらは準備しておった。その差が出たのではないか。
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当たり前だが挑戦者は地上で戦うものだ。鳥を扱う塔主はそれに応じた戦い方に慣れるもの。『空戦』に慣れた塔主などいないとフッツィル様は仰る。だからこそ勝てたのだと。
なるほどと目から鱗が落ちた思いだ。フッツィル様はそういった考えのもと
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――三番手はドロシー様でした。相手はCランクの【打突の塔】です。
ド:いやー強かったで。当然やけど。ギリギリなんとか勝てた感じやな。
――【忍耐の塔】は防御力と罠、【打突の塔】は攻撃力と体力、そんな印象があります。実際そういった戦いになったのでしょうか。
ド:せやな。特に向こうは巨人系の魔物が厄介やって、そこが一番苦労したかな。巨人はそもそもうちの塔に入られへんから罠でどうこうも出来へんし。
――では巨人系の魔物はどのように対処なさったのでしょう。
ド:それは言えんな。ただうちの自慢の防御力が崩されるほどに強烈な攻撃やったと言っておくわ。巨人の群れとかホンマ勘弁して欲しい。あんなんちょっとした街やったら潰れるで。
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【打突の塔】は獣系、亜人系、巨人系どれもが攻撃力に秀でている魔物ばかり。それが群がって襲って来るとなればさぞ恐ろしい光景だったろう。
詳しい戦術を聞くことはできないが、本当に苦労したとドロシー様の表情が物語っていた。
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――四番手はアデル様でした。相手はCランク【昏き水の塔】です。
ア:あの塔の恐ろしさというのは挑戦された方なら誰でも分かると思いますわ。Cランクに留まっていたのがおかしいほどに攻略が難しいと。
――全てが『海』の階層だとお聞きしています。その中で火属性を得意とする【赤の塔】は相当難しかったのではないかと推測していますが。
ア:仰る通りですわね。まさかジータがあんなに泳ぎが上手だとは思いませんでしたわ。嬉しい誤算ですわね。
――なんと。英雄ジータの伝記には水場で戦うような記載はなかったと思います。英雄ジータは海でも戦えるのですか。
ア:それが分かったから申請したようなものです。でなければあの塔に挑もうなどと考えませんわよ。
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これは英雄の歴史に載せるべきだろう。ジータは海であっても英雄であったと。
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――最後にシャルロット様です。相手はCランク【強欲の塔】。パレードでも【強欲の悪魔マモン】を同乗させていたことからかなりの苦戦が予想されますが。
シ:当然マモンは強かったですし苦戦もしました。もっとも【強欲の塔】は全体的に魔物の質が高いと。その印象が強いです。
――確かにそのCランクらしからぬ魔物の強さは多くの挑戦者が苦しめられたと聞きます。さらに言えば
シ:ええ。詳しいことは言えませんが攻めでも守りでも屈強だったのは間違いありません。勝てたのは綿密な計画と入念な事前準備によるところが大きいと思っています。
――【強欲の悪魔マモン】についての情報は何か頂けませんか。
シ:言えるのは大悪魔に相応しい強さであったとそれくらいですね。申し訳ありませんが。
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最もBランクに近いCランクの一つとまで言われていた【強欲の塔】。それはシャルロット様にして相当強いと言わしめるほどのものだった。
しかしながらそれを打ち倒したのが【女帝の塔】である。
五連戦の最後を飾る【女帝の塔】の勝利をバベリオの民は待ち望んでいた。結果は勝利。相手はなんと【強欲の塔】。
こんなサプライズを街に提供した【女帝】は至って謙虚であり、至って冷静であった。
まだまだ話は尽きないのだが、今回はここまでにしておこう。
一年の振り返りや二年目に向けての抱負などもお聞きしたので次号をお待ち頂きたい。
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