114:女帝の塔、防衛戦の行方です!
■エメリー ??歳
■【女帝の塔】塔主シャルロットの
「では配下の皆さんはここまでです。この先はわたくしとクイーン、それとユニコーン・ヴァルキリーのみで進みます」
「「「はいっ!」」」「「「ハッ」」」
「ハイウィッチ、ヴァンパイア、マンティコア、皆の護衛を頼みますよ」
六階層から七・八階層へと続く階段でそう告げました。
今までよく戦ってくれました。しかしこれから先は強敵しかおりません。さすがに連れてはいけませんから。
本当ならばわたくし一人の方がいいのですが……まぁこれも経験でしょう。
階段を上るとそこは広々とした空間のみ。申し訳程度にお城っぽく柱が立っていたり外壁装飾がしてあったり。
あとは直径800m、高さ8mが二階分、『広すぎる広間』があるだけです。
奥にポツンと見えるのは噂のドラゴン【輝石竜ヴィーヴル】でしたか。
調べでは【強欲の塔】の魔物ではなく、別の塔の固有魔物だそうです。
見た目は蝙蝠の翼をもった爬虫類という感じでしょうか。わたくしの知るドラゴンよりトカゲやワニっぽく見えます。
瞳はルビーのような巨大な宝石。とても綺麗ですね。
大きさはおそらく10mほど。小柄です。広さは申し分ないですが、高さ的には飛ぶと狭いのかもしれません。
なるほど飛竜を塔で飼うとなればこうなるのですね。難しいものです。
そんなドラゴンがポツンと待ち構えるところへわたくしたちは近づきます。
手には魔竜斧槍を四本。ここで魔剣は使いたくありません。
「わたくしが正面です。三人は遊撃。近づきすぎないように。ユニコーン・ヴァルキリーは後方へ。回避と援護に集中して下さい」
「「「はいっ!」」」「「「ハッ」」」
「では行きますよ」
さて
魔法を見せるわけにもいきませんからとりあえず斬ってみましょう。
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
『上手いなぁエメリーさん。なんでもできるやん。アタッカー、魔法、斥候、その上
『あ、あんな正面で張り付きながら周り見て指示出ししてるんですか……? どうやってるんです?』
『それにあれ手ぇ抜いておるじゃろ。魔剣も使わず攻撃も少なめ。あとはクイーンとユニコーン、ヴァルキリーに任せておる』
『自ら手を下すまでもない、というのとマモン戦に備えてでしょうね。仮にも竜相手だというのに』
『ラージャ違う! そこは左に避けるんだ! そう! いや近付きすぎるなラージャ! ラージャ!』
どうも部隊戦での叱咤激励からラージャさんばかりに目がいくようになってますけどジータさん大丈夫ですか?
固有魔物のドラゴン、しかもよく分からない魔物ということで心配していましたが何とかなりそうです。
どうやらメデューサと同じように石化のブレスを吐くみたいですね。
エメリーさんが指示を出して皆さんを正面に立たせないようにしているので問題ないとは思います。
万が一くらってもユニコーンがいますし。石化の状態異常ならば大丈夫。
あとは尻尾で薙ぎ払われてラージャさんやヴィクトリアさんが被弾することがありますけど立て直しは出来ています。
いくらエメリーさんが鍛えたクイーンでもBランクですからね。固有魔物のAランク、それもドラゴンを相手にするとなると厳しいようです。
攻撃は基本的に得意な魔法なのですが武器でも時々攻撃しています。皆さんエメリーさんからお借りしていますからね。
ヴィクトリアさんは水の魔竜槍、パトラさんは風の魔竜短剣、ラージャさんは火の魔竜斧。
竜素材の武器ですからドラゴン相手でもダメージが入ります。なんかすごい素材らしいですし。
あとはやはり飛ばれるのがキツイ。あの重量で素早く飛び掛かられると、エメリーさん以外では大ダメージになります。
数回ほどやられてからはエメリーさんが何やら長い鎖を取り出し、投げつけ、ドラゴンの首に巻き付け、無理矢理引きずり下ろすという強硬手段に出ていました。
『飛竜にパワーで勝つんかい』
『もうわしは何とも思わん』
皆さんエメリーさんに慣れてきたようです。私も「やった!」としか思いません。
あとは、そろそろ終わりにしようと思ったのか、エメリーさんが魔竜斧槍で滅多切りにしていました。
『Aランクとは言えドラゴンはドラゴンですのに』
Sランクのドラゴンだとどうなるのですかね?
まぁ最後に待っているのはSランクの大悪魔なのですが。
■セリ ??歳 盗賊団【黒蓮華】元頭領
■【強欲の塔】塔主マグドリオの
あたしは【女帝の塔】に潜入中。
六階層からは城に入ったような感じだったが、魔物はお休み中だし扉は開きっぱなしだしで順調に進んでいる。
まぁ罠とかは当然用心するがな。
<影潜り>と<気配微小>も忘れねえ。気付かれたら終わりだ。
そうして八階層の豪華なダンスホールを抜け、ようやく九階層まで来た。
階段を上れば通路の一本道。おそらく突き当りが大ボス部屋なのだろうが、その扉も開き、さらに先の階段までよく見える。
そこを上ればあとは
あたしは意を決して走った。もちろんスキルは使っているが最小限。
とにかく辿り着いちまえば勝ちが決まる。
腐れ守銭奴は「クイーンを斃してから割れ」みたいなことを言ってたがそんな余裕あるわけねえだろ。
さっき聞いた話じゃろくに戦果を挙げてねぇどころかほぼ完封で攻め込まれてるらしいじゃねえか。
もたついてたら殺される。塔主の意向なんぞ無視だ。
あたしは自慢の足で通路を走り、大ボス部屋を抜け――
「
「!?」
――咄嗟に<危険察知>が反応し、横に飛び退いた。
は? な、なんだ……? どこから……。
「あらあら~残念、外しちゃいましたね~」
階段下、正面。誰もいない
知らない魔物だが……とんでもない高位精霊だってことは分かる。冷や汗が止まらない。
「うふふ~初めまして、侵入者さん。わたくしはシャルロット様の臣下、
どこからどう見てもSランク。間違いない。<危険察知>がガンガン鳴ってやがる。
こいつを避けて最上階へ――いや無理だろどう考えても!
じゃあ一端退いて……ってなんだあいつは! あの六本腕の鎧野郎は!
「後方はアスラエッジさんに塞いでもらいますよ~。どうしますか~? 追いかけっこは得意ですよ~? それとも戦っちゃいますか~うふふ」
……くそっ! くそっ! 全部あの腐れバカのせいだ! こんな勝負受けるから――
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
「ターニアさんお疲れさまです」
「いえいえ~、【女帝の塔】に勝利を~うふふ」
「ミスリルヘラクレスもありがとう。もう七階層に戻っていいですよ」
主力全てを使って【強欲の塔】へと攻め込んでいると見せたかったもう一つの理由がこれです。
相手の
正面から戦う能力が低いであろう彼女がエメリーさんたちと対峙するとは思えません。
暗殺を狙うか、潜入して
結局は潜入を選んだようなのでエメリーさんたちにもスルーしてもらい【女帝の塔】に招き入れます。
塔内全ての魔物に徹底的に無視するようターニアさん経由で指示を出し、全ての扉を開けさせました。
そしてアスラエッジには逃げ道を塞ぐ役目、ミスリルヘラクレスには万が一突破された時のことを考えて最上階に待機してもらいつつ、ターニアさんと戦わせたのです。
ついでに
うちの魔物でも使えることは分かっていたので、それを着た状態で最初は撃ってもらいました。
結果はやはり見えないようですね。斥候のプロで無理ということはやはり全く見えなくなると。
しかし攻撃は避けていましたから察知スキルの前では無意味といったところでしょう。
なんにせよ怖い
相当速かったですからね。まぁエメリーさんやターニアさんほどではないですけど。
『強いのう、ターニア様も。その戦いをこの目で見られて幸せ……おいゼンガー爺だまれ、誰もお前の感想など聞いておらぬおいよせ映ろうとするな邪魔じゃ――』
……ゼンガーさんもちょっと静かにしててもらえますか?
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