335:女帝の塔も脱Cランク病に取り組んでいます!
■シャルロット 17歳
■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主
ランゲロック商店の新店舗オープンと並行して、私は【女帝の塔】の改装を頑張っていました。
脱Cランク病に向けた取り組み。
話題が出始めてから二月ほど悩んで、色々と話し合っていますが、まだ現在進行形で考え中です。
きっと満足したものを創りきっても、また悩んで改装して、そう繰り返すのが塔主のお仕事なのかなと最近は思っています。
それでも今できる精一杯の塔を創る。とりあえずでも改装して完成に近づける。
一先ずの区切りとして502期の内定式までに少しでも改装は終わらせておこうと。
そして502期がスタートしてからは新たな気持ちで塔運営に努めようとあれこれ頑張ったのです。
私の【女帝の塔】はコンセプトを何よりも重視しています。
侵入者が帝都に入り、お城に侵入し、地下から裏庭に抜けてまた侵入、庭園から城内を巡って最上階を目指すというストーリー性をもったコンセプト。
それがあるから「お城を、家を守ろう」となりますし、クイーンの皆さんとも意見をすり合わせやすいと思っています。
いくら大改装をすると言ってもこれを変えるつもりはありません。
ただそのコンセプトのせいで「侵入者には対処しやすいが
一階層の『帝都』など最たるもので、侵入者……つまり″人″に合わせて創っているので「敵大部隊が一気呵成に攻め込んで来る」というのを全く考慮していないのです。
それは塔構成や罠、魔物に関しても同じこと。
そこを「敵大部隊の対処ができるような帝都にする」となると、もう丸々創りかえる必要があるわけです。
道幅一つとっても狭い道ばかりですから、敵部隊を間延びさせることはできても、こちらの魔物も小さい小物ばかりなのでろくに削ることもできません。
じゃあ強い魔物を配置しようかと考えてもやはり単発になりますし、赤字は確定しますし、侵入者は極端に減るでしょう。それではダメです。
ある程度侵入者の数を確保しつつ、大部隊にも対応できる塔構成。それが命題となるわけですね。
例えば、今の塔構成を維持しつつ、
しかしそれで
なのでその変更でまたTPが余計にかかると。魔物は最悪上層に置けばいいのですが。
レイチェルさんが仰っていた「かなり難しい上にTPが都度莫大にかかる」というのはそういうことだと思うのです。
ではどうするべきか。色々と案を出しました。
「侵入者用のルートは残しておいて、それ以外に大部隊用のルートを創っておくというのはどうです? これなら
「普段の塔運営はどうするのだ? 大部隊用のルートを塞いでおくのか?」
「塞いでもいいですし、見せておいてもいいと思います。そこに高ランクの魔物がいれば侵入者は避けるでしょうし、戦いたかったら戦えばいい」
「見せちゃダメな魔物だったら塞いじゃえばいいってことね~」
ハルフゥさんからはそんな意見が。なるほどそれはいい考えかもしれません。
「では一階層から魔物での対処を考えるということか? 単なる削りでもなく罠による対処でもなく」
「魔物は一例ですよね? 厳しめの罠主体でもいいと思いますし、削るでもいいと思います。ただその場合は斥候対策した罠や削る方法が問題になりますけど」
「そうですね。あくまで大部隊用の専用ルートを創るということです」
「スカアハさん、斥候が困る罠って何かありますか?」
「……例えバ、地形と合わせるなどが有効かもしれませン。水が張っているだとカ、雪で覆われているとカ、草が茂っているとカ。それだけでも見落としが多くなると思いまス」
「ん……水はいいかもしれない。一階層のサンダーイーグル(B)の雷魔法がいい削りになる……」
「あーなるほど。そうすれば魔物の配置を弄らないでも削りになるということですか」
それもアリですね。無駄に魔物を消費させなくて済みます。
ただサンダーイーグルにしてもサンダーバード(D)にしても召喚数が有限ですから主力には置きたくありませんが。
「でしたら水の代わりに油を敷いておくというのはどうです~? そうすればハイフェアリー(C)ちゃんの火魔法だけで結構いい削りになりそうですけど~」
「それは面白いな。油は使い捨てでTPが掛かるが目に見える戦果というのは大きい」
「塔構成で油を用意するのは無理ですね。やるなら買っちゃったほうがいいかもしれません」
「お嬢様、塔構成で油を敷くことが出来ないのであれば尚更盲点になるかもしれません。やる価値はあると思います」
そうですね。もし敵の塔でも塔構成で油を扱うことが出来ないのであれば、確実に盲点になるでしょう。その大部隊用のルート自体が罠となりえます。
日用品や食材用として油をTPで買うことは出来ますが、それを塔構成に活かそうとは考えづらいでしょうから。
となればその『油ルート』は普段、壁で見せなくするべきですね。侵入者から情報が洩れるようなことは許されませんし。
さすがに大部隊用のルートを全面『油ルート』にはできませんので、やるとしても一部。『水浸しルート』と併用でもいいかもしれませんね。
「ん……飛行系はどうする? 何も削れてないけど……」
「そうですね~。そもそも飛行系には罠も地形も無駄になりやすいですから~、削るとしても普通に攻撃するくらいしかないんですよね~」
「天井を極端に低くするというのは?」
「二~四階層ではアリですけど、一、五、六階層では無理ですね。景観を崩すことになりますのであまりしたくありません」
「では一階層で飛行系を削るのは諦めるト?」
「最悪そうですね。一階層はあくまで地上部隊を削ることをメインに考える。塔構成と地形、罠を使って。そして二階層は二階層で別の対処方法を考える、としたほうが分かりやすいかもしれません」
レイチェルさんもそのようなことを仰っていましたしね。
その階層の目的をまず決める。そしてそれに見合った塔構成・魔物・罠を考えると。
どうせ一階層で使った手は二階層以降で使えないのですから、二階層は独自の目的をもって塔構成を決めなければいけません。
それが飛行系魔物になるのか、それとも地上部隊の何かしらの魔物にスポットを当てた削りになるのか、というところでしょうか。
「じゃあ仮に一階層は『地上部隊の削り』を目的にするとして、二階層は飛行系にするのか?」
「私としては斥候を狙いたいところでス。できれば四階層までにある程度斥候……と言いますか<罠察知>持ちを削っておきたいですかラ」
「斥候が少なくなれば四階層の『トラップ回廊』がより活きますからね。まぁ『トラップ回廊』も全面改装になりそうですが」
「いずれにせよ序盤で斥候狙いは正解じゃないでしょうか。となれば斥候用の罠を用意すべきですか」
「<罠察知>を無効化する罠ですね。それはドロシーさんと相談しましょう。なにか考えているみたいですし流用できそうなら使います」
【忍耐の塔】でしか使えない罠とかも多いんですがね。仮に流用できなくても似たような何かは創れるかもしれません。
斥候と言っても色々な魔物がいますからね。それをまとめて罠に嵌めるというのは不可能なのですが――ターニアさんの<魔力感知>も斥候スキルですし――<罠察知>に絞ればある程度魔物を限定できます。
大体アサシンリンクス(C)などの獣系かデザートアサシン(B)のような亜人系。最前線の地上部隊となるでしょう。それを斃したいと。
いいんじゃないでしょうか。では仮に二階層の目的を『地上斥候部隊の削り』としておきます。
これを一階層の目的にしたいくらいですね。でも帝都は屋外地形ですから罠も限られますし……一応今のまま進めておきましょう。
「しかしエメリーやスカアハ並みの斥候だったらどうする? 罠程度では対処できまい」
「十四階層の部隊分断系の罠ならばどうです? あれならば対処できないのでは」
「確かニ。自動で発動するような罠ならば指揮官は落とせずとも『部隊の削り』にはなりまス」
「そうなると二階層の目的と変わってきちゃいませんか~?」
「二階層はあくまで『斥候
「ん……どっちにしろSランク固有魔物なら終盤で対処するしかない。もしくはその指揮官狙いでエメリーを突撃させる……」
「ああ、二階層で斥候能力を調べるわけか。それを難なく攻略するならば相当な手練れが指揮官にいる。それが分かればターゲットにすればいいと」
「エメリーさんが防衛にいるのならそれも考えられますね。攻撃側ならまた悩みどころですが」
エメリーさんかスカアハさんクラスの斥候指揮官がいれば普通の罠など意味がありません。
仮にドロシーさんの考える<罠察知>持ち用の罠を配置したところで、エメリーさんなら抜けそうですし、それこそ罠に特化した固有魔物や限定スキルの前では無意味でしょう。
二階層の目的は達成できないものとして割り切り、その指揮官をどうにかすることを考えなければいけません。
となると低階層にエメリーさんを突っ込ませますか? いや、それだと″塔で防衛する″ということ自体を否定しているようなものです。
エメリーさんを出さずとも大丈夫なように塔構成を考えるべきですね。
そうでなければエメリーさんを一生攻撃側に回せないことになってしまいますし。
「私からも一つ。三、四階層ですが、ここで飛行系魔物を対処したほうがいいと思います。ここで殲滅か、最悪でもある程度削っておかないと五、六、七階層が厳しいので」
「一体でも飛行系がいれば順路や魔物配置が丸分かりですからね~」
「大幅な塔構成の変更……例えば空から視認できなくさせるようなことはしないのですね?」
「最悪それも考えますけどあまりしたくないというのが本音です。景観は大事にしたいですし、うちの魔物のためにも。ですので今は現状の階層を活かす方向で考えます」
「承知しました。であれば飛行系魔物の排除は優先ですね。これも指揮官ではなく″飛行部隊″ということでよろしいですね」
「はい。ですので三、四階層で地形と罠を用い、飛行系魔物を優先して斃すようにしたいです。どちらかの階層に限定してもいいのですが」
「向いているのは四階層でしょうネ。あの回廊であれば色々と弄りやすいでしょうシ」
確かに狙いやすいのは四階層ですね。『トラップ回廊』は入り組んだ迷路ですから、それこそ一番罠を置きやすいのです。
足止めを狙いやすいのもここなのでまた悩みどころですね。あまり色々な目的を絡ませたくはないのですが。
「ん……じゃあ三階層はどうする? 別の目的?」
「後衛、魔法部隊を狙いとするか? しかし魔法部隊を削るといっても……どうするのだ?」
「やはり分断か後衛狙いの罠でしょうか。分かりやすいところでは」
「それ以外にないと言ってもいいのでハ? 魔法部隊といっても様々ですシ、非常に狙いづらいかト」
「難しいですね。相反属性をぶつけるにしても相手が決まっていないと分かりませんし」
「強めの魔物を入口に潜ませておいて敵の後方を突くというのは? であれば罠も属性も関係ありません」
「おお、それはいい。それが妾ならば尚更いいな」
バートリさんはさておき、確かにそれが一番狙いやすいかもしれません。
ただその魔物は最終的に斃される可能性が高いのと、隠し部屋を用意しておく必要がありますが。
それとその方法を用いるなら別に三階層である必要がありませんよね。一階層や二階層でもいいわけですし。
三階層独自の目的が欲しいところです。まぁ四階層と同様に飛行系に絞ってもいいのですが。
――と、色々話し合って少しずつ煮詰めていきました。
内定式の日はどうせ休塔日ですから、そこで改装して翌日お披露目が理想ですね。
それまでに細かい部分を詰めておきましょう。
……ランゲロック商店の件もありますし、大変ですね……色々と。
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