108:赤の塔vs昏き水の塔、始まります!
■アデル・ロージット 18歳
■第500期 Cランク【赤の塔】塔主
火と水、風と土、光と闇はそれぞれ相対関係にあります。
天使と悪魔が対立しているのと同じですね。お互いが得意であり弱点でもある。
そう考えると風属性の多い【輝翼の塔】と土属性の多い【忍耐の塔】が真逆の性質をしているというのもよく分かる話です。
自分の得意分野が相手の不得意分野であると。
お互いを補い合っているのが同盟というわけですね。
さて、今回のわたくしの
九年目のCランク、ランキングとしては75位。
フッツィルさんが調べ、オススメとして皆さんに提示したのは年末のことでした。
その時に仰っていたのです。
「ここはシャルかわしに向いている塔じゃの。アデルではちと相性が悪いかもしれぬ」と。
それを聞いてわたくしは言いました。「ならばわたくしが申請しましょう」と。
当然「はあ?」と怪訝なお顔をされていましたがね。
【赤の塔】と【昏き水の塔】どちらも熟知しているであろうフッツィルさんでさえ【昏き水の塔】が有利だと仰っている。
ならば当然、向こうもそう思っているはず。
こちらから申請すれば必ず食いつく。そう確信していたからです。
向こうが「絶対に勝てる」と思わなければ受理されませんし、そもそも戦いの場に立てないのです。愚かな低ランク塔主でもない限り。
だからこそ高ランクの塔は滅多に
わたくしはそれから準備に勤しみました。対【昏き水】戦に向けて。
もちろんジータや皆さんとも相談し、これならば戦えると踏んだ段階で申請したのです。
……それが五連戦になってしまったのは予想外でしたがね。まぁ流れにのるという意味でポジティブにとらえましょう。
『アデル、情報は叩き込んだか?』
「ええ、ありがたく。地図も戦力も、そこからの予習も問題ありません。あとは向こうの出方次第ですわね」
『アデルさん、作戦はあれでいくのですか?』
「攻撃は何ともいえませんが防衛に関してはそうですわね。六階層までにけりを付けます」
『ひゅ~言うなあ! 相手は相当強いっちゅうのに』
『うわぁ~すごい自信ですねぇカッコイイです』
『アデルさん、頑張って下さいね』
戦える=勝てる、ではありません。どうやったとしても厳しい戦いになります。
しかし必ず勝つと。
例え格上の相対属性の塔であっても、ここで勝てないようでは覇道などありえない。
バベルの頂点へ、共に並び立つ為に。
貴女はお茶でも飲みながら観戦していて下さい、シャルロットさん。
――カラァン――カラァン――
『はい時間だよー、二人とも準備はいいかなー?』
「はい」『はい』
『オーケー、じゃあ始めようか! 制限時間はなし!
始まりましたわね。まずは攻撃陣を送り出しましょう。
「頼みましたよ、ジータ、トカゲン、メェメェ、クルックー」
『おう』
さて、向こうの攻撃陣が転移門から入ってきましたが……うん、問題ないですわね。
想像通りでもあり、フッツィルさんからの情報通りでもあります。
前衛にEランクのスケルトンとDランクのスケルトンナイトの群れ。
中衛にCランクのスキュラとBランクのスキュラナイトの群れ。
後衛にCランクの
指揮官は
計百三〇体というところです。
まずは歓迎しましょうか。
ようこそ陸地へ――水棲魔物の皆さん。
■リアクア・マリーナ 27歳
■第492期 Cランク【昏き水の塔】
「頼みましたよ、ニュエル、ルカ」
『ハッ』『はい』
攻撃陣を送り出し、私は転移門から入る敵軍を画面に映します。
……やはり英雄ジータが来ましたか。しかし……。
Eランクのレッドインプが五〇体、Bランクのブラッディウォーロックが十体。
あとはジータと、その両肩に
これはあまりに少ない。つまり第一陣ということですか。
ジータ自ら先遣に出るとは、なるほど英雄の目を信頼しているのですね。もしくは私の塔を過大評価してくれているか。
であれば第二陣に備えて余力を残しておくべきでしょう。
第一陣との合流を阻止できれば僥倖。できなくても遅らせることこそ肝要です。
理想的なのは数少ない状態でジータをこちらのAランクと当たらせる。
できれば
ならば六・七階の
第二陣が援軍として呼ばれるか、ただ攻めるタイミングをずらしているだけかは分かりません。
しかしあの第一陣だけで
英雄ジータが海の魔物と戦った歴史などないのですから。
■アデル・ロージット 18歳
■第500期 Cランク【赤の塔】塔主
「ジータ、どういうことですの?」
『俺が聞きてえよ。フッツィルの嬢ちゃんから何か情報ねえか?』
ジータがスケルトンを薙ぎ払いながら喋っています。明らかに片手間ですね。
しかし不可解です。どう見ても魔物が少ない。
本来ならスケルトン系統の他に、海からマーマンとマーマンメイジが襲ってくるはずです。
それがせいぜいライフルフィッシュが水弾を撃ってくる程度。
どういうことでしょう。上層に集めている?
「フッツィルさん、何か分かりますか?」
『いや分からぬ。確かに一階層にはマーマン種がおるらしい。しかし完全にスルーしておるな』
「分かりました。ジータ、背後からの強襲に気を付けて下さい」
『おう、メェメェに任せるぞ』
進めるならば早くに進みたいところです。
【昏き水】の上層にはシーサーペントとクラーケンがいますからね。そこで時間をくうでしょう。
こちらの防衛にもまた時間がかかる。であれば下層の突破はできるだけ早めが望ましい。
しかし後顧に憂いがある状況というのは精神的によろしくありません。
せめて理由が分かれば……。
『あ、あの、もしかしたら後続を警戒してるんじゃないですか?』
「えっ? どういうことですの、ノノアさん。後続?」
『は、はい。数が向こうの半分ですし、ジータさん以外はパッと見でBランク以下じゃないですか。まさかSランクのフェニックスがいるなんて知らないはずですし……向こうからすれば、その、ありえないのかなって、あの、間違ってたらすみません』
…………なるほど。一考の余地ありですね。
「いえ、とてもいいご意見ですわ。ありがとうございますノノアさん」
『え、あ、はい、いえいえ』
であればレッドキャップを五体ほど突っ込ませてみましょうか。それで襲ってくるものか試しましょう。
しかしそれが本当であればジータを先遣に出していると見られているわけですか。とんでもない威力偵察ですわね。
まぁ言われてみればわずか六〇数体。Bランクの魔物が十体とEランクが五〇体ですものね。
わたくしとしては選抜した結果だったのですが。
これで侮ってくれるならば良かったのですが、逆に警戒されすぎてこちらも困惑してしまったということですか。
教訓にしなければいけませんわ。
その後、送り込んだレッドキャップがマーマンに斃されたことで、ノノアさんの考えが正しかったとほぼ結論付けられました。
さて、そうしましたら警戒させたままにしたいところですわね。
定期的にレッドキャップを送り込みましょうか。
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