420:【空城】同盟戦、終了です!



■シャルロット 17歳

■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主



 私たちの攻撃陣は十三・十四階層に到達しました。

 そこは『湿原』です。地面には水と草、空は拓けていて広々とした空間です。想像通りですね。


 敵部隊も全てが見えます。

 十一・十二階層から逃げてきた悪魔部隊の他には数えるのも嫌になるほどの鳥の群れ。


 フリカムイ(S)、ジズ(S)、フレスベルグ(A)、ガルーダ(A)などの高ランクの魔物やエアロイーグル(B)、ブリーズイーグル(B)などの群れも見えます。

 そして中央には淡い蒼の飛竜。さらに白鷺のような鳥が見えました。


 地上部隊はなし。飛行系魔物だけで約三百。これが【空城】同盟の全てだと思います。


 よくここまでかき集めましたね……これに攻撃陣にいたヴァルキリー部隊や固有魔物を加えれば相当な軍勢だと分かります。



「楽勝ですわね」



 いや、ちょっと待って下さいアデルさん。まだ油断は禁物ですから。


 仰りたいことは分かりますけれどね。

 もし敵攻撃陣を含めた五百以上の軍勢であればこちらはかなり厳しくなったでしょう。


 しかし【空城】同盟は戦力を分け、攻撃と防衛を同時に行ってしまった。

 それが塔主戦争バトルの王道であり同盟戦ストルグの基本であるのは分かりますが、結果としてそれは悪手だったと思います。



 私たちの攻撃陣が【潮風の塔】に入った段階で、攻略よりも防衛を考えるべきでしたね。大体の戦力は把握できるでしょうし。

 確かに今布陣している防衛陣は精強ですし数もこちらより上だとは思います。

 でもAランク魔物の数も、Sランク魔物の数も、固有魔物の数もこちらが上なのです。


 相手の利は空にある。確かにこちらの地上部隊では全く戦えない者も出てくるでしょう。

 しかしそれでも……と思ってしまいますね。

 せめて十階層にいたロイヤルシリーズをここに布陣させていれば高ランクの魔物でも数的優位になったものを。



『ウリエルさん、空の指揮をお願いします。竜にはヘルキマイラ(★S)とマンティコアフレイム(★A)の部隊を当てて下さい。固有魔物の鳥にもご注意を』


『承知しました。者共行くぞ!』


『地上部隊は進軍します! スカアハさんは端から重力魔法を! ペロの周囲を開けて下さい! 大きくしますよ!』



 固有魔物と高ランクの魔物はウリエルさんたち飛行部隊に任せるようです。

 そして地上部隊は階層の中央まで進軍。


 ここで氷獣ファーブニルペロ(★S)は巨大化。周囲に冷気を発するため、部隊は近くに寄れません。

 ただペロが孤立ということではないですね。背中にフェンリルシルバ(A)が乗っています。

 ペロは萎縮させる咆哮と氷魔法を放ち、シルバも氷のブレスで攻撃を始めました。



『そら、行ってこい!』



 空の魔物とはまともに戦えないと考えたのか、バートリさんはヨグ=ソトースヨギィ(★S)を抱えて鳥の群れに投げつけました。

 矢のように放たれたヨギィには鳥たちから魔法が放たれていますが全く効きません。


 すぐに鳥たちの元まで到達すると、ヨギィはその身体を巨大スライムに戻します。

 それは鳥の群れを包み込むように覆い、身体から伸びる触手は周囲の魔物に巻き付きます。


 ヨギィはそのまま落下。吸収される魔物もいれば、下で待ち構えたバートリさんに斃される魔物もいると。


 ……投網ですね、まるで。



「ノノアさん、なんかすみません、うちのバートリさんが……」


「い、いえ、なんかヨギィも楽しそうですし、アハハ……」



 そうこうしているうちに飛竜が落ちました。驚くほどの早さです。てっきり最後まで残ると思っていました。

 私はすっかり忘れていたのです。

 マンティコアフレイムの頭にフェニックスクルックー(★S)が乗っていることを。


 飛竜はおそらくSランク固有魔物でしょうが、ヘルキマイラ(★S)、クルックー(★S)、マンティコアフレイム(★A)、マンティコア(A)三体からなる部隊に囲まれてはどうしようもありません。

 そして自由となったヘルキマイラたちは周囲の鳥たちにも襲い掛かったのです。



 こうなってしまうともう決まりです。

 白鷺の固有魔物は羽ばたいてこちらの動きを止めるようなスキルを使ってきたようですが、それで天使数体を止めたところで他から攻撃を受けます。

 結局それもクルックーが介入したことで斃れ、敵固有魔物はその姿を消しました。


 ランスロットさんやハルフゥさんはほとんど出番なしですね。

 十~十二階層で戦わせておいて良かったと思います。



 結局こちらの被害はヴィゾフニル(B)三体だけ。たったそれだけの被害で【潮風の塔】を攻略したのです。


 十三・十四階層の魔物を掃討し終えた攻撃陣は十五階層へと向かいます。

 いつもでしたらエメリーさんを一人で行かせ、ターニアさんを階段で待機させるところです。限定スキルや神授宝具アーティファクトを警戒して。

 しかし今回はその心配もありません。条文で禁止されていますからね。


 それでも一応、ハルフゥさん、ウリエルさん、ランスロットさんの三人に絞り、警戒しながら最上階に上がりました。


 【空城】同盟の四塔主は抵抗もせず、塞ぎこんだり、泣いたりといった様子。

 ドロシーさんがウリエルさんに宝珠オーブを割るよう言い、それで終わりです。



『は~~い、しゅ~~りょ~~! こっちの同盟の勝ち~~!』



 結局、エメリーさんの魔竜剣も使いませんでしたね。バートリさんのマジックバッグに入れておいたのですが。

 まぁ使わずに終えられればそれに越したことはないです。


 接収はヨギィの体内収納を使います。

 【空城の塔】ならともかく【潮風の塔】だと持ち帰る物も少ないでしょうがね。それでも一応接収はします。



『いや~、久しぶりだったけど圧勝だねぇ。神定英雄サンクリオなしでよくやるもんだ』


「ありがとうございます」


「神様は分かっていらしたのでしょう? ですから神賜ギフト禁止の詳細も曖昧になさったのでは?」


『なんのことか分からないな~。でも結局は同じでしょ? 武器も使ってないし指示も特にしてないんだから』



 白々しいですね。まぁ神様の仰るとおり、『神賜ギフト禁止』の条文を逆手にとってこちらがやろうと思っていたことはほとんど出来ませんでしたね。

 それならそれで問題ないのですが。



『とりあえず一年ぶりのリハビリ同盟戦ストルグってことで今回はこんなもんでしょ。また次回に期待しているよ。またね~』



 満面の笑みが不吉に思えて仕方ないですね。

 次回ってまさか……近々【節制】同盟と戦うのですかね?

 神様がセッティングめいたことはしないと思うのですが……嫌な予感しかしないです。



「気にしていても仕方あるまい。八割方こちらの反応を楽しんでるだけじゃろうし」


「せやな。とりあえず攻撃陣が戻ってくるまでに戦果の順位付けでもしとくか」


「1位は【女帝】でいいとして2位以下は団子ですわね。皆さんそれぞれ主力を出して戦っておりましたし」



 私は問答無用で1位だそうです。【女帝の塔】を使いましたしハルフゥさんが総指揮をしましたからね。ありがたく受け取っておきます。


 話し合いの結果、クルックーが飛竜にトドメを刺し、白鷺の固有魔物も斃したということで2位が【赤の塔】。

 敵攻撃陣の主力、指揮官とエンシェントヴァルキリーの部隊を斃したということで3位が【忍耐の塔】、4位が【輝翼の塔】。差はウリエルさんの働きによるところです。

 ヨギィとディーゴの活躍を考慮して5位が【世沸者の塔】、そして6位が【六花の塔】となりました。


 はっきり言って2位以下に大きな差はないです。

 召喚権利の順番決めだけですからね。皆さんそこまで拘ってもいませんし。



 そうこうしているうちに攻撃陣が戻ってきました。

 労ったあと、早速バベルジュエルと魔石を集計します。


=====


 【空城の塔】373,620TP

 【潮風の塔】177,130TP

 【夢幻の塔】 87,800TP

 【重厚の塔】 56,540TP 【合計】695,090TP

 【魔石】 約55,000TP 【総計】約750,000TP


 ⇒【分配配当】約125,000TP


=====


 このような感じです。可もなく不可もなくといったところ。

 一塔当たりの報酬TPはCランクとBランクの中間といったところでしょうか。

 Aランクの【空城】が混ざっていても六塔で分ければそれくらいということですね。


 物足りなく感じてしまうのは完全に麻痺している証拠ですね。実際は多い方だと思います。


 それと召喚報酬ですが、まず【空城】同盟の主だった魔物がこちら。


=====


 【空城の塔】空竜フェンザウォール(★S)、震牙虎ドゥーナァ(★S)、剛盾セルゲイナス(★A)、疾風騎サルマット(★A)、エンシェントヴァルキリー(S)、ジズ(S)、ファングキング(A)、ロイヤルシリーズ等


 【潮風の塔】凪鳥ヴェズルフェルニル(★S)、企鵝王ペンティア(★A)、騎将フェンロン(★A)、フリカムイ(S)等


 【夢幻の塔】霊主ザムエラ(★S)、ピンクデーモン(A)、サキュバスクイーン(B)等


 【重厚の塔】ロイヤルナイト(A)、ジェネラルナイト(B)


=====


 これに対して一体ずつ取り合っていった結果がこちら。


=====


 【女帝の塔】疾風騎サルマット(★A)、フリカムイ(S)

 【赤の塔】凪鳥ヴェズルフェルニル(★S)、ロイヤルナイト(A)

 【忍耐の塔】企鵝王ペンティア(★A)、騎将フェンロン(★A)

 【輝翼の塔】エンシェントヴァルキリー(S)、空竜フェンザウォール(★S)

 【世沸者の塔】霊主ザムエラ(★S)、剛盾セルゲイナス(★A)

 【六花の塔】震牙虎ドゥーナァ(★S)、ファングキング(A)


=====


 こんな感じになりました。

 ちなみにヘルキマイラ(★S)の召喚権利をドロシーさんにあげた件で、今回のドロシーさん指名第一巡目の魔物を私がもらうことになっています。


 というわけで私はまず今後増えるであろうヴァルキリー飛行部隊の指揮官候補としてサルマットを第一指名。海の神殿用にペンギンを【忍耐】の第一指名とし、二巡目に大型の水鳥フリカムイを指名しました。これも海の神殿用です。


 アデルさんは連結階層用に白鷺の固有魔物を。そして【黄神石】からも召喚報酬として得ていたロイヤルナイトを補充した格好です。ランスロットさんの部隊用ですね。


 ドロシーさんは騎将フェンロンだけです。地上攻撃部隊の指揮官ですね。今までの指揮官が皆飛行系ばかりだったからだと思います。


 フゥさんは最優先でエンシェントヴァルキリーを。自前のグリフォンに乗せる気ですね。それと余り物のようになっていた空竜を一応確保していました。ブリングと並べるつもりでしょうか……。


 ノノアさんは元々アンデッドが多いのでゴースト系のザムエラを第一指名。それと大盾の騎士セルゲイナスと、人型ばかりをチョイス。徹底していますね。


 シルビアさんは氷・火と来て今度は土属性の大虎です。その配下もセットで。属性がだんだんと充実してきましたね。



 以上です。あとは適宜、召喚したい時に相談するといういつもの流れで今回の分配は終了。

 とりあえず一つの山を越えてホッとした感じです。

 明日の営業はどうしましょうかね……私の塔だけ休む感じになりそうです。



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