第十五章 女帝の塔は二年目の年越しをします!

287:女帝の塔をバージョンアップします!



■シャルロット 16歳

■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主



 【轟雷】同盟との塔主戦争バトルを終えた翌日、私は休塔日とせずに通常営業しました。

 ほとんど塔に侵入されていませんし、攻撃陣の斃された魔物を召喚するだけでしたからね。

 クイーンの皆さんや長時間戦った魔物も元気そうでしたし。


 魔物ももちろん疲れますし、体力や魔力を消耗するものなのですが人のように翌日まで疲れをひっぱるというようなことはないのです。

 どちらかと言えば「久しぶりに戦えたぞ!」というような高揚感が勝るようで、より元気に、より血気盛んになるのですよね。

 そこら辺はやはり魔物ならではだと思います。


 エメリーさんは疲れ知らずですしね。

 慣れないマンティコアの騎獣に加えて総指揮、その上一番戦っていたはずなのですが疲れなど微塵も見せません。

 結局一番疲れているのは玉座に座っていた私ということです。主に神経疲れですが。



 というわけで翌日を営業としたのですが、やはり侵入者の数は増えました。

 しかし【魔術師】同盟戦の時と比べれば断然少ない感じです。


 やはり【魔術師】同盟と【轟雷】同盟ではインパクトが違うということなのでしょう。

 Bランクに上がったばかりの【轟雷の塔】も注目はされていたと思いますが【魔術師の塔】はAランク9位でしたし。

 【女帝の塔】だけで三塔を斃したと言ってもそれほど騒がれることはなかったのではないかと。



『それは感覚が麻痺しすぎやろ。騒がれるに決まっとるやん』


『さ、三塔を同時にですからね……そんなの早々ないでしょうし……』


『実際に冒険者ギルドは盛り上がっていたらしいぞ。ファムで調べてはおいたがのう』


『冒険者目線で言わせてもらえば騒がれるのも当然です。【女帝】のニュースであれば尚更かと』


『数が少ないのは単にBランク侵入者の数の問題じゃありませんの? おかげでこちらは著しく減少しておりますわよ』



 なんかすみません、アデルさん……多分数日は続くと思うのですが勘弁して下さい……。


 ともかく侵入者が一時的に増えたと言えども通常営業に支障はなく、画面で侵入者の皆さんの動きを監視しながら六女王会議も捗ります。

 動きを見て、改善点や修正点を見つけるという毎日の作業なのですが、同時に今後の塔の強化についての相談もですね。

 塔主戦争バトル報酬をどのように使おうかと話し合っているわけです。



 まず報酬に関係ないところですが、塔主戦争バトル用に召喚したスキュラクイーンとスキュラ部隊。これは十二・十三階層の『海の神殿』に駐在させます。

 ここの管理はハルフゥさんに全面的にお任せですね。

 海底に部屋も創ってあるのですが最上階の個室とどちらを使うのかはお好みで。水陸どちらでもご自由にどうぞと。


 あとはハーピィクイーン二体ですが、今は一階層『帝都』に駐在させています。

 Bランクですし戦わせるつもりはないのですがハーピィたちを統率してもらう意味で置いています。

 二塔建っている時計塔の最上階がそれぞれの住処ですね。そこから指揮してもらう感じで。


 これにより一階層のハーピィたちが強化された形となります。

 ステータス的にどうこうというより部隊としての動きが洗練された感じですね。

 やはりそこはクイーン種の強みです。【女帝の塔】の強みでもあります。



 ……と、営業前に準備できたのはそこまで。

 あとは相談しながら報酬をどのように使おうかというところです。


 バベルジュエルと魔石を合わせたTP報酬が約330,000TP。

 魔物の召喚権利が多数。

 さらに三塔の最上階で接収した金品等、といったところです。これは無視しますが。



「これだけのTPがあれば限定スキルの<女帝招集令>が取得できるのですね……」


「あれは250,000TPですからね。ですが今は魔物に使います。当初の目的通りに」



 誘惑はありますがBランクの塔として完成を目指すのが優先です。

 そのために塔主戦争バトルをしたのですし。


 まずテコ入れすべきは一階層の鳥系魔物不足……だったのですがハーピィクイーンにハーピィの統率を任せたことで、一応飛行戦力の強化はできています。

 とは言え飛行系魔物をハーピィだけに任せるというのもどうなのかということで、【轟雷】のサンダーイーグル(B)とサンダーバード(D)の部隊をとりあえず配置することにしました。


 ハーピィよりも小柄ですしね。

 これで上空からはハーピィの強襲と風魔法に加え、雷魔法まで飛んでくることになります。

 他にも何か配置しようかと検討していますが現状はこれだけ。

 サンダーイーグルにしても一階層にしては強すぎなのでほとんど表には顔を出さず統率に努める感じですね。一体だけ召喚してリスポーン設定にするつもりです。



 次に修正すべきは五・六階層『城裏の森』。元々配置している魔物が少ないですからここの魔物を充実させます。


 鳥系で言えば【空白】のエアロイーグル(B)、ホワイトオウル(C)、ホワイトクロウ(D)、エアリアルクロウ(D)といったところ。

 森に潜む虫系として【空白】のクリアパピオン(D)、【轟雷】のサンダービートル(D)。

 あとは地上戦力として【轟雷】のサンダーファング(A)、サンダーリンクス(C)、サンダーキャット(D)を配置する予定です。


 どれも数に限りがありますのでヒットアンドアウェイ主体で戦うよう、エメリーさんやクイーンの皆さんを通じて伝達させる必要があります。


 サンダーファングが強すぎですので裏ボス的な立ち位置ですね。この階層にちゃんとしたボス部屋などもないですし。

 ユニコーンたちと一緒に中央の泉に一応置きますが、階層中を好きに徘徊して下さいと。

 侵入者の方々はせいぜい出会わないように気を付けて下さいといった感じです。



 次は七階層の『庭園』ですね。ここも魔物が少ないので補強します。


 【轟雷】の雷貴精トール(A)が一体と雷精霊チャク(C)が多数。

 それと【空白】のマーダーカメレオン(B)、ミミックファング(A)とクリアリンクス(C)の部隊。


 この階層の主力はあくまでクイーンアルラウネ(B)のアルラウネ(D)部隊とかサキュバスクイーン(B)のサキュバス(D)部隊ですので、庭園迷路の迷い込んだ先に罠的に配置する形となります。

 戦闘回数も少ないでしょうから召喚数制限もあまり気にしていません。ミミックファングとか二体しか召喚できませんけどね。



 八階層の『城内探索』は特にテコ入れを考えていません。

 まだ構想段階ですが、完成すればヴァンパイア(A)やBランクのロイヤル系統が多く駐在することになるのでそれで十分と思っています。

 何か課題が見つかった時に考えるという感じですかね。



 九階層の『大書庫』はウィッチクイーンベアトリクスさん(A)を中心に飛行系魔物で固めているのですが種類と数が少ないのでここも悩みどころです。

 というわけで【空白】の固有魔物である白翼天使アラエル(★A)と権天使プリンシパリティ(C)の天使部隊をここに置こうかと思っています。

 あとは地上戦力、壁役として【氷海】のクリスタルゴーレム(A)やアイスゴーレム(C)なども候補ですね。


 いずれにせよ天使部隊は優先して召喚するつもりです。

 やはり飛行できる回復役は貴重ですから。塔主戦争バトルでも使いたいですしね。

 ただアラエルの眷属化は検討中です。眷属枠は一つ余っているのですがちょっと考えていることがありますので。



 続いて十・十一階層の『獣の砦』ですが、ここは現在ごく一部の魔物しか置けていません。

 しかし構想しているものが完成すれば輝石竜ヴィーヴル(★A)、ジュエルヒュドラ(★S)、ヘルキマイラ(★S)といった超強力な布陣になります。


 あまりに強すぎるのでそれも考えものなのですが、今回新たに【轟雷】の雷竜ケツァルコアトル(★S)、雷巨人ママラガン(★A)あたりも候補に入ることになりました。

 置き場を考えるとここしかないという感じなのですが、一階層分に集結させて良い陣容ではないのでよく吟味してから召喚したいと思います。

 優先させたいのはヘルキマイラですね。マンティコアの上位互換みたいなものですし。



 そして十二・十三階層の『海の神殿』ですね。

 現在はハルフゥさんとスキュラクイーン部隊しかいません。

 予定では天井付近の踊り場にデュアルガーゴイル(A)、ガーゴイル(B)、天貴精マルト(A)といった飛行部隊を駐在させ、地上・海・空から襲わせるといった布陣を考えています。


 ここに【氷海】の魔物が入るわけですね。

 デスクリオネ(★A)とその配下のクリオネウィッチ(B)、クリオネレイス(D)は確定。

 ウォルラスキング(A)とその配下のステラシールマン(C)、シールマン(E)は地上・水中部隊として検討中。

 マーマン(D)やマーマンメイジ(D)はさすがに弱すぎるかもしれませんね。


 あとは飛行部隊としてブリーズイーグル(B)、コールドコンドル(C)、アイスバード(D)あたりでしょうか。

 寒冷系の鳥は五・六階層で使うよりもこちらで使ったほうがいいと思います。



 こんなところですかね。

 十四階層の『ダンスホール』は弄る必要もないと思いますし。まだ全然完成していないですけど。


 高ランクだと【轟雷】のイエローオーガキング(A)部隊やサンダーデーモン(A)部隊が残っていますが置き場に困ると言いますか、オーガや悪魔系は【女帝の塔】からかけ離れすぎるかなぁと思いますので棚に上げておきます。

 海や『獣の砦』を創っておいて何を今さらという感じもしますが、私の中の線引きの問題ですね。



「――という感じになりそうですがどうでしょう」


「ふむ、妾の配下の出番が益々少なくなりそうだが……致し方あるまい」


「私はいいと思いますわよ~。いっぱい魔物がいるほうが見ていて楽しいですし~」


「ん……私の『大書庫』に天使はありがたい……早く召喚を」


「わたくしも『海の神殿』をお気に掛けて頂きありがたく思います、シャルロット様」



 クイーンの皆さんも納得して頂けたようです。それは何より。



「お嬢様、330,000TP程度では全ての魔物を召喚することはできないと思いますが」


「そうですね。構想段階のものだけでも固有魔物やロイヤル系統を揃えるのも無理です。八階層のロイヤル系統は揃えないといけませんけどね」



 侵入者が七階層の最初まで来ていますからね。

 五・六階層を強化することで探索はより困難になると思いますがBランク侵入者の数が増えていることを考えると八階層までは完成させておきたいところです。



「あとは天使部隊と鳥系魔物を優先して召喚します。それから『獣の砦』と『海の神殿』を徐々に……という感じになると思いますね」



 おそらく八割方完成となるのではないでしょうか。

 最終的に残るのは『獣の砦』の固有魔物とロイヤル系統をどれほど召喚するかという問題だけだと思います。

 どちらも塔主戦争バトルでは防衛を担当する魔物ですね。

 攻撃用の魔物――敵の塔を攻略するための魔物を優先的に召喚するのは当然ですから。



「それと白翼天使アラエルを眷属にしないで枠を一つ余らせるというのは……」


「そうですね。実は狙っている魔物がいるのですよ」


「珍しいですね、お嬢様がそのような口ぶりを。ちなみにどのような魔物を?」


「斥候部隊の指揮官が欲しいのです」



 今の眷属は前衛のバートリさん、後衛のターニアさんとベアトリクスさん、回復のハルフゥさんがいます。エメリーさんは万能なので省きますが。

 そうやって見ると弱点は″斥候″になるのですよね。


 皆さん斥候系スキルは持っているのですが専門職というわけではありませんから、どうしてもエメリーさんに頼ってしまう部分があります。

 そこをちゃんとした斥候部隊で補って、その指揮官には眷属を置きたいと。

 どうせ数年はBランクのままですし眷属枠は残り一つしかありませんから、それを斥候系の眷属に充てたいのです。



「というわけでターニアさん、どこかにいい感じの魔物はいませんかね?」


「うふふ、そうしましたらちょっと探してみますわ~」


「ハハッ! 随分と塔主らしい塔主になってきたではないか。妾は賛成するぞ」


「ん……私も異議なし」


「わたくしも賛成です。塔主として素晴らしいお考えかと」



 そこが補強されればいよいよ私の思い描くBランクの塔が見えてきますね。

 もう少し頑張って、精力的に動いていきましょう。


 ……レイチェルさんにはまた怒られてしまいそうですが。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る