226:青の塔の最終決戦が始まります!
■ドロシー 24歳 ドワーフ
■第500期 Cランク【忍耐の塔】塔主
もう何時間戦い続けているのか分からんけど、眠くもないし腹も空かん。
自分でもよく集中力がもつもんやなぁと思うくらい緊張感のある戦いは続いとる。
【青の塔】の十一・十二階層――『海』の階層はいくらかの被害を出しながらも突破することができた。
勝因は飛行系魔物と神聖魔法使いの多さや。それが全てやと思う。
フゥは
探索は窮屈そうやったけどいざ飛べる状況になればホンマに心強い。
もちろんエァリス以上にウリエル(★S)は活躍してたと思うけど、さすがに天使部隊だけで斃せる相手とちゃうしな。
地上部隊のゼンガーさんや
それでも苦戦したのは間違いないけども一応は突破と。これは素直に胸を撫で下ろした。
とは言えまだ前哨戦なんよな……とゲンナリしつつも気を引き締めて進軍させなあかん。
階段を昇った先、画面に広がるのは十三・十四階層。ここも連結やな。
つまりはここが最終決闘階層ちゅうわけや。十五階層はおそらく玉座だけやろし。
その階層は打って変わって『岩山』やった。尖った岩山が周囲を囲み、足元はゴツゴツと歩きにくい。
走り回って戦うのはキツそうやな、とすぐに思った。
広々とした大広間ではあるものの、地上戦には不向きな地形。当然、魔物も相応の面子が揃っている。
まず一番目立つのは大蛇のような巨大な青い飛竜。
これはおそらく図書館で調べた時にフェニックスとかと一緒に載ってたヤツや。【青竜】ちゅう神獣に違いない。
水魔法に加えて神聖魔法も使えるんやと思う。
その配下みたいな扱いなのか、地上には蛇の群れ。
ブルーナーガ(A)、ブルーサーペント(B)、ブルーボア(C)までうじゃうじゃといる。
空には【青竜】の他にもガルーダ(A),ヴィゾフニル(B)、
ガルーダとヴィゾフニルは【青の塔】の魔物とちゃうやろ。
明らかに青竜と組ませるために召喚した
つまりは戦いにくい地上を、足元の悪さなど気にしないであろう蛇部隊で詰め、メインは空から青竜を中心とした攻撃になるんやろうな。飛行部隊は魔法によるサポートやろ、これは。
『ゼンガー爺、地上を頼むぞ! エァリス! ウリエルと連携し空の魔物を対処せい!』
「ディーゴ! 地上の指揮をお願い! みんなをフォローしてあげて!」
こちらの動きとしては当然そうなるな。
空に重きを置きたいけれど地上も守ってばかりっちゅうわけにもいかん。
とは言え打てる手は限られとるわけやけど――
「ウリエル! スフィー! 空を頼むで! 青竜と戦えるんはウリエルしかおらんからな!」
『『ハッ!』』
「キラリンは地上の守備や、ゼンガーさんとディーゴは守るんやで!」
地上は数的に戦えそうな感じやけど、やっぱり空がキツイかな。
ウリエル部隊がまとめて青竜と戦うとすると、他の飛行魔物をスフィー部隊とエァリス部隊でどうにかせなあかん。
そこがランク差的に厳しいと思う。
ゼンガーさんたちが地上を片付けてから魔法で空の戦いに介入するか、地上をディーゴとかに任せつつゼンガーさんが空をフォローするか……それくらいしか手はなさそうや。
現場の裁量に任せるしかないけども、ゼンガーさんは別に指揮が得意ちゅうわけでもない。
ウチも視野を広くして戦況を見つつ、適宜指示を出すしかない。……まぁウチよりフゥのが得意そうやけどな。
■ベンズナフ ??歳 亡国の暗部・闇魔法使い
■【青の塔】塔主コパンの
主となったのはコパンという商人。
最初こそ「なんだただの商人か」と残念に思ったりもしたが、蓋を開ければ意外なことに有能な塔主であった。
塔を運営するということは商売に通じるところがあるのだろう。
コパンは独自の塔主感と呼べるものを持っており、それを活かして塔を成長させていった。
大貴族のケィヒルに付き従うのも商人ならではの思考ではあるが、実際に【魔術師の塔】を成長させたのもコパンの手腕による部分もあるように思う。
先んじて限定スキル<青き水鏡>を取得したのもそうだ。
普通の塔主には持ちえない感性があったからこそ出来た芸当だろう。
俺にとってはコパンこそが″並外れた塔主″の代表格であったが、ここにきてコパンをも凌駕する塔主が現れた。
それが【女帝】同盟の数名であり、中でも際立っているのが【女帝】シャルロットである。
昨年から続く【女帝】同盟の躍進。その中心人物であり異能と呼べる才能を持つ″ただの田舎娘″だ。
<青き水鏡>で【女帝の塔】を見た時にもその二年目らしからぬ戦力と塔構成の見事さに驚いたが、何より恐ろしいのは周囲の実力者を巻き込んで己の力とする求心力だろう。
神童と言われ英雄ジータを引き当てたアデル・ロージット。
罠の名手のドワーフで
唯一無二の『知力の塔』を創り上げた狐獣人のノノア。
さらには501期トップの貴族、シルビアと錚々たる面々を仲間にした。
【女帝】の何より恐ろしいところは
それが【女帝】の才によるものか、神の気まぐれかは知らんが、【女帝】が今の力を持つ根本的な要因こそがメイドに違いない。
俺は塔主総会で画面を通して見ているし、新年祭でも遠目に見た。
もうそれだけで<危険察知>が警報を鳴らすほどのヤツだ。暗部にいた俺がそこら辺の勘を間違えることはない。
実際、今回の
いや、予想以上の危険人物と言えるだろうな。
あれが【魔術師の塔】に行ってくれてホッとしたというのが偽らざるところだ。
とは言え【青の塔】に攻めてきている【忍耐】【輝翼】【世沸者】が平凡で安全なわけもなく、やはり並外れた三塔であることは間違いないだろう。それは言ったとおりだ。
実際に【青の塔】に入ってからの進軍は止まることなく続き、十一・十二階層ではシーサーペント(A)や海姫ハルフゥ(★S)といった選りすぐりの魔物を退けているのだから。
これで彼の同盟では三番手・四番手・五番手というのだから詐欺だと言いたくもなる。
残すは十三・十四階層のみということで青竜リヴァルナーガ(★S)に頑張ってもらわなければならないところなのだが、いくらSランク固有魔物のドラゴンといっても安心できる敵ではない。
相手の戦力は高く、こちらと拮抗していると言っていいだろう。
特に中核をなしているのが
共に前線を張れる神聖魔法使いというのが厄介なところだ。
後衛らしくない後衛職。戦闘に慣れた指揮官でもある。
敵を完璧に潰すならば、こいつらの対処が一番の要点であると、今までの戦いを見ていて思った。
だから俺はコパンに告げたのだ――俺があの爺をヤると。
空はリヴァルナーガに任せるしかないが地上は手薄になる。蛇どもに任せていただけでは地上は制圧されるだろう。
それを何とかするのが俺の仕事だ。
俺は<気配微小>や<影潜り>などを使い、岩場の影から敵陣に近づいた。
爺は前衛のゴーレム部隊と後衛のリッチ部隊に挟まれた中央に位置取りながら指示を出し、魔法を撃ち続けていた。
いつも隣にいるフェンリル(A)も前衛で攻撃に回っている。
たとえ陣の中央であっても、スキルを使い速攻で近づけば確実にヤれる。そう確信した。
そして俺は即座に実行する。
「<
爺の影が本人に纏わりつき自由を奪う。すでにこの世には存在しないであろう【影魔法】だ。
爺には何が起こっているのかも分からないだろうが得意の神聖魔法では解除もできない。これは状態異常ではないからな。
驚いている隙に俺は速攻で近寄った。その姿を捉えられるものはいないだろう。
<気配察知>は俺には効かないし、フェンリルの<嗅覚強化>で気付いたとしてももう遅い。ウリエルの<悪意感知>で気付いても遠すぎる。
俺は右手に持った短剣で突き刺せばそれで終わり。
いくら神聖魔法使いを並べても即死ならば意味がない。
だからこそ速度の乗った一撃を爺の心臓目掛け――
――ボヨン
「なっ……!?」
俺の短剣と爺の身体の間に割り込んできた
それは白く濁る水のようで……頭の上には天使の輪のようなものを乗せた……
ス…………スライムだとッ!?
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