231:同盟戦の反応が色々出ています!



■クラウディア・コートレイズ 126歳 エルフ

■第475期 Aランク【緑の塔】塔主



『神様通信

 本日行われた塔主戦争バトルにて【女帝の塔】【赤の塔】【忍耐の塔】【輝翼の塔】【世沸者の塔】【六花の塔】同盟が勝利!

 【魔術師の塔】【青の塔】【霧雨の塔】【宝石の塔】が消えました! 以上お知らせでした! 神様より』


「やったか!!」



 まだ一日の運営が始まって間もない時間帯。

 いきなり来た通知の内容を見て、私は思わず叫んでしまった。


 フッツィル様からお聞きしていたメルセドウ貴族とエルフ奴隷の一件は、ここ数ヶ月ほどで急激に進展していた話であり、私もフッツィル様から相談を受けたり実際に動いたりと神経を使う毎日ではあった。


 とは言え私が【霧雨】に申請しても却下され続け、どうにかしたくてもできない。フッツィル様たちにお任せするしかないというもどかしい現状だったのだ。



 それが急転したのが【霧雨】の【魔術師】同盟加入の報。

 私やエルフ全体にとっても敵である二組の集結。驚きではあったがそれ以上に疑問が勝った。

 同盟に至った経緯がまるで読めなかったからだ。


 しかし翌日フッツィル様から来た手紙で、その疑問も氷解した。

 全てはフッツィル様たち【彩糸の組紐ブライトブレイド】に塔主戦争バトルを仕掛けるためであったと。


 こちらから仕掛けるつもりで計画を立てていたのに先手を打たれたということだ。

 それは即ち、後手に回ったこちらが不利ということでもある。


 ましてや相手は元より危険と見ていた高ランクの塔とその同盟。正直私にはフッツィル様たちが勝てるビジョンが見えなかった。



 手紙には条件を整えた上で同盟戦ストルグを受けるつもりだと書かれていたが、それ以降フッツィル様からの手紙はない。

 気を揉むばかりの数日間を経て、やっと出てきた情報が今回の戦勝の報であった。



 この時間に通知が来たということは昨日からずっと塔主戦争バトルをしていたのだろう。

 条件によっては一昨日から戦っていた可能性もある。


 となると、敵が同盟を結び、塔主戦争バトル申請をし、条件を詰め、実際に戦うと……かなり急いだ格好だな。


 元々が不利な状況なのにも拘わらずこの速さで勝利を掴むなど、私には考えも及ばないことだ。

 まぁ後日お聞きしたところで詳細を伺うわけにもいかないが、それでも祝辞の手紙はお送りするべきだろう。



 いずれにせよこれで表面化していた『エルフの敵』は一網打尽にできたわけだ。

 フッツィル様には本当に感謝しかない。私はエルフ塔主代表として礼をするために足を運ぼうと思う。



 ……いや、エルフ塔主の敵はもう一つあったな……【忍ぶ者の塔】が。





■ドナテア 42歳

■第484期 Bランク【色欲の塔】塔主



「ハハッ! あいつらやりやがったよ! ほら、見てみな、プリエルノーラ!」


「ん~どれどれ~……おおっ! さっすが【女帝】同盟じゃないか! こりゃまた大金星だね! ヒャヒャヒャ!」



 このタイミングで通知が来るってことは、この前の【霧雨】加入の通知が伏線だったわけだね。

 【霧雨】の方から【魔術師】に近づいたのは間違いない。おそらくエルフ拿捕の手伝いをするとかいう名目だったはずだ。


 そして【魔術師】は【女帝】同盟に仕掛ける目的で【霧雨】を同盟に引き入れた。


 元から攻めるつもりだったのか……アデル・ロージットにゼノーティア公爵の件がバレていると知ったのかもしれないね。だから早々に潰そうとしたのかもしれない。



 いずれにせよ【魔術師】同盟が申請し、【女帝】同盟が受けた。これは間違いないだろう。

 んで、返り討ちにあっちまったと……。



 あたしとしちゃ次点ってところだね。


 アデル・ロージットがロージット公爵家を動かし、ゼノーティアを追い込んで貴族派を壊滅させる。

 その上で塔主戦争バトルをして【女帝】同盟が潰されるってのが最善ではあった。


 そうなりゃ後に残るのは力を失った貴族派だけだからね。如何様にも仕掛けられると。



 それは叶わなかったが、まぁ【魔術師】同盟と【霧雨】がまとめて消えてくれたんだから贅沢は言えないね。


 いくら【女帝】同盟に理外の力があろうがまともにやったんじゃ【魔術師】に勝てるわけがない。

 何かしらの策で【魔術師】を上回ったってことだろうが……あたしには理解できないね。



 今回の一件であたしが学んだことは「【女帝】同盟とは絶対に戦うな」ってことだ。

 分かっちゃいたけど再確認したね。あいつらはもう本当に意味が分からない。

 出来る限り遠ざけてコソコソと生きていきたいもんだよ。





■レイチェル・サンデボン 70歳

■第450期 Sランク【世界の塔】塔主



「よく勝てましたね……」



 セラに戦勝の旨を伝えましたが、いつものように喜ぶより先に疑問が勝ったようです。

 まぁ気持ちは分からなくもないですがね。


 これまでも彼女たちとって厳しい戦いはいくつもありました。

 しかしエメリーさんのステータスやスキル、装備品などを知っている今となっては「勝ってもおかしくはない敵」というところでしょう。


 それはAランクの【傲慢の塔】が相手であってもです。

 総合戦力では負ける。敵の限定スキルや神賜ギフト如何によっては負ける。


 それでもエメリーさん単体では負けないはずなので、どうにか勝ち筋が見えると。そういった相手ばかりだったと言えます。



 しかし今回の【魔術師の塔】同盟というのは私の調べやシャルロットさんから得た情報を加味しても「普通に戦えば九割以上負ける相手」と見ていました。

 ですから苦言も呈しましたし、私の知っている限りの情報を渡したのです。


 ただ情報といっても市井に溢れる情報と私が独自に調べた情報、それに歴史と経験から見える戦力の予想を踏まえた程度のものですから、これが決定打とは成り得ません。



 【魔術師の塔】が高位アンデッドを召喚できる塔だというのは知っていましたし、私はそれが群れていると仮定していました。


 となるとエメリーさんは相性が悪いというお話でしたし、ウリエルの天使部隊や神聖魔法を使える魔物を集結させたところで、はたして打ち破れるものなのかと。


 エメリーさん一人で攻撃と守りは出来ませんし、攻撃だけに限っても手が足りないですからね。いくら四本腕でも。



 それ以外にも【青の塔】【霧雨の塔】というのはBランクでも上位の塔ですし、それ単一でも危険な相手です。

 【青の塔】には神定英雄サンクリオもいますがその正体も不明。


 そもそも【魔術師】【青】【霧雨】は覗き見以外にどんな限定スキルを持っているか分かりませんからね。それだけで私ならば手を引きます。



 しかし結果は勝利。

 喜ばしいのは間違いないのですが「なぜ勝てたのか」という疑問が出てしまうのは仕方ないことでしょう。



「考えられるのはいくつもの策を弄し、その全てが成功した上で相手のミスが重なれば……というところですかね」


「勝ち筋が蜘蛛の糸のようですね……」


同盟戦ストルグですから最初の条件提示で策が成功すれば有利を作れるかもしれません。ただ……」


「【魔術師】がそんなミスをするとも思えないですし、仮に成功したところで戦力差が大きすぎる、と」



 セラの言うとおりですね。ですから『いくつもの策が全て成功』と考えるしかないのですが。

 それにしても苦戦したでしょうし辛勝だったに違いありません。

 とりあえず祝辞を送りつつ、また色々お話を伺ってみましょうか。





■アズーリオ・シンフォニア 41歳

■第487期 Aランク【節制の塔】塔主



『まさか【霧雨】を加えた【魔術師】同盟が敗れるとは……』


『いくら何でもおかしいでしょう! 何なんですかあの同盟は!』


『アズーリオ様、そちらで何か掴んでいたりは……』


「デルトーニが持っている以上の情報はないな。予想はしても憶測にすぎん」



 同盟を繋げての通信は朝に通知された塔主戦争バトルの件で持ちきりだ。

 塔主戦争バトルに至った大体の流れは想像つくが確信を得られるわけもなく、戦いの内容を想像してもダウンノーク伯が敗れるという結果には辿り着かない。


 アデル様を擁する【女帝】同盟は昨年からずっと目立った存在ではある。

 そもそも塔主戦争バトルの頻度が尋常ではなく、そのどれもが格上相手の下剋上。

 戦績だけ見れば異常極まりないし、だからこそ延々と人気を得続けている。



 エメリーという【女帝】のメイドが常軌を逸した異世界人だということは知っている。

 莫大なTP報酬をもってランク詐欺とも言える戦力を有していることも知っている。

 ジータや【輝翼】の神定英雄サンクリオも確かに強力ではあるだろう。


 だがそれでも【魔術師】同盟が敗れるというのは信じがたいのだ。



 画面をつなぐ同盟の三人は揃って怪訝な表情を浮かべている。


 Bランク【戦車の塔】のデルトーニ・パッツォ。

 Cランク【蒼刃の塔】のクァンタ・カルトーレ。

 Cランク【魔霧の塔】のゾロア・マーティム。


 皆、メルセドウ中立派の貴族に連なる者たちだ。


 だからこそ貴族派のダウンノーク伯を注視していたし、だからこそ王国派のアデル・ロージットを注視しているのだ。


 それが事態急転。いきなり塔主戦争バトルとなり貴族派が消えた。

 一応【羽虫の塔】のランブレスタ子爵が残ってはいるが……まぁいないも同じだな。


 いずれにせよ貴族派は考える必要がなくなったわけだが、逆に【女帝】同盟には益々警戒が必要になった。


 今一度デルトーニの″戦車″を行かせるか。

 調べておくに越したことはないからな。




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