230:同盟戦決着!そしてリザルトです!
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
空の戦いを終えたばかりの
身体を小さく隠し、ケィヒルさんの口に入ってから巨大化しなさい、と。
危機的状況に気でも狂ったのかと思ってしまいました。
しかしクルックーは実際に小さくなり……その身体は普段見ている小鳥の姿よりも小さく、俯瞰の画面では視認できないほどになりました。
そこまで小さくなれることも知りませんでしたし、身体の大きさの変化がスキルではないということも知りませんでした。
スキルだったら限定スキルの影響で使えないはずですしね。
そして小さくなったクルックーは持前の速度を維持したまま隠れるように魔物の群れに溶け込み、一気にケィヒルさんの口へと入っていったのです。
おそらく<気配察知>や<魔力察知>のようなスキルを敵が使っていればその存在に気付けていたでしょう。
しかし敵はアンデッドばかりで斥候能力はない。
固有魔物のスケルトンの王が持っていたかは分かりませんが、仮に持っていてもエメリーさんに集中している様子でしたし、例え気付けてもクルックーの速さを止めることが出来ていたかは微妙なところです。
いずれにせよアデルさんの策は実り、ケィヒルさんは斃れました。
身体の中でSランクの固有魔物が巨大化するなど誰も想像できませんし、想像したくもありません。
私も見たくない光景ではありましたが……塔主ですからね、その最期はしっかりと確認しました。
ケィヒルさんが光と消えたことでアンデッドの群れもまとめて消えました。
リッチ(A)もエルダーリッチ(S)もあの固有魔物も……スケルトンの王は召喚リストにも載りませんから最後まで名前が分かりませんでしたね。
いつもなら報酬召喚の為にも殲滅してから塔を攻略としていますが、さすがに今回はそんな余裕もありませんでした。
アデルさんがあそこで奇策に打って出たからこそ勝利を得られたのだと、それは間違いありません。
『はいしゅ~~~りょ~~~! こっちの同盟の勝ち~~~!』
ぐったりする人が半分、大声で喜ぶ人が半分といったところですか。
私はすぐに眷属伝達で呼びかけました。
「エメリーさん! 大丈夫ですか!」
『問題ありません、が……力及ばず多くの犠牲を出してしまいました。申し訳ありません』
「そんなことないですよ! エメリーさんは本当に頑張っていました! クイーンの皆さんも、配下の皆さんも! 全員で掴み取った勝利です!」
『そうですわよ。エメリーさんがヘイトを集めていなければ負けていましたわ』
『……ありがとうございます』
エメリーさんご自身は納得いっていない様子でしたが、アデルさんが仰ったことが正しいと私は思っています。
【宝石の塔】の攻略からずっと戦い続け、その様を見せていたからこそケィヒルさんは誰より警戒していたはずですし、それがなければクルックーを用いた策が出なかったかもしれません。
確かに被害は多く、私も初めて眷属を失ったというショックは当然あるのですが、それでも負けが濃厚な状況で勝てたというのは事実なのです。
今は悔いる時でも泣く時でもない。
私は塔主として戦った皆さんを労うだけです。
『いや~、なかなかヘビーな戦いだったね~。まぁ条文見た時からこうなるかなーとは思ってたけど』
「ありがとうございます、神様」
『今日はもう休塔日にしちゃったけど明日どうするかは早めに申請しといてね。【世沸者】と【六花】は大丈夫そうだけどさ』
ああ、もう丸一日経つのですね……二連休は確定ですか。まぁそうですよね。
戦った四塔を三連休にするかということですか。これは相談してから決めましょう。
『んじゃあとは【魔術師の塔】を家探ししてから終わりかな? ドロシーちゃん、【青の塔】のほうはもう大丈夫?』
『多少は漁ったけど今から最上階に行って漁り直すとか無理やし……諦めますわ』
『オッケー。そしたらエメリーちゃんたちが帰還したら塔は消しちゃうね。分配はまたシャルロットちゃんのほうでお願いね』
「分かりました。神様も長々とお疲れさまでした」
『アハハ! 四塔攻略で一日だったら全然速いほうだよ。気にしないでー、じゃあねー』
それだけ残して神様の通話が切れました。
言われてみれば丸一日で四塔は速すぎますね。それこそエメリーさんのおかげだと思いますが。
「皆さんどうしますか? いつものように帰還後に集計・分配をするか、一旦解散して夜にでもやるか」
『ウチはどっちでもええで。徹夜してるはずなのに全く眠くないし』
『わしも目は冴えておるのう。むしろしばらく眠れなさそうな気がするわい』
『ず、ずっと緊張してますからね……ガクッときそうで怖いですけど』
『私もどちらでも構いません。お任せします』
『では分配まで終わらせてから解散にいたしましょう。わたくしもその方が気が楽ですわ』
というわけで【魔術師の塔】からの帰還を待つことにしました。
エメリーさんたちが家探ししたところ、そこそこ財産があったようです。やっぱり貴族ですからね。
とは言え【強欲の塔】ほどではないようですが。
塔主の皆さんとジータさん、ゼンガーさんも一度【女帝の塔】に集まりました。
【青の塔】で得たバベルジュエルと財産を合わせて分配するためです。
そしてTPを集計した結果、こうなりました。
=====
【魔術師の塔】486,440TP
【青の塔】 221,710TP
【霧雨の塔】 176,870TP
【宝石の塔】 104,930TP 【総計】989,950TP
【魔石等】 約60,000TP 【総計】約1,049,950TP
⇒【分配配当】約175,000TP
=====
「こ、こんなに!? わ、私は四体しか戦力を出していませんし全くお力になれなかったのでこんなに頂くわけには……」
「それは最初に言っておいたでしょう。塔を戦場に出さずとも戦力が不足していようとも報酬は均等に分けると」
「せや、それがウチらのルールや。まぁ一回例外はあったけども」
「アハハ……シ、シルビアさん、私が言うのも何ですが遠慮すると後悔しますので頂いちゃったほうがいいですよ……」
「そ、そうですか……ではありがたく……」
【魔術師の塔】がランキング9位相当と言っていいのか分かりませんが【傲慢の塔】より少しだけ多かったようです。
それよりも【青の塔】がBランクにしては多過ぎる印象ですね。やはり内政型の限定スキルでも持っていたのかもしれません。
それと魔物の召喚権利ですが、主だった魔物の召喚リストはこのような感じです。
=====
【魔術師の塔】
ナインテイル(★S)、デュアルドレイク(★A)
エルダーリッチ(S)、リッチ(A)、ウィッチクイーン(A)、マンティコア(A)
ファイブテイル(A)、ファイアドレイク(A)、バーンレックス(A)
【青の塔】
青竜リヴァルナーガ(★S)、海姫ハルフゥ(★S)、翼人将イカロス(★A)
ブルーナーガ(A)、ケイブンキング(A)、ルサールカ(A)
スキュラクイーン(A)、シーサーペント(A)、ガルーダ(A)
【霧雨の塔】
霧魔獣ザイオン(★S)、ミストドラゴン(★A)、魔公爵ベリト(★A)
スピリットレギオン(S)、スペクター(A)、アシッドナーガ(A)
【宝石の塔】
ジュエルヒュドラ(★S)、ダイアモンドタートル(★A)、クリスタルゴーレム(A)
=====
Aランク以上の魔物をピックアップしただけでこれです。
この他にも沢山いますし、斃した数も多いので召喚回数に差があったりと、この場で決めるにはなかなか難しいのです。
というわけで一先ず固有魔物を中心に二体ずつ取っておいて、残りは召喚する時に相談しようということになりました。いつもの感じですね。
そして戦果により取る順番を決めるというおなじみの流れがあり、協議した結果【女帝】【赤】【輝翼】【忍耐】【世沸者】【六花】の順となったのです。正直、差は微妙だと思います。
とにかく順々に魔物を選んでいきまして、その結果こうなりました。
=====
【女帝】 海姫ハルフゥ(★S)、ジュエルヒュドラ(★S)
【赤】 ナインテイル(★S)、ルサールカ(A)
【輝翼】 翼人将イカロス(★A)、高位精霊
【忍耐】 ウィッチクイーン(A)、ダイアモンドタートル(★A)
【世沸者】霧魔獣ザイオン(★S)、ミストドラゴン(★A)
【六花】 青竜リヴァルナーガ(★S)、デュアルドレイク(★A)
=====
私は城に則した魔物を選びたかったのですがあまりピンとこなかったので、クイーン候補として海姫ハルフゥを……海の階層を創るかどうかは置いておいて。
そして多角形の部屋の守り手にしようかとジュエルヒュドラを選びました。エメリーさんの推薦もありましたし。
アデルさんは【赤の塔】らしくナインテイル。おそらく配下のファイブテイルなども追加で召喚するつもりでしょう。
あとは喪ったルールゥの代わりに新たなルサールカを選んでいました。
フゥさんはずっと攻撃用の指揮官を欲していたので翼人将イカロスを第一選択。
あとはAランクの高位精霊を最低でも一体ずつは召喚したいと。分かりきっていたことなのでどうぞお好きにという感じです。
ドロシーさんは喪った六階層の戦力、
本当は地上戦力が欲しいとかで魔公爵ベリトと悩んでいましたが悪魔ですからね。ウリエルさんと相性が悪すぎます。
あとは【忍耐の塔】らしい防御型のダイアモンドタートルに落ち着きました。
ノノアさんはボス部屋用の魔物として霧魔獣ザイオンとミストドラゴンを。
どちらも霧の中で活きる魔物ですからボス部屋を霧まみれにするつもりですかね?
シルビアさんは残り物を選んでいたのですが結果として強力な二体になりました。
青竜リヴァルナーガは水・神聖属性で【六花の塔】と合いますし、デュアルドレイクは正反対に火と雷のブレスを吐く魔物です。弱点を補う意味でも使いやすいんじゃないかと思います。
「私などがこのような魔物の召喚権利を頂いても、いつ召喚できることやら……」
と恐縮していましたがね。おそらくすぐにランクアップするでしょうし、シルビアさんが思っているよりだいぶ早く召喚することになるのではないでしょうか。
ともかくこれで一応の分配は終わり。
長かった一日をやっとのことで終え、皆さんはそれぞれの塔へと帰っていったのです。
さて、私の明日の営業はどうしましょうか……ほとんど侵入されていないので営業は問題ないのですが、クイーンの皆さんのことも考えないといけないですし……。
ああ、ヴィクトリアさん、パトラさん、ラージャさんがもう……いないのですね……。
玉座の壇下に並ぶ六つの玉座を見て、私は頬に涙が流れたことに気付きました。
誰もいなくなった玉座の間。その姿を見ていたのは傍にいたエメリーさんだけでした。
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