314:影の塔を本格的に攻略していきます!



■シャルロット 17歳

■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主



 【影の塔】は斥候系の魔物、闇属性の魔物、ゴースト系の魔物、悪魔系の魔物。大体これらで構成されています。

 塔構成もそれが活かしやすいように屋内地形ばかり。洞窟・迷路・城などなど。

 真っ暗な階層もあれば薄暗い階層もある。明るい階層というのはおそらく一つもないのではないでしょうか。


 魔物に合わせた階層、階層に合わせた魔物。そうした補完関係がそのまま塔に反映されているのだと思います。



 暗闇の塔は侵入者からの人気がない。そう聞きます。

 現に501期新塔主の『月の塔』『星の塔』はそのせいで伸び悩み、二十神秘アルカナであるにも関わらずプレオープンは4位と5位という成績でした。後期のランキングでも276位と277位。決して高いとは言えません。


 しかしそれは対・低ランク侵入者に限る話だそうです。

 Bランクともなればパーティーにちゃんとした斥候もいますし、探索用の照明道具を買うお金もある。


 となれば『困難な塔であるが故の人気』というのも出て来るそうで、【影の塔】もBランクトップの位置にいられるというわけだそうです。アデルさん曰く。



 私は【影の塔】を攻略するにあたり、バートリさんとターニアさんを指揮官に据えました。

 それはエメリーさん、ベアトリクスさん、ハルフゥさんに防衛でのお仕事・目的があったからなのですが、エメリーさんがいない状態での攻撃陣編成というのを試しておきたかったという理由もあります。


 第一陣の面子はこんな感じ。


=====


 ナイトメアクイーンバートリ(S)+ヴァンパイア(A)10+ダンピール(C)30

 妖精女王ターニア(S)+ハイフェアリー(C)30

 白翼天使アラエル(★A)+権天使プリンシパリティ(C)10

 デュラハン(C)30


=====


 Sが2、Aが11、Cが100。計113体。

 回復役はユニコーン(B)+ヴァルキリー(B)でも良かったのですが天使部隊の運用も見たかったので攻撃陣に組み込みました。下層くらいではそうそうやられることもないですしね。


 斥候がターニアさんとハイフェアリー頼みになってしまいますが、これもエメリーさんがいない状態での斥候がどこまで出来るかというのを見るためです。

 今後ちゃんとした斥候部隊を作るので今しか試せないということですね。

 やはり罠が不安だったのですが【影の塔】の下層で致死性の罠がないことは分かっていましたし、ダメージを受けても天使部隊がいるので問題ないと。


 どうやら【影の塔】の罠というのは行動阻害や魔物の奇襲を活かすような罠ばかりのようです。

 まぁそういった魔物ばかりなのでそれを活かしたいということなのだと思いますが。

 そこへいくと私たちの同盟はどこも凶悪な罠ばかり……これはトラップデザイナー某D氏の影響ですね。



 話を戻しますが、第一陣にはそうしたいくつかの目的があって少数での攻略をお願いしました。

 当然攻略は遅々となりますが、それでも『固有魔物が二体も攻撃陣にいる』とサミュエさんに見せ、プレッシャーを与え続けることに意味があるのです。


 仮に全く攻め込まずに完全防衛策に出ていたら、エメリーさんが敵固有魔物を斃した段階で即座に撤退。その後【影の塔】からの第二陣を待って再度攻略する……なんて手も打たれる可能性があります。そうしたらエメリーさんはまた動きにくいですし。


 しかし【影の塔】も相応の戦力で攻略されているとなれば防衛力を削ってまで第二陣を向かわせることもできないでしょう。そうした意図ですね。



 そして遅々とした攻略で第二陣のためのルートを確立しつつ、なるべく多くの魔物を斃す。これは補填・魔石回収のためですね。


 敵攻撃陣の殲滅が予定通りに終了しこちらの防衛が為された時、バートリさんたちはまだ六階層の途中でした。

 半分も行ってませんね。それだけ多くの魔物を斃そうとした結果です。



「ではエメリーさん、皆さん、よろしくお願いします! 【女帝の塔】に勝利を!」


『『『【女帝の塔】に勝利を!』』』



 第二陣が【影の塔】へと入っていきました。陣容はこんな感じ。


=====


 エメリー(神)、マンティコア(A)1、ハイフェアリー(C)20

 ウィッチクイーンベアトリクス(A)+ハイウィッチ(B)20

 海姫ハルフゥ(★S)、ユニコーン(B)6+ヴァルキリー(B)5


=====


 Sが1体、Aが2体、Bが31体、Cが20体。計54体と1人。

 もう【女帝の塔】に侵入されるとは考えにくいので全ての眷属とその配下を投入します。少数精鋭ですね。


 ハルフゥさんは一応ユニコーンとヴァルキリーの回復部隊を束ねてもらいます。

 というわけでハルフゥさんもユニコーンに乗馬しています。が、本当にただ乗っているだけですね。

 エメリーさんのように簡単に<騎獣>スキルはとれないでしょうし、長い目で見ましょう。

 今回は第一陣に追いつくために行軍速度優先でユニコーンに乗ってもらいます。



 【影の塔】に入るや否や、エメリーさんを先頭に第二陣が走り始めました。もちろんハルフゥさんたちのために<生活魔法>の<照光>を使っています。


 ルートは分かっていますし、罠もエメリーさんが瞬時に見抜いてユニコーンが避けるだけです。

 【影の塔】の罠は地面にスイッチがあるタイプのものだけですし、第二陣の地上戦力はエメリーさんとユニコーンだけですからね。これも少数精鋭で選抜した理由の一つです。



 魔物もいますがリスポーンされた魔物を速攻で斃すのみ。あとはただ急ぎで攻略します。

 そして第二陣に追いついたのが七階層の終盤。もう八階層に上がろうかというところでした。



『ようやく来たか。待ちくたびれたぞ』


『お待たせしましたね。ですがこれからが本番です。各部隊、広くとって殲滅していきますよ。距離感を意識しつつ警戒を怠らないように』


『『『はい』』』



 Sが3、Aが13、Bが31、Cが120。計167体と一人になりました。

 総指揮と斥候がエメリーさん。前衛にバートリさん部隊、後衛にハルフゥさん部隊、空にターニアさん部隊とベアトリクスさん部隊、そして天使部隊となります。


 これが現状の【女帝の塔】の最強部隊と言っていいでしょう。

 強い魔物ならば他にもいますが部隊・・となればこうなるかなと。



『うわぁ……酷い面子やな。サミュエもご愁傷さまやで』


『わしの塔に乗り込まれたら鐘一つ分で攻略されるのう』


『Bランク最強の攻撃陣なのは間違いないでしょう。相性次第ですが【魔術師の塔】クラスでも止められないのでは?』


『で、でもその代わりに防衛は捨ててますし……』


『まぁこの構成で戦わせるのも″お試し″の一つだったのでしょう? 眷属全員で組ませるなどなかなかできませんものね』



 アデルさんの仰るとおりですね。クイーンは小隊を組むのに優れていますが、それが大隊の中の一部隊となると話は変わります。

 部隊同士で動きが違う中、攻撃陣全体でまとまらなければ戦列は崩れるだけですしね。

 だからこそ小隊を指揮するクイーンと、それをまとめるエメリーさんの手腕が問われるというわけです。


 もっと言えば、将来的にはハルフゥさんに全体指揮を任せたい。なるべくエメリーさんを私の守護におきたいと。

 その為にハルフゥさんも前線で学んでもらっています。後衛の回復役が総指揮というのが理想的ですからね。



 そこからは破竹の勢いでした。

 エメリーさんの索敵があれば攻略自体が楽になりますし、分岐路や部屋単位の制圧は各部隊を派遣して行います。

 エメリーさんはどこにどの部隊を派遣すべきか判断して指示を出しているわけですね。はたしてこれをハルフゥさんが真似ることはできるのでしょうか。少し不安になります。


 バートリさんなんかは水を得た魚のように最前線で暴れ始めました。ちまちました探索と総指揮という立場に鬱憤が溜まっていたのでしょう。

 そして「前に出すぎだ」とエメリーさんに怒られるまでが一連の流れ。おそらく反省はしないと思いますよ。バートリさんですし。



 【影の塔】は上層でも屋内構成ばかりで、暗闇だったり薄暗かったりという階層のみです。

 <暗視>や察知スキルなしで<照光>が必要な部隊はハルフゥさんのところだけですから、暗さは気になりません。


 あとは敵ですね。奇襲が基本戦術となっているのでそこはエメリーさんの索敵にお任せです。

 部隊単位で見ても優秀な察知スキル持ちがいますからね。そこはさすが固有魔物という感じです。



 十二階層はスペクター(A)やファントム(B)といったゴースト系ばかりの階層となっていました。物理主体の塔が塔主戦争バトル相手であれば無敵のような階層ですね。


 ただうちの場合、半分以上を占める飛行部隊が全て、魔法が得意な者ばかりですからね。むしろ斃しやすいと。

 なんならエメリーさんはここぞとばかりに天使部隊を攻撃に回していましたね。



 塔主のサミュエさんはどうにかして私の眷属を斃そうと考えてはいたようです。

 しかし自慢の斥候系魔物による奇襲も無駄。ゴースト系をまとめてぶつけても無駄。暗闇階層も無駄。

 ということで十四階層に主要な魔物を集めたようです。おかげで十二階層以外の上層はCランク以下の魔物しかいませんでしたね。



『――ちょっと覗きましたがこんな感じですね~』


『大広間がまるでスタンピードの様相だな』


『ん。数で言えば【魔術師の塔】と変わらない』


『最後尾にいるという鹿の魔物が気になりますね。明らかに【影】の魔物ではないですし』



 十三階層の最終地点で眷属の皆さんが話し合っています。

 どうやら十四階層の大広間に集められた魔物は百七〇体ほど。高ランクの魔物を中心にとにかく数を集めたという感じです。

 陣容としてはこのような感じらしいです。


=====


 トレントのような大鹿(不明)1、アクリス(S)5

 ダークフェンリル(S)1、ダークガルム(A)10、ダークスコル(B)40

 シャドウデーモン(A)5、シャドウデビル(C)40

 デーモンナイト(A)10、デビルプリースト(B)30、デビルキャスター(B)30


=====


 ランクの低い魔物から順々に襲い掛かるような配置らしいですね。あとは波のように押し寄せる感じだと思います。


 やはり気になるのは鹿の魔物でしょう。配下にアクリスという巨大な角を持った大鹿もいますし。

 最後尾にいるところを見ると【影の塔】における大ボスの立ち位置なのだと思います。


 攻撃陣にいた固有魔物は本来最上階でサミュエさんを守る役割なのではないかと。予想ですが。

 そうなるとあの鹿はSランク固有魔物と考えるのが妥当ですかね。



『下手に配下を連れて行っても潰されるだけでしょう。最小限で最前線を構成します』


『ほう、面白い』


『前衛にバートリとヴァンパイア、その後ろにハルフゥ、わたくしが遊撃で、ターニアとベアトリクスは空から露払いですね』


『15体だけで足りるのですか?』『んー、だいじょぶ? それ』


『少し離れたところに後詰めを置きます。アラエルとマンティコア、それとBランクの魔物のみ。Cランクの魔物はこの場で待機です』



 ……と、エメリーさんは指示を出しました。

 とにかく襲い掛かって来る魔物の群れを、眷属を中心に防ぎきるということですね。


 ハルフゥさんやベアトリクスさんは不安気です。私も少し不安です。素人目で見ても厳しそうですし。

 ただバートリさんやターニアさんは楽しそうなので大丈夫なのかもしれません。とにかく私は皆さんにお任せしましょう。




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