307:同盟会議はいつも悩ましいです!
■シャルロット 17歳
■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主
ドロシーさんのところに侵入した偽Cランクの方々ですが、おそらく前回
というのも彼らが「伯爵に報告を」と言うのをフゥさんがファムを通して聞きまして――フゥさんが独断で動いたようですね――その伯爵というのがスルーツワイデ王国のローゼンダーツ伯爵なのではないか……というアデルさんの予想です。
『メルセドウ貴族の伯爵かとも思いましたけれどね。それだったらドロシーさんを狙う意図も薄いですし、考えられる中で一番可能性が高いのがローゼンダーツ伯ということですわ』
『うわぁ……報復かい。なんかありそうで嫌やなーとは思っとったけど』
『報復にしては真っ当な手段ではないか。シャルの何倍も楽じゃろう』
『それはまぁそうやけど』
私は【正義】のラスターさんの報復で暗殺者を差し向けられた上に【力の塔】同盟まで動かされましたからね。まぁ【力の塔】同盟に関してはこちらから仕掛け返した格好ですが。
さらにニーベルゲンの王国騎士団までバベリオに大挙する始末。
それに比べれば冒険者を雇って攻略させるというのは確かに″真っ当な報復手段″と言えなくもないです。
『報復とするならば冒険者に依頼するだけで済みますかね』
「というと?」
『スルーツワイデ出身の塔主は多くいるのですし、そこに依頼してドロシー殿に
『た、例えば誰です?』
『スルーツワイデの有名どころですと、Aランクの【暴食】【猛獣】、Bランクの【色欲】【呪怨】あたりですか』
『よお知っておるのう』
【暴食】のピロリアさんはとある大都市の商業ギルド長。
【猛獣】のダグラさんは王国騎士団の元百人隊長。
【色欲】のドナテアさんは王都に店を構える娼館主。
【呪怨】のバーバラさんは普通の街娘さんだそうです。
他にも沢山いるでしょうね。なにせ塔主が三百人以上いるのですから。二〇人くらいいてもおかしくありません。
あくまで高ランクの有名所という感じだそうです。
『しかし伯爵が依頼したとして高ランク塔主が受けるとも思えませんわ。【正義】の時のような国命ならまだしもローゼンダーツ伯にそこまでの力はないですし、せいぜい大金を積むくらいしかできないでしょうから』
『高ランクの塔主にとっては金など何の価値もないからのう。ありあまるTPを金に換えればすぐに億万長者じゃろうし』
『そ、それもそうですね……私たちでさえとっくにお金持ちですし……』
高ランク塔主が依頼を受けるメリットがないということですか。
まぁ伯爵と友好的な繋がりがあれば受けるかもしれませんけど……だったらもっと早く申請が来てそうですよね。
一月経ってまだ申請がないところを見るとその線も薄いのかもしれません。
「逆にお金に惹かれそうな低ランク塔主に依頼するとか……はないですか。少なくとも【竜翼】より弱い塔に頼むわけがありませんもんね」
『ですわね。まぁあってもCランクではないでしょうか。Dランク以下はありえないでしょう』
『Cランクあたりが受けてくれると助かるのう。そんなのから申請が来れば受理する一択ではないか』
『他人事みたいに言うなや。まぁ
ドロシーさんから申請しても普通のCランクではほとんど却下されちゃうでしょうからね。
向こうから申請してくれるのであれば助かります。
Cランク相手であればドロシーさんなら確実に勝てるでしょうし。
『とりあえず今は偽Cランクの観察に留めておくわ。これもいい機会には違いないからな』
『それも羨ましいですわね。わたくしの塔にも高ランクの冒険者が入って来て下さらないかしら』
「私もちょっと羨ましいです」
自分で創った階層の成果を見るためには攻め込んでもらう必要がありますからね。
もし私の塔にAランクパーティーが潜り込んだら、はたしてどこまで攻略できるものなのか。
それによって階層の難易度が計れますからね。
『シャルロット殿のところにAランクパーティーが入っても八階層が限界だと思いますが……』
「ええっ!? 十一階層くらい行けませんかね?」
『一つのパーティーでは無理です。Aランクの魔物が率いて小隊を組んでいる時点で私ならば撤退します』
「そうですか……」
『数や魔物の相性にもよりますがね。【女帝】の場合はロイヤルシリーズが小隊を組むと厄介極まりないですから。出来れば戦いたくはないですよ』
八階層に配置しているロイヤルシリーズはCかBランクがほとんどなのですがね。一部、ロイヤルジェスター(A)やヴァンパイア(A)なんかも混じっています。
ただ八階層は『城内探索』なのでその強敵の部屋を避ける可能性もありますから、運が良ければ突破できると思うんですよね。
ところがシルビアさん曰く、難易度が高いと。
これでは十二・十三階層の『海の神殿』のお披露目がいつになることやら……。
ちなみに配置予定の魔物は塔全体で見て八割方召喚できていると思います。
もちろん理想を挙げればキリがないのですが、最低限置こうと思っていた魔物に関してはそのくらいかと。
あとはBランク以上の魔物が色々と必要ですね。
完成すればAランク以上が六〇体以上になる構想です。それが当初目論んでいた理想形です。
『冒険者を引き上げるのは諦めたほうがよろしいのでは?
「ですかねぇ……ただ
階層の出来を確かめるなら
まぁ勝てば赤字にはなりませんけど損失が多くなるのは元商店の娘として嫌な感じがします。
最初から割り切っていれば楽なんですけどね。いくら減らしてでもとにかく勝つと。【傲慢】同盟戦なんてまさしくそんな感じでしたし。
『【隠者の塔】はどうしたん? 申請したんやろ?』
「あ、そうでした。先ほど返答がありましてやっぱり却下だそうです」
『まぁそうじゃろうなぁ。それが普通の反応じゃろ』
『そ、それこそ恨みを持っているとか、下剋上を狙ってたとかじゃないとなかなか受理とはいかないでしょうね……』
【轟雷】同盟の時はやっぱり運が良かったんですよね。
おそらくファモンさんの諜報型限定スキルで何かしらの情報を得ていて、ドミノさんの
向こうが最初からこちらを狙っていたところに私がたまたま申請した格好なので、だからこそ成立した
なかなかそんな機会はないですし、でもやらないわけにもいきません。
アデルさんは「釣り針を沢山落としてどれかが食いつけばいい」みたいに仰っていましたけど、まさしくそんな感じです。
『んじゃ次はどこに申請するん?』
「【隻影】【探求】【影】の順ですかね。【闇】はやっぱり怖いですし。と言いますか【影】も怖いは怖いんですけど」
『まずは安全なCランクからということですか。それが断られたら仕方なくBランクの【影】をと。よろしいんじゃありませんの?』
『ふ、普通に考えれば【隻影】や【探求】は却下ですよね……【女帝】よりだいぶ下ですし……』
まぁそこはダメで元々の精神でいくしかありません。
それを気にしたらどこにも申請なんて出来ませんからね。
『ただ【影】なら受理する可能性もありますわよ。塔主のサミュエは貴族主義のご令嬢ですから少なからずこちらに嫌悪感は抱いていらっしゃるでしょうし』
「それはそれで何と言いますか……でもファムの関係であまり乗り気ではないんですよね」
『そりゃそうじゃろうな。どう足掻いても十六年目のBランクという事実は変わらん。有能なのは間違いない』
『げ、限定スキルもありますしね、きっと……』
『シャルロット殿が負けるとは思えませんがくれぐれも油断なさらないようお気を付け下さい』
『せやな。何が起こるか分からんのがバベルの
ですよね。よく相談して、よく考えてから決めましょう。
……【隻影】と【探求】は特に考えないでいいですよね? あ、大丈夫ですか、そうですか。
■メイズワイズ 24歳
■第494期 Bランク【隠者の塔】塔主
【女帝】から
なんで私を? 【轟雷】みたいにBランクに上がったやつを潰して回ってるの?
あ、もしかして【狂乱】のゼーレをこらしめたのも同じ感じ?
……んなわけないか。でも後期でBに上がった塔は【女帝】【赤】【狂乱】【轟雷】【蒼刃】と私だけだからさ。変に勘繰っちゃうよ。
当然【女帝】とやり合うつもりはないので申請は却下。
でも【
やっぱどうせ戦うならリターンが大きいところがいいし、そうなると一番人気で尚且つ自分のランクに近いあの同盟に目を向けちゃう。
限定スキルもとったから色々調べやすくなったしね。で、あの同盟を調べてたんだよ。
私の狙いは【輝翼の塔】一本だね。
あそこは私にとってすごく狙い目。むしろ他の塔は狙えないと言ったほうがいい。【輝翼】以外は無理。死ぬ。
あ、【六花】は除外ね。弱すぎるからどうせ却下されちゃうし。
というわけで出来れば【輝翼】がBに上がる前に戦いたいんだけど……まだ申請はできないな。
Bランクに上がって私の塔はまだ安定してないからね。
ランクが上がってすぐに戦えている【女帝】や【轟雷】がおかしいんだよ。本当にBランクの塔として完成していたのかね。
少なくとも私の塔がBランクの塔として完成するまではもう少し時間がかかる。
それまでは
なるべく早くに戦える状態にまでしたいけど……それがいつになることやら。
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