204:事態は急転するようです!
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
『おそらく一週間以内にメルセドウで動きがありますわ』
『『うわぁ……』』
『それが【魔術師】側に伝わるまで普通に考えればもう一週間。何かしらの情報入手手段があれば一日かもしれませんわね』
やはりメルセドウの動きは早いですね。さんざん危惧していたことではありますが。
今できる準備としてはすでに色々と動いていますが、あと一週間となるとTPもそれほど溜まらないでしょうから戦力補強も不十分なまま
覚悟はすでに済んでいます。やるしかありません。
こちらはメルセドウに動きがあった場合、すぐに連絡が入るようになっています。
具体的にはターニアさんに頼んで、ファムにずっと張らせているのです。
国軍がゼノーティア公爵家に乗り込むタイミングでこちらに知らせるようにと。
と言ってもバベリオとメルセドウでは距離がありすぎるので最短でも一日程度のタイムラグはありますし、詳細な情報を伝達することもできません。あくまで「これから乗り込むよ」という情報のみです。
それでも普通に手紙を送るより何倍も早いですし、私たちにとって最速の情報入手手段には違いありません。
私たちは【魔術師】側より早く動けるはずです。準備を整え、タイミングを見計らい、仕掛けると。そういうつもりです。
「おさらいしますけど、ファムからの情報が入ったらまず【魔術師】に申請ですよね。手紙付きで」
『ええ、ゼノーティア公の御趣味の暴露、メルセドウの動き、貴族派の瓦解を匂わせる皮肉たっぷりのお手紙をすでに用意しておりますわ。ダウンノーク伯は急ぎ真偽を確かめるでしょうがその頃にはすでに事は終わっています』
『ヤツは考えた末に申請を受理するじゃろう。わしらを打ち破ることくらいしか反撃の目が見えないじゃろうからな』
万が一それで受理されなかった場合、新聞社を通してメルセドウ貴族派の情報をバベリオに流す算段もしています。
そうなればバベリオ中から非難の的ですし、侵入者は入らず、塔は成長しない。【魔術師】同盟にとって大きな痛手になります。
そうした脅しをしてでも
野放しにできない敵を叩くチャンスですから逃すわけにはいきません。
【魔術師】同盟との
【霧雨】が【魔術師】と結託しエルフを闇奴隷にしようと動いていたと情報を流すと脅す。半分嘘で半分本当ですが。
金にがめつく″高ランクの塔″という地位を欲しているであろう【霧雨】ならば受けざるを得ないはずです。
「
『本当ならば代表塔を【世沸者の塔】にしたいのですがね。そうなると向こうは断固拒否するでしょうから、事前に落としどころを提示しておかなければならないでしょう』
『条件のすり合わせで時間を引き延ばすわけにもいかんしな。こっちにTPの余裕が生まれるかもしれんけど、向こうに心の余裕が生まれてまうし』
平等であると謳いつつ、これならば相手は【宝石の塔】以外使えませんからファムで探ることができるのです。
しかしこちらにCランクの塔は四つもありますので、おそらく向こうは「不平等だ」と言ってくるでしょう。
そうなったら条文を『互いのCランクの塔を指定する』とします。これならば向こうがこちらの代表塔を選べると。
これが落としどころですね。
一見すると向こうが有利、こちらが不利。しかし私たちはどの塔で守ってもあまり関係ないですし、何より向こうの代表塔が【宝石の塔】で確定します。
ファムで探れない【魔術師の塔】【青の塔】を避ける。これが一番重要なのです。
『も、もしこちらが指定できるならばどうするんです? やっぱり【女帝の塔】か【忍耐の塔】ですか?』
『ですわね。わたくしの【赤の塔】は味方戦力の配置問題がありますし【輝翼の塔】は階層数の問題がありますから』
『溶岩階層には火属性に強い魔物しか置けませんからね……私の魔物はどれも無理でしょうし』
【忍耐の塔】のほうが攻略は難しいと思います。下層部の罠を見てもそうですし、上層部には大きな魔物を配置できるだけのスペースもありますから。
【女帝の塔】はスペースが減るんですよね。階層ぶち抜きにしているところもないですから。
しかし大部隊を分断させやすいだとか、それに対して防衛部隊を当てやすいだとか、向こうも代表塔は【女帝の塔】だと承知しているはずだから油断を誘えるとか色々理由があります。
個人的には【忍耐の塔】を推しますがね。
「それと攻撃陣に関してですが――」
と言ったところでピロンと画面が鳴りました。六画面同時にです。
つまり全体連絡ですね。はて、どんな内容なのか……と見てみたのですが。
「『『『『『はあっ!?』』』』』」と声が揃いました。
=====
『神様通信
【霧雨の塔】が【魔術師の塔】【青の塔】【宝石の塔】と同盟を結びました!
以上お知らせでした! 神様より』
=====
『なんでやねん! え!? ホンマになんで!?』
『フッツィルさん、とりあえず調査をお願いしますわ』
『うむ。さすがに【宝石】からでも何かしら探れるじゃろ』
『むしろなぜ今まで【宝石】に情報が入らなかったのか不思議なほどです』
『ど、同盟なのに事前に協議しないんですかね……』
ターニアさんはファムでメルセドウ国内を見張っていてもらう一方、フゥさんにはファムでバベル内を色々と探ってもらっていました。
当然、目下の敵である【魔術師】同盟も探っていたわけですが、唯一探れる【宝石の塔】のノービアさんになかなか【魔術師】と【青】の情報が入らなかったのです。
おそらくあの同盟はケィヒルさんとコパンさんで成り立っていて、ノービアさんは言われるがままに動く駒のような扱いなのだろうと、これはフゥさんもアデルさんも同じ意見です。
ケィヒルさんは派閥内直下の家の子供だからノービアさんを囲っただけであり、話し合ったり相談したりする間柄ではない。
それは私たちとは全く違う同盟の形なのですが『バベルの同盟』『貴族の関係性』で見れば極めて正しい姿なのだと。
しかし【霧雨の塔】を同盟に入れるという
それほどケィヒルさんはノービアさんを軽視しているということなのでしょう。
フゥさんが今から探って、はたしてどれほど情報が得られるものか……。
『エルフを狙う二組が手を結んだ、と単純な話ではないですよね。おそらく』
『ええ。あのダウンノーク伯が平民……それも闇の住人であろうザリィドを同盟に招き入れるなどありえません。仮にザリィドがエルフ拿捕の手伝いをすると申し出ても無視するか潰すかの二択です』
『相応の理由があるっちゅうことやな。なんやねんそれ……他に二組の共通点なんかあるんか』
考えれば考えるほど意味不明です。
よりにもよって私たちが狙っていた二組がいきなり手を結んだ。
ただでさえどちらも高ランクの塔で私たちにとっては難しい相手だったのに……。
と考え始めたその時、フゥさんが『なにっ!?』と声を上げました。
どうしたのかと聞こうとした次の瞬間、私の画面からまたピロンと通知音が鳴ったのです。
今度は六画面全てではなく私だけ。
その内容は――
=====
【魔術師の塔】から
受理 却下
――手紙添付あり――
=====
え……。
『シャル! 今の通知は
『はあ!? なんやねん、次から次に!』
『え、え、バ、
『まさか【魔術師】同盟からですの!?』
『そんな……! なぜこのタイミングで……!』
皆さんの声が遠く聞こえるほど、私は茫然としてしまったのです。
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