261:六花の塔vs黄砂の塔、始まります!
■シルビア・アイスエッジ 22歳
■第501期 Dランク【六花の塔】塔主
『そうですか、やはり【黄砂の塔】から……お手紙はありましたの?』
「いえ、単に申請のみです」
『まぁわざわざ手紙で伝えんでも分かるやろ。復讐の意思ありってな』
ドロシー殿の仰る通りだ。言われずとも分かる。
私は【黄砂】のメロにとって″父を殺した仇敵″に違いない。だから斃すのだと。
申請してきたから受けただけだ、などと誤魔化すつもりはない。
私は私の意思で【黄昏の塔】を潰し、それと同時に【黄砂の塔】とも戦う覚悟を持っていた。
最初から【黄砂の塔】と戦うつもりで【黄昏】の申請を受けたのだ。
それがTP稼ぎ狙いだとか下剋上狙いだとか言われても構わない。戦うべきと私が判断したのだから。
『【黄砂】のメロ・イェロの様子は見ておったが、全く予期しない出来事だったようじゃ。突発的に襲ってきた深い悲しみがシルビアへの恨みに変わった……といったところじゃろう』
『な、何の相談もなしに
『やっぱりマイナイナさんに何かあったと見るべきですよね。メロさんにも理解できない申請だったんでしょうし』
何者かに操られたマイナイナが私の塔か戦力を探るために
そう考えればある程度は納得できる。
しかし申請却下の理由にはならない。だからこそ早くに対処しなければならないのだ。
もし裏で動く者がいれば標的は私ではなくアデル様かもしくは【
私自身の価値はかなり低いし、塔のランクが低いからこそ探りやすいと思われるはず。
見せてもいい範囲で情報を見せる。そうすることで敵を釣る。対象が特定できれば最高だ。
『ただ【黄砂】に関しては仮想敵の手は入っていないと見てよいと思う。それこそ【黄昏】と様子が違いすぎるしのう』
『せやな。【黄砂】の場合は単なる私怨。ある意味やりやすくはある……シルビアちゃんは辛いやろうけど』
「いえ、大丈夫です。なればこそ全力で戦うつもりです」
【黄砂】のメロが操られたり監視されている状態でないならば私も全力が出せる。報酬TPをつぎ込んだ戦力が。
もとより【黄砂】は八年目のCランク。
私より格上だ。戦力を隠して勝てるとは思っていない。
すでにフッツィル殿から情報は頂いている。
【黄昏】の情報を頂く時に【黄砂】の情報も合わせて頂いたのだ。フッツィル様の仕事は本当に早い。
それと私の戦力を合わせれば、例え格上のCランクであっても勝てない相手ではない。
私は油断せず、ただ向かって来る敵を叩くのみだ。
501期トップの塔として。【
◆
――カラァン――カラァン――
『二人とも準備はいいかなー?』
「はい」『……はい』
『じゃあ始めようか!
【黄昏の塔】との戦いから一日空けただけの連戦というのは普通に考えれば無謀だ。
しかしこれも見越していたからこそ可能なこと。
一日で全ての準備は出来ている。
【黄昏の塔】戦ではいかに戦力を温存するか、いかに被害を小さくするかが焦点だった。
それは戦力を隠す意味もあったし、その後に予想される【黄砂の塔】戦をスムーズに行うためでもある。
短期間での連戦というのは私にとってはありがたい。嫌なことは先に終わらせたいタイプなのでな。
さて、神の号令と共に転移門から敵攻撃陣が乗り込んで来た。
フッツィル殿から聞かされていたとおりの陣容だ。数も多く、非常に精強な軍勢。
指揮官は二体。空のスフィンクス(A)と地上のゴブリンキング(A)。
スフィンクスの周りにはストームイーグル(B)、ステュムバリデス(C)、ヘルコンドル(C)など鳥系が約五十。
スフィンクスは神聖魔法、鳥は風と土魔法を撃ってくる。
ゴブリンキング部隊はゴブリンジェネラル(B)、ゴブリンナイト(C)、ゴブリンメイジ(C)、ゴブリンリーダー(D)、ゴブリン(F)と、これぞゴブリン部隊といった編成。それだけで八十以上もいる。
さらに斥候部隊としてデザートアサシン(B)を指揮官にサンドウルフ(D)部隊。これが約三十。
合計で約百五十。本気で潰しに来ようという意思が感じられる。
では防衛は薄くなったのかと言うとそんなことはない。
フッツィル殿の調べではSランクはいないものの、Aランク固有魔物のほか普通のAランクの魔物がいくつもいるのだ。
おそらくこちらの
数と質、攻撃と防衛、そのどれもが高水準で出来るというのが【黄砂の塔】。
八年目のCランクに相応しい強さだと思う。
少なくとも一年目のDランクが戦って良い相手ではない。
――【六花の塔】が
私にはアデル様、シャルロット殿、ドロシー殿、フッツィル殿、ノノア殿という五塔主が付いている。
ただの二年目塔主ではない。図抜けた才覚を持ち、歴史に名を残すのが確定しているような五塔主だ。
その才能を集結させたのが今の【六花の塔】。
そう簡単に攻略できる代物ではない。
さらに【魔術師】同盟戦で得た報酬TPがある。
全く仕事をせずにいたので頂くのも恐縮していたのだが今となっては受け取って良かったと思っている。ノノア殿が「受け取らないと後悔する」と仰ったのは正しかった。
あれがなければ
その報酬を使って大改装を行い、新たな階層に合う魔物を次々に召喚した。
戦力は以前の二倍以上、いや三倍ほどになっているかもしれない。
さらにAランクの魔物【クロセル】を眷属化させた。名はクロウだ。私にネーミングセンスはない。
クロセルは大鷲の翼を持つ氷の悪魔。私でも知っているような有名所だ。
基本的に飛びながらの氷・闇魔法を得意としており、今は鳥などの飛行部隊を率いてもらっている。
今回は
【黄砂の塔】が『砂漠の塔』だから出せる魔物が限られるのだ。
こちらにフェンリルがいるのはバレているし、向こうは当然警戒しているはず。
だからこそシルバとクロウに目が行くだろうし、逆に私の塔に侵入している攻撃陣からはある程度目を逸らせるだろうと、そういう狙いもある。
しかし私は今回、特に防衛に重きを置いている。
攻めて来るのはAランクの指揮官が率いる百五十もの群れ。
それを守るのは創ったばかりの階層と新しい戦力。
これで如何に防衛できるものか――私は見極めなければならないのだ。
さあ始めるぞ。
【
新たな【六花の塔】を見せつけてやる。
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