165:第三回、世界×女帝お茶会です!
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
「まずは勝てて良かったわ。エメリーさんもご無事そうで何よりです」
「ありがとうございます。レイチェル様のアドバイスのおかげです」
「私は何もしていませんよ。今回の勝利は全て貴女がたの手によるものでしょう」
そんな挨拶でお茶会が始まりました。
例によって
メンバーは私とエメリーさん、そしてレイチェルさんとセラさんだけですが。
レイチェルさんはアドバイスなどしていないと仰いますが、『ルシファーが敵より強くなるスキルを持っている』という情報と『Aランクの塔主は限定スキルを二個は持っていると思っておいたほうがよい』というお話を伺いました。
それは実際に事前会議の中でも話に上がり、細かく計画を立てる材料にもなったのです。
ですのでアドバイスなどしていない、ということはないのですよ。
「それでどういった戦いになったのです? もちろん言える範囲で構いません」
「そうですね……まず防衛側からお話しますと――」
向こうはシシェートさんを指揮官にAランク以下の魔物が三百体弱という軍勢でした。
それを五階層からいきなりスフィーさんとジータさんで奇襲。(魔竜剣のことは言いません)
さらに殲滅後にエァリスの奇襲の二段構えで始まりました。
「いきなり大胆ですね……しかし上手い策です」
「発案はどなた? シャルロットさんですか?」
「ドロシーさんとフゥさんですね。そこにアデルさんがジータさんを絡ませてシシェートさんの力量を計ろうと」
「動揺を誘い、数を削り、
そして六階層は階層移動により四階層の鬼畜バージョンに。
これは私の発案です。やはり自分の塔なので動かしやすいですし。
「階層移動はやろうと思えば簡単ですが普通は行いません。塔主は皆、自分の塔の出来に自信を持っていますからね。下手にいじることを良しとしないのですよ。そういった意味では意表を突いた良い策でしたね」
とのお言葉を頂きました。照れます。
七階層は『大書庫』での引き撃ちですね。これも多分ドロシーさん、フゥさんだったと思います。
おそらく向こうは焦っているはずだから、逆に急がせてその分削ろうと。
そして八階層の『ダンスホール』決戦。ここを最終決戦場にしたいと言ったのは私です。九階層では勝てるとは思えなかったので。
多角形の部屋を素通りさせての大ボス部屋決戦とも考えたのですけれどね。
だったらダンスホールでもやることは同じですし、攻撃陣の決戦時に時間を合わせた方がより混乱させられるだろうと。
「まぁ、では攻撃陣も防衛陣も同時に大部隊での乱戦だったのですか。それはちょっと大変ですね。塔主としてはその辛さが分かりますよ」
「あっちもこっちも見ながらずっと指示を出していましたね。同盟の皆さんと並んでやっていましたが皆さん叫びっぱなしで」
「そうでしょうね。少なくとも誰がどこを狙うかを五人全員が意思統一していて、尚且つ戦況の変化を伝えあえる状況でなければいけません。同盟の結束力で勝ったようなものです」
そう言って頂けると嬉しいです。正直もうやりたくないですけどね。
頭を使いすぎてヘトヘトになるのですよ。あれは大変でした。
「すみませんシャルロット様、シシェート殿はどのような英雄だったのですか?」
「ジータさん曰く、魔法の属性を身体や剣に付与するようなスキルか魔法の使い手だと。異常に速くなったり、剣が燃えたりするのですよ」
「なんと……そのような未知の戦いによく勝てたものです。さすがは英雄ジータ殿ですね」
「私も聞いた事のない剣技ですね。異世界と言っても色々と戦い方が違うのですかね」
そうエメリーさんを見ながら仰いました。エメリーさんはエメリーさんで色々とおかしいですからね。
防衛側はそんな感じで、あとは攻撃側です。
エメリーさんを指揮官にゼンガーさんやターニアさん、ウリエル部隊を含む二百強の部隊でした。
クルックーは一応秘密です。新年祭で<鑑定>されているかもしれませんが。
十五・十六階層は特になし。十七階層が乱戦の第一戦です。
【死屍】【雨林】【砂塵】の巨大眷属が計五体。【猫髭】の眷属もいましたが割愛します。
ここはもう皆さんで頑張って斃しましたよと言うしかありません。
十八・十九階層もほぼ同じなのですが、ルシファーをエメリーさんが、ドラゴンをウリエル部隊が、リッチ部隊をゼンガーさんが相手にしましたよと。
「まぁ! ウリエル部隊をルシファーでもなくアンデッドでもなくドラゴンに当てたのですか? いえ、エメリーさんがルシファーというのはまぁ分かるのですが」
「正確にはウリエルさんお一人でドラゴンを食い止め、天使部隊は悪魔を相手にしていましたが、ゼンガーさんお一人でドラゴンを相手取るというのもどうかと思いますし……ということでいいですか? エメリーさん」
「そうですね。付け加えれば相手の配置の問題もあります。ウリエルが天使部隊のフォローに回れるよう、リッチよりもドラゴンを優先したということですね」
誰がどこを狙うのかというのは総指揮官であるエメリーさんの現場判断でしたからね。
しかしどこも厳しい戦いには違いなく、味方に随分被害を出してしまったと全て終わったあとに私は謝られました。
もちろん私はエメリーさんが精一杯頑張っていたのを知っているので労いましたが。
「結局ルシファーの能力はどのようなものだったのです?」
「自軍の魔物をまとめて召喚し、自分と融合させ鎧とする。それによってわたくし以上のステータスを得る。そのようなスキルでしたね」
「何百体使ったのかは分かりませんが10m以上の巨人になっていましたよ」
「まぁ、それはなんとも……よく斃せたものです。そんな悪魔を」
「装備などは考慮せずにわたくしのステータスのみに着目した強化でしたし、何より全く闇魔法を使いませんでしたので」
「それにしたって……と思ってしまいますがね。さすがですよ、本当に」
エメリーさんが褒められると嬉しいです。さすがですよね、うちの侍女長様は。
「相手の限定スキルなどは大丈夫でしたか?」
「結局判明したのはシャクレイさんの一つだけだったのですが――」
最後の鬼門となったのがその限定スキルでした。
用心していたのにエメリーさんが為すすべ無しの状態でしたからね。
まぁ用心していたからこそ対処できたとも言えますが。
「視界に入れた敵を平伏させ自由を奪う、ですか……かなり恐ろしい部類ですね。条件があるのか分かりませんが効果範囲が広すぎます。その気になれば一軍まとめて斃すことも可能なのでは?」
「どうでしょう。人数制限があるのか時間制限があるのか、そこら辺は分からないのです。でも最悪を想定すればレイチェル様の仰る通りかと」
「危険度ではルシファーや
本当ですね。やはり限定スキルは怖いです。
何が起こるか分からない怖さ、それはバベルそのものを表しているようにも思えます。
塔が強くなればなるほど、頂点に近づけば近づくほど、その恐怖は形となって襲い掛かる。そんな気がするのです。
レイチェルさんは頂点にいるからこそ、その恐ろしさを誰より実感しているのでしょう。
「一先ずは目標であった【傲慢の塔】を斃せました。今後は何か目標などあるのですか?」
「Bランクに向けての塔の強化とTPの確保、それと<帝政統治>の本格的な実用化に向けての取り組みですかね」
「<帝政統治>もTP確保の一貫ですから全ては繋がっていますね。あと半年もないですから時間もあまりないのでしょうが」
「やはり上がりますかね、Bランクに」
「当然でしょう。以前も言いましたが上がらないほうがおかしいですよ」
レイチェルさん太鼓判と。ありがたい評価です。
私が早くランクを上げたいと思うのはナイトメアクイーンに名付けたいからなんですけどね。
そしてAランクに上がったらウィッチクイーンも待っているのです。だからこそ頑張ろうと思っています。
「でも良かった。【傲慢の塔】を斃したから次の目標は【聖の塔】だ、などと言うようだったらどうしようかと思っていましたよ。うふふ」
「せ、【聖の塔】だなんてとんでもないですよ。あちらは私たちを嫌っているでしょうが、こちらは仕掛けられても受ける気ないです」
Aランクの次はSランクが相手だ、とか無理ですよ。
何をどうすれば勝てるのか全く分かりません。雲の上すぎます。
まぁ人間至上主義の同盟らしいので、私たちと相容れないのは確定ですが。
「【聖の塔】は【反逆の塔】にお任せしますよ」
「あれね。ちょっと危ういのですよね。見ているこちらが怖くなると言いますか……まぁそれは貴女たちの戦いでも同じなのですが」
私たちも傍から見てて心臓に悪いってことですか?
そ、そんななんですかね、私たちは。
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