135:念願の限定スキルを手に入れました!



■シャルロット 16歳

■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主



=====

 ナイトメアクイーンかウィッチクイーンの召喚。限定スキルの取得。どちらもありだと思います。

 もしすぐに【傲慢の塔】と戦わなければいけないとすれば迷わずクイーンの召喚でしょう。たとえ眷属化できなくとも階層の守護を任せられるだけのポテンシャルがあるはずです。


 限定スキルの方で言えば<女帝の号令>がおそらく目玉なのでしょうがさすがにTP的に厳しいでしょう。

 一番値の張る限定スキルというのは本来、Aランクの塔でとるかとらないかとなるのが普通です。貴女の場合はずいぶんと駆け足なのでここまで話が飛躍していますがね。

 ともかく<女帝の号令>はもう少し後で目を向けてもいいのではないかと思います。


 <女帝招集令>も短期的に役立ちそうですが用途を考えると限定的すぎるかな、というところです。

 貴女が仰るように敵地に乗り込んだエメリーさんを動かすには使えますが、それはエメリーさんの危機、もしくは貴女の危機というのが前提です。


 【傲慢の塔】とすぐに一対一をしなければいけないというのならば考慮に値しますが、時間を置いての同盟戦ストルグであるならば同盟の皆さんの戦力補強とその配置によってある程度は計算のできる戦いになるのではと予想します。


 そこまで考えた場合、私が限定スキルの中から選ぶとすれば<帝政統治>ですかね。

 どの程度TPが増えるのかは分かりませんが、仮に思ったより増えるようであれば幸運ですし、そこから【傲慢の塔】戦への戦力を補強すればいいと。

 逆に思ったより増えなくても現状の戦力と同盟の皆さんの力を合わせ戦うことは可能だと思います。


 私が思うに【傲慢の塔】戦の鍵となるのは、エメリーさんと【忍耐の塔】のドロシーさんです。

 もっと言えば【忍耐の天使ウリエル】がいかに戦いに加われるか、ですね。

 そう考えると【女帝の塔】は現在の戦力でも十分やりようはあると思っています。


 結論を言えば、クイーンを眷属化せずに召喚するか、<帝政統治>を得るか。

 あとは貴女の好みですかね。ちなみに私の好みは<帝政統治>です。

=====



 と、ありがたい長文のお手紙を頂きました。レイチェルさんから。

 同盟の皆さんとも相談しましたし、私自身でもすごく悩んでいたので、レイチェルさんにも相談したということです。


 やっぱりレイチェルさんも私と同じような考えで少しホッとしました。

 そして<帝政統治>を得てTP収入の増加を図るならば早めがいいだろうと、いつもの六女王会議の中で取得へと踏み入ったのです。


「では取得します!」と宣言し、気合いを入れて画面を操作。


 いえ、TPが高額すぎてさすがに緊張するのですよ。



=====

<帝政統治>を取得しますか ⇒ はい

=====



「…………?」



 何も反応しない。

 魔法陣も出なければ、身体に変化もない。ただスキル一覧の<帝政統治>が灰色になっただけです。

 これで取得できているのですか……?



「<帝政統治>! …………?」



 発声しても変化なし。そういうタイプのスキルではないということでしょうか。



「お嬢様、ステータス画面からスキルの詳細は見られませんか?」


「そうですね。ちょっと見てみます」



 そうして自分のステータス画面を開きます。


=====

名前:シャルロット

職業:【女帝の塔】塔主

LV:21

筋力:D-

魔力:E+

体力:E+

敏捷:F+

器用:E

スキル:付与魔法、礼儀作法、杖術、堅忍不抜

固有スキル:統率、専心

限定スキル:帝政統治(New!)

=====


 ありますね。取得はしていると。ここからスキルの詳細を見てみます。


=====

□帝政統治 /370,000TP:指定したエリアのTPを加算することでTP収入を増やす

効果:操作画面の【塔内魔物・罠配置設定】にある【帝政統治】タブを開いて自塔内に設定エリアを指定する。1エリアは10m×10mで1,000TPが必要。床に設置しその直上の天井までがエリアとなる。その中で得られたTPは二倍となる。エリア形状の変更は不可。エリアを重ねることは不可。設定後に移動することは可能。しかし削除してもTPの返却はない。効果は永久に続く。

=====



「えーっと…………どういうことです?」


「設置する場所はかなり吟味が必要ですね。下手をすると元をとるまでかなりの時間がかかります」



 エメリーさん理解しているんですか? すごいですね。私、頭がこんがらがってきましたよ。クイーンの皆さんも「???」ですし。


 その後、設定画面を開きつつ、実際に見ながらエメリーさんに説明してもらいました。

 そうしてやっと私でも理解できました。時間はかかりましたが。



 まずネックとなるのは【10m×10m=1エリア=1,000TP】というもの。

 そこそこ広いな、と最初は思ったのですが実際はそんなことはなく。



「現在の一階層の床面積が約502,400㎡ですから、仮に全てをエリア化した場合、単純計算5,024エリアで五百万TP必要です」


「「「ごひゃくまん!?」」」


「それが十階層ですから五千万ですね。ランクが上がれば広く高くなりますので、あくまで現時点はということですが」


「「「ひぇぇぇ……」」」



 もちろん階層全てをエリア化などする必要がないのは分かります。

 しかし【強欲の塔】で竜のいた階層のように大広間だった場合、どこで戦いどこでTPが発生するのか分かりませんから、もしエリア化するとなれば広くとる必要があるでしょう。

 【女帝の塔】でも設置場所は選ぶ必要があるというのは間違いありません。



「10m×10mの正方形は弄れないそうですから通路などに設置する場合でも無駄が生じるかもしれません」


「ああ、10mより狭い道だとエリアの方がはみ出ちゃうわけですか」


「また重ねることもできないので、例えば二重にエリアをかけて四倍のTPを狙うといったこともできません」


「あー、そういう条文だったのですね。そこまで考えていませんでした」



 そうなると『どこで二倍TPを狙うか』という問題になるわけです。



「だったら討伐TPが狙えるところがいいんじゃない? 一番もらえるTPが多いんだしぃ」


「討伐TPが二倍になれば確かに良いですが狙いどころとなりますと……」


「うちはそもそも討伐TP狙いの塔構成じゃないのよー」


「あらぁ、だったらダメージTPか滞在TP狙いですかぁ~?」



 悩ましいですね。クイーンの皆さんの仰る通りです。

 一番旨味があるのは討伐TP二倍ですが、今の【女帝の塔】で考えると罠による事故死が一番多い。魔物との戦いとなれば無理して逃げ出すこともできますからね。二階層も三階層も。


 そしてどこの罠が一番死にやすいかとなるとこれが難しい。三階層>四階層>一階層という感じでしょうか。侵入者の数も考慮して。


 じゃあ三階層にエリアを置こうかとなってもどこに置こうか悩むわけです。

 ボス部屋に置こうか、アシッドスライムの罠の所に置こうか、フォッグスネークの罠の所に置こうかと。



 いっそのことターニアさんの言うとおり、ダメージTPを狙ったほうがいい気もします。滞在TPは狙うにしても少なすぎると思いますが。


 例えば一階層の城門前広場。

 ここは混雑していますし、ウッドナイトやカンビオンとの部隊戦なのでダメージTPも狙いやすい。


 しかし高いTPかけて設置して、ダメージTPを狙ってもなぁ……とも思いますし。



「うーん、とりあえず城門前広場ですかね。そこが一番安定してダメージTPを狙えますし」


「シャルロット様、あの広場の部隊をもっと精強にしちゃうのはダメなのぉ?」


「それもありですが様子を見つつですね。いきなり強くしちゃったらダメでしょうし」



 パトラさん的にはサキュバスとか使いたいんでしょうね。そうすればダメージTPはより稼げるし討伐TPも狙えます。


 私も賛成ではあるのですが、まずは現状がどの程度かを計らなければなりません。

 でなければ比較もできませんからね。



「お嬢様、ドロシー様の罠を使わせてもらってはいかがでしょう」


「ドロシーさんのですか?」


「はい。【忍耐の塔】の罠は【女帝の塔】よりも致死性の高いものを使っているはずです。それを流用し討伐TPなりダメージTPを狙えるポイントをわざと創ればよいのではと」


「あー、なるほど」



 それはありですね。

 と言うか<帝政統治>を活かした塔構成というものを考えたほうが良いのかもしれません。

 その中で「誰もが立ち入る場所」「罠にかかりやすい場所」「強い魔物との戦いになる場所」を明確にしてダメージTPか討伐TPを狙うと。


 ……ちょっと考えただけでも大変ですね、これ。


 でも何も考えずにエリアを創ったら失敗しそうですし……ああ、移動はできるんでしたっけ。

 じゃあ試しながら少しずつ設置してみますかね。



 ……ぶっちゃけドロシーさんが得意そうなスキルですね、これ。


 もう全部お任せしたいくらいです。……ダメですよね。私の塔ですから。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る