134:同盟の強化計画を練ります!



■アデル・ロージット 18歳

■第500期 Cランク【赤の塔】塔主



『――ちゅうわけでウリエルを眷属にしたはええけど出来れば天使部隊を創りたいんよ。【傲慢】同盟に仕掛けるんはもうちょっと待ってくれんか?』


『焦って仕掛けるよりもじっくり準備すべきだと思います。相手が相手ですし』


『わ、私も賛成です』


『うーむ、向こうよりこちらのほうが短期間での成長率は高い。時間は有利に働くじゃろ。しかし【死屍の塔】の動きが気になるのでのう……』



 わたくしも全く同じ意見ですわね。いくらこちらが有利になるといっても向こうがじっとしているとは思えません。その為のアンデッドの仕掛けだったはずですし。


 とは言えウリエル率いる天使部隊というのはあまりに魅力的です。



「ドロシーさん、その天使部隊を創るのにどれくらいの期間が必要ですの?」


『出来れば二月ふたつき。まぁ一月ひとつきでも数体はいけるやろうけど曲がりなりにも小隊を組むなら多分二月ふたつきやな』


一月ひとつきですと内定式やプレオープンとかぶりますね』


「では塔主総会のあとを狙うしかありませんわね」



 もうすぐ第501期の内定式が行われます。それから七日後にプレオープン。

 プレオープンが二週間で最終日に塔主総会ですわね。

 新塔主はそこから一週間で準備をしてオープンとなるわけです。


 おそらく我々が塔主戦争バトルをするのはその後でしょう。

 侵入者も塔主も新塔主に注目し、塔主戦争バトルが活発になる期間。そこでわたくし達は【傲慢の塔】同盟を狙うと。



 ただ塔主総会をはさむとデメリットもありますわね。

 おそらくドロシーさん、フッツィルさん、ノノアさんはランクアップするでしょう。下手すればシャルロットさんも。


 そうなると【傲慢】側から余計に警戒される恐れがあります。

 ですからこちらから仕掛けるならば塔主総会が終わってすぐ、がベストですわね。



『二月あればわしのほうも戦力アップが見込めるわい』


『フゥさん結局どうするんです? Sランク固有魔物狙うんですか?』


『いや、虹竜アイダウェドもイスバザデンも、Aランクのサイクロンワームにしたって全部デカイからのう。それで同盟戦ストルグとなればわしの塔以外使えなくなる。じゃから素直に飛行戦力を増やすことにした』



 狙いはBランクのグリフォンやヴィゾフニル、またはAランクのフレスベルグ辺りらしいですわね。グリフォンは攻撃力がありますし、ヴィゾフニルは神聖魔法持ち。フレスベルグは風・氷魔法と聞くからに使えそうな戦力が揃っています。


 Aランクのガルーダなども神聖魔法持ちですが大きいですからね。それよりは小柄なほうが使い勝手も良いでしょう。



『わ、私はエンジェルスライムのほかにサーチスライムとマジックスライムをなるべく多く創ろうと思ってますけど……大丈夫ですかね』


『TPは足りるんか? 結構かかりそうやけど』


『な、なんとか、やれるだけやってみようかと……』


『助かりますけどあんまり無理しないで下さいね』



 ノノアさんは固有魔物のエンジェルスライムを召喚しました。眷属枠の関係でまだ眷属化はしていません。


 Fランクの塔主でAランクの固有魔物を召喚するというのは暴挙以外の何物でもありません。

 【風】同盟との塔主戦争バトルでTPはもらっていないので、【千計の塔】の分と純粋な塔運営の分、ほぼそれだけでTPを溜めこんだということです。これは凄まじい。


 エンジェルスライムはノノアさんが欲していた神聖属性で<悪意感知>持ちらしいです。

 見た目は天使の輪がある以外、ただの白いスライムという感じなのですけれどね。

 それでもAランク相応の強さはあるらしいですわ。スライムはよく分かりませんわね。


 それに加え斥候部隊のサーチスライムと魔法攻撃部隊のマジックスライムを揃えると。

 これはなかなか本格的な戦力になってきました。FランクどころかDランク侵入者が普通に攻略してきても問題なくなるかもしれませんわね。



『私はもう<帝政統治>をとってしまおうかと思っています』


『おおー、とうとうウチら初めての【限定スキル】か。なぜかこっちが緊張するわ』


『で、でも塔主戦争バトルには関係ないスキルなんですよね?』


『それはわしらとも相談したし、レイチェル殿とも相談したんじゃろ?』


『はい。時期尚早かとも思いますがTP不足は付いてまわるので、とれるなら早めがいいだろうと』



 シャルロットさんは限定スキルをとると決めました。先を越されて少し悔しい気持ちもありますが、こればかりは仕方ありません。


 本当であれば【傲慢の塔】との戦いに使える限定スキルを欲してらっしゃいましたが、それだと高すぎていつ取得できるのかも分からないと。


 であれば戦力強化にあてるか、他の限定スキルを得るか、という選択だったそうです。



 戦力強化するとなればSランク固有魔物のナイトメアクイーン、またはAランクのウィッチクイーン。

 どちらも【女帝の塔】の戦力に大きく響く魔物です。配下はすでにいるのですから。

 しかし眷属枠が埋まっておりますからね。そこが一番躊躇した部分でしょう。


 わたくしは火精霊トカゲンからルサールカルールゥに眷属変更しましたが、正直あまりおすすめできることではありません。


 特にシャルロットさんなど眷属を家族のように扱っておいでですし、それを変えることなどできないでしょう。

 わたくしでさえ気が滅入りましたからね、あれは。塔主の仕事とはいえあまり慣れたくないものです。



 ともかくそうした内容をわたくしたちの他にレイチェル様にもご相談したそうですわね。

 結果が早期取得になったと。難しい時期に難しい判断だったとは思いますわ。



『アデルは結局どうするんじゃ?』


「申し訳ないですが未だに悩んでおりますわ」



 方針がしっかりと決まっていないのはわたくしだけなのですよね。

 塔主戦争バトルをこなしたことでTPは余裕があります。それをもってどうするのかと。


 一つはシャルロットさんと同じように【限定スキル】を狙うということ。

 しかしわたくしの取得可能スキルは――


=====

□真実の赤/200,000TP:全ての嘘を見抜く

□赤き雨の地/230,000TP:自塔屋外エリアに赤い雨を降らせ継続ダメージを与える

□赫々たる炎/550,000TP:炎を纏う

=====


 このような感じなのです……。


 <真実の赤>はレイチェル様の<世界を見渡す目>と似たような性質だと思いますが、塔運営にも塔主戦争バトルにも使えないでしょう。隠れた効果などは分かりませんが。


 <赤き雨の地>は分かりやすいですが自塔限定ですし同盟戦ストルグとなった場合、わたくしの塔が選ばれなければ意味がない。


 塔運営には活かせると思います。単純にTP増加を見込めるでしょう。

 しかし例えば「一階層に延々と降り続ける」となってしまうと逆に客足が減るでしょうし、用途が難しそうに思えるのです。


 <赫々たる炎>は全く分かりません。何にどうやって炎を纏うのか意味不明です。説明不足すぎます。

 おまけにTPが一番お高いですし考慮に値しないですわね。


 というわけで限定スキルはいまいち。今あえて取得を目指すなら<赤き雨の地>でしょうか。



 そしてもう一つの案は戦力強化に充てるということですわね。

 候補としてはこのようなところなのですが


=====

□カーバンクル/A/7,500TP

□赤竜メテオノーラ★/S/64,000TP

□セイレーン★/S/52,000TP(1回)

□ストームイーグル/B/2,300TP(1回)

□ニーズヘッグ★/A/19,000TP(1回)

=====


 カーバンクルはすでに一体おりますが神聖・光属性の魔物ですわね。これを単純に増やすだけでもいいと思っております。


 赤竜メテオノーラは【赤の塔】の固有魔物ですがおそらく巨体の飛竜ですのでスペース的に却下ですわね。


 セイレーンは【風の塔】の戦利品。これは欲しいですが眷属となると悩みどころですわね。ブラッディウォーロメェメェックもバーンレックスチロチロも地形に合わせた指揮官なので外すのは躊躇われます。


 ストームイーグルも【風の塔】の戦利品。これは単純に風属性の飛行戦力ですわね。うちのヘルコンドルなどと組ませても良さそうです。


 ニーズヘッグは【群青の塔】の戦利品。かなりの大蛇ですから防衛でしか使えないでしょうが、うちで配置するとすれば『サンゴ草湿地』ですかね。


 他にもおりますが主だったところでこのくらい。

 ちなみに【昏き水の塔】の戦利品、クラーケンやシーサーペントなどは使う予定がありません。

 ともかくこの中から戦力強化となりそうな魔物を選びたいと考えております。



 やはりカーバンクルかセイレーンですかね。眷属化はとりあえずなしで。

 その前に二月の期間で52,000TPも溜まるのかという問題がありますがね。計画は立てておくべきでしょう。



『アデルさん、時間はまだありますのでゆっくり考えましょう』


「ええ、もうしばらく時間をもらいますわ。優柔不断で申し訳ないのですが」


『ハハッ、アデルちゃんが優柔不断やとそこいらの連中みーんな優柔不断になるで』


『うむ、アデルは決断力と思慮深さを持ち合わせているだけじゃからのう』


『ほ、ほんとの優柔不断は私みたいな人のことを言うんですよ』



 ふふっ、本当に得難い皆さんですわね。

 こんなにも同盟が心地よいものだとは、昨年のわたくしに言って差し上げたいですわ。


 ではお言葉に甘えさせてもらいましょうか。お仲間もそう仰って下さっているのですし。



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