67:バトルの条件が整ったようです!
■シャルロット 15歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
『なーるほど、なかなか面白い条文だね! 戦場になる代表塔を相手が決めるんだね! お互い条件に関して何か詰めておきたいところとか確認しておきたいところとかあるかな? 【女帝】側は?』
申請を受理されたということで、神様も含めた最終確認が行われています。
なんか私が代表みたいな扱いされてますが、今回はアデルさんとフゥさんで進めて頂いたので、私はよく分かっていないのですがね……条件も直前に聞いたくらいですし。
それでも一応【女帝】っぽく振る舞いながら知ったかぶらないといけません。
「……私たちがそちらのCランクの塔を選んだ場合、六階層から開始するということでよろしいですか?」
『そーいうことだね。正確には転移門をくぐったらすぐに一階層の転移魔法陣にのり、六階層に行くということだね!』
「一階層でそちらからの攻撃を受ける、ということはないですね?」
『それは禁止だね。【風の塔】側もそれでいいね?』
『ああ。分かっている』
ちょっと怖かったんですよね。この条件だと一階層は通り道に過ぎないのですが敵地には違いありません。
入ってすぐに奇襲を受けるというのも怖かったですし。言質がとれて良かったです。
『【風】側はなにかあるかな?』
『強いて言えば戦力の公平さは求めないでいいのか、ってことだな。攻略する塔の階層はランク相応になったと思うが戦力差は歪なままだろ? こちらは三塔でそっちは五塔だ。そっちの方が戦力は豊富だろう?』
『それを言うならそちらはBランクなのですから高ランクの魔物を使うの禁止とかにして欲しいものですわね』
『そうじゃな。こちらは総数千体、そちらは五百体とかでもいいのではないか?』
ヴォルドックさんの提案にアデルさんとフゥさんが反論します。
私としてはどちらの言い分も正当に思えます。自分たちを有利に持っていきたいということでしょう。駆け引きですね。
『うーん、どこまで公平さを保つかってのは僕でも難しいところなんだよねえ。やろうと思えば魔物のランク制限とか
最初の条件のままということですね。
しかしそうした制限を条件に加えることもできるのですか。これは一つ勉強になりました。
『んじゃ条件の変更はなしってことで進めるよ! あとは代表塔の指定だけど、【女帝】側はどこを選ぶ?』
「【甲殻の塔】にします」
『うんうん。じゃあ【風】側は?』
『【輝翼の塔】だ』
やっぱり【輝翼の塔】ですか……。
元々、同盟戦は私の塔を使うと言われていました。個人的には【世沸者の塔】のほうがいいとは思っていましたが、アデルさんとフゥさんのお考えがあったのでしょう。
しかし互いに塔を選ぶ、Dランクも選べるとなれば話は別。
市井に流れているであろう情報を得ていたとしたら、まず【世沸者の塔】は選ばないでしょうし、私の塔も【赤の塔】もランク的にわざわざ選ぶとは思えない。
そうなると【忍耐の塔】と【輝翼の塔】ですが……【忍耐の塔】は罠が凶悪で討伐率が高いですからね。ある意味名高いでしょうし。
『はいはい。じゃあこれで決まりね! 開始は二日後の二の鐘から! 今から代表塔の構成変更は禁止だからね! 同盟の眷属・魔物を配置するくらいだからね!』
これで確定ですね。決戦は二日後。
今日明日と会議をして私の戦力をフゥさんの塔に送り込まないといけません。
自分の塔を使わない
皆さんに色々と聞きながら煮詰めていきましょう。
■フッツィル・ゲウ・ラ・キュリオス 50歳 ハイエルフ
■第500期 Dランク【輝翼の塔】塔主
協力者をアデルにしておいて正解だったのう。
わし一人では誤魔化しきれんと思っておったし、エメリーに全てを打ち明けてはシャルと近すぎる。
ドロシーは調子にのって情報を漏らしそうじゃし。ノノアは論外。
アデルはシャルに「
そう言われればシャルは自分の塔でどう防衛するか、そこに考えを集中せざるを得ない。
わしらの『秘密の作戦』から意識を逸らす。その分、【女帝の塔】の運営に力を注ぐ。
ヴォルドックはその様子を見るはずじゃ。シャルを通じて【女帝の塔】の全てを。
向こうにしてみれば値千金の情報。同盟の核たる【女帝】の詳細。
いかにも困難で珍妙な塔構成、Cランクらしからぬ魔物、そしてエメリーと眷属の存在。
どれも『想像以上に大きな情報』だったじゃろう。
だからこそ得た情報に依存する。
必要以上に重要視する。
そして得られた情報以外のものを疎かにする。
わしが付け入るべきはそこじゃ。
情報を得ている【女帝の塔】と【世沸者の塔】は難しい。
情報を得ていない【赤の塔】と【忍耐の塔】は恐ろしい。
選ぶ先はわしの塔しかない。
情報という″安全″に縋ったからには、より″安全″なものを欲し続ける。
それは『情報の利用』ではなく、『情報への依存』。
ヤツらは自らの力に溺れ、驕り、それに囚われるのじゃ。
あとはヤツらを躍らせるのみ。開戦に際してそちらは大した問題ではない。
それよりも内々の方がわしとしては問題じゃった。
その策を秘密にしたままわしに任せるというのは普通ならありえぬ。
信頼――そう言葉にするのは簡単だが早々体現できるものではない。
得難い
左腕の組紐を見てそう思った。
信頼には応えねばならぬ。口だけで済ませるつもりもない。
皆の命とその覚悟――わしの塔で背負わせてもらうぞ。
■ドロシー 23歳 ドワーフ
■第500期 Dランク【忍耐の塔】塔主
『――そういうわけで配置については直前まで待っていてくれんか。用意してもらう魔物はあとでわしかアデルから個々に連絡するからのう』
『フゥさん、【甲殻の塔】の情ほ……』
『シャルロットさん、エメリーさんの運用に関してですが――』
ふーむ、やっぱりシャルちゃんが何か問題抱えとんねんな。
シャルちゃんに情報を渡すのも、シャルちゃんが何か喋るのもあかんって感じか。
この期に及んでまで知らせることのできないほどの何か……
シャルちゃんも可哀想やけどフゥとアデルちゃんの苦労は相当なもんやろ。
ウチも出来る限り手伝いたいところやな。
よお分からんけど。変なこと喋りそうなら二人が止めてくれるやろ。
「ウチの魔物は把握しとるんか?」
『うむ。詳しくは後の連絡とするがドロシーは防衛戦力をお願いしようかのう』
「実はウチも秘密で大戦力用意しとんねん。50,000TPもかかったんやで! 是非攻撃に使って欲しいわ!」
『えっ、ドロシーさん、それってまさk』
『お嬢様、紅茶が入りました』
『え、あ、ありがとうございます、エメリーさん』
『なるほど。ドロシーの奥の手ということじゃな。期待させてもらおうかのう』
ははっ、さすがフゥやな。速攻でブラフだってバレたみたいや。
アデルちゃんも笑っているところを見るにウチは正しかったってことやな。
つまり情報が抜かれとる、と。
まさかフゥみたいな方法とちゃうやろし……スキルか? 高価な限定スキルでも買うたんかな。
おそらく使われたであろうシャルちゃんが気付いてないみたいやし、ホンマ厄介なもん持っとるな。
ま、一番厄介なのはそれを見破ったフゥなんやろけど。
喧嘩を売る相手を間違えたなー、あの獣人は。
世界に一人のハイエルフやで? ある意味ジータさんより強敵やろ。
ウチは味方で良かったなぁ、ホントに。
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