61:ノノアさんにも試練の時のようです!
■ノノア 15歳 狐獣人
■第500期 Fランク【
同盟の皆さんはそれぞれランクアップしまして、階層が広がったり増えたりと、その修正で毎日お忙しそうです。
当然のように侵入者の数も増えているそうですし、その強さも増していると。
それに対して塔の構成を練らなければならず、悩まれている様子が窺えます。
毎日行われている会議の中で私の塔の心配までして頂いているので本当に感謝しかありません。
五つの塔の同盟の中でも私の塔だけが極端に弱いですし、本来であれば同盟を破棄され見捨てられてもおかしくはないと思います。
それが虐められたりもせず、見下されたりもせず、親身になって相談にのって下さる。
皆さんは私にとって救世主のような存在です。神です。神様以上に神です。
と、そんな最中、私のもとへ
申請自体はちょくちょくありました。やはり【弱き者の塔】と見られていますし、楽に斃せると思われているのでしょう。
特に同じFランクの塔から申請されることが多いです。
しかし同盟に入れて頂いてからその数は激減しました。
格下に見ていた【弱き者の塔】に強力な後ろ盾ができたことで警戒されたのでしょう。同盟を結んだのも何か理由があると。
やはり皆さんの影響力というのは大きい。畏れさせるほどの強さ。
もはや羨ましいなどとも思えず、ただただ敬服するばかりです。
『申請はどなたからですか?』
「え、えっと、【猟犬の塔】となっていまして……」
『塔主はピスタチオでしたか。Fランク同期の犬獣人ですわね』
……アデルさんよくそこまでご存じですね。
塔の名前を聞いただけでそこまでスラスラ出てくるのですか……。
仰る通り、同じ500期の獣人、私を入れて三人のうちのお一人です。
おそらく私と同じくセブリガン獣王国出身の方だと思います。接点はありませんが。
塔主総会の時に画面で見てはいたので「こんな顔した男性だったなぁ」というくらいです。
『まーた【弱き者】がどうとか、獣人のくせに他種族と組みやがってとか、そんなんかい』
これまたドロシーさんの仰る通りで、申請の時には一緒にお手紙も送られてきました。
私を馬鹿にしたようなよくある内容です。やはり獣人からすれば許されないことなのでしょうね。ただでさえ【弱き者】なのに他種族の皆さんと同盟を結ぶだなんて……。
『そのピスタチオさんの【猟犬の塔】というのはランキング何位でしたっけ』
『320位ですわよ、シャルロットさん。ノノアさんのたった10位上ですわ』
『追いつかれそうやから潰したいとかそういうことなんかな? それにしちゃ安直すぎる気もするけど』
『【世沸者の塔】をちょっとでも探れば攻略が困難であると分かるじゃろうしのう。それでも怒りや焦りが勝るのか、勝算があるのか、別の事情があるのか……』
『勝算があると思って下さるおバカさんだったら楽ですわね』
……なんか皆さんの中で色々と考えがあるようです。
私は普通に「弱いやつは消してやる」って感じで喧嘩を売られただけだと思っていますし、一応皆さんに報告しておこうかと、ただそれだけだったのですが……。
『アデルさんとフゥさんは【猟犬の塔】の情報、何か持っていますか?』
『大したものはありませんわ。塔構成もごく普通ですし、魔物はウルフ系とコボルト系が中心。群れで襲わせるのが基本という感じでしょうか。到底ノノアさんの塔を攻略できるとは思えませんわね』
……大したものを持っていると思うのですが。アデルさんにとってはその程度の情報は取るに足らないものだと?
『わしは探ろうとも思っておらんかったからのう。今から情報を集めようと思えば集まるじゃろうが……そこまでする相手か? どう考えてもノノアが負けるとは思えん』
『せやな。
『念の為二の鐘から五の鐘まで(約九時間)に限定しておいたほうがよろしいですわよ? Fランクの
……あれ? な、なんか
いや、私、こういう申請がきたって報告しただけで破棄するつもりでしたし、
『じゃあノノアさんにはその旨を書いてもらって返信、あとは返答待ちですね』
『これでノノアちゃんも初勝利やな! 今から祝勝会の準備せなあかんで!』
『安心せい、ノノア。わしも一応向こうの戦力くらいは探っておくからのう。あ、祝勝会は行きたい店があるんじゃが』
『同盟の
ああ……これはもうダメですね……申請破棄とか無理っぽいです。
怖いんですが、私。
で、でも、皆さん大丈夫って言って下さってますし……信じるしかありません……よね。
■ピスタチオ 23歳 犬獣人
■第500期 Fランク【猟犬の塔】塔主
「
【弱き者の塔】から返信がきた。正直、申請受理されるとは思わなかったがまさかの成功。
まずは第一段階突破だ。
申請時に同封した手紙で煽ってやったかいがある。頭も【弱者】ってことだな。
条件に関しては想定の範囲内だ。
あの塔はスライムしかいないらしいし、
そうなると攻め手がない。だから受けるとすれば
受けたからには守り切る自信があるのだろう。
最近は改装し侵入者も多く入っているらしいし、それでも一階層でさえ突破されていないようだから調子に乗っているに違いない。
しかし、それはあくまで侵入されているのがFランクだからという話。
冒険者にしてもFランクなんつーのは新人も新人。戦い方も知らない、バカなガキばかりだ。
そんなのを相手にして「一階層も突破されていない」「防衛ならできる」とイキっているわけだ。
だから受けた。同じFランクなら勝てる、防衛戦なら勝てると。
本当に頭が【弱者】だな。少し考えれば分かるだろうに。
こちらは攻めるだけとなれば全戦力を投入できるんだぞ? 守りなんか気にせずボスだろうが何だろうがともかく全戦力をだ。
向こうの塔構成を見るにウルフ系は使えないだろうが百体近いコボルトの人海戦術も使えるし、それより知能の優れたハイコボルトもいる。
虎の子の眷属であるウェアウルフまでいるんだ。
それで制覇できないわけがない。
もちろん【弱き者の塔】の情報も得ている。
今まで侵入者どもが解いたギミックはすでに手元にある。まぁ与えられた資料だけどな。
その情報を使い、尚且つ全戦力による探索を行えばお遊びみたいな謎解きなんぞ障害でもなんでもない。
制限時間は二の鐘から五の鐘までらしいが、三の鐘までに一階層突破は訳ないだろう。
あとは二階層を突破すればもう【弱者】の首をとるだけだ。
ま、せいぜい油断しているがいいさ。弱者は弱者らしく引き籠っていろ。
その首を手土産に俺は――
■ヴォルドック 26歳 狼獣人
■第490期 Bランク【風の塔】塔主
『【弱者】がバカ犬の申請を受けたって?』
『弱者同士、仲睦まじいなぁオイ』
画面の向こうのタウロとペルメは失笑気味にそう言う。
まぁ俺も同じ気持ちなのだが。
元々はピスタチオとかいう雑魚が俺たちに泣きついてきたのが始まりだ。同盟に入れて下さいと。
ランキングが発表され、その結果があまりに酷かったから焦ったのか。それとも【弱者】の狐がすぐ下だったから焦ったのか。そんなところだろう。
狐にしても犬にしても弱者は弱者。三百番台とか恥以外の何物でもない。
俺らの同盟に入れるわけねえだろうが。
図々しいにも程がある。弱者は弱者らしくとっとと死ね。
と、普通ならそれで終わりなんだが狐が【赤帝同盟】に入ったことで話は変わった。
【赤】も【女帝】も俺たちの″敵″になりうるからだ。
すでにCランク。タウロの【甲殻の塔】、ペルメの【暁闇の塔】と変わらない。
一年後には俺と同ランクにもなりかねない。それくらいのポテンシャルがある。
叩くのならば早いうちがいい。とは言え情報はまだ薄い。
そこで俺はバカ犬を利用した。
「【弱き者の塔】を
あの塔は【赤帝同盟】に入ってから全く別の塔に生まれ変わった。
明らかに同盟連中によって手が加えられている。
だからこそその全てを暴く必要がある。まぁ弱者を殺したいってのもあるが。
だが俺の
冒険者ギルドの持っている【弱き者の塔】の情報も同じだ。すでにバカ犬に渡してある。
俺の得た情報でバカ犬を
そこから【赤帝同盟】の手の内を探れれば上等だ。
まぁ弱者同士で楽しく遊ぶがいいさ。――俺たちの為にな。
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