191:シルビアさんがついに加入です!
■セリオ・ヒッツベル 23歳
■第499期 Cランク【審判の塔】塔主
『神様通信
【六花の塔】が【女帝の塔】【赤の塔】【忍耐の塔】【輝翼の塔】【世沸者の塔】と同盟を結びました!
以上お知らせでした! 神様より』
「やはりか……」
【六花】の塔主、シルビア・アイスエッジはアデル・ロージットと同じ派閥。
それを考えれば塔主総会のすぐあとに同盟を結ばなかったのが不思議なほどだ。
確実にアデル・ロージットの助言なり何なりが入っているはずだからな。
【浄炎】という存在がある中、独力でプレオープン一位をとるのは難しいだろう。
塔主総会後、【六花】は【雄弁】【鱗皮】と二つの新塔主を早々に潰し、一方で【女帝】同盟は【傲慢】同盟を斃すという大事件を起こした。
さらに【六花】が【死滅】を斃したかと思えば、【世沸者】が【浄炎】を斃し、【六花】が【女帝】同盟にやっと加入と。
昨年からずっとだが、まぁよくもこれだけ話題を振り撒けるものだ。
どうやら二年目となっても休むことはないらしい。傍から見ているこちらが不安になる。
【世沸者】と【浄炎】の一戦は正直かなり興味があった。
戦う理由も分からなければ、あの『謎解きの塔』がどうやって【荒天の魔女】ダリアを斃したのか、全く想像がつかない。
しかし今となっては「【女帝】同盟が【六花】を手助けするために【浄炎】を斃した」とも見える。
二強と言われる501期だ。ライバルが消えるのは【六花】にとって大きい。
「私たちより先に加入されてしまいましたね」
「よしてくれ。僕は傍観者でいさせてくれ。同盟なんて絶対ごめんだ」
「それは残念です」
ミリアが茶化すように言う。
あんな同盟の身内になったら心臓がいくつあっても足りないだろう。
むしろ【六花の塔】に同情するよ、僕は。心を強く持てよ、とな。
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
シルビアさんを同盟に入れようというのは、それこそ内定式の前からあった話です。
アデルさんの学校の先輩でメルセドウ貴族内でも同じ派閥とのことですしね。
親身になって教えるというのは伺っていましたし、だったら同盟に入れたほうがいいのではと。
しかし私たちはこの一年で良くも悪くも目立ち過ぎました。
色々な塔主の人から目をつけられている現状。
特にその頃は【傲慢の塔】同盟とのいざこざがありましたし【死屍の塔】のアンデッドが襲ってきた場合、新塔主となったばかりのシルビアさんでは為す術もなく攻略されてしまうだろうと。
まぁシルビアさんご自身もフェンリルも強いのは分かるのですが、それで確実に対処できるとも言えませんしね。
同盟に入れることのメリットよりデメリットの方が大きいだろうと判断していたのです。
それから私たちは【傲慢の塔】同盟を討伐しました。これでアンデッドが塔を攻略してくるという危険はなくなりました。
そして今、一番敵視しているのは【魔術師の塔】同盟と【霧雨の塔】同盟です。
これに加えて【聖の塔】同盟なども敵対心が表面化している敵ではあるのですが、今は置いておきまして。
他にも潜在的な敵というのは多数あると思いますが表面化していない、直接的なちょっかいは掛けられていないということです。
直接的なちょっかい――【死屍】のアンデッドのような私たちでも分かるような限定スキルは使われていないので、やられているとすれば私たちでは分からない手段。
ファムのような諜報型限定スキルとかですね。そういった何かで情報が搾取されているかもしれません。と言うか十中八九されていると思います。
しかしそれを知る手段も、防ぐ手段も、今の私たちにはありません。
一応フゥさんの
そういった限定スキルに関する予防や対応に関してもシルビアさんにお教えしたほうがよいのでは、となったのです。いっそのこと同盟に入れては、と。
ましてや目下の敵である【霧雨の塔】同盟にはシルビアさんがすでに仕掛けていますし、それがアデルさんの指示によるものだとバレているでしょう。ザリィドさんの目的がメルセドウ王国にあるのですから。
【魔術師の塔】同盟にしてもアデルさんとシルビアさんのつながりはよく知っているでしょうし、同盟に入っていない状況でも味方と思われているに違いありません。
だったらやはり同盟に入れておいたほうが今は安全なのでは、という結論です。
『【六花の塔】のシルビア・アイスエッジと申します。新参者ではありますが諸先輩方の足を引っ張らないよう精一杯努めて参りますのでどうぞよろしくお願いいたします』
同盟を結んですぐに全体通話をつなぎました。
が、すごく真面目そうな人ですね。アデルさんからは聞いていましたけど。
どこか貴族っぽい優雅さはあるのですが、どちらかと言えば冒険者気質の方が強いのでしょう。
と言いますか、諸先輩方と言われるのは照れ臭いですのでやめて貰いたいですね。
シルビアさんは私より年上ですし、先輩と言ってもたった一年ですから。
『もっと気楽でええで、シルビアちゃん。ウチは【忍耐の塔】のドロシーや。ドワーフやけどよろしくな』
『わ、私も獣人ですけどよろしくお願いします。【世沸者の塔】のノノアです……』
『シルビアさんは人種差別するような人じゃありませんわよ。それだったらわたくしが同盟に誘うわけありませんもの』
それはそうですね。王国派は平和でいいですねぇ、貴族派と違って。
まぁ貴族と言ってもそれぞれでしょうし、他人種嫌いの王国派や差別しない貴族派がいてもおかしくないとは思いますが。
『ふむ、だったら今のうちに言っておこうかのう』バサッ
『えっ……!?』
『詳しくは後日会った時にでも話すがのう。わしは【輝翼の塔】のフッツィルじゃ』
『そうですか……だから【魔術師】と【霧雨】を……合点がいきました』
【魔術師】同盟と【霧雨】がエルフを狙っていたからその一助としてシルビアさんに【死滅の塔】を斃してもらったのです。
その動き自体はアデルさんから聞いていたと思います。
人種差別反対もそうなのですが、フゥさんが身内にいたからこそ尚更阻止したかったというわけですね。シルビアさんもそう気付いたのでしょう。
今日は全体通話で画面をつなげるだけですが、直接会って自塔紹介や情報共有、今後の予定なども話し合うつもりですので、フゥさんがハイエルフでファムを扱えるというのもその時に話すつもりですね。
「最後は私ですか。【女帝の塔】のシャルロットと言います。シルビアさん、よろしくお願いします」
『よろしくお願いします』
「今度遊びに来た時におもてなししますからね、楽しみにしていて下さい」
『はい、出来れば【女帝の塔】をこの目で見て勉強させて頂ければと思います』
皆さんでわいわいお喋りしながらお食事でも、と思ったのですが……真面目ですねぇ。
でもせっかく同盟となったのですから他の塔が気になる気持ちも分かります。
それぞれの塔で個性が出ますし、その中で「自分の塔で使えそうなもの」を探したくなるんですよね。塔主あるあるです。
『それなのですが、【女帝の塔】に集まって会議するにも休塔日にしなければなりませんわよ。すぐに申請しませんと』
『えっ、営業終了後の夜に集まるとかではないのですか?』
『シルビアに伝える情報が多すぎるからのう。下手すれば一日では終わらんかもしれぬ』
『わ、私たちの塔のこととか、お勉強とか、予定とか、いっぱいですしね……あはは』
そうですね。それを話しながらお食事して皆さんでお風呂に入るのもいいですね。
日を改めて皆さんで街に繰り出すのはどうでしょうか。それも楽しそうです。
『それに【六花の塔】の塔章決めなあかんやろ。うちらの塔章も変えなあかんわ』
『えっ、わ、私もその、盾や旗を……?』
『そうですわね。どの塔章も″五色の輪″が入っていますから六色にしませんと。水色ですかね。シャルロットさん、組紐をお願いしてもよろしいですか』
「了解です。ヴィクトリアさんに頼んでおきます」
組紐を六色で作り直し。旗も修正なのか作り直しなのか、ヴィクトリアさんに負担をかけてしまいますね。
本人はウキウキなんですが。裁縫は特技であり趣味みたいなものだそうで。
スマイリーさんにも負担をかけてしまいますね。飾り盾の作り直しで。
ああ、街に繰り出す時に一緒に発注したほうがいいですかね。
ついでにランゲロック商店も紹介しておきましょうか。エメリーさん特製の石鹸とか売ってますし。
『そうか……同盟に入るということは私もあの飾りをしなければいけないのか……』
シルビアさんが何やらブツブツ言っていますが何か心配事ですかね。
相談だったら乗りますよ! 私だって一応先輩ですからね!
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