224:それぞれの塔を攻略していきます!
■フッツィル・ゲウ・ラ・キュリオス 51歳 ハイエルフ
■第500期 Cランク【輝翼の塔】塔主
【青の塔】には水属性の魔物が多い。それは【赤の塔】に火属性の魔物が多いのと同じじゃ。
当然、水魔法を多用する水棲魔物も多いが故に、塔構成も池や川、湖、海といった地形が多くなる。
そういった塔構成にしたほうが強い魔物を置けるんじゃから当たり前じゃな。
じゃが【昏き水の塔】のような「海一辺倒」というわけでもない。
なぜなら【青の塔】は″身体が青い魔物″も召喚対象じゃから。
水属性ではないコボルトなどがいい例じゃな。そうした魔物も配置できるような地形・塔構成も創られている。
一階層から転移魔法陣で六階層へと飛んだ我らの攻撃陣。
それを迎えたのは「水属性の魔物」と「身体の青い魔物」が共存できるような地形。
森の中に池があったり、川が流れていたりと、そういった地形の屋外階層が続いた。
コボルトリーダー(C)やコボルトキング(B)に率いられたコボルトの群れ。
水場からはケイブン(D)やケイブンナイト(C)、八階層まで行けばケイブンキング(A)も出て来る。
他にもブルーボア(C)やブルーサーペント(B)などの蛇系魔物とかじゃな。どちらかと言えば地上戦力が多かった。
それはつまり「この先に強い水棲魔物が出るぞ」ということの表れでもあった。
全十五階層で八階層にAランクの魔物が出て来るというのは、いくら【青の塔】がBランク上位であっても少々早いと思う。
おそらく上層では配置しづらい、戦いづらいからこそ中層に置いているに違いないと。
案の定、その予想は当たり、九階層は十階層と連結させての『海』じゃった。
トンボロ現象でも起きたような細い砂の道、その脇に海が広がるような地形じゃ。
戦いにくいのは間違いなく、マーマン(D)やマーマンメイジ(D)、
わしらはそれを
八階層よりも難易度が下がっている――と。
せめて攻撃陣にいたスキュラクイーン(A)はいてしかるべきじゃろう。しかしその姿はない。
つまりは上層に高ランクの魔物を集めているに違いない。即ちまた『海』階層があるということじゃ。
予想と警戒をドロシーやノノアと共有しつつ、わしらはさらに上の階層へと進む。
そうして訪れた十一・十二階層。またも連結されたそこは同じく『海』。
それも『浜と浅瀬』のようなものではなく、『海上に架けられた大橋』といった代物。
海の魔物を十全に活かすような塔構成であった。
【昏き水の塔】でも同じような階層があった。
そこではジータがクルックーに掴まり、全ての戦力が飛行しつつクルックーが焼き尽くすという戦法をアデルはとっておったが、同じような真似はできん。
こちらには地上戦力も多いし、クルックーほどの火力を持った飛行戦力はいないし、何より敵が強い。
当然のようにシーサーペント(A)が大波を引き起こそうと現れてはその対処に追われ、ここぞとばかりにスキュラクイーンが群れを率いて襲ってくる。
海からはマーダーシャーク(B)が強襲してきたりとまさしく波状攻撃を受け続けた。
極めつけはその階層のボス。
大橋の最終地点、上層に向かう階段の袂は円形のステージのような足場があり、そこには『人魚姫』か『海の女王』とでも呼ぶべき魔物が陣を布いていたのじゃ。
間違いなく【青】の固有魔物。その力量は不明。しかし強者であることは疑いようもない。
『キラリン! 前衛の隊列を崩したらあかんで! ウリエルは止まらずに空から攻めてくれ! 上はウチのが有利や!』
『ディーゴ! 魔法防御を優先でお願い! パルクはゴーレム部隊の回復を!』
「ゼンガー爺もエァリスも攻撃優先じゃ! 回復はパルクと天使たちに任せよ!」
わしらの叫ぶような指示は続く。
さすがにノノアのスケルトンやドロシーのゴーレム、わしの鳥たちにも被害は出ておる。
受け続ければ劣勢になるばかりじゃ。攻めて打開しなければ。
しかも恐ろしいことに……これでまだ十一・十二階層なんじゃよな。
おそらく十三・十四階層が連結されていて、そこが最終決戦場に違いない。
これほどの軍勢、これほどの戦いでまだ前哨戦とは……気が重くなるのう……。
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
私とアデルさん、そしてシルビアさんの戦力を加えた攻撃陣は【魔術師の塔】に攻め込み、一階層の転移魔法陣から十一階層へと飛びました。
そこから二十階層までを攻略する長い旅。
エメリーさんたちにとっては本日三塔目の攻略になります。
Cランクの【宝石の塔】とBランクの【霧雨の塔】では難易度が別物でしたが、Aランクの【魔術師の塔】は次元が違うと言えます。
同じAランクの【傲慢の塔】も魔物の質の高さに驚かされましたが、その【傲慢】と比べても確実に上。
昨年のランキングでも15位と9位ですから違っていて当然なのですが、同じAランクでこうも違うかと思わされました。
特筆すべきは魔物の多様性でしょうか。
【魔術師の塔】で召喚できる魔物は魔法を扱うものが多い。そしてそんな魔物はそもそも多くいるのです。
火魔法を使う【赤の塔】にいそうな魔物、水魔法を使う水棲の魔物、風魔法を使う飛行系魔物、土魔法を使う地中の魔物。
四属性魔法を使う精霊系や、闇魔法が得意なアンデッド、魔法そのものが得意な妖精系・ウィッチなどの魔物もいます。
神聖魔法を使う魔物や悪魔系がいるのかは分かりません。少なくとも【赤の塔】に攻め込んだ攻撃陣にはいなかったそうですが、いてもおかしくはないでしょう。
ともかくそうした種類豊富な魔物が召喚可能で、それに見合う塔構成を創ることができると。
それが【魔術師の塔】の強みなのではないかと思います。
十一階層は『火の洞窟』、十二階層は『氷の洞窟』とその特性を活かした階層が続きます。
連続して探索するには困難極まりないですし、正反対の性質を持つ地形と魔物は対処するだけで一苦労。
その上、十一階層からCやBランクの魔物に混じってAランクの魔物がいるのですから本当に厄介です。
とは言えこちらも、ほぼ最高戦力と言える攻撃陣を用意しましたし、最前線に総指揮官のエメリーさんを置いているので順調に進んではいます。
屋外階層の場合、大部隊なので隊列が長くなるのが難点なのですが、そこは眷属を多く出している強みと言いますか、私たちが眷属に指示したり、部隊長や指揮官の統率が上手くいっているのもあって今のところは問題ありません。
私のほうはその為のクイーンみたいなところもありますし、シルビアさんは
アデルさんのところがセイレーン(★S)を召喚したばかりでどうかと思いましたが、
ジータさんは最前衛で露払いのような役割ですね。指揮官ではないです。
『しかしこうして見るとエメリー殿は凄まじいですね……完璧な斥候をしながら二百もの部隊の全体指揮をするなど、およそ人にできることとは思えません』
『わたくしたちはさすがに慣れましたけれどね。シルビアさんにとっては初めて見る光景でしょうし驚くのも無理ないですわ』
「ご本人は指揮や斥候よりも単体戦闘のほうが得意と仰っていましたよ。指揮の不足分をクイーンや眷属の皆さんに任せているのだと思いますが」
『あれで不足というのが信じられませんよ。一体どんな頭をしているのやら……』
異世界での経験に加えて、多分<並列思考>のおかげもあるのだと思います。
色々なことを瞬時に同時に考えられないと出来ないと思いますし。
そうして困難だけど順調と言えるような探索は続き、十七階層までやって来ました。
ここまではそれほど危険と言えるような場面もなく、それもまたエメリーさんや皆さんの力だと思います。
十七階層は『森』。屋外地形です。
出て来る魔物は精霊と妖精系、そして鳥ですか。
厄介なのは
これまでもそうですが飛びながら撃ってくる魔法は本当に厄介で、完全に守ろうとすると
エメリーさんも魔竜斧槍の魔法をすでに解禁していますが
結局、魔法要員は防ぐことを第一にして、その隙に攻撃する。もしくは撃たれる前に突貫して斃すというのが基本的な戦い方になります。
その役目がエメリーさんやナイトメアクイーン、ジータさん、クルックー、シルバあたりですかね。
残りが守備寄りになっているわけです。
『十七階層ともなると魔物の数も質も異常ですね……Aランクの魔物がこんなにも……』
『逆ですわよ。あとたった二階層しかないのにAランクの魔物しか出ていない。それが危険ですわ』
「【魔術師の塔】にとってのAランクの魔物は私たちにとってのCランクの魔物とほとんど同義でしょうしね。はたして上にはどんな魔物がいるのやら……」
ここまでSランクの魔物も、固有魔物も出て来ていません。
おそらく眷属もまだなのではないでしょうか。
十八・十九階層がつながっているようならとんでもない精鋭大部隊になるでしょう。
つながっていなくても厳しい階層が二連続で続く、そんな不安があります。
今一度私たちも気を引き締めていかないとだめですね。
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