218:霧雨の塔の攻略、始まっています!
■ザリィド 34歳
■第486期 Bランク【霧雨の塔】塔主
【女帝】が俺の塔に乗り込んできている。
面子はメイドとユニコーン、ヴァルキリー、ハイフェアリー以外はガラリと変わった。
ヴァンパイアのクイーンとウィッチクイーン(A)の部隊は消え、代わりにサキュバスクイーン(B)、ラミアクイーン(B)の部隊。
Sランクの固有魔物と思われるフェアリークイーンの部隊までいる。
さらにはカーバンクル(A)マンティコア(A)サジタリアナイト(A)が一体ずつ。
正体不明の六本腕の鎧剣士が一体。合計で約八十体ってとこか。
【女帝】の戦力は事前に聞いちゃいたが、どんだけクイーンを抱えてんだと言いたくなる。
俺の所もラミアクイーンは召喚できるが、さすがに【女帝の塔】はクイーン特化ってことだろうな。
あとは数を絞って高ランクの魔物を集めましたってところだろう。
【宝石の塔】から連戦だってのに八十だけでもよく揃えたもんだ。
【女帝】の攻撃陣が入ってから少し経って、【輝翼】の攻撃陣も入って来た。
爺の
【女帝】と合わせりゃ合計百二~三十体ってところだ。
俺の攻撃陣が【輝翼の塔】に乗り込んでいるのによくこれだけ捻出したな。
その代わりに【女帝】が防衛陣としてヴァンパイアのクイーンの部隊、ウィッチクイーンの部隊、アラクネクイーン(B)の部隊を回したようだが、それにしたって
【輝翼の塔】の守りは薄くなった。それは間違いない。
あとに残っているのは固有魔物であろうドラゴンと鳥だ。
そこをスピリットレギオン(S)たちゴースト部隊が仕留めれば終わりだ。数の暴力で十分いける。
後ろから【女帝】軍が迫って来るだろうがそっちはアシッドナーガ(A)やラミアクイーン(B)たち地上部隊に食い止めさせる感じか。
攻撃のほうはそうした指示だけ投げておいて、俺が注視すべきはやはり防衛だろう。
メイドだけでも厄介すぎるのに追加で
ここを警戒しねえとただ殺されるだけだ。冗談じゃねえぞ。
と、思って画面を見ていたんだが、どうも向こうの攻撃陣の様子がおかしい。
先頭はメイド。これは【宝石の塔】の時と変わらねえ。斥候しつつ露払いしつつ、あの時ほどの速度じゃねえが若干小走り気味に進んでいる。
その脇にフェアリークイーンの部隊と爺の
鳥どもも一緒だ。つまり地上部隊が
そこから少し空いて、サキュバスクイーンとラミアクイーンの部隊、その他の魔物が続く。
陣が前後に間延びしているのだ。すでに先遣部隊と後続部隊といった感じになっている。
普通に考えりゃ悪手に違いねえ。わざわざ攻撃陣を二分するなんて愚策どころの騒ぎじゃねえからな。
考えられるとすれば……やっぱり早く攻略してえって気持ちの先遣部隊とそれに付いて行けない後続部隊で分かれちまってるのか? そんな馬鹿な真似するか?
確かにメイドがいる時点で『先遣部隊だけで十分』となるのかもしれねえ。だからこそ突出していると。
だが、だったら後続部隊は【輝翼の塔】の防衛に回せばいいだけの話だ。わざわざ遅れて付いて来させる理由はねえだろう。
となれば……後続にも何かしらの意味があるはずだ。あれはあれで潰しておいたほうがいいだろう。
高ランクの魔物はメイドに当ててえから雑魚をまとめて
先遣を素通りさせることになっちまうが……いやそれも危険だ。少しでも削っておくべきだしな。
チッ! 訳分かんねえことしやがる……!
考えてみりゃ去年からずっとこいつらは訳分かんなかったからな。理解しようとするだけ無駄なのかもしれねえ。
大人しく当初の計画通りにやるしかねえか。
削った上で、戦力差で勝つ。最優先はメイドの討伐だ。
■ドロシー 24歳 ドワーフ
■第500期 Cランク【忍耐の塔】塔主
【女帝】戦力が【輝翼の塔】に属して【霧雨の塔】の攻略を始めた。
それから少し経ってこっちにも動きがあった。
転移門から【青の塔】の第三陣が入って来たんや。それも
おそらくこれ以上攻撃陣は送らないつもりやろうな。
エメリーさんが【青の塔】に来ないと分かったからウチの塔の攻略を早めようとした。
しかし防衛陣の主力を送り出すのは躊躇われた。防衛力の問題か合流するための速度の問題かは知らんけど。
で、最高戦力の
それを画面で確認したウチは「釣れた!」と思わず声に出した。
そしてウリエルに指示を出す。裏道使って急いで二階層か三階層へ向かえと。
目的は
今回の相手【魔術師】同盟全体で最も警戒が必要な相手は【青】の
しかし本来、
【青】がウチの塔を攻めると聞いてからワンチャンこっちに来るか、と思ってたけどそれがやっと実ったらしい。
これ幸いとウリエルに頼んだわけや。
一応警戒して、隠れながら、いつでも逃げ出せるように見させたが、どうやら成功したようでホッとした。
眷属伝達で伝え聞いてからはすぐに退散させたわ。見てて怖くなるような偵察やったで。
なんで怖かったかっちゅうと、<人物鑑定>した結果、そいつ――ベンズナフという名前らしい――が斥候とか暗殺者みたいな能力を持っていると分かったからや。
もしウリエルが近くで見よう思うたら見つかったやろうし迎撃されていたかもしれん。
そう考えると背筋の凍る思いがした。
「あ、暗殺者ですか……【強欲】の
「<闇魔法>も使える暗殺者って感じやからちょっと違いそうやな。ステータス的には敏捷・魔力・器用の順で高い」
敏捷はAやからウリエル以上、ターニアさん以下。魔力がA-、器用がB+。
さすが
ゼンガーさんはどうやろな。近距離まで詰められたら負けるかな、さすがに。
「ス、スキルはどんなです?」
「<闇魔法>の他は<気配微小><罠察知><気配察知><暗視>とか斥候系が多くて<短剣術>とかもあるし、もちろん<暗殺><急所察知>とかもある。あとはよお分からん<影なんとか>ちゅうのがいくつか」
聞いた事のないスキルやからもしかするとコイツも異世界人かもしれん。異世界特有のスキルなのかも。
となれば益々警戒はせなあかん。
ウリエルがバレなかったことから<気配察知>はエメリーさんほどじゃないと分かったけど<罠察知>とかはどうか。下手すると五階層までの罠が全く通用しないってこともありうる。
今は前線が五階層の『トラップ回廊』で詰まっとるけどな。ベンズナフが追いついたら速攻で攻略されるかもしれん。
そうしたら六階層以降の魔物で勝負せなあかんな。
ノノアちゃんの戦力を入れても普通にぶつけたら分が悪いか……。
「やっぱ六階層からある程度削らな勝負にならんな。賭けになるようで嫌やけど」
「『砦』の″分岐″ですか……上手い具合にバラけてくれるといいのですがね……」
「指揮官の能力次第やけどバラけたところで相性が悪かったら終わりや。やっぱ賭けには違いない」
それでもやらんわけにはいかん。
大軍同士でぶつけたところで不利やし、無理してでも削らんと。
とりあえずライアンには配置変更を伝達しとくか。
■エメリー ??歳
■【女帝の塔】塔主シャルロットの
【霧雨の塔】はその名のとおり、水属性の魔物や霧状の魔物、ゴーストなどが多いようです。
ならば【昏き水の塔】のように水場ばかりの地形なのかと言うとそんなことはなく、『森』や『湿地』のように屋外地形がほとんどで、その中で水属性の魔物が活きるように池やら雨やら霧やらを足しているといった階層ばかりのようですね。
上層に海や湖などの水場の地形があるのかは分かりませんが今のところ探索に支障はありません。
【輝翼の塔】の『霧の森』に似ている部分もありますが、あそこほど緻密に計算された塔構成ではなく木々が密集しているわけでもない。
まぁ【輝翼】の場合は鳥を襲い掛からせて足元の罠に掛けるといった手法なので違って当然なのですが。
こちらの場合は鳥もいるにはいますが主力はラミアだったり、リザードだったりと地上戦がメインなのでわたくしとしては戦いやすいですね。
問題はゴースト系の魔物が多いことでしょうか。
攻撃陣にもスピリット(A)やスペクター(A)、ファントム(B)などがいましたが――おそらく上層にいると思いますが――他にもレイス(D)なども多く見られます。
ゴーストは物理が効かないので厄介なのですよ。
リッチのように神聖魔法しか効かないというわけでもないのでその点は助かるのですが……神聖魔法が一番効くのは間違いないそうですがね。
そういったわけで、わたくしも魔竜斧槍の魔法を使うかどうか悩み中です。
出来れば隠しておきたい。ついでに言えばゼンガー様が高位神官であることも隠したい。
ですので現在はハイフェアリーの魔法や、鳥部隊の魔法で迎撃をしています。
これがいつまで隠し通せるものか……欲を言えば【魔術師の塔】に行くまで隠したいですが、さすがに無理ですかね。
あとはパトラやラージャたち後続部隊もどうしたものかと悩んでいます。
今は少しの距離を離して、こちらが露払い、後続が後始末といった感じで続いてもらっていますが、あまり離してしまうと狙われた時にフォローに行けないですし、かと言って一塊にしたところで【強欲の塔】戦のように殲滅などできませんしね。
とりあえず今はこれで継続し、【赤の塔】や【忍耐の塔】の様子で速めることも視野に入れておきますか。
パトラとラージャの二人だけ前に入れるというのもアリですし、如何様にもなるでしょう。
「ターニア様! 儂の魔法をご照覧あれ!」
「ゼンガー様、ダメです。魔法はまだ禁止です。下がって下さい、邪魔です」
「あらあらあら~、じゃあ私が撃っちゃいますね~」
ゼンガー様が張り切りすぎなのが、今のところ一番の問題ですね。
フッツィル様に手綱を握って頂くようお願いしておきましょうか……。
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