423:同盟戦を終えて~六花編~
■シルビア・アイスエッジ 23歳
■第501期 Dランク【六花の塔】塔主
【空城】同盟との
一見すると完勝のように見える。実際被害はかなり少ない。私の出した戦力など全く喪っていないしな。
とは言え手離しで喜ぶだけで終わらせることは出来ないだろう。
完勝の決め手となったのは戦力差によるところではないと思っている。
確かに固有魔物の数で言えば圧倒していたが、全体的な質の高さで言えば【空城の塔】が群を抜いているわけだからな。
今回の
それだけで勝敗が変わるとまでは言わないが、少なくとも被害は大きくなっていただろう。
もしその対処をこちらが誤れば攻撃陣はかなり苦戦していたのではないだろうか。
そして勝因の二つ目は【空城】ヘルロック伯が、こう言っては何だが
もちろん優秀な塔主であることは間違いないのだが、今回に関しては随分とミスが目立っていたように思う。
本国からの命を受けて焦っていたのか……理由は分からないがな。
もしくは私が身近にいる優秀な塔主と比べてしまっているだけかもしれない。
条文の取り決めもそうだし、代表塔を【潮風の塔】にしたのもそうだし、攻撃と防衛の戦力配分もそうだし、【女帝の塔】の攻略もそうだし、防衛の仕方もそうだ。
新米の私からしても「これで本当に勝てると思っているのか?」と思わせるような戦い方だったと思う。
条文に関しては、早くに
仮に【空城】【潮風】で計三個の限定スキルを持っていたとすれば最低でも800,000TPほどの価値があるはずだ。
今回の
それをみすみす捨てようなどと愚策にもほどがある。
ヘルロック伯は自らの有利を捨てたのだ。
まぁそうしてでも
そして限定スキルが使えないのなら代表塔を【潮風の塔】とすることに拘る必要もない。
広々とした屋外階層は向こうの利でもあっただろうが、こちらにとっても利なのだから。
代表塔をBランク同士にすることで成立させやすくしたのだろうが、【空城の塔】で階層数を限定したほうが難易度は高いに決まっている。
【潮風】の鳥系魔物や水棲魔物は使えなくなるが、その分【空城】の戦力で固めればいいのだ。
もし代表塔が【空城の塔】であったならこちらの飛行系魔物も戦いづらくなるだろうし、すんなり攻略とはいかなかっただろうと思っている。
完全防衛策に出ず、戦力を分散させ【女帝の塔】に攻め入ったのも間違いだ。
仮に「早く【女帝の塔】を攻略しなければ」と思うのならば、せめてこちらの攻撃陣を見て、現在の防衛陣だけで守り切れるかを確認してから攻め込むべきだった。
攻撃陣の中にはどう見ても固有魔物が多いのだから警戒すべきだろうし、そこでどう守るか、どう攻めるかを判断すべきだった。
しかも騎士型の人型魔物やエンシェントヴァルキリー(S)といった重要な戦力を軒並み攻撃陣に回していたのだ。
私はてっきり防衛陣にもエンシェントヴァルキリーがいると思っていたのだが、どうやら攻撃陣にいた者で全てだったらしい。
広々とした【潮風の塔】で戦わせたほうが強いに決まっているだろう?
それをなぜ全て攻撃陣に回してしまったのか。
意地でも【女帝の塔】を攻略してやるという気持ちの表れだったのか。
こればかりは本当に理解出来ない。私にはヘルロック伯を擁護出来ないな。
その攻撃陣にも無茶な攻略をさせて結局は五・六階層で壊滅。
残った戦力で防衛しようとしても騎士系・水棲系・鳥系をバラバラの階層に配置したせいで、こちらに大した被害を与えられずに各個撃破されたのだ。
そういった意味でも【空城の塔】を使い【空城】の戦力で固めていたほうがこちらは苦戦しただろう。
私としてはヘルロック伯にそういった″悪手″があったから完勝出来たと思っているが、その背景にはラッツェリア公国の事情もあるのだろうし、それ以上にこちらの策が上手かったというのもあるだろう。
条文の取り決めの際、
ドロシー殿やフッツィル殿にしてもそうだが、やはり優秀すぎる。
個人的にはこの三軍師であれば【大軍師】シュレクト・ササーをも上回るのではと思っている。
いずれにしても条文取り決めの段階からこちらに有利な状況を作り上げ、結果として″完勝″にまで持って行けたのだ。
ヘルロック伯以上に優秀な頭脳がこちらには揃っていた。だから戦う前から勝負は見えていたのだと。
ちなみにアデル様ご自身は「同盟戦力を集めてみたら予想以上で驚いた」と仰っていたが、それは同盟の皆も同じことで、今後の同盟の課題にも挙がっている。同盟全体の戦力を把握しておこうと。
六塔がそれぞれ自塔戦力の増強を図っていたせいで全体の戦力把握がいまいち出来ていなかったのだ。
固有魔物は何体いて、その配下・部隊はこれくらいの規模になる。
それを
いずれにせよ今後を見据え、情報は共有しておくべきだろう。
今後というのはもちろん【節制】同盟戦を指すわけだが、その時に今回と同じ戦力で臨むというわけもない。
今回の報酬TPもあるし、それぞれに戦力補強をした状態で戦う形となるだろう。
となれば固有魔物は今以上に増えることになるのではないだろうか……とも思うが、それは
【節制】同盟から
メルセドウの情勢も不透明で中立派粛清がいつ行われるかも分からない。【節制】側は焦っていることだろう。
条文のやり取りではそんな焦りなど見せてこないだろうがな。シンフォニア伯が優れた策士であるのは有名なのだから。
こちらとしては別に焦る必要などないし、何なら戦わなくてもいいのだ。
自動的に中立派は粛清され【節制】同盟は被害を受ける。それは王国派の勝利でもあるし我々の勝利と言ってもいい。
しかしアデル様は野放しとなるのを良しとはしないだろう。【節制】同盟とは必ず
その時期が『すぐ』なのか、『戦争の直前』なのか、『中立派粛清後』なのか、それが読めない。
条文のやり取りの中で優位性を見つけ、こちらの塔の状況が合えば申請を受理するのでは、と私は思っている。
従って私も【六花の塔】をもっと強くしておかなくてはならない。
報酬TPを使いどのような戦力を補強しておくべきか。非常に頭を悩ませている。
限られたTPで如何に強くなれるか。どうすれば同盟の力となれるのか。難しい問題だ。
まず召喚報酬となっている魔物を見てみれば……。
=====
【青の塔】青竜リヴァルナーガ(★S)
【魔術師の塔】デュアルドレイク(★A)
【黄砂の塔】天翔皇ホルス(★A)アヌビスA
【鬼面の塔】鬼将カムゥロイ(★A)、オーガキング(A)
【息吹の塔】ストームグリフォン(★A)、スコールドラコ(B)
【熱線の塔】
【空城の塔】震牙虎ドゥーナァ(★S)、ファングキング(A)
=====
このような魔物が残っている。
風属性で使いやすい天翔皇ホルスやストームグリフォンを第一候補に挙げていたわけだが、【空城】同盟戦の報酬で虎部隊をまるまる手に入れることが出来た。
上には書いていないがファングキングの配下としてシルバーファング(B)もかなりの数がいる。
いざ召喚となった時には同盟の皆に許可をとるつもりではいるがおそらく許されるだろう。
寒冷の塔に見合う魔物かと言われれば首を傾げるが、ドゥーナァ率いる虎部隊というのはあまりに魅力的すぎる。だからこそ悩ましい。
もしくは順当に【六花の塔】のリストから高ランクの魔物を召喚しておくという手もある。
霜巨人ヨートゥン(★A)やクロセル(A)の上位種であるヘル(S)などだな。
単純に
おそらく【節制】同盟との
同盟全体の戦力把握と合わせて、私も色々と考えてみようと思う。
あとは、いつ
先述のとおりいつ戦いになってもおかしくはないし、長引けばこちらに有利になるのは間違いないのだが、タイミングによっては非常に戦いづらくなる。
というのも、もうじき後期の塔主総会なのだ。
そこで私たちはランクアップすると思われる。
下手したら【忍耐】【輝翼】【世沸者】【六花】の四塔がBBCCとなるかもしれない。
さすがに【女帝】がAランクに上がることはないと思うが……戦力的にはAランクでも不思議ではないのだがな。
【忍耐】【輝翼】が限定スキルを取得して間もないだとか、【六花】の戦力がまだ不足なのではないかとか不安はあるものの、おそらくランクアップするのでは……と皆で予想している。
そうなればランクアップ直後の塔改装に追われ、しばらくは塔運営が安定しないだろう。
今から準備したところで、実際に修正したり構成を創ったりするのはランクアップしてからなのだ。どうしても時間は掛かる。
今は【節制】同盟が動けない時期に当たるが、もう少ししたら今度はこちらが動けない時期になるだろう。
そこで
必然的に代表塔を【女帝】か【赤】にしての
それは策の選択肢を狭めるということに繋がる。敵としても対抗策を立てやすくなるだろう。
【節制】同盟はそこを狙っているのではないか、とも思うのだ。
焦り、急いでいるのは間違いないが、時期的に有利な塔主総会後をポイントとしているのではと。シンフォニア伯ならばそう考えていてもおかしくはない。
いずれにしても私に出来ることは限られている。
ランクアップしようがしまいが、戦力増強案を考え、ランクアップした時のために構成案を考える。
そうして
まぁそれ以前に日々の塔運営を頑張らなければいけないのだがな。引き続き地道にやっていくとしよう。
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