318:黄神石の塔の攻略は順調です!
■オーレリア・ブルグリード 43歳
■第488期 Bランク【黄神石の塔】
敵攻撃陣があまりにも順調すぎる。
その異変に気付いたのは敵が五階層を侵攻中のことでした。
道を違えず、順路ばかりを選んで進んでいる。これは明らかにおかしいと。
「まさか……諜報型限定スキルですか」
「【赤】の限定スキルは防御型か察知型ではなかったと?」
「それしか考えられないでしょう。少なくとも塔構成はお見通しと見て間違いないですわ」
新年祭の【狂乱】事件。
あの時、ジータはゼーレの接触を防ぎました。そして逸早く限定スキルに言及したのがアデル・ロージット。
メイドも動いていたことから【女帝】が『限定スキルに対する防御型か察知型の限定スキル』を持っているのかと思いましたが、アデルの言動から、可能性が高いのはアデルだと思いました。
だからこそ今回の
仮にこちらが攻撃系やバフ系の限定スキルを持っていてもカウンターがとれるように自塔での戦いを優先させた。そう思っていましたのに……その実は諜報型だったというわけですか。
ならばあの時ゼーレを察知したのは【女帝】で間違いない。
そして【赤】が完全防衛策に出ていたのは、単に勝率が高いと踏んだだけ……ですか。深読みしすぎましたわね。
しかし諜報型限定スキルを使われているとなれば対策しなければなりません。今からでも間に合います。
塔構成は弄れませんが、魔物配置は動かせるのですから。
「猿部隊を動かしますか。十四階層でランスロットたちと共に戦わせるか、十三階層のままで奇襲的に使うか。どちらがいいと思いますか?」
「そうですね……いっそのこと併用するというのはどうでしょう」
「どういうことです?」
「猿部隊は十三階層の端に寄せて息を潜め、素通りさせます。そして十四階層に上がって早々に私の部隊がぶつかり、猿部隊を十四階層に引き上げて挟撃……という形です」
なるほど。猿部隊が戦いやすい″森″は放棄することになりますが、一番被害を与えやすい策であるのは間違いないですね。
アデルは諜報型限定スキルで猿部隊が十三階層の最終地点に群がっていると把握しているはずです。
しかしそこにいないとなれば十四階層を余計に警戒するでしょう。前衛は厚くせざるをえません。
そこを後ろから突くわけですか……なかなかやりますね。うちの騎士団長も。
「それでいきましょう。ヴァナラには伝達しておきます」
■アデル・ロージット 19歳
■第500期 Bランク【赤の塔】塔主
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例えばアダマントゴーレム(S)がいるとすれば、正面から戦うだけ時間の無駄です。ジータさんを相当な時間束縛してしまいますからね。
これを斃すには色々と方法がありますが、まずは味方へのバフ、敵へのデバフが重要でしょう。味方の魔法はそういったことに多くを割くべきです。
油瓶をぶつけて滑らせるというのも有効です。ゴーレムは反応速度も遅いですし、転んでから立ち上がるまでも遅いですから。
その上で火魔法、というのもいいですしね。
あとは同じゴーレム同士をぶつけるという手もあります。倒れたゴーレムの上に別のゴーレムを投げつける、ですとか。
まぁそれだけの膂力を持った魔物がいればですがね。ジータさんでもさすがに厳しいと思いますし。
ガーゴイルあたりを<闇魔法>の<重力魔法>で叩き落すというのもいいですね。それがゴーレムの直上であれば尚良しです。
いずれにしても、脆くなった急所――ゴーレムならば胸一択ですが――に強烈な一撃を加えて斃すという方法が一番楽です。
同盟の皆さんで参考になさって下さい。
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物理防御の高い相手には魔法で攻撃するのが一般的ですが、中には魔法にも強い魔物もおります。高ランクの魔物に多いのですが。
そういった魔物には逆に、魔法よりも物理で攻撃したほうが楽に斃せると思います。
もちろん相応の力が必要なのですが、剣よりも槍といった一点集中の攻撃で急所を狙うというのが理想ですね。英雄ジータには釈迦に説法だと思いますが。
肩や膝を狙うのもおすすめです。ゴーレムやガーゴイルはそこに矢を撃ちこむだけで動作不良を起こしますし、まともに動けなくなります。リビングアーマーなども同じですね。硬い外殻がそのまま本体ですから。
あとは直接的な攻撃ではありませんが、体勢崩しや隊列崩しの目的で<風魔法>を使ったり、<
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レイチェル様とクラウディアさんからのお手紙にはそんなことが書いてありました。
本当に親切で為になることばかり。
実際に戦うわたくしだけでなく同盟の皆さんも感心しておりました。
特にドロシーさんはショックを受けるほどでしたわね。ご自分で主力にゴーレムなどを置いているのですから。
こうも対策をバンバン出されると、使いたくなくなってくるのではないでしょうか。
ともかくそうしたわけで今回の攻撃部隊には魔法部隊を多くしてありますし、ジータにも色々と持たせております。
最高級のマジックバッグ――それでもエメリーさんの物の数十分の一の容量ですが――に薬やら油やら詰め込みました。
それを以って【黄神石の塔】を攻略しておりますが、まぁ今のところ問題はありませんわね。
レイチェル様とクラウディアさんからのアドバイスもそうですが、クルックーの偵察もありましたし。
ファムよりクルックーが優れている点は、クルックーの視点を画面で見られることです。伝え聞くだけでなくわたくしもジータも実際にその創りを見ておりました。だからこそ順調であると。
強いて言えば罠配置が分からないのですが、その為に斥候系魔物も多く投入しておりますし、あとはジータが全体指揮をとれば探索に不備はありません。
本来であればジータは最前線で剣を振るいながら指揮をとりたいのでしょうが、しばらくは我慢ですわね。
自分は中央でどっしりと構え、魔物に戦わせる。それも騎士団長様のお仕事でしょう。
『次のボスはクリスタルゴーレム(A)だから俺がヤってもいいか?』
「オルトロス(A)部隊に任せてはダメですの? なるべく戦闘を見せたくはないのですが」
『犬部隊はミスリルゴーレム(B)だな。誰かがクリスタルゴーレムを抑えないと意味がねえ』
「でしたら本気は見せない程度でお願いしますわ。間違っても
『あいよ、了解』
ジータはランスロットとかいう固有魔物と戦うかもしれませんからね。ジータの戦う姿はあまり見せたくありません。
まぁいずれは見せることになるので仕方ないのですが。
それよりも『本当にランスロットと戦わせるか』という問題があります。
クルックーが
しかしこちらとしてはなるべく魔物を斃して魔石を手に入れたいですし、召喚権利もあるに越したことはありません。
十三階層の『森』にはおそらく【跳躍の塔】の召喚報酬と思われる魔物が多くおります。
ヴァナラと呼ばれていた固有魔物やハヌマーン(A)、キラーエイプ(B)にエイプウィザード(B)。
【黄神石の塔】にいないタイプの魔物だからこそ重用し、専用の階層まで用意したのでしょうが、それはわたくしにとっても同じ事。【赤の塔】にはいないタイプだからこそ召喚権利は得ておきたいと。
そして十四階層に集結している【黄神石】の主力。
地竜の固有魔物(おそらく★A)を中央に、【女帝の塔】にもおりますロイヤルナイト(A)、ジェネラルナイト(B)、ガードナイト(C)。
空にはミスリルガーゴイル(A)とガーゴイル(B)。そして総指揮官のランスロット(おそらく★S)。
まぁ欲しい魔物が沢山ですわね。ランスロットなどわたくしが求めていた攻撃陣の指揮官にぴったりです。部隊まるごと吸収して運用したいくらいですわ。地竜は少々考えものですが。
しかしそれらの魔物とこちらの攻撃陣がぶつかるとなった場合、果たして勝てるか。勝てたとしてもどれほどの被害が出るか。
それを考えると、当たる前にクルックーの出番かな、とも思うわけです。
「――と悩んでいるのですが、エメリーさんはどう思います?」
『アデル様の戦いですのであまり無責任なことは言えないのですが……』
「忌憚のないご意見を伺いたいですわ」
『そうですか……わたくしでしたら間違っても喪えないセイレーン(★S)やルサールカ(A)には完全に引かせて後方からの魔法支援に留め、あとはジータ様に存分に戦わせます』
「やはりそうですわよね」
特に十四階層の魔物は魔法なし、回復なしで物理攻撃のみでしょうから――ランスロットと竜は不明ですが――相性的には有利だと思います。
わたくしもいけるかも、とは思っているのですがね。さすがにあの量を相手にジータを最前線で戦わせ続け、その上ランスロットの相手もさせるというのはどうかと思ったのですよ。
まぁ画面共有をして実際に見ているエメリーさんのお墨付きならば少しは安心ですか。
『そのために
「ですわね。そこはわたくしも注意しますわ」
オーレリアの限定スキルは<黄神の加護>というそうです。
聞く限りですと味方の魔物にバフをかける感じですわね。防御力か耐性か、それとも別の何かかは分かりませんが。
少なくともこちらにとって致命的なものではなさそうですので、大丈夫だとは思っております。
あとはオーレリアの
まぁ盾というくらいですから防御的な効果だとは思いますが、ランスロットに持たせてジータと戦わせるといったことも考慮しておかなくてはなりません。これも注視しておきましょう。
クルックーをずっと最上階に潜ませているのも本当は怖いのですがね……見つかっていないのが幸いですが。
……十四階で乱戦となった時、背後からクルックーに襲わせるというのもアリですわね。それも考えておきましょう。
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