171:忍耐の塔は今こんな感じです!
■ガーネット 20歳
■Cランク冒険者 パーティー【紅陽千火】所属
「せっかくだから【忍耐の塔】と【輝翼の塔】にも挑んでみないか?」
私たちは普段【赤の塔】に挑んでいるわけだが、毎回そこにしか行かないというわけでもない。
他に良さそうな塔――稼ぎが見込める、攻略しやすい、名声が得られるなど――があれば検討に値する。
今まではその検討の結果が【赤の塔】だったというだけだ。
しかし【赤の塔】と同じく同盟として名を馳せている【忍耐】【輝翼】がCランクに上がったのならば挑戦しない手はない。
私たちはメンバーの意見に頷き、さっそくとばかりに挑戦したのだ。まずは【忍耐の塔】へ。
【忍耐の塔】と言えば罠と状態異常。そして硬い魔物が多い。
そんな話はギルドでいくらでも耳に入るし、新聞などでも目にするありふれた情報だ。
初挑戦の私たちでさえ知っている。
はたしてそれはどの程度のものか。まずはお試しだ。
いくらなんでも【赤の塔】より難易度は低いだろうが油断はしない。
そう意気込んで私たちは臨んだのだ。
……まぁすぐに引きかえすハメになったのだが。
なんなんだあの塔は。斥候必須どころの騒ぎじゃない。
ある意味【赤の塔】以上に殺意に満ちているではないか。これがランクアップしたてのCランクであって堪るものか。
結論――【忍耐の塔】は私たちには向かない。
ここは他のパーティーに攻略を任せるとしよう。
■ドロシー 24歳 ドワーフ
■第500期 Cランク【忍耐の塔】塔主
【傲慢】同盟でもらった報酬を使って、ウチの【忍耐の塔】は一応の完成を見た。
もちろん欲を言えばキリがないけども、戦力も難易度も相応に……いや、下手したらBランクくらいありそうな塔にできたかなと思う。
それだけ【傲慢の塔】のバベルジュエルがとんでもなかったっちゅう話や。
あんな溜めこんでどんな限定スキルとろう思うてたんか。
まずはやったのは戦力の確保や。
【忍耐の塔】の課題は攻撃陣の層の薄さ。そこをまずは考えた。
そこで攻撃陣の指揮官に置こうとライカンスロープを召喚して眷属化した。
【打突の塔】の
別に攻撃陣の指揮官はスフィーやウリエルでもいいんやけど、二人とも防衛向きで飛行戦力やから、攻撃向きな地上戦力の指揮官が欲しいなということや。
「よし、お前の名前はライアンにするで」
「ガウ」
喋れはしないけど思うてたより礼儀正しくてビシッとしている。これなら指揮官もいけるやろ。
というかなんでウチの眷属はこう、お堅い感じばっかりなんやろな。
まぁ規律立ってて組織として動かすにはありがたいんやけど。
これで眷属はキラリン、スフィー、ウリエルに続いて四体目。あと一枠は空けておく。
他にもAランクのスクイッシュドラゴンとかサンダーファングとかも召喚したけどな。今は眷属=指揮官と考えとるし。
それをもってCランクの【忍耐の塔】全十階層を創り上げたわけや。
塔構成はあらかじめある程度は決めてあって、そこに見合う魔物を片っ端から配置した感じやな。
一階層は『鉱山迷路』。
ここは【忍耐の塔】はこういう塔ですよと紹介するような階層やな。以前からあったものとほとんど変わらん。
罠だらけの屋内階層で、低ランクやけど硬い魔物を並べる。基本は罠によるTP狙いや。
変更点としてベノムヘッジホッグやベノムスパイダーなどのEランクの毒持ちを追加。一階層から毒ダメージも狙うっちゅう感じやな。
これで『【忍耐の塔】=物理防御+罠+状態異常』と印象付けると。
二階層は『沼地』。ここも前から使ってるな。
屋内構成だけじゃないでと示しつつ、足元の悪い沼地は探索速度を遅らせる。
マッドスネークやマッドスコーピオンなど沼地特有の魔物ばかりを配置し、終盤にはボス的にマッドゴーレム(C)を置いとる。
この階層は探索のしにくさと魔物の奇襲がメイン。罠はかなり少ない。
屋外階層に罠なんてそうそう置かないよな、っちゅう印象付けの為やな。
三階層は『湿地』。これも以前から使っている。
足元の悪さと背の高い草や葦で視界が悪いのをいいことに、この階層は罠が多い。二階層の布石をさっそく活かす。
魔物は草に隠れるよう小物ばかりやけど、ベノムスパイダー(E)ベノムスネーク(E)アラクネ(D)など毒持ちが多い。
ついでにパープルモス(B)とハミングバード(C)も自由に飛ばし、空からも状態異常を狙うっちゅうわけや。
この二体は召喚一回限りやから遠距離のヒットアンドウェイだけやけどな。
四階層は『尖岩洞窟』。これは初やな。
舗装されていない岩がむき出しの洞窟や。これはホンマに歩きにくい。
道幅や天井高も一定じゃないし、転んだだけでダメージもありうる。
それに加えて罠もあるし、魔物もベノムスパイダー(E)ベノムスネーク(E)の毒狙いとニードルウルフ(D)も現れる。
一応最終地点にはボス部屋があって、そこにはロッククラブ(C)アイアンゴーレム(C)ロックゴーレム(D)を合わせて十体くらい用意している。どれも【忍耐の塔】を象徴するような魔物やな。
五階層は『トラップ回廊』。ここは変化なし。
往復転移魔法陣を使った場合はここからがスタートやな。
【女帝の塔】の四階層とほぼ同じやけど難易度はこちらの方が高い。殺意が高いとも言える。
出て来る魔物も邪魔するためのヘッジホッグ系とか、遠距離から魔法を撃つだけの
ここで天使を見せるかどうかも悩んだけど、どうせいつかはバレるかと使うことにした。
――と、ここまで見れば分かるとおり、配置している魔物はかなり弱い。
それはウチが罠を主体に考えてるからや。ここまで罠に重きを置いた塔っちゅうのも珍しいと思う。
結果、魔物にTPをかけずに済むし、この先の階層に強い魔物を並べることも出来ると。
つまり六階層以上は罠よりも魔物の質で勝負ちゅうことやな。
六階層は『砦』。以前の六階層と構成はほぼ同じやな。
でも魔物は全く違う。壁役でゴーレムとかもおるんやけど、基本は『亜人と獣の階層』や。
ボスに
その気になれば【打突】報酬のトロール(B)とか巨人系も召喚できるけど今のところは保留やな。
七階層は八階層とつなげて天井高を確保した。
これは今後を見据えて、デカイ魔物が多くなりそうやなーと思ったからや。
まだ召喚しとらんけど【玄武ロックタイタス★】とか【巨兵ティターン】とかどうせデカイやろ、と。
で、その七・八階層は『大広間』なんやけど、さすがに広すぎるから今後区切ろうかとも考えている。
今はスクイッシュドラゴン(★A)とロックリザード(B)四体を並べつつ、飛行要員として
フレアドレイク(★A)も置いたろうかと思ったけど今はまだ保留。なんやかんや先延ばしになっとんな。
九階層は『神殿』。
ここはもうウリエルと天使たちのための階層やな。地上部隊として
ウチの最後の関門やな。
あとは十階層に玉座の間と住居区画があるだけや。
一応はこんな感じで完成。TPもほぼほぼ使い切った。豪遊やな。
フレアドレイクもそうなんやけど、結局レジェンダリスケルトン(B)も召喚しとらん。
召喚できる数も多いし攻撃陣の前衛で使いやすいんやけど、塔構成を考えた時に置き場所に困るなぁと。結局保留になってもうた。
まぁノノアちゃんが何体か召喚しとったからそっちに回すのもアリかなと。今はな。
「これは……Bランクの塔と言っても過言ではないのでは?」
「どうやろな。そこいらのCランクよりは上やろうけどシャルちゃんトコとかアデルちゃんトコに比べりゃ弱いやろ」
「それはまぁ……比べる対象がちょっとアレですし」
シャルちゃんが斃した【強欲の塔】とかに比べても戦力的には劣るやろうな。
罠を含めた難易度を見るとどうだか分からんけど。
それにBランクの塔なんてこの戦力に加えて限定スキルをとってる連中ばっかなんやろ?
ウチにそんな余裕ないわ。
塔主になって一年二年で取得してまうシャルちゃんとアデルちゃんがおかしいねん。
ウチはあそこまでアレやないし、とりあえずは戦力の増強ができたんで万々歳やわ。
とは言えウチも次に目指すのは限定スキルになるんやろうけどな。
まぁまだまだ先の話や。
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