316:赤の塔vs黄神石の塔、始まります!
■アデル・ロージット 19歳
■第500期 Bランク【赤の塔】塔主
【女帝の塔】は【影の塔】に勝利しました。
まぁ勝てるとは思っておりましたが予想以上に楽に勝てたという印象です。
おそらく例の諜報型限定スキルもサミュエの仕業でしょうが、その情報を得ていたからこそ【女帝の塔】に仕掛けたのでしょうし、一方でその情報を得ていたからこそ負けたとも言えます。
肝心のエメリーさんの力を計れないばかりか、
逆にシャルロットさんからすれば「情報を搾取されているからこそ勝てる」という状態になったわけですから面白いものですね、バベルの
読み合い、探り合い、力の押し付け合い――そして最後は運頼みになる。
それを今度はわたくしが為さなくてはなりません。
【黄神石の塔】からの申請はシャルロットさんが受理した翌日に受理しました。つまり【女帝】vs【影】に引き続き連戦となるわけです。
それほど急ぐ必要もなかったのですが、同盟で連戦というのは話題になりますし集客数に直結します。それを逃すわけにはいきませんから。なるべく間をおかずに戦うべきだと思いました。
とは言え【黄神石の塔】はわたくしが今まで戦った
これに対して一日二日で対策を練らなければいけないということで、わたくしは恥を忍んで皆さんの知恵をお借りしました。
これならば勝てるという策が欲しかったのです。
【黄神石の塔】は物理防御に特化した塔。
硬い魔物が多いのであれば物理攻撃力にも直結しそうですし、攻守共に侮れない塔という印象ですね。
まずわたくしが考えていたのは【赤の塔】の防衛は問題なしと。
砂漠・溶岩と相手に不向きな地形ですし、<赤き雨の地>がありますから、それこそ【影の塔】並みの斥候能力がなければ攻略は捗らないでしょう。
【黄神石の塔】の魔物が順調に攻略できるとは思えません。
しかしこちらが攻略するのが非常に難しい。主に魔物の対処手段についてです。
魔法アタッカーとしては
リザードキング(A)、オルトロス(A)、オーガキング(A)などもおりますが【黄神石の塔】の固有魔物などを考えれば不足も不足。
結局はジータに頼るしかなく、そのジータにしても一人でどこまで戦えるものかと。限界がありますわよね。
というわけで色々とご相談したのです。同盟内でもお聞きしましたし、シャルロットさんにお願いしてレイチェル様にもお聞きしてもらい、フッツィルさんにお願いしてクラウディアさんにも聞いてもらいました。
本当に感謝に堪えませんわね。勝利した暁には改めて御礼申し上げたいと思います。
さて、そうした計画と準備を経て【黄神石の塔】との
あとはやるだけ、ですわね。
■オーレリア・ブルグリード 43歳
■第488期 Bランク【黄神石の塔】
【赤の塔】に申請した
調子に乗っていると言いますか、甘く見ていると言いますか、よく受理できたものです。
まぁ却下されるよりも百倍マシですから感謝の一つでもして差し上げますわ。
アデル・ロージットは反貴族を唱える不届き者。メルセドウ貴族の面汚しですわね。
本来でしたら他国の貴族に
わたくしがその首をとり、ミッドガルド王国ブルグリード伯爵家ここにありと世界に示さなくてはなりません。
とは言え【赤の塔】並びに彼の同盟に関しては、この二年間で挙げた戦歴が常軌を逸しております。
わたくしが十四年かけて溜めたTPをおそらく上回っており、その戦力は相当なものでしょう。
わたくしの予想ではSランク固有魔物が最低二体、Aランク以上の魔物が総数で最低三〇体、限定スキルもおそらく持っている。
それに加えて
そうなるとわたくしの【黄神石の塔】の戦力と大差はないと。全く呆れた二年目ですこと。
それに対して確実に勝つためにはどうすべきか。その方法はすでにあります。
アデル・ロージットはわたくしに勝てるとお思いでしょう。だからこそ申請を受理したはずです。
まぁ今はせいぜい余裕ぶっていればいいですわ。わたくしがその鼻っ柱をへし折って差し上げます。
――カラァン――カラァン――
『はーい、そろそろ時間だよー! 二人とも準備はいいかなー!』
『はい』「はい」
『では
神様のお声で
わたくしは画面を見ます。転移門から入って来る敵攻撃陣を確認……と思ったのですが
「レッドキャップが五体……? だけ、ですの?」
「先遣でしょうか……いえ、それにしても少なすぎますね。意図が読めません」
隣に立つランスロットも怪訝な声を上げます。
先遣部隊というのは偵察や露払いなどその意味は多岐に渡ります。
しかしレッドキャップ五体だけでは先遣足り得ません。
指揮官もなし、眷属もなしでは塔主から指示もできませんし、ろくな探索もできないでしょう。こちらの魔物に瞬殺されて終わりです。
一階層の鉱山洞窟。そこを30mほど進んだところで、案の定メタルリザード(C)三体に出くわし、あっという間に斃されました。まぁ当然ですわね。
たった30mでは塔構成の調査も、魔物の威力偵察もできません。罠の一つも発見できません。
やはり先遣の役目を果たしていない。ただの無駄死にです。
これを受けてアデル・ロージットがどうでるか。大人しく本隊を投入してくるか、それともちゃんとした先遣を投入してくるか、それが見たかったのですが……しばらく待ってようやく入って来た魔物が
「は? またレッドキャップ五体ですの?」
さきほどと全く同じ。意味のないレッドキャップ五体。そして全く同じようにメタルリザードにやられました。
それからも時間を空けてのレッドキャップ投入は何回か続きました。
次こそは本隊か、次こそは別の魔物か、そんな風に待ち構えていたわたくしたちは幾度となく肩透かしをくらっていたのです。
「オーレリア様、向こうの意図は読めませんがいつまでも付き合う必要もないのではないでしょうか」
「と言いますと?」
「こちらから仕掛けてみてはいかがでしょう。本隊とは言いませんが先遣の様子見でも。それで向こうの出方も変わるのではないかと」
わたくしは今回の
【黄神石の塔】の魔物と限定スキルを十全に活かすのならば、自塔での戦闘が望ましい。
完全防衛策に徹し、敵攻撃陣を引きずり込んでから叩くとしたほうが確実なのです。
狙いは【英雄】ジータ。これを十三階層か十四階層まで引き込んで斃す。それから攻撃に移ると。
ただでさえわたくしの魔物は足も遅く、斥候も回復も不足していますからね。防衛は得意でも攻撃には難があるのですよ。
世間では高難易度と評される【赤の塔】。これを攻略するためには削りに削ったのちに攻め込むとしたほうが良いのです。
「いえ、向こうからしてもそれが狙いでしょう。レッドキャップで釣ってこちらの魔物を呼び込みたいのでは」
「……なるほど。それは確かにありえます」
「となれば【赤の塔】も防衛を第一に考えているということでしょう。守りに自信ありと。それにわざわざ付き合うつもりはありませんよ」
「承知しました」
わたくしをあまり嘗めないでもらいたいですわね。長期戦ならばいくらでも付き合って差し上げますわよ。
■アデル・ロージット 19歳
■第500期 Bランク【赤の塔】塔主
「向こうは今頃頭を悩ませてんだろうな。何してんだ【赤】のヤロウはってよ」
「ならば成功なのでは? そう思わせるように仕向けているのですから」
「パタパタの言うとおりですわね。これで悩んだ結果、妙な動きをしてくれたほうが助かるのですがね」
オーレリアは間違いなく完全防衛策に出ています。それは最初から分かっていたこと。
防御特化の魔物は防衛に向いていますが、逆に言えば攻撃には向いていないわけですし。
こちらにアダマンタイトの特大剣を持っているジータがいると分かっているのですから。それを防衛で確実に斃してから攻撃に転じたいでしょうね。
分かりやすく勝ちやすい策。オーレリアにとっては必勝と言える戦い方のはずです。
それを受けてわたくしはどう出るべきか。色々と相談をさせて頂きましたわ。
一つは、こちらも完全防衛策に出るという手。【赤の塔】も攻撃より防衛が得意ですからね。その方が勝ちやすくはあります。
その場合は互いに引き籠ることになりますから、下手すれば数日は我慢比べが続きます。
まぁわたくしはそれでも構わないのですがね。おそらくオーレリアよりは我慢強い方だと思いますし、五日くらいこのままでも問題はありません。
ただその間、塔が休塔日となってしまいますので収入減となるのが痛いですわね。
もう一つの案としましては、あえて敵の思惑に乗る。こちらが攻勢に出るということ。
当然向こうが有利なので、どうにか手を打たなければなりません。
具体的にはいくつもの策と心理戦。オーレリアは「アデルが折れて乗り込んで来た」と思うでしょうから、その油断を突きたいということですわね。
レッドキャップの連続投入はその一手。
これをただの嫌がらせと思っているならば痛い目を見ますわよ? 覚悟なさって下さいね、オーレリア様?
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