162:赤の塔も強化します!
■アデル・ロージット 18歳
■第500期 Cランク【赤の塔】塔主
【傲慢の塔】同盟の翌日、さすがに侵入者の数が一気に増えましたわね。嬉しい悲鳴です。
【女帝の塔】がお休みということでCランクの侵入者は【赤】【忍耐】【輝翼】に流れているのでしょう。
今日だけの恩恵ではありますがしっかり享受させて頂きますわ。
まぁ明日以降もしばらくは増えた状態が続くでしょうけれどね。
なにせ世間はまだ新塔主の動向に目を向けている時期。
冒険者でも活発なのはE・Fランクばかりですし、Dランク以上の冒険者などは大人しくなるものなのです。本来は。
しかしそこに我々の情報が入ったと。
新塔主とは全く関わらない方面での大ニュース。
しかも人気の【
低ランクの勢いに飲まれていたC・Dランクの冒険者たちはここぞとばかりに張り切っているのです。
今話題の一番は新塔主ではない。【
だからこそ攻めるしかない、といった具合に。
それを受けてわたくしもちゃんとした塔運営をしたいところなのですが、さすがに昨日の今日ではどうにもできません。
取り急ぎ
【赤の塔】の最前線は四階層ですから、そこまでの魔物を元に戻すということで一旦は今日を乗り切ります。
しかし総数で言えば減ったままですし、失ったブラ
「新しい眷属を創るのか?」
「悩みどころですわね。とりあえずルールゥをメェメェの代わりにして指揮を任せようかと考えていますが」
種族が違いすぎますが、飛行できる魔法主体の魔物ということで一応は代わりになります。
眷属は枠を一つ空けておいて、単純に魔物の強化をしたいという気もあります。
だとすれば眷属は据え置きでしょうか。
昨日の
あれだけの質と量をもった相手と戦うとなれば、こちらも相応の戦力が必要です。
現状はクルックー、チロチロ、ルールゥ、そしてカーバンクルが五体。Aランク以上は計八体です。
Cランクの塔とすれば相応か平均以上となるかもしれません。
ただ――それで不足と感じてしまった。
普通に【赤の塔】の召喚リストからAやBランクの魔物を喚ぶのもよいでしょう。
というより、本来そちらにすべきです。部隊として形成するにも配下が必要なのですから。
しかし気になるのは
=====
□セイレーン★/S/52,000TP(1回限り)
□ストームイーグル/B/2,300TP(全30回限り)
□ニーズヘッグ★/A/19,000TP(1回限り)
□ゴーストドラゴン★/S/48,000TP(1回限り)
□マンティコア/A/8,000TP(3回限り)
=====
【風】【群青】【死屍】【傲慢】【砂塵】のものからピックアップしましたが。
一番欲しいのはセイレーン。これは召喚の上、眷属化すべきです。
しかしそうなるとTP報酬の半分以上が消えます。
第二候補はゴーストドラゴン。うちのリストでドラゴンというとSランク固有魔物の【赤竜メテオノーラ】がおりますが、おそらくこれは大型飛竜と思われますので階層構成的にも無理があります。
しかしゴーストドラゴンならばそこまで天井高を必要としない。
尚且つルールゥとの相性が非常に良いと。
第三候補はストームイーグルとマンティコアですわね。飛行戦力で尚且つ火属性ではない、という意味で。
単純な戦力の底上げならば非常に使いやすい魔物です。
「セイレーンを眷属にするんならストームイーグルを部隊にすべきじゃねえか? うちのヘルコンドルとかじゃ不足だろ」
「ですわね。しかしそれをするとTPが……」
「限定スキルもとらねえといけねえしな」
そこが大問題ですわよ。本当に。
シャルロットさんからお聞きしましたが、レイチェル様曰く、Bランクに上がる為には限定スキルが必要だと言うではありませんか。
つまりこのままでは次の塔主総会でシャルロットさんだけがランクアップし、わたくしが取り残されることになります。
それだけはいけません。是が非でも食らいついていきませんと。
実際にはBランクでも限定スキルをお持ちでない塔主もいるとは思います。
しかし当然長い年月をかけて徐々に力をつけBランクまで上がった方々ですから、相応に戦力も充実していることでしょう。
わたくしやシャルロットさんが二年目という立場でBランクに上がる為には、やはり限定スキルを取得するくらいでなければいけないのでしょう。わたくしはレイチェル様のお言葉からそう受け取りました。
もちろん直接お聞きしたわけではないですがね。
塔主総会まであと半年もありません。
それまでに
現状のTPと通常の塔運営によるTP収入だけで対処するとなれば……魔物より限定スキルを優先ですかね。
セイレーン部隊という響きが甘美すぎるのですが。
仮に限定スキルをとるならば――
=====
□真実の赤/200,000TP:全ての嘘を見抜く
□赤き雨の地/230,000TP:自塔屋外エリアに赤い雨を降らせ継続ダメージを与える
□赫々たる炎/550,000TP:炎を纏う
=====
「……やはり<赤き雨の地>ですかね」
「一応ダメージTPは増えるんだろうしな。個人的には<赫々たる炎>なんだが」
「それは数年後まで待っていなさい。今は考慮にも値しませんわ」
<真実の赤>がレイチェル様の<世界を見渡す目>と同じような効果であれば使いどころは超限定的。
これで敵を斃すことなど出来ないでしょうし、塔の運営にもほとんど役立ちません。
従って取得するなら<赤き雨の地>となるのですが、最悪の場合、一階層の『紅葉樹の森』にも延々と赤い雨が降り続け、客足を減少させることも考えられます。
となると一階層を屋内構成にしなければならなくなるでしょうし、全体の塔構成を見直す必要がでてきます。
悩ましいですわね。
……しかし限定スキルを早めに取得しなければシャルロットさんに並べません。取得しないという選択肢はないのです。
「よし、決めましたわ。先に<赤き雨の地>を取得します」
「魔物は大丈夫なのか?」
「現状の魔物でやりくりしますわよ。いざとなればジータを四階層のボスにでも置いておきます」
「ハハッ! そりゃいいな。話題にはなるだろうぜ」
話題性はありますけれど客足が減るかもしれませんわね。
いえ、むしろ増えるかもしれませんわね。ジータと戦えるチャンスだとか言って……一考の余地ありですわ。
ともかく決めたのならば善は急げ。
昨日の報酬の十八万に加え、わたくしの貯蓄から五万……50,000TPは多過ぎますわ。
これは今すぐとはいきませんわね。少なくともあと数週間は溜めこみませんと。
はぁ、本当に困ったものですわね。限定スキルも、そしてシャルロットさんも。
こんなもの一年目、二年目で取得するものではありませんのに、それをまぁいとも簡単にお取りになって。
考えてみれば身近にこれほど優秀な人などおりませんでしたから、困る反面、嬉しくもあります。
優秀すぎる同期という存在はわたくしにとってもプラスのはず。
追いかけても追いかけても追いつけない。今までそんなことはなかったのですから。
わたくしは貴女をいずれ抜かすと、そのつもりで走り続けますわよ。
待っていなさいシャルロットさん。
バベルの頂点は譲りませんわ。
……討伐TP狙いでジータを下層でぶらつかせるというのも手ですわね。
……あれ? そういえば騎士団の方々はいつの間にいなくなったのでしょう。
さっさと全滅させておけば良かったですわね……。
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