第九章 女帝の塔の周りはトラブルばかりⅢ
161:女帝の塔を強化します!
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
【傲慢の塔】の同盟を斃した翌日、私は【女帝の塔】をお休みにし、塔の構成を戻したり魔物を補充したりしていました。
明日からは通常営業ですからね。最低でも六階層まではちゃんとさせないといけません。
クイーンの皆さんとエメリーさんの労いも兼ねているのでお食事をし、お茶を飲みながらわいわいと相談して色々と決めています。
ヴィクトリアさん、パトラさん、ラージャさんは共に戦った配下が全滅し、ご自身もボロボロだったので心配だったのですが、神聖魔法による回復もあり今は元気そのもの。
私としては一安心です。
「うーん、もうちょっと何とかしたかったなー。くやし~~」
「あの鎧野郎、絶対許さないわよ! シャルロット様、次またあいつがいたら私にやらせて下さいな!」
「私も次はもう少しまともに戦えると思います」
なんとも好戦的な魔物らしいご意見です。頼もしい。
しかしお目当てのサジタリアナイトは私が召喚権利を得ていましてね、いずれうちの警備に使いたいのですよ。
召喚しても喧嘩売ったりしないですよね? 私はそれが心配です。
さて階層のほうですが、移動させた四階層と六階層を交換し直し、鬼畜仕様にした『トラップ回廊』も難易度を下方修正しました。
これもいっそのことこのままにしてしまおうかと思ったのですが、一旦は元に戻す感じで。
四階層を『城内探索』するのもありなのですが、『トラップ回廊』にすることで侵入者を五階層の往復魔法陣に行きづらくさせる効果が大きい。
まぁ『城内探索』の難易度を上げても同じなのですがね。
四階層を難易度を上げた『城内探索』にして六階層に鬼畜仕様の『トラップ回廊』でもアリはアリかと。
ただそうすると塔全体の進行イメージが……。庭園から城内に入る感じのほうが
今後の改装予定も含めて色々と相談が必要です。
魔物も一応配置し直しますけど、これもどうしたものかと頭を悩ませているので。
昨日の【傲慢の塔】との戦いで一番の課題となったのは「魔物の質」だったと思います。
やはりランク差は大きい。
AランクやBランクの魔物一体に対しCランクやDランクの魔物をどれだけ使えばいいのかと。
うちの場合はクイーンの皆さんの配下が低ランクなのですが、それを<統率>でカバーして、それでも力負けする場面がほとんどでした。
まぁそういった低ランクの魔物の運用というのが【女帝の塔】の持ち味でもあるのでやめるつもりはないのですが、それでも高ランクの魔物は多めに確保しておいたほうがいいと思います。
「そうですね。次にランクアップとなればBランクの侵入者も入るわけですから、それも踏まえると魔物の質の向上は必須でしょう」
「階層も増えるのでしょう? その分のTPも必要なのでは?」
「そちらは今は考えないです。なんなら増えた階層を空っぽの大広間にしてもいいですし。侵入者もいきなり上層までは上って来ないでしょうからね。追々でも問題ないかと」
レイチェルさんからも言われているのですよね。
【女帝の塔】がおそらく次の塔主総会でBランクに上がると。
レイチェルさん曰く、Sランクの固有魔物を眷属化させ、さらに限定スキルを一つ取得している現状というのはBランクであって当然とのこと。
むしろ前回の塔主総会でランクアップしなかったことの方がおかしいと仰っていました。
それはまぁ二年目になったばかりの新米ですし、限定スキルをとったのも直前ですし、そのせいでTPの余裕もありませんでしたから私としてはランクアップしなくて良かったという所なのですが。
あれでランクアップしていたらノノアさんと同じように混乱していたことでしょう。
レイチェルさんからは「確実にBランクを狙うならば固有魔物をもう一体召喚しておくのも手だ」とアドバイスを頂いています。
私の場合、眷属がターニアさん以外でBランク三体ですからね。
ターニアさんが飛び抜けていると言いますか、それを抜かせばCランクの塔相応なのではないかと。
だから固有魔物をもう一体と仰っているのだと思います。
それを踏まえて、さらに
魔物を優先して、塔構成をそれに合わせるという感じですね。
一つずつクリアしていって、最終的にはBランクとなった時にまともな塔運営が出来る形にしたいという方針です。
「なるほど。ではやはり【ナイトメアクイーン】か【ウィッチクイーン】ですか」
「それが第一候補ですね。第二候補がここらへん」
=====
□バーゲスト/C/1,200TP
□オルトロス/A/7,600TP
□ケルベロス/S/21,000TP
=====
□ヘルキマイラ★/S/42,000TP(一回限り)
□サジタリアナイト/A/6,500TP(全8回限り)
□テラーナイト/B/2,700TP(全50回限り)
=====
ケルベロスなどは元から【女帝の塔】で召喚できる魔物です。
これで番犬部隊を創る。そしてゆくゆくは彼らに則した階層に出来ればと。
それと【傲慢の塔】の報酬ですね。ヘルキマイラは召喚できればマンティコアと組ませる予定です。
あとは鎧部隊。お城にも合いますし、デュラハンとかリビングアーマーの指揮官ポジションとして期待しています。
ちなみに8回だの50回だのは斃した数です。それぞれ一回ずつ召喚権利が発生しているわけですね。
これを同盟全体で8回、50回召喚できるということです。
「それかお手頃価格の固有魔物で言うと【強欲の塔】の報酬の【輝石竜ヴィーヴル★/A/25,000TP】がいるのですが……」
「ドラゴンとしては小柄ですが飛ぶことを考慮しますと厳しいでしょう」
ですよね。さすがに召喚しておいて「飛ぶな」と言うわけにもいきません。
それこそBランクに上がり二階層分繋げられそうだったらその時に考えましょうか。
「うーん、やっぱり【ナイトメアクイーン】と【ウィッチクイーン】にしましょうか」
「両方ともですか」
「はい。今はTPも余裕ありますし眷属化もしないですからね。それから相談しつつ徐々に配下を増やすという感じでいこうかと。皆さんはどう思いますか?」
全員賛成、ということでさっそく召喚しましょう。
まずはナイトメアクイーンから。
いつものように画面を操作すると玉座の前に魔法陣が現れます。ターニアさんの時と同じくらい複雑ですがやはり色々違いますね。
光の中から現れたのは、黒いドレスを纏った銀髪美人。瞳はやっぱり紅いですね。
「ほう、これは見事なものだな。女王たちが勢揃いとは」
目の前に並ぶ玉座を見てもあまり動じないですね。余裕があります。
「初めまして。私は【女帝の塔】の塔主、シャルロットと申します」
「妾はナイトメアクイーン。吸血鬼どもを束ねる闇夜の女王だ。よろしく頼むぞ、我が君よ」
「本当は貴女に名付けを行いたいのですがもうしばらく待っていて下さい。塔のランクが上がった時に行います」
「ふむ、事情があるのならば仕方ない。その時を楽しみにさせてもらおう」
女王様らしい威厳はありますが、理解のある方で良かったです。
ナイトメアクイーンには少し横にずれてもらって、続けて召喚を行います。
次はウィッチクイーンですね。
魔法陣から現れたのは真っ黒なローブと大きな魔女帽を被った痩せ型の美人さん。紫の長い髪で片目が隠れています。
杖に横乗りしてフワフワと浮いている様を見るとやはりウィッチということなのでしょう。
玉座を見ても何も表情が変わりませんね。何の驚きもないと。
「初めまして。私は【女帝の塔】の塔主、シャルロットと申します」
「……ん。私はウィッチクイーン」
「申し訳ありませんが名付けはかなり後になると思います。しかし貴女には私の眷属と共に魔物を率いて頂きたいと思っています」
「……ん。ウィッチとかなら……いける」
随分と物静かと言うか、言葉が少ないと言うか、こんな女王様もいるのですね。
ともかく協力してくれそうで安心しました。
玉座をさっそく二つ用意しましょう。これで今後は『八女王会議』となります。
右から順番に、ラージャさん、パトラさん、ナイトメアクイーン、私とエメリーさん、ターニアさん、ウィッチクイーン、ヴィクトリアさんとなりました。玉座が七つ並びます。
眷属の皆さんが自主的に位置決めをして下さいましたが、ランクを意識した感じになりましたね。
やはり魔物の本能で強いものが上位、みたいなものがあるのでしょうか。
それとも新人さんを優遇みたいな感じかもしれません。
自己紹介も行いまして、現状の【女帝の塔】についても説明しました。
「ほう、まだ二年目であるのに妾や
「シャルロット様はすごいわよぉ。貴女もここに喚ばれて幸運に違いないわぁ」
「とてもお優しいですし戦いの場を与えても下さいますしね」
「ははっ、女王が皆口を揃えて絶賛ではないか。ならば妾も期待しておこう」
早速仲が宜しくていいことです。
ウィッチクイーンは無言の無表情なので分かりづらいですがターニアさんがのほほんモードで話しかけていますね。
頷いたりしているので多分大丈夫でしょう。
「期待させて申し訳ないですが今は
「「「はい」」」
「ふふっ、これだけの女王を束ねているのに独裁はせぬと。なるほどこれが【女帝】の資質ということか」
決定権は塔主である私ですが実際に魔物を動かすのは皆さんですからね。意見は聞くべきです。
というか私一人で考えて塔を運営するなんてとても出来ないですよ。魔物の皆さんのほうが詳しいことだって多いのですし。
ただの街娘にあまり過度な期待はしないで頂きたい。
……まぁそれでも【女帝】っぽくは振る舞いますけどね。それが私の矜持ですから。
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