79:同盟戦のリザルトです!



■シャルロット 15歳

■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主



「ええっ!? じゃあそのスキルが私に……!?」



 【甲殻の塔】からエメリーさん、ジータさん、ゼンガーさんが帰ってきましてそのまま【輝翼の塔】で慰労会のような流れです。ヴィクトリアさん他眷属の皆さんも一緒です。部屋に集まれそうな方はほとんど、という感じで。


 ゼンガーさんは帰って来るなりフゥさんに声をかけるより先にターニアさんに膝をつくといったことをしていましたが、今はフゥさんのおかげで落ち着いていますね。



 それから今回の塔主戦争バトルに関するお話になったのですが、まず始めにフゥさんから謝られました。


 どういうことかと聞けばヴォルドックさんのスキルが私にかけられていたと……。

 だから作戦を秘密にし、なるべく私を関わらせないよう動いていたのだと……。



 つまり私が足を引っ張り続けていた。敵に情報を与え続けていたということです。

 一歩間違えれば私のせいで負けていた。それをフゥさんたちはずっとフォローしてくれていた。

 神様が「フゥさんに感謝しておけ」と言ったのもそういうことだったのですね……。



「ごめんなさいっ! 本当にごめんなさいっ!」


「謝ることじゃなかろう。シャルを覗かせることで勝ち筋が見出せたのじゃ。むしろ利用してすまぬとこちらが謝るほうじゃ」


「お嬢様、わたくしこそ申し訳ありません。お嬢様が害されたことにも気付けず……侍女失格です」



 このあとごめんなさい合戦になりましたが、どうにか収まりました。私は現在進行形で猛反省していますが。

 どうやら何も知らないままだったのは私とノノアさんくらいのもので、他の方々はフゥさんに協力していたそうです。本当に申し訳ない……。


 そんな流れからエメリーさんが皆さんに聞きました。



「わたくしはこちらの世界に詳しくないのでお聞きしたいのですが、こうしたスキルを感知なり解除なりする方法というのはあるのですか?」



 反省しつつ対策を練らないといけないということですね。それは皆さんも同じだったようです。



「わたくしの知る限りではありませんわね。バベルが神の領域であるならば塔主限定のスキルというのは『神技』と呼べるもの。だからこそ強力であり特殊なのだと思いますわ」


「ファムは魔力を感知したんやろ? せやったら魔法防御を上げることで防げたりせえへんのか?」


「スキルと魔法は違うじゃろ。今回は【風】とシャルが接触するときにスキルが発動されてその時に魔力が乱れたというだけじゃ。<魔力感知>のスキルの練度が相当高ければ気付くかもしれぬが……素人にできるとは思えぬ」


「そ、それならそれが得意そうな魔物ですとか……」


「仮に感知できても防げなかったら意味ないですわよ。やはり限定スキルに対抗できるのは限定スキルのみだとわたくしは思いますわ」



 アデルさんはそう言います。

 限定スキルはその塔の塔主にだけ取得できるスキル。唯一無二の効果があります。

 しかし取得しようにもTPがとんでもなくかかりますし、塔の特色に合わせたようなスキルなので狙ったように防御系のスキルがあるとは限りません。


 おまけに『隠された効果』みたいなものがあるらしく、エメリーさんが敵から聞いた情報によれば、私に仕掛けた『マーキング』というのは本来のスキルの副次効果・・・・のようなものらしいのです。


 本来は『五感強化・身体能力向上』のみだったはずが取得してみたら『敵の五感を共有する』という効果が隠れていたと。


 これが<風狼の超覚>だけのことかは分かりません。唯一無二のスキルですから比較もできませんし。

 でもそういった例があると分かっただけでも幸いで、取得を狙う価値はあると皆さんは言います。



「まあさすがに当分先やろうけどな。一年目の新米塔主が狙えるもんちゃうて」


「い、一般的な<生活魔法>とか<剣術>だって20,000TPですよ? 限定スキルなんてとんでもないです……」


「わしのリストじゃと最低でも200,000TPじゃな。馬鹿げた数字じゃ。固有魔物を何体も召喚できるわい」


「しかし年期の入った高ランクの塔主は何かしら持っているでしょう。わたくしたちも意識しておきませんと」



 もしかすると【力の塔】のストルスさんも持っていたかもしれません。十五年くらい続いていたBランクでしたし。

 たまたま塔主戦争バトルとは関係ないスキルだっただけかも。



 話は今回の塔主戦争バトルの内容に戻り、フゥさんとゼンガーさんがエメリーさんに感謝をしていました。

 あの最後の場面ですね。私もゼンガーさんが刺されて倒れた時は血の気が引きましたので。



「あれは何なんじゃ。異世界には【呪い】を治癒する薬があるのか?」


「ええ、あれは霊薬エリクサーと言いまして――」


「「「「霊薬エリクサー!?」」」」


「ご存じでしたか。こちらの世界にあるのであれば【呪い】が治ることもご存じなのでは?」


「いやいやいや霊薬エリクサーなんて伝説みたいなもんやで!? 詳しい効能なんか知らんわ!」


「な、なんか古代遺跡の最奥で見つけられるとか御伽話で……」


「あっても国宝ですわよ。世界に五本残っているかも怪しいですわ」


「塔主のリストにもないからのう。バベルの神でも精製できぬものなのかもしれぬ」


「そのような貴重な薬を……エメリー殿、本当にありがとうございます」


「いえ、予備はまだ三〇本ほどありますので」


「「「「三〇本!?」」」」



 いつものことながらエメリーさんの規格外さには驚かされます。私はもうずっと「うわぁ……」という感じなのですが。


 エメリーさん曰く、あちらの世界で『迷宮』を探索すれば手に入る事が多いし、高位の錬金術士ならば作り出すことも可能だと。こちらとはだいぶ価値が違うようです。

 それでも簡単に手に入るものではないでしょうし高価なのは間違いないのでしょうけど。



「ったく、姉ちゃんエメリーの世界はどうなってんだか……あのハルバードだって意味分かんねえし」


「フェンリルもディンバー王もほぼ一撃でしたわね。あれが以前仰っていた『まけん』というものですの?」



 アデルさんたちには【魔剣グラシャラボラス】を見せたことがなかったのでエメリーさんが軽く説明していました。

 触れれば『腐食』させるから生物には特に有効なのですよと。

 まあ、アデルさんもジータさんも頭を抱えていましたけどね。聞いている最中から。



「頭が痛いですわぁ……神授宝具アーティファクトより強力な武器ではないですか……」


「ディンバー王、俺苦戦したんだがなぁ……いやそんな武器を扱える姉ちゃんがすげえんだが……」





 話は報酬の分配へ。まずはTPです。

 私はスキルをかけられ足を引っ張ったという自覚があるので減額を希望したのですが皆さんに却下されました。

 私は被害者だし、覗かれるのを前提で作戦立てたし、何よりエメリーさんがいなければ負けていたからと。


 またノノアさんに関しては事前にお願いされていまして。



「ノノアちゃん、ホントにいいんか? TPなしで」


「は、はいっ! そ、そもそも塔主戦争バトルにほとんど参加できてないですし、それでTPだけ頂くなんてとんでもないですよっ! それに……」


「ランク維持ですわね。それもまぁ分かりますけれども」



 同盟戦ストルグので報酬は全員で均等に分配するというのを事前に取り決めておいたのです。

 しかしノノアさんは最初から、勝利してもTPはもらえないと言っていました。

 出せる戦力もないし、戦術が練られるわけでもない。これでTPだけもらったら高ランクに寄生するだけの存在になってしまうと。


 私たちとしてはノノアさんの戦力とかを知っている上で同盟を組んでいるのでどうとも思いませんし、今回の塔主戦争バトル自体がノノアさん切っ掛けのようなものですから、それで何も貰えないのはどうかと。



 ただTPを断る理由がもう一つあるそうで、それが『ランク維持』目的だと言います。

 【世沸者の塔】をFランク、いってもEランクに留めておきたいと。

 なぜかと言うと、そのランクが一番侵入者のが見込めるから。加えて言えばも落ちるから。


 塔のランクが高くなればなるほど強い侵入者が増えますし、一方で侵入者の総数は減ります。それが【世沸者の塔】にとってはよろしくない。

 元々、『討伐TP』や『ダメージTP』を狙う塔ではなく『滞在TP』を狙う塔構成です。だから弱くても大人数・長時間いてもらったほうがいい。


 そして仮にギミックを解いて大ボス部屋に辿りついた侵入者がいるならば、すでに保持している適度な強さ・・・・・の魔物で斃せる程度の低ランク侵入者であって欲しい。

 だから今回のような高ランクとの塔主戦争バトルで一気にTPを取得するのは避けたいと、そういうことらしいです。TP取得数はランクアップの要素に直結しますからね。


 とは言え同盟である以上参加はしますし魔物を出して一緒に戦います、と意気込んでいました。

 それを聞いてしまうと納得せざるをえない部分もあります。言いたいことは分かりますし。



「まぁ現時点で難攻不落じゃからのう。必要性がないのは分かる。逆にこれでランクが上がり五階層になったとして同様の階層をつくればギミックを動かすだけで赤字になりかねん」


「でもほうっておいてもそのうちランクアップしちゃうんとちゃう?」


「そ、その時は強い魔物を召喚するしかないかと……その時にTPが足りなければ塔主戦争バトルを仕掛けてもいいですし……」


「言いますわね。まぁノノアさんに負けはないでしょうけど相手が誘いに乗ってくれるかどうか……ああなるほど。時期を見れば問題ないということですか」


「は、はい……あの辛さは私がよく知っていますので……」



 そんな話し合いの果てにとりあえず今回はノノアさんはTPなしとなりました。魔物の召喚権利は平等に分けますけどね。


 というわけでTPの分配はこんな感じです。



=====

 【風の塔】188,650TP

 【甲殻の塔】74,220TP

 【暁闇の塔】90,930TP 【総計】353,800TP

 【魔石】約33,000TP 【総計】約386,800TP


 ⇒【分配配当】約96,700TP

=====



 配当自体は前回の同盟戦ストルグより少ないですが、あの時は五塔主の同盟でこちらも三人でしたからね。

 それでも一度で十万弱ものTPはやはり破格だと思います。

 正直無理してターニアさんを眷属にしたので助かります。



 続いて魔物の召喚権利。こちらはノノアさんも加わり、一人二体まで選ぼうという感じになりました。


 選ぶ順番は今回の塔主戦争バトルの貢献度ということで話し合いの結果

 1:フゥさん 2:アデルさん 3:私 4:ドロシーさん 5:ノノアさん となりました。

 私は負い目があったので五番でいいと言ったのですがなんやかんやあって三番となりました。


 そうして選んだ魔物はこちらです。



=====

【輝翼の塔】フェンリル(風・A)、風精霊シルフ(風・C)

【赤の塔】 セイレーン(★・風・S)、ストームイーグル(風・B)

【女帝の塔】ミスリルヘラクレス(★・甲殻・A)、ダークボア(暁闇・B)

【忍耐の塔】ヴァンパイア(暁闇・A)、アサシンリンクス(暁闇・C)

【世沸者の塔】グランドタートル(甲殻・B)、ガードナイト(甲殻・C)

=====


 【★】は固有魔物です。【暁闇の塔】は固有魔物を召喚していないそうです。


 フゥさんは風精霊シルフは言わずもがななのですがフェンリルがどうしても欲しいと。六階層の樹氷雪原における地上戦力としてこれ以上ない魔物だと力説していました。


 アデルさんは「フゥさんがとらないのであれば頂きましょう」とセイレーンを。コストは高いですが風魔法特化は【赤の塔】にない強みです。ストームイーグルも同様の理由ですね。火属性以外を求めたと。


 私はヴァンパイアは普通に召喚できるのでミスリルヘラクレスにしました。庭園か大書庫か多角形の部屋で使いたいです。ダークボアはラージャさんの統率下に入れるかなと期待を込めて。


 ドロシーさんはヴァンパイアとアサシンリンクス、どちらも機動力・攻撃力があります。【忍耐の塔】の弱点を補強しようということですね。非常にわかりやすい。


 ノノアさんは逆に防御力を求めたと。何かが間違って攻め込まれた場合を想定しているのでしょう。グランドタートルもガードナイトも防御特化という感じです。



 なかなかいい感じに皆さん選べたんじゃないでしょうか。

 祝勝会はまた後日ですね。今日はもう遅いですし。


 え? ああ、エメリーさんが【甲殻の塔】から接収してきたものが残っていましたか。



「【風の塔】ならまだしも【甲殻の塔】ですからね、あまり持ってこれるものもなかったのですが一通り接収して参りました。お金、書物、日用品、衣類に家具も……」


「どれだけ入るんですのそのポーチ!?」


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