403:【悪魔】同盟は色々と見聞きしています!
■セルミアイナ 33歳
■第491期 Aランク【風水の塔】塔主
『神様通信
本日行われた
【竜牙の塔】が消えました! 以上お知らせでした! 神様より』
『ありゃりゃ、まーた
「ミッドガルドからの報復も狙ったみたいよ。【黄神石】だけじゃ足りなかったんじゃないの?」
『かぁ~、勤勉と言うか貪欲と言うか……やっぱ普通の塔とは一線を画すね、あの連中は。だから面白いんだけど』
【悪魔】のリトと同盟を組んで、日常的に画面をつなぐことにも慣れてきた。
相変わらずうるさいし邪魔に思うことも多いのだけど、利便性はかなり良い。普通に会話できているだけでも感動ものね。
【赤の塔】が【黄神石の塔】を斃したことでミッドガルド王国から報復の手が入り、【赤竜兵団】という傭兵団が【赤の塔】の攻略に来ていたのは知っている。
【赤】のアデルからすればTPを稼げるチャンスと見ていたようだけど、それだけじゃ足りないと思っていたらしい。
もっとTPが欲しい。だからもっと復讐しに来てくれと。正直イカれてるわね。
【竜牙の塔】もミッドガルドの貴族だから、同じように報復を狙ったのだと思う。
よく【竜牙】も受けたものだ。自殺行為と変わらないでしょうに。
私とリトは、【
もちろんその意識もあるのだろうけど、そっちは
あくまで主目的は塔の成長であって、その過程でTPをたくさん得られる高ランク塔主を選んでいるにすぎない。
結果として
だから貴族相手の下剋上を繰り返している、と見られているだけってね。
運良く勝っただけというのもあるらしい。でも連戦連勝には違いない。
それで得た膨大なTPは同盟全体を強化し、またランクに見合わない力をつけて、それでまた
そんなことをする塔主はあいつらだけだし、正直狂っているとも思う。異常なのよ、全部が全部。
六番手の【六花】にしても二年目Dランクに相応しくない戦力を持っている。
固有魔物が二体にAランクが十体くらいいるはずでしょ? そんなの下手したらBランクじゃない。
【竜牙の塔】が勝てる見込みなんて万に一つもありえない。申請を受けた時点で負けが確定ね。
『【忍耐】が【竜翼】を斃したのも早かったんだよなぁ。あの塔は五年目Cランクなんかで終わっていい塔じゃないでしょ』
「貴族にしては珍しく有能な塔主だったみたいだしね。【竜翼】のジュリエットは」
『もう半年待てば間違いなくBランクだろうさ。まぁ喧嘩を売られてそれに勝った【忍耐】が褒められるべきなんだけど』
【竜翼】はCランクにして竜と竜人、二体のSランク固有魔物を持っていた。
それだけでも素晴らしい塔主だと言えるでしょう。
少なくとも私がCランク上位の時はもっと弱かっただろうし。
そして【忍耐の塔】も類に漏れず、三年目Cランクとはとても言えない戦力を持っている。
私の調べでは【忍耐の天使ウリエル】のほかに三体の固有魔物を持っていて、そのうちの一体は【竜翼】の竜人だ。
もちろん【竜翼】と戦った時は今より弱いわけだけど、それにしたって強い。
今では限定スキルまで手に入れたらしい。
もう後期の塔主総会ではBランクに行くだろうね。【輝翼】と共に。
『とにかくこれで502期は三強に絞られた。エドワルド前王の【橙の塔】、異世界人
「あんたどこが抜けると思う?」
『難しい質問だねー。
うん、私でもそう答えるわね。
【風雷】はとにかく兎メイドの異世界人
【女帝】のメイドと同等と言うし、その【女帝】が後援についているから厄介極まりない。
同盟の【審判】はそれほど脅威でもないけどね。あの兎メイドがいる限りどこまでも強くなるだろう。
【毒】は
でも塔主であるメルティエンリが図抜けた才能を持っている。おそらく502期の中でもピカイチだ。
私の限定スキルじゃ塔構成まで把握することは出来ないけど、きっと難易度の高い塔を創っているのだろう。
【橙】のエドワルド前王も塔主の才を持ち合わせているに違いない。
メルティエンリほど際立ったものではないけど、国の先頭に立っていただけに塔主となっても周囲を引っ張り、巻き込む力を持っている。それはメルティエンリが持ち合わせていないものだ。
【黄】同盟というのも厄介なところ。【黄の塔】自体が強いしね。
ABBDという四塔同盟は一気にバベル内でも有力な同盟となった。
まぁ私とリトが組んだことでこちらのほうが強いと見られているようだけど。
『個人的には【毒の塔】に頑張って欲しいもんだね。単独でどこまで行けるものか気になるよ』
「どこかと同盟を組むかもしれないわよ」
『どうかね。なんだったら私たちの同盟に引き入れてもいいくらいだけど』
「えっ、増やすの?」
『可能性の話さ。私たちの同盟はいわゆる「バベルの同盟」ってのと意味合いが違うじゃん? まぁ普通に考えればこれに賛同する塔なんかいないと思うけど……先のことは分からないからね』
同盟は「塔を成長させるために互いに利用しあう」というのが一般的。
【
どちらにしても塔運営と
言わば「攻撃的な協力体制」ね。
私たちの場合は「かなり防御的な協力体制」と言えるでしょう。
どこかの塔を攻めるだとか、侵入者からなるべく多くのTPを得ようだとか、意地でも塔を成長させるといった考えがない。
諜報型限定スキルを得た二塔。それは情報を収集することによって″守る″という意味合いが強い。
バベルにおいて情報は力。
特に他塔の情報は誰もが欲しがる宝そのもの。
私たちはその宝をただ集め、それを用いて攻めることをせず、自己防衛のために保有しておくだけ。
もちろんその情報を使えば容易く戦果を得ることが出来る。塔を成長させるのも早いでしょう。
しかし自分から仕掛けたりはしない。
どこからか仕掛けられた時のカウンターとして忍ばせているだけなのよね。
そんな私たちの同盟に好き好んで入ろうとする塔は、私たちの力と情報を利用しようとするヤツに限られるでしょう。そんなの私はごめんだし。
せめて同等の力を持ち、同じ意思を持つ者でなければ同盟は成り立たない。
まぁリトが【毒の塔】をそれほど評価してるってのは分かったけどね。
『あとは【色欲】とかも引き入れようかとちょっと思ったけどね』
「げぇ、本気?」
『ハハッ、思っただけさ。でもあの情報網は私たちに不足しているところだろう?』
私やリトの限定スキルは確かに強力だけど、一回で得られる情報量は限られる。
他塔の情報であれば一塔ずつがいいところ。その分、情報の価値はかなり高いけどね。
一方【色欲】の持っている情報網っていうのはバベリオの街全体、なんならスルーツワイデの王都や、娼館主としての他国同業者との付き合いなど、とにかく広い。
他塔の内部情報を持っているわけではないけど、私たちが持ちえない情報を持っているのは間違いない。
「そりゃまぁそうだけどね。印象が悪すぎるのよ」
『ほー、私より印象の悪い塔主がいるとは驚きだ』
「あんたに比べれば【色欲】のほうがマシね。だったら入れてもいい気がしてきたわ」
『おいおーい』
まぁ【色欲】を同盟に入れたらすごそうではあるけどね。
Aランク三塔の同盟とか話題になるだろうし。
ただそこまで目立つのも私たちの同盟意義に反するから、せめてもう少し大人しくすべきでしょう。
私たちはしばらく静かにしておきましょう。
それでバベルにどんな動きが起こるのか、じっくり見させてもらうとするわ。
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