46:何やら周りがザワザワしてきたようです!
■シャルロット 15歳
■第500期 Dランク【女帝の塔】塔主
「まぁ。では五つの塔での同盟になったのですか。それは喜ばしいですね」
「これで【赤の塔】にも内緒にしなくていいのですよねぇ。私は英雄ジータとやらに<誘惑>が効くのか試してみたいですわぁ」
「よく分かんないけど忙しくなりそうなの? あたしの出番が来てくれると思うと楽しみなのよ」
最上階の住居エリア。リビングで眷属の皆さんにも説明をしました。
なんやかんやあって【赤の塔】と【世沸者の塔】が同盟に入りましたよと。
【赤の塔】に関してはエメリーさんと模擬戦に出掛けていた関係でよく話していましたけどね。
ヴィクトリアさんはいつも通り朗らかに賛成してくれました。
パトラさんはサキュバスらしくジータさんを狙ってたみたいですね……英雄に<誘惑>が効くのか私も興味があります。私の眷属のことは今まで何も言ってないですしね。
ラージャさんは早く実戦したいようですが……少なくとも侵入者相手にラージャさんが出ることは当分ないと思います。
実はですね、アデルさんとお洋服屋さんに行って、皆さんの服も買ってきているのです。お土産で。
皆さん
アデルさんには詳しく言えなかったので、エメリーさんにお任せして選びました。
ヴィクトリアさんには淡い黄色を基調とした豪奢なものを。
パトラさんには黒系のセクシーなものを。
ラージャさんは動きやすそうな青系のものを、それぞれチョイスしています。
皆さん喜んでくれて、今も着てくれているので本当に貴族様のお茶会のようになっていますね。女王様ばかりですけど。私も女帝ですし。
今まで衣類に関してはTPで購入したり、ヴィクトリアさんが自前の糸で作ったりしてくれていました。
ヴィクトリアさん<縫製>スキルも持っていて、趣味のように洋服を作ったりしているのです。
なので部屋着などはヴィクトリアさん製のものがほとんどです。全て白いのが唯一の難点といったところ。
正直、私が買ったお洋服よりヴィクトリアさんのお洋服の方が高級だと思います。アラクネクイーンの糸ですからね。
それでも私の買ったお洋服を着てくれているので、少し嬉しくなるものです。
で、私とエメリーさんがお買い物に行っている間のことを聞けば、どうやら配下の魔物を鍛えていたそうで。
配下といってもTPで召喚した魔物ばかりですし、それを<統率>スキルで指示しているだけのようですが、それでもやるのとやらないのでは魔物の動きや考え方といったものが変わるらしいのです。
なので休塔日のこの機に各階層を回って指示していたと。
真面目で優秀な眷属の方ばかりでありがたいです。私一日遊んじゃってて申し訳ないです。
以前に言っていた魔物や罠の配置転換については、全てを行ったわけではありません。
一部を変え、あとは徐々にと考えています。
特に四階層の改装については再び休塔日を設けて、大掛かりに変更しなければと思っています。
階層の構成を極端に変える時、他の塔でもよく見られるのだそうです。
今日は休みで改装しますよ、明日からリニューアルですよ、と知らせるわけですね。
そうしないと「昨日まで三階層が『森』だと思っていたものが、今日来たら二階層が『森』になっている」という訳の分からない事態になってしまう。
攻められるこちらからすれば、そう思われても何も問題はないのですが、そういった『大掛かりな変更』は周知の上で行うように、という大雑把な約束事があるようです。
それが神様発信なのか、ギルドとか街とかから発信されたものなのかは分かりません。暗黙の了解です。
そんなわけで三~四階層の変更と、それに伴う魔物の配置替え――三階層の蜘蛛を四階に、三階層を水溜り付きの地下牢獄にして蛇を――はしばらく先。
それ以外の細かい配置替えを行いました。
具体的には一階層の街エリアにラージャさんの配下であるフォッグスネークを一時的に配置。これは今度三階層を改装する時の予行演習みたいなものです。
どの程度侵入者に対して効果があって、どう運用すればいいのか。それをラージャさんも一緒に調べておこうと。
それと二階層の中ボス的立ち位置だったラミアをカンビオン数体に変更。他の部屋にもカンビオンを数体配置しました。
カンビオンはパトラさんの配下ですね。
【E:カンビオン:50TP】
【D:サキュバス:180TP】
【D:インキュバス:180TP】
【B:サキュバスクイーン:3300TP】
こんな感じです。パトラさんの配下では一番弱い部類の魔物。
まぁ魔物といっても見た目はほとんど人間です。これで鎧や剣を装備すれば『城内警備兵』みたいになるのでしょうが、装備までTPを使って整えるかというのも考えもの。
今は普通に襲わせていますが、パトラさん的には「やっと配下を使ってもらえた」と特に不満もなさそうな様子です。
今までは五階層のダンスホールにサキュバスを配置していただけですからね。
余談ですが、TPで剣を用意し魔物に持たせた場合、その魔物が斃されれば死体は塔に消えますが、剣は残ります。
それは斃した侵入者へのお土産となってしまうわけですね。
宝箱と同じです。宝箱に剣を補充するのにもTPを使うわけですから。……うちの塔に宝箱はないですが。
話を戻しますが、今は侵入者が一~四階層まで来ている状態。
それに対して眷属の御三方の配下がそれぞれ配置してあるということです。
<統率>し、指示し、鍛える価値はあると。これでまた少し難易度が上がるかもしれません。
侵入者も相変わらず多いですし、おそらく同盟の発表があればまた増えるのではないでしょうか。
特に【赤の塔】と同盟を結んだというのは大ニュースになるでしょうし、そうなると騒がれるのが目に見えています。
今はTPを稼ぎつつ、Cランクになったらまた眷属を増やしたい。
そんな塔主らしい欲も出て来ました。私だってちゃんと塔主として成長しているのです。ふんす。
「お嬢様、それでノノア様の元にはいつ頃行かれるのですか?」
と、調子に乗っていたらエメリーさんに釘を刺されました。そうです。今はそっちのほうが大事です。
いえ、自分の塔の管理ももちろん大事なのですが、ノノアさんのところは早めに相談に乗ってあげなければ。
せっかく同盟を結べたのにいつまでも窮地に立たされたまま、というのは私の精神衛生上でもよろしくありません。
ドロシーさん、フゥさん、アデルさんと連絡をとりつつ早急に進めましょう。
■シルビア・アイスエッジ 21歳
■Aランク冒険者 パーティー【氷槍群刃】所属
「何っ!? 【赤の塔】が【女帝の塔】の同盟に!?」
私はパーティーメンバーから齎されたその情報に驚いた。
どうやらギルドは今、その話題で持ちきりらしい。
話題性に溢れ、勢いに乗る新塔主の″二強″が手を組んだと。
アデル様が【女帝】を警戒していたのは知っている。情報収集の依頼を受けたのは私だからな。
500期の新塔主でたった二人だけ、共にDランクからのオープンとなった塔。
お互いが敵でありライバルのような関係だったはずだ。
少なくともアデル様はそう思っていたに違いない。だからこそ依頼を出した。
【女帝】側もそう思っているだろうと、最初は考えていた。
だからこそアデル様に対抗するために同期三位の【忍耐の塔】、四位の【輝翼の塔】と手を組んだのだと。
しかしその同盟の餌食となったのはアデル様ではなくBランクである【力の塔】の同盟であった。
この時点ですでにセンセーショナルなのだ。話題の中心に上る。
それから半月ほどで、その同盟にアデル様も加わった。
500期の一位から四位までが手を結ぶという異常な同盟だ。
こんなの誰にも予想できないし、話題にならないほうが無理というもの。
時期的にはやはり【力の塔】を斃したことが切っ掛けとなり、アデル様と【女帝】の間で何かしらの動きがあったのだろう。
そして何らかの原因で手を結ぶに至った。
お互いにメリットのある同盟だとは思う。少なくとも新塔主にしては過剰すぎる戦力を保有しているのは間違いない。
しかしそれだけを目当てに同盟を結ぶものだろうか。
どちらからしても早々に消してしまいたい存在のはずだろう?
消したい相手と手を組むメリット……いや、私には分からん。
「それと同時に【
「【弱き者】? 知らんな、そんな塔があるのか」
とんでもない名前の塔だな。Fランクなぞ気にするまでもないが。
■アズーリオ・シンフォニア 40歳
■第487期 Aランク【節制の塔】塔主
「全く、アデル様にも困ったものだ」
大人しくこちらの同盟に入っていればよいものを……あの小娘が。
まあよい。我がシンフォニア伯爵家がロージット公爵家と懇意になれれば面白かったのだが、そうでなければ
もとより『あわよくば』の保険だったのだしな。
これからも適当に便宜を図りつつ探ってみるのも一興。
英雄ジータの情報に加え【女帝】の情報も手に入るかもしれぬ。
あの塔は不確定要素が多すぎる。おそらく新塔主で一番警戒すべきは【赤】ではなく【女帝】だろう。
出来ればあと数年は大人しくしていてくれると助かるのだが……まあ無理だろうな。
二か月後に迫った後期の塔主総会でまたランクアップしてもおかしくはない。
たった半年でCランクともなれば物珍しいどころの騒ぎではない。
そしてその可能性は十分すぎるほどにある……。
ならばこちらも相応に動いておこうか。
一先ずはヤツらに連絡をとってみるか。
=====
【節制の塔】は
節制がかぶるんですよね。それに【塔の塔】とか意味分からないですし。
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