276:なんとか立ち会いまでこぎつけました!
■シャルロット 16歳
■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主
あれから条文のやりとりは二度ほど続きました。
まず私が追加した条文――
=====
・
=====
――に対する返答ですが、向こうは頭を悩ませた結果、とんでもない条文に修正してきました。
=====
・
=====
――という感じで修正してきたのです。
限定スキルを消したばかりか、
つまりエメリーさんに戦うなと言っているわけです。
対して向こうは【轟雷】の
これは誰がどう見ても無茶な要求。私にだって分かります。
どれだけ自分たちを有利にしたいのかと言いたくなるほどのものです。
『つまりシャルロットさんに却下される前提ということですわよ。限定スキル禁止を謳われた時点で向こうは詰んでいるのですわ』
これ以上、条文の提示し合いを続けるともっと弱みを見せることになる。
そうなると勝算は減るし、仮に勝っても次――同盟塔への仕掛け――につながらない。
ならばここら辺が切り上げ時かと無茶な条文を突きつけてきたわけです。
これで私が却下すればそれで良し。改めて【六花の塔】あたりを狙おうと。
万が一私が受理すればラッキー以外の何物でもない、という狙いのようです。
これまたどうしようかと頭を悩ませたのですが、皆さんと一緒に考えまして、結局は妥協点を提示することになりました。
私の目的は召喚できる魔物を増やすことですし、三塔分の魔物が確保できる機会というのは逃したくありません。
どうにか受理させようと苦心したわけです。
で、結局は「限定スキルは使ってもいいから
これはこれで賭けなのですが――双方共に弱点を教え合っているようなものなので――それでも受理される可能性を少しでも高めようとした結果です。
=====
・
・
・
・【轟雷】【空白】【氷海】同盟は【女帝の塔】を攻略すれば勝利。【女帝】は相手方の三塔を攻略すれば勝利とする。
・勝敗は
・
・神との立ち会いで詳細を決定し、その二日後の二の鐘から勝負を開始し、勝敗がつくまで継続する。
=====
『いや~~~面白いんだけどさー…………シャルロットちゃん、マジ?』
向こうも妥協点を享受したような形で渋々条文を認め、申請は受理される運びとなりました。
その翌日、神様の立ち会いで
で、条文を確認した神様が開口一番言った台詞が「マジ?」です。
ちなみに画面には神様と向こうの塔主三名と私しかいません。アデルさんたちはいないのです。
一応
『同盟塔の全部が戦わない感じの
あー、やっぱり過去にはあるのですね。まずは一安心。
これが
『でもねー、BCCの同盟とBの一塔はさすがに平等とは言えないし、条文を見ても【女帝】に不利なんだよねー。
まぁ面白いのはいいことなんだけどさ、一応僕も公平な立会人って立場だからあんまり条文に偏りがあるのはちょっとねー』
言われてしまいました。言われるとは思っていましたけど。
「神様、一応私も同盟の皆さんと相談しましたし、相手方の皆さんとも何度も条文の修正をやりとりして決めたのですが」
『うーん、明らかに不利なシャルロットちゃんにそう言われちゃうと僕も何も言えないんだよ。それも困った話でね。
せめて【轟雷】【空白】【氷海】の三塔は五階層分だけ使用する、とかはできないの?』
「それは……全階層でお願いしたいです」
同盟の皆さんと話している時にもその案は出ましたけどね。平等感を出すために攻略階層を減らすというのも。
しかし私の目的が召喚するための魔物の確保……つまり魔物の殲滅ですから、それにそぐわないのですよ。
三塔の全ての階層で殲滅を考えているので階層数制限はしたくないのですよね。
『んじゃあ配置する魔物の数を制限するとかは?』
「それもなしでお願いします」
これも同様ですね。それはしたくないと。
『はぁ~~じゃあしょうがないね。そこまで頑固なら認めるしかないよ』
「ありがとうございます」
『ありがとうはシャルロットちゃんじゃなくファモンくんたちから聞きたいくらいだけども』
『もちろんです。ありがとうございます』
とりあえず条文はこのまま行けそうです。良かったですね。
『他に確認しておきたいところとか詳細を詰めたいところはあるかな? どっちからでもいいよ』
「では私から。こちらから攻め込む時に塔の選択ができるようにしたいのですが転移門はどのようになるでしょうか」
『それぞれの一階層の転移門の横に他三塔への転移門が並ぶかたちになるね。それは僕がやっておくよ』
つまり私は三塔のどこに攻めることもできるし、何なら複数同時に攻めたり、途中で攻める塔の変更もできるわけですね。
一方で向こうは同盟塔に魔物を送り込むこともできると。
例えば私が【轟雷の塔】に攻め込んでいる時に【空白】か【氷海】の魔物が【轟雷の塔】に援軍に来れば私の攻撃陣を挟撃できそうですね。
それを防ぐには相手の塔の一階層に見張りの魔物を配置しておくべきですか。【魔術師】同盟がやっていたように。
私の魔物が一体でもいればその周囲を画面で確認できますから、それで挟撃は警戒できます。
まぁファムで探っておくというのが一番有効なのでしょうがね。
ここで私が口を挟めば「同盟塔への魔物の配置及び援軍の禁止」を条文に加えることもできますが、それはしません。
例えば【氷海の塔】に【轟雷】や【空白】の魔物が来たところで地形にそぐわない魔物は戦いにくくなるだけですから。
私からすれば斃しやすくなるわけで、存分に同盟塔を行き来して下さいという感じです。
この三塔同盟は特色がバラバラすぎるのですよね。それが強みでもあるのでしょうが。
【轟雷】は雷系の魔物と悪魔、【空白】は鳥系と擬態系とゴースト系と天使、【氷海】は寒冷系と水棲魔物。
どの魔物がどの塔に援軍に入っても戦いづらそうです。強いて言えば鳥くらいじゃないでしょうか。まともな援軍になるのは。
『神様、【女帝】側の同盟塔の介入禁止についてなのですが具体的にはどの程度が許容されるのでしょうか』
『禁止となっているのは魔物や戦力の貸出、限定スキルによる援助、【女帝】の戦力の強化、が条文に入っていると。一応塔主が【女帝の塔】に行くのも禁止にしておこうか。戦力にも成り得るからね』
なるほど。塔主自身の介入に関しては考えてもいませんでした。
魔物は介入しないけど塔主だったらいいだろう、という可能性もあったのですか。
限定スキルを得ている塔主なら確かに戦力になりそうですからね。まぁうちにはいませんけど。
『逆に出来ることは、まず観戦すること……これは口出しやアドバイスも含まれるね。あとは備品や道具の支給・貸出くらいかな。ただ
『承知しました。ありがとうございます』
あー、その可能性もあったのですか。
私自身は持っていなくても同盟塔から借りた
そこまで頭が回りませんでした……。
それからも細々としたところを確認し、神様との立ち会いは終わりました。
とりあえず条文は通ったのでそこは一安心です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます