415:お互いの攻撃陣が出揃いました!



■マキシア・ヘルロック 50歳

■第477期 Aランク【空城の塔】塔主



「サルマットよ、【女帝の塔】の塔構成は頭に入っているな?」


『ハッ、お任せ下さい』


「よし、ではフェンロン、ザムエラと連携をとり【女帝の塔】攻略に注力せよ。武運を祈る」


『ハッ!』



 私は攻撃陣の総指揮官を務める【疾風騎サルマット(★A)】にそう声を掛けた。

 二百五十体にも上る混合部隊の指揮だ。苦労はあるだろうが任せられるのはサルマットしかいない。

 サルマットは私が初めて召喚した固有魔物だ。もう二十年来の付き合いになる。だからこそ全幅の信頼を寄せている。


 【女帝の塔】へと向かう攻撃陣は徐々に転移門を潜り抜けていく。

 さすがに転移門の先で布陣をするのにも時間が掛かるだろう。それほどの軍勢だ。

 陣容としてはこのような形にした。


=====


【空城の塔】マキシア・ヘルロック(A)

 総指揮官:疾風騎サルマット(★A)

 エンシェントヴァルキリー(S)10+ヴァルキリー(B)50

 クアッドペガサス(A)30+グリフォン(B)30

 震牙虎ドゥーナァ(★S)+ファングキング(A)10+シルバーファング(B)40

 空貴精シルフス(A)20


【潮風の塔】ノイア(B)

 騎将フェンロン(★A)+スレイプニル(C)30+ルサールカ(A)5


【夢幻の塔】ゼメット(C)

 霊主ザムエラ(★S)+スペクター(A)1+スピリット(B)10+ファントム(B)10


【重厚の塔】ラグアン・クロック(D)

 なし


=====


 Sが12、Aが68、Bが140、Cが30。これで計250体となる。

 普通に考えれば過剰戦力だ。総数の四分の一を攻撃に回し、そのうち八十体がAランク以上なのだから。

 少なくともB~Dの同盟を相手に差し向ける戦力ではないだろう。普通ならば・・・・・、な。


 しかし相手が【女帝】同盟と考えれば過剰だとは決して言えない。

 むしろ不足する可能性すらある。Sランクの総数だけで見れば勝つだろうがそれでも油断は出来ないだろう。


 いざとなれば第二陣を送るつもりではある。

 その選出もすでに終わっているが……出来れば第一陣のみで攻略して欲しいものだ。

 そこはサルマットに期待するしかない。



 攻撃陣が転移門へと入っていくのと同時に、敵の攻撃陣も【潮風の塔】へと侵入してきた。


「来た!」「あれが【女帝】同盟の魔物……!」「何なのだあの魔物は……」


 そんな呟きが並ぶ玉座から聞こえてくる。



 私も改めてその陣容を見てみれば――



=====


 ロイヤルジェスター(A)10、フェンリル(A)、羊角のある小型の獣(?)

 普通の少女(?)、天使の輪が乗った白いスライム(?)

 おそらくヴァンパイアのクイーン(おそらく★S)+ヴァンパイア(A)20

 耳が鰓となっている女性(?)+スキュラクイーン(A)5+スキュラナイト(B)20

 アダマンタイトの騎士(?)+ロイヤルナイト(A)5+ジェネラルナイト(B)10+ブラッディナイト(B)20

 三つ首の獣(?)、炎を纏ったマンティコア(?)+マンティコア(A)3、炎の小鳥(?)

 おそらく忍耐の天使ウリエル(おそらく★S)+主天使ドミニオン(A)10+力天使パワー(B)30

 有翼の騎士(?)+フレスベルグ(A)20+ヴィゾフニル(B)30


=====


 Sが2、Aが74、Bが110、不明が9……全部で195体。


 固有魔物が多すぎる。11体だと? まさか防衛には固有魔物をほとんど使っていないのか? そんなわけあるまい。

 ならば六塔で何体の固有魔物を抱えているというのだ……なんとふざけた同盟よ。


 しかし11体全てがSランク固有魔物というわけがない。多く見積もっても半分だろう。

 となるとSが7~8、Aが79~80と見るべきか。


 我々の攻撃陣よりもSは少ないがA以上と見れば向こうが上。

 やはり懸念していたとおり【女帝】同盟はランクにそぐわない力を持っているということか……。



「マ、マキシア様、これは……」


「落ち着け。我々がやることは変わらない。迎撃は八階層からだ。それまでに敵戦力……特に固有魔物を注視しておかなくてはならん。皆も心しておけ」


「は、はい」



 正体不明の固有魔物の性質を暴くのが先決だ。出来れば力量も測っておきたい。


 見た目で大体分かる魔物もいるのだがな。

 ウリエルやヴァンパイアのクイーン、炎のマンティコアなどは分かりやすい。

 アダマンタイトの騎士と有翼の騎士もどのような戦い方なのかは想像できる。


 しかし……鰓の女性や少女、それに羊角の獣は全く分からん。

 ここら辺が戦う様を見られればいいのだが……いや、鰓の女性はどう見ても指揮官だな。魔物に指示を出している姿が画面に映っている。

 位置的にも陣の中央。攻撃陣を束ねる総指揮官にまず間違いあるまい。


 不明の魔物が多いというのは気掛かりだが、我らの防衛戦力と見比べれば十分対処は可能なはずだ。

 凌ぐしかあるまい。そして攻撃陣が【女帝の塔】を攻略さえ出来れば――。





■シャルロット 17歳

■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主



 私たちの攻撃陣が【潮風の塔】を攻略し始めました。


 先頭に斥候のロイヤルジェスター(A)とその影の中にスカアハさん(★S)がいます。

 同列にフェンリルシルバ(A)と氷獣ファーブニルペロ(★S)。これは斥候と遊撃の位置づけですね。


 一列下がって壁役にナイトメアクイーンバートリさん(★S)のヴァンパイア部隊とヨグ=ソトースヨギィ(★S)。ヨギィの頭にはエンジェルスライムパルク(★A)が乗っています。

 ヨギィの面倒をバートリさんが見る感じですね。魔法相手ならヨギィを前に出すような感じで。


 陣の中央にハルフゥさん(★S)のスキュラ部隊。これは【潮風の塔】に海階層があるためです。

 そこではハルフゥさんも攻撃役になるので一時的に指揮はランスロットさんが預かることになります。

 そして後衛の守備にそのランスロットさん(★S)の騎士部隊という地上部隊です。



 飛行部隊は前衛にヘルキマイラ(★S)、マンティコアフレイム(★A)のマンティコア部隊。そしてフェニックスクルックー(★S)が小鳥の状態でマンティコアフレイムの頭に乗っています。炎同士で相性が良さそうです。


 中衛にイカロスさん(★A)の鳥部隊。後衛にウリエルさん(★S)の天使部隊という陣容。

 飛行部隊の指揮は基本的にウリエルさんが担当することになります。総指揮はハルフゥさんですが。



 これで計196体。スカアハさんは見られないと思うのでマキシアさんたちからは固有魔物が一体少なく見えていることでしょう。


 いやぁさすがに壮観ですね。

 Sランク固有魔物が9体、Aランク固有魔物が3体ですか。

 よくぞここまで強くなったなぁという気持ちになります。



「こ、これもう【節制】同盟とかより強いんじゃないですか……?」


「局所戦闘における魔物の質で言えば上じゃろうな。これに加えて防衛陣に控えた魔物と神定英雄サンクリオがおるからのう」


「一年のブランクというのもありますけれど各塔の成長に邁進しすぎたせいで、同盟全体の戦力把握が出来ておりませんでしたわ。わたくしも反省しております」


「逆に言えばこの機に知れて良かったのでは? 【節制】同盟と当たる前にこの布陣を試せて良かったと私は思います」


「ただ【節制】同盟と戦うとなれば今度こそ限定スキルを警戒せなあかんで。魔物戦力だけのぶつけ合いなんて普通はしないんやから」



 ドロシーさんが諫めてくれましたが、皆さんどことなく楽勝ムードですね。これはいけません。

 仮に勝利が見えていても戦えば被害が出てしまうのですから。

 それを少なくする為にも、こちらはちゃんと指揮や眷属伝達を行い、真面目に塔主戦争バトルをしなければ。



 そう言って私は【女帝の塔】の画面を見ます。

 敵攻撃陣は布陣を整え、一階層『帝都』の攻略を始めました。


 地上部隊の前衛に虎の固有魔物(?)とファングキング(A)、シルバーファング(B)の部隊。

 中衛に軍馬に跨る騎士の指揮官(?)とスレイプニル(C)部隊。

 後衛に豪華なローブを纏ったゴースト(?)とスペクター(A)などのゴースト部隊。空貴精シルフス(A)もいますね。


 そして飛行部隊としてクアッドペガサス(A)とグリフォン(B)に乗ったエンシャントヴァルキリー(S)とヴァルキリー(B)の部隊がありますが、その指揮官として鎧を纏ったペガサスに乗る騎士(?)の姿がありました。



 Sが10、Aが66、Bが140、Cが30、不明が4……計250体ですか。


 魔物総数が千体となっているのに四分の一を攻撃陣に回してきたわけですね。

 【空城】同盟は限定スキルで【女帝の塔】の塔構成を知っているはずです。

 にも関わらずこれだけの軍勢を送り込んでくるということは――。



「【女帝の塔】の難易度が高いと分かっているからこそ、というのもあるでしょうけれど防衛で凌いでいるうちに攻め落としたいのでしょうね」


「防衛に750体しかいないということは、かなりスカスカではないのでしょうか。全十五階層で全ての階層に魔物が埋まっているとも思えません」


「おそらく上層に集めているじゃろうな。まぁ今となってはファムでも覗けんから詳しくは分からぬが」


「わ、私たちでさえ普通に配置したらスカスカだったでしょうしね……」



 私たちは攻撃陣に約200体を使ったので防衛陣は約800体となっています。

 それでも全十五階層に満遍なく配置など出来ません。


 【女帝の塔】に配置されていた魔物を一時的に消し、最小限だけを残した状態で、同盟の皆さんの魔物をなるべく配置するという感じになります。


 下層など特に酷いものですね。ほとんど素通りさせるのと変わりません。

 まぁ一部であれこれやるつもりではいますが、作戦のために無理やりねじ込んだ格好です。

 それくらい総数千体というのはキツイのですよ。



 同盟の皆さんの魔物にしてもうかつに下層に配置とかも出来ないですしね。

 例えば一階層のボスとしてリッチディーゴさん(A)のアンデッド部隊を置いたとしても数の暴力で斃されるだけですから。

 皆さんの眷属や固有魔物をそんな勿体ない使い方も出来ません。


 【女帝の塔】を使う以上、皆さんの魔物にはなるべく斃されず、なるべく安全なシチュエーションで戦って欲しいと思うのです。

 その為の配置、その為の作戦が必要だということですね。



「とりあえず三階層までは【女帝】の戦力で色々試させてもらいます」


「せやな。どうなるか見物やな。楽しませてもらうわ」


「これが嵌るとなればわたくしたちにも流用出来ますしね。同盟全体でのお試しということであればしっかり注視しておくべきでしょう」



 うーん、やっぱりどこかお気楽モードですね……いけませんよ、気を引き締めなければ。

 ……まぁこちらの防衛陣を見てしまうと私も気が緩みそうになるのですがね……。



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