146:同盟戦のあれこれが決定しました!
■シャクレイ・アゴディーノ 30歳
■第489期 Aランク【傲慢の塔】塔主
【女帝の塔】側から
しかし条文の内容については神を交えた上で詰めたいと。
まったく、なんと生意気な平民だ。貴族である私がわざわざ与し易いよう考えてやったというのに何の不満があるというのか。
あの塔主総会のふざけた飾りもそうだ。
平民やら亜人のくせしてまるで自分が王であるかのような振る舞い。
怒りを通り越して思わず笑ってしまいそうになったものだ。なんとも間抜けな王がいたものだと。
とは言え意地でもこの
間者である【女帝】を討ち、反貴族だとか宣う根暗バカを討ち、亜人どもを討ち、その上でバリトン子爵の
全く、賊の討滅にもこれだけ手間がかかるとは。バベルの不都合さは如何ともしがたい。
まぁ長々と無駄に掛かってしまったがようやく受理させるところまでは来たのだ。
時間を掛けたことでやつらもランクアップするくらいには戦力を増したのだろうが、それはこちらも同じこと。
計画を立てその準備に充てる時間が出来たというわけだ。
さてどのような話し合いに持っていくか、どのような戦いにするか。今から見物だな。
◆
=====
・
【傲慢】【死屍】【雨林】【砂塵】【猫髭】の同盟vs【女帝】【赤】【忍耐】【輝翼】【世沸者】の同盟。
・【傲慢の塔】の十五階層以上と【女帝の塔】の五階層以上を使用しての
一階から指定階層までの転移魔法陣を用意する必要あり。
・同盟者の魔物を戦場となる塔に集めるものとする。
同盟者は代表塔に集まって共に指揮するものとする。
但し
・
=====
『う~~~~ん、なるほどなー』
【女帝】側は不躾にもあれから細々したところを条文に入れるよう要求してきたが、まぁこちらの思惑が外されたというわけでもない。
女子供の集まりでそこまで知恵が回らなかったということだ。
ジータあたりが気掛かりだったが、所詮は英雄といっても戦闘バカということだな。
問題は神だ。バベルの全ての決定権は神が握っている。
これで神が【女帝】側の肩を持つようであれば、そこは私がどうにかせねばなるまい。
『シャルロットちゃん側は申請された方として何かあるー?』
『塔のランク差がありますからそこを平等にする事はできませんでしょうか。例えば【傲慢の塔】の階数を少なくしたり、配置する魔物の数を調整するなど』
やはりか。私に直接言えぬからと神に頼み込むとは。なんと浅ましいことか。
『なるほどねー。シャクレイくん側はー?』
「これでも十分譲歩している。ちなみに言っておくと我が【傲慢の塔】は十八階層と十九階層が繋がっている。これで一階層分のハンデだ。何も問題あるまい」
『うん、そうだねー。ボクもそこら辺は公平だと思うよ』
よし。神が公平と認めたならば問題あるまい。
これでは【女帝】も頷かざるを得ない。
あとは受理されているのだからもう
『…………承知しました』
『オーケー、じゃあ三日後の二の鐘から開始だからねー。準備よろしくー』
決まった。決定した。あの条文がそのまま通ったのだ。
バカなやつらよ。魔物の数でごねるなり、
まぁ知恵が回らないのだから仕方ない。あの世でせいぜい悔いるがいい。
さて、我が【
戦力の振り分けと配置については協議が必要だ。
塔のほうはやつらを盛大に迎え入れる準備をしておこう。
■シャルロット 16歳
■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主
「ふぅっ……と、なりましたけど大丈夫ですかね」
『大丈夫ではない。しかし相手の好きにさせんと余計に勘繰られるからのう。策を練られることこそ最大の脅威じゃ』
『腐ってもAランクですものね。まぁあの調子でしたら大体何をやるのかは分かりますわ』
『厳しそうやなー。何が厳しいってファムで探れんのが一番厳しい』
『い、今までずっとフゥさんに頼り切りでしたからね……』
そう、今回の最大のネックは情報不足なことです。
と言うよりも今までが相手の全ての情報がほぼ丸裸の状態だったので、そうした
今回の場合、向こうの同盟の低ランク塔主から得られる戦力状況と、漏れ聞こえる【傲慢の塔】の情報は得られます。
しかしいつものように地図などはないですし、戦力の詳細までは分かりません。
これでも他の塔に比べれば断然多い情報量だとも分かっているのですがね。どうしても甘えが出てしまいます。
『【傲慢の塔】はAランクでしかも大悪魔がおるからほとんどファムで探れん。しかし一階層程度ならば問題ない』
『
『
なるほど。本当にギリギリで配置変更するというわけですか。
ただおおよそは決めておかないといけませんけどね。
向こうの戦力は六割以上が【傲慢の塔】の魔物だと思います。それだけAランクとBランク以下とでは差がある。
従ってある程度、どのような魔物がいるのかという予想はついているのです。
【傲慢の塔】の場合、悪魔系と『城に則した魔物』が多い。【女帝の塔】とかぶる部分も多少あります。
グリフォンやヒポグリフ、デュラハンやリビングアーマーなどが同じですね。
他にはガードナイト、テラーナイトなどのアーマー系の他、最上位となるサジタリアナイトまでいるらしいです。
スケルトンナイトなどのアンデッドも結構いるようです。
悪魔系ではインプからデビル、デーモンまで色々と。こちらも主力でしょう。
その他にも
しかもナンバー2の【死屍の塔】もファムで探れず情報不足という状況。
分かっているのは
そしてほぼ全ての戦力がアンデッドであり、その中にはAランクのリッチやらSランクの固有魔物やら、Bランクの塔に恥じないラインナップなのだそうです。
さらに加えてCランクの塔が二つとDランクの塔が一つ、その戦力が加わります。
ただここに関してはフゥさんが戦力を把握済み。
【雨林の塔】は虫系の魔物が多いということですが、脅威となりそうなのはAランクのタイラントスパイダー。
そしてAランク固有魔物のタイラントリーチの二体。
タイラントリーチというのはすごく大きなヒルだそうですよ。相当気持ち悪いみたいです。
【砂塵の塔】は砂漠に生息する魔物ばかりということですが意外と幅広いようです。
鳥もいればサソリもいれば蛇もいれば、と。属性も土ばかりというわけでもなさそうですし。
強い魔物はAランクのタイラントスコーピオンと、Aランク固有魔物のククルカン。
ククルカンというのは大蛇だそうです。
【猫髭の塔】はあまり強くありません。猫系の魔物ばかりだそうです。
ただAランクのサンダーファングという虎が一体いるのと、Bランクのシルバーファングも何体かいるようです。
と、こうして羅列していくと大体向こうの布陣が見えてきます。
大きめの魔物は確実に防衛側でしょうから【女帝の塔】に攻め入って来るのは……と予測が出来るわけですね。
少なくともタイラントなんちゃらとかは来ないでしょう。
おそらくアンデッドか悪魔系が主力になるのではないでしょうか。ルシファーは防衛で確定でしょうけど。
あとはシシェートさんが攻撃と防衛のどちらになるか……難しいところです。
普通なら最上階に置いて塔主を守る役目にすべきです。
とは言え攻撃側の指揮官という線も考えられますからね。
まぁそれこそ
そこら辺は要相談です。
『しかし十八階層と十九階層が繋がっているというのはいい情報でしたわね』
『アホやなー。なんでバラしたんやろ。言い包めるにしても他に言いようあったやろ』
『で、でも十九階層とかって【傲慢の悪魔ルシファー】がいるんじゃないんですかね……』
『それは間違いないじゃろう。じゃからその大悪魔と竜などが一緒におるということではないか?』
『ひぃぃ……地獄じゃないですかそれ……』
ですよね。ルシファーを置くなら最上階手前の十九階層しかありません。その上で普段は二〇階にシシェートさんを置いているはずです。
そしてルシファーだけならば十八階層と繋げる必要性がない。
だからそれだけの高さを必要とする魔物が、確実にルシファーと共にいると考えられるのです。
やはり竜ですかね……。鳥系とかも考えられますけど、どうなんでしょう。
なんとなくシャクレイさんの性格を考えると『悪魔+竜』とかにしそうな気がします。強さをひけらかすような感じで。
『なんにせよ向こうがやりたいのは″圧倒的な戦力による圧勝″です。防衛では大戦力で待ち構えているでしょうし、攻撃では蹂躙を狙う。これは間違いありません』
『貴族は平民を捻り潰したいわけやな』
『か、勝って当然、みたいに思われているのでしょうね……』
『それを狂わせるのが我らの狙いじゃぞ。おそらく苦戦・接戦となれば取り乱すはずじゃ。わしらはそこを狙うし、そこを突く』
ですね。勝って当然の
私たちも決して驕らず、油断せずにいきましょう。
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