82:お喋り相手が欲しいそうです!
■ドロシー 23歳 ドワーフ
■第500期 Dランク【忍耐の塔】塔主
『エメリーさん、やっぱりすごいですよねぇ。ジータさんやゼンガーさんもそうですけどやっぱり
「ジータさんやゼンガーさんはまだ常識の範疇やろ。エメリーさんは未だに理解できんわ。異世界どうなっとんねん」
『あはは……』
最近は日中、ノノアちゃんと繋いで喋ることが多い。【世沸者の塔】の謎解きギミックがどんな感じで進んでるのかも気になるしな。その進捗を確認しつつ自分の塔を見ると。
お互い独り身やし、ちょっと喋りたいなーと思ったら気兼ねなく繋げられるっちゅうのも大きいな。
もちろん他の三人にもちょくちょく繋げるし、喋るけども。作戦会議とかしてたら邪魔かなーと一応は思うわけで。
大抵が戦闘のプロやし、戦略や戦術を練る面でもアドバイスをもらえるやろ。
孤独で不安な塔主が多いはずやからメンタルケアという意味でも何でも話せる味方はありがたいやろうな。
ジータさんなんか過去に二度も
ゼンガーさんも同じようなもんやけど、フゥにとってはハイエルフであることを明かすに最良の人選だったんじゃないかと。中にはエルフを嫌うヤツやっておるやろし。
『フゥさんもアデルさんもシャルロットさんもすごい
「ええて、ええて。まぁ塔主の能力で言うたらフゥが一番やろうけどな。あれはもう【限定スキル】が最初から備わってるようなもんやし」
『その上魔法もお得意ですしね……『訓練の間』で見させて頂きましたけど……』
前に【
ジータさんとエメリーさんがとんでもない模擬戦してたり、アデルちゃん、ノノアちゃん、フゥ、ゼンガーさんで魔法の撃ち合いしてたり。
火魔法の天才らしいアデルちゃんが全く戦闘経験のないノノアちゃんの火魔法を見て驚いとったな。鍛えないのはもったいない言うて。
うちも身体を動かしたかったからシャルちゃんと軽く打ちあってみたんやけど、思いの外強くてびっくりしたわ。見事な杖捌きやったで。
それもエメリーさんの指導を受けてるらしいけど。護身術の延長らしい。
ともかくみんな相応に『才』があるんやな、こりゃ塔主になって当然か、と再確認できた。
フゥやアデルちゃんは言うまでもなく、ノノアちゃんにしても獣人にしては破格の魔力を持っとる。何気に頭も柔らかいし。
一見、一番才能がなさそうに見えるんはシャルちゃんなんやろうけど、妙な芯の強さと妙な魅力があるし、それを【女帝】の才と言っていいのかは分からんけど……。他者を惹きつける何かがあるのは間違いないやろな。
「ま、何にせよ強い塔主に
『眷属との意思疎通はできますけどね。お話するとなると……うちはスライムしかいませんし』
「固有魔物も? ホントに全部スライムなん?」
『えっと多分……喋れないとは思っているんですけど……』
=====
□エンジェルスライム★/A/22,000TP
□デーモンスライム★/A/22,000TP
□ヨグ=ソトース★/S/68,000TP
=====
「このSランクのヤツもスライムなん?」
『そうだと思ってるんですけど……一体だけスライムじゃないとかないと思いますし……。どっちにしても高すぎて手が出ませんけどね』
「68,000TPは高すぎるな。シャルちゃんとこでもナイトメアクイーンの64,000TPが最高やったはずやし」
『これで眷属にしたら倍ですからね……私は当分先でいいです』
その分、安めのAランクの固有魔物が二体っていうのが美味しいな。天使と悪魔のスライムってのがよお分からんけど。
『ドロシーさんのところは喋れそうな魔物いないんですか?』
「おるにはおるんやけど」
=====
□忍耐の天使ウリエル★/S/58,000TP
□玄武ロックタイタス★/S/60,000TP
=====
『天使がいるんですか!? ……あ、そうか、
「さすがに高すぎんねん。眷属化で116,000TPなんていつ余裕できんねん」
『フゥさんは固有魔物召喚してましたけどAランクでギリギリでしたもんね……』
「お手頃価格の喋れる魔物がおるんならいいけど……まぁどっかと
『あはは……それはまぁそうですね』
■セリオ・ヒッツベル 22歳
■第499期 Cランク【審判の塔】塔主
僕はグリンラッド王国の外れ、ヒッツベルという小さな街の生まれだ。
父は街を治める貴族ではあるが位としては準男爵なので、僕が貴族というわけではない。
しかし将来的には父の跡を継いで街を治めたいと、小さなころから勉学に励んでいた。
準男爵家であるのに学校へと通わせてもらい、街に戻ってからも父の元で為政について学んだ。
それが昨年、バベルの新塔主に選ばれたことで僕の人生は変わる。
ヒッツベルの街を大きくしたい、父の跡を継ぎたいという気持ちも残ってはいたがバベルの塔主に選ばれるのは喜ばしいこと。
当然街は盛り上がったし、これからは街を代表して立派な塔主になろうと僕は心に誓った。
街を治めるための勉強というのは様々で、外交・内政ともに色々な要素が必要になる。街全体を見ると同時に街の外にも目を向けないといけない。
何より数字に強くなければだめだ。それが塔の運営にも活きたのだと思う。
僕は昨年の塔主総会にて同期でトップの成績を収めることができた。
もちろん苦労もあったし危険な場面もあった。運が良かったのも間違いない。
しかし499期トップというのは街に明るい話題を提供できたと思うし、それに驕らず研鑽したことで今年も499期内ではトップを維持できた。98位。初の二桁だ。
ランクはCにまで上がった。かなり早い方だと言えるだろう。
これは僕だけの力ではなく、隣に座る
「また【女帝の塔】ですか。やはり並みの力ではありませんね」
「今度は【風の塔】だからね。あのディンバー王が敗れるとは想像しがたいのだが……君の気にしているあのメイドのおかげかな」
「おそらくは。英雄ジータと戦略を組み合わせてもいけそうではありますが、正面から斃すとなればあのメイドしかいないでしょうね」
「全く手強い後輩だ」
彼女はミリア。隣にいても人にしか見えないが実際は
Aランクの【ルサールカ】というアンデッドに属する水のゴースト。
内定式で賜った
彼女は非常に頭が良く、塔の運営に関して僕がアドバイスをもらうことも多い。勤勉な彼女は僕と話が合うのだ。基本的には軍師のような立ち位置で僕のサポートをしてもらっている。
またゴーストであるから身体を透明にして飛ぶこともでき、偵察に出て行ってもらったりもしている。
もちろん他の塔の中までは入れないが、バベルの中やバベリオの街に出て情報収集などもしているのだ。
それが【審判の塔】の躍進につながっているのは間違いない。
そんな彼女が『危険』と見ているのが【女帝の塔】の
メイドは毎朝、営業前に自塔の転移門の前を掃除しているらしく、その姿をミリアは目撃した。
かなり遠め、透明で浮遊している状態。にも拘わらずメイドはミリアに気付いたと。
視線を向けられると同時にとんでもない殺気を放ったらしい。ミリア曰く。
何かの察知系スキルを持っているのは確定だが、それにしても範囲が広いし、そもそも日常的に全方向を警戒していなければゴースト状態のミリアに気付くわけがない。
慌てて帰って来たミリアにそんな話を聞いたわけだが、結論としては「あのメイドに関わってはいけない。【女帝の塔】から
Aランクの魔物にそんなことを言わせるものかとも思うが、僕は素直に従うことに決めたのだ。
「【女帝の塔】もそうなのですが【輝翼の塔】も気になります」
「ああ、そちらも確か――」
僕と彼女の戦略会議は長々と続く。これもいつものことなのだ。
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