48:自塔紹介、後半戦です!



■シャルロット 15歳

■第500期 Dランク【女帝の塔】塔主



「では次はわたくしの番ですわね。御三方のように尖ったものではございませんが」



=====


【赤の塔】塔主:アデル・ロージット 17歳 人間

 神賜ギフト :神定英雄サンクリオ ジータ・デロイト


 ランク:D(全七階層)

 戦歴 :二勝


 塔構成:屋内屋外問わず赤にまつわるものばかり

     魔物も同様。火属性が圧倒的に多い

     罠は少ない


 眷属 :火精霊サラマンダー(C) トカゲン

     ブラッディウォーロック(B) メェメェ


=====



「ト、トカゲンとメェメェやて! ハハハッ!」


「んなっ! 何がおかしいんですの! うちの可愛い眷属でしてよ!」


「ドロシーよ、おぬしもグッチーとノーミンを名付けている以上、他人の事は言えぬからな?」



 名前はともかく、やはりアデルさんも眷属枠四つのうち、三つまでしか埋めていません。そういうものなのでしょうか。

 それと想像通り【赤】関連のものばかり。

 内装にしても魔物にしても。聞けば罠も同じようなものらしいです。



「やはり火属性の魔物が主力なのですか?」


「そうとも限りませんわ。一階層はレッドキャップですし、二階層はレッドリザードマン。どちらも物理が主体ですし火属性の魔物は援護的に配置しておりますわね。まぁ上の階層に行けば行くほど火属性の魔物が多くはなりますが」


「そうなると水魔法使われたら終わりとちゃうん?」


「その為のメェメェですわよ」



 メェメェ――ブラッディウォーロックという魔物はローブを羽織った赤山羊頭の悪魔だそうです。

 悪魔は総じて強い印象ですが、この魔物はそれほどでもない。

 膂力や物理防御力がない代わりに飛びながら魔法を巧みに操るそうです。もちろん火魔法ばかりというわけでもなく、尚且つ魔法防御も高いと。


 アデルさんはブラッディウォーロックを眷属とし、さらにレッドインプという小悪魔を配置しているそうです。配下として。

 それにより水魔法にも強い魔法部隊が出来上がっているのだとか。



「はぁ~そんな魔物おんねんな。知らんかったわ」


「これもジータのアドバイスですの」


「珍しい魔物ってのは侵入者からすると厄介なもんだ。俺が侵入者だったら知らねえ魔物を見かけりゃやたら突っ込めなくなるしな」


「ほう、さすがに説得力があるのう」



 ジータさんは生前も戦い続けたそうですし、たくさんの人や魔物とも戦ったのでしょう。

 それに加えて過去二回、神定英雄サンクリオとなった経験がある。

 やはり言葉には重みがあります。


 総評すると「さすが【赤の塔】! すごい! 強い!」という印象でしょうか。

 隙がありそうで隙がない。欠点をカバーしつつ全体的に強化されている。そんなイメージです。



 さて最後はノノアさんですね。



「み、みなさんすごい塔ばかりで、私……お恥ずかしい限りなんですが……」


「ノノアちゃんがメインディッシュやねんから、ほれ、見せてみい。恥ずかしがらんと」


「は、はい……」



=====


【世沸者の塔】塔主:ノノア 15歳 狐獣人

 神賜ギフト :神造従魔アニマ ミミックスライム(C) ペコ


 ランク:F(全三階層)

 戦歴 :なし


 塔構成:城、屋敷、砦などを模した屋内型がほとんど。屋外は庭程度

     魔物はスライム系統のみ

     罠の種類はとてつもなく多い


 眷属 :なし


=====



「「「「うわぁ……」」」」



 思わず変な声が漏れます。皆さんから。

 これは……よく今まで生き残れたとむしろ感心するレベルじゃないでしょうか。



「ツッコミどころが多すぎるわ。まず、そのペコっちゅー神造従魔アニマは普通のスライムとちゃうんか」


「は、はい、見た目はスライムですけど実はミミックスライムだそうで……」



 ノノアさんの膝の上でポヨポヨとしている青い水玉。どう見ても普通のスライムです。

 ミミックスライムというのは私は聞いたことがありませんでしたが、アデルさんたちはご存じでした。

 なんでも宝箱に化けたりして、それを開けようとした侵入者に襲い掛かるのだそうです。

 ランクもCですから普通のスライムに比べて相当強い。それに襲われて亡くなる人もいるのだとか。


 とは言えいくら神造従魔アニマでも【正義の塔】のシルバーファングや【力の塔】のグレイオーガのように単純な戦闘力があるわけでもない。

 神造従魔アニマの中ではハズレの部類に間違いないだろうとジータさんは言っていました。


 それでまたノノアさんの狐耳がへにょんとなりましたが。



「まぁ神造従魔アニマはさておき塔の構成も魔物の配置も考えものじゃのう」


「魔物がスライム系統に限られているとなると、もう罠で対処するしかないですわよ」


「討伐TPを考えればそうやろうなあ。ちなみに罠ってどんなんがあるん? 見せてもらってええ?」


「あ、は、はい」



 ノノアさんは宝珠オーブを操作し、私たちにも見えるように罠のリストを表示させました。



「多っ! なんやねんこれ! ウチかてかなり多い方やと思っとったのに!」


「見たことない罠ばかりですわね……いえ、これは罠というより『ギミック』の類でしょうか」


「うーむ、確かに侵入者に対してダメージを与えるものより、ちょっと物を動かすような仕掛けばかりじゃのう。これではダメージTPも狙えぬ」



 私の【女帝の塔】でも同じような『ギミック』があります。

 六階層の『多角形の証』はその一つですね。証を六種類集めてはめ込まないと大扉が開かないと。鍵の代わりになっているわけです。

 それ自体に罠としての殺傷能力はありません。


 ノノアさんの罠リストにも同じようなギミックが多いのですが、その数が尋常じゃないほどに多い。

 蝋燭や羽ペンといった小物が『鍵』になっていたり、よく分からない木の板のようなものもあります。

 何をどう使えばギミックとなるのか、はたまた罠に変わるのか、私にはよく分かりません。



「ノノアさんはこれ、使い方分かるのですか?」


「……すっごく頑張って色々試したんですが未だによく分かってないものもあります」


「そりゃこれがこの塔の生命線やろうしなぁ。知ろうとする努力はしたんやな」


「はい。そのおかげで今も何とか生きている、という感じです……」



 侵入者を討伐しようにも撃退しようにも魔物が弱い。

 だから必然的に罠に頼るしかない。

 よく分からない罠でもギミックでも使えるようにならないといけない。


 それは分かるのですが、それでも罠やギミックだけで生き残れるものでもないと思います。

 なぜノノアさんは生き延びられているのか、そう思ったのは私だけではないようで。



「今はどうやって侵入者を防いでいるのですか?」


「えっと、このギミックを二階層最後の扉に付けているんです」



 そういってノノアさんはリストを指します。



「……なんやこれ。『クイズ扉』? こんなん初めてみるわ」


「えっとですね、扉にクイズの問題が書かれてまして、それに答えると扉が開く、というギミックです」


「はぁ~つまり言葉が『鍵』になっとるわけか。そんなもんがあるんじゃのう」


「ジータは知っていまして?」


「いや初めて聞くな。こんな罠があるのかって驚いてるところだ」



 ジータさんでも初めて見るギミックだと。

 それほど珍しいものなら確かに侵入者からの防波堤になり得るのかもしれません。



「ちなみに今はどんなクイズが書かれとるん?」


「は、はい、『自由に動かせるけど絶対に持ち上げられないものは何?』です……」


「あー、そういうクイズかい。てっきり『どこそこの街の宿屋の主人の名前は?』とかかと思っとったわ」


「それだったら調べられれば終わりじゃろう。むしろこうした謎かけの方が良いのかもしれぬ」


「なるほどなー。せやかて解かれたら終わりなんやろ? やっぱ厳しいんやろうな。現状のままだと」


「は、はい……私もいつか誰かに解かれるんじゃないかって不安で……」



 だから勇気を振り絞って同盟を結んでもらおうと行動していたわけですね。

 今はクイズの解ける侵入者が来ないことを祈るしかない。


 日中の改装はできませんから、ノノアさんはどんな頭の良い人が来ても大丈夫なように営業時間外に問題を作るしかないと。

 それでもし想定外の侵入者が来れば……もう死しかありません。



「わ、私に出来るのはこの『クイズ扉』の問題を難しくするくらいで……でも他にたくさんギミックがありますし、何とか運用できればもっと安全な塔にできると思うんです」


「だから同盟相手を探し、それを一緒に考えてほしいと、そういうわけですか」


「はい……烏滸がましいとは思うのですが、どうかお願いします!」


「任せとき! こういう罠ならウチの十八番や! 楽しくなってきたで!」



 さすがドロシーさん、頼りになります。

 アデルさんやフゥさんも笑顔で協力する旨を伝えました。もちろん私も。

 お役に立てるか分かりませんが、私も精一杯の知恵を出したいと思います。



 ちなみに例の扉の答えですが、皆さん分からなかったようで。

 しかしお一人だけすんなり答えてしまいました。



「答えは『影』ですね」



 さすがですエメリーさん。

 ノノアさん落ち込まないで下さい。エメリーさんクラスの侵入者なんていないですから。



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