56:塔のリニューアルを考えます!



■シャルロット 15歳

■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主



 塔主総会の翌日は休塔日です。

 この一日で塔を改装しなければなりません。

 少なくとも侵入者の方々が足を踏み入れるであろう階層くらいはちゃんと整えておかなければ。



 Cランクに上がったらどんな塔構成にしようか、というのは事前にエメリーさんや眷属の皆さんと話し合っています。

 しかしそれはあくまで構想。

 実際にランクアップし、既存の階層を修正しつつ新たな階層を創るとなるとなかなか思い通りにいかない部分もあるのです。


 以前FからDランクに上がった時は何も塔を創っていない状態でしたからね。新規の階層を創るだけでした。

 準備期間も一週間ありましたし、考える時間もあったのです。

 色々な面で今とは状況が違いますね。ともかく考えながら創ってみるしかありません。



「よし、じゃあやりますか! 皆さんも宜しくお願いします!」



 玉座に座り、宝珠オーブを操作しながらの塔づくり。

 その画面は眷属の皆さんも見られるようになっています。意見を出してもらいつつ創るわけですね。



「たった100m広がっただけと思っていましたが……思ったより広いですね」


「一階層の迷路とか全面的に創り直しではなくて? これは骨が折れますわぁ」


「お城の壁画が消えちゃってるのよ。せっかくエメリーさんが描いたのに」


「また一から描くとしましょう。日を改めて」



 Dランクが【直径700m、天井高7m、全七階層】だったのに対し

 Cランクは【直径800m、天井高8m、全十階層】です。


 塔の外周が広がって、一階層の壁にエメリーさんが描いたお城の絵も消えてしまいました。

 TPで描くこともできるのですがエメリーさんが楽し気に描いている雰囲気もあったので任せたいと思います。


 広がったことで一階層の街並みも空白が目立ちますし、たかが100mと侮っていましたが結構修正箇所は多そうです。

 特に四階層は……どうしたものですかね。後日ドロシーさんに手伝ってもらったほうがいいでしょうか。

 いえ、ドロシーさんもランクアップしてますからご自分の塔の修正で大変でしょうし……悩ましい。



 増えた三階層分は元の六階層と七階層の間に入ったようです。最上階を維持しつつ上に伸びた感じですかね。


 ここに新規の階層を創りあげるわけですが、そのまま七~九階層とするつもりはありません。

 今ある六階層――【多角形の部屋と大ボス部屋】は最後の関門としたいので九階層に移動です。


 同じように『階層移動』する所は何か所かあります。

 これ、一日だけで全てをこなすのは無理ですね。事前に構想を練っていましたが、それでも完璧に出来るとは思えません。

 とりあえず大雑把な階層イメージと、侵入者が入りそうな低階層を重点的に修正し、上層は徐々にやっていく感じになるでしょう。


 予定としてはこのような感じです。



=====


10階:謁見の間+居住エリア

 9階:多角形の部屋+大ボス部屋

 8階:ダンスホール+小部屋

 7階:大書庫(New!)

 6階:城内探索(New!)

 5階:庭園(New!)

 4階:トラップ回廊

 3階:地下牢獄

 2階:エントランス+衛兵控室

 1階:帝都+城門前広場


=====



 はい。新しい階層を五~七階に入れ込みます。

 四階層の『トラップ回廊』というのは元々の『罠だらけの坂道』をお城っぽく手直しする感じですね。

 今も全面石造りの階層ではあるのですが、これが【女帝の塔】らしいかと言われると何とも言えないところなので、コンセプトは変えずに内装で『お城の中にある回廊』っぽくしようかと画策しています。


 五階層の『庭園』は屋外です。植木や花壇、四阿などを使って迷路と広場を組み合わせた階層にしたいと思っています。

 お城の庭園ですから見た目は綺麗で豪華な感じにしたいですね。


 六階層の『城内探索』というのは【世沸者の塔】の脱出ゲームの簡易版のようなことをしてみたいと思っています。

 もちろんあれほどのギミックを駆使することはできないのですが、お城の設備にある食堂や調理場、浴場や宝物庫などを使って城内の部屋を巡りながら進むようなものにしたいと。

 この階層を仕上げるだけでも数日はかかりそうな気がしています。


 七階層の『大書庫』は壁が全て書棚になった大部屋の連続のような感じですね。

 もちろん本はイミテーションなのですが、本自体は高価ですからそれが視界いっぱいに広がると圧巻でしょうし、女帝の住むお城らしい豪華さが出せるのではないかと思います。

 ギミックも仕込めたら面白いですね。



 全体的な構想としては


 【侵入者が帝都からお城に入って来る ⇒ エントランスで衛兵に追われ地下牢獄に逃げ込む ⇒ 複雑な回廊を抜けて庭園へ ⇒ 城内に侵入成功 ⇒ 色々な部屋を巡って徐々に最上階へ】


 というようなイメージ。ある程度ストーリー性をもった『塔』にしたいと……これは私の趣味のようなものですね。



 また、『往復転移魔法陣』は五階層の最初に置かれます。これはルール上絶対です。

 それもあって四階層を時間のかかる『トラップ回廊』にして、五階層を新規の『庭園』としたのです。

 魔法陣を使って再探索、となった時に『庭園』からだと「これからお城に乗り込むぞ」という印象になるでしょうしね。



 ――と、こんな感じの構成でいこうと、これは事前に話し合って決めています。


 そこを修正しつつ、新規で創りつつ、なんとか形にしなければなりません。

 またそこに配置する魔物や罠も悩みどころです。



「一階層のウッドソルジャーも卒業ですかね」


「主力はウッドナイトに格上げですか。それでも不足だとは思いますが」



 今までの侵入者はDランクとEランク。言わば新人を脱したレベルの方々が相手でした。

 それが今後CランクとDランクになるのです。おそらくCランクの方のほうが多いでしょう。


 となればゴブリンと同格であるウッドソルジャーではダメージを与えることすら難しい。

 数や隊編成、罠との併用で使うという手もありますが赤字になるのは目に見えています。


 ウッドナイトでも微妙ですがね。パトラさん配下のカンビオンを使うという手もありますが……とりあえず一段階引き上げる意味でもウッドナイトで様子見します。

 ウッドソルジャーも全てを排除するわけでもなく、それこそナイトと部隊を組ませたり、罠のように迷路の中の家からワサワサと襲わせるのもいいかもしれません。

 あくまで主力をナイトにすると、ただそれだけです。



 同じように魔物の配置変更はCランクに見合ったものにしなければなりませんね。

 召喚できる魔物リストを見ますと――。



=====(★は固有魔物)


■クイーン系


□アラクネクイーン/B/3,000TP ⇒ アラクネ/D/200TP ⇒ 人面蜘蛛/F/25TP


□サキュバスクイーン/B/3,300TP ⇒ サキュバス・インキュバス/D/180TP ⇒ カンビオン/E/50TP


□ラミアクイーン/B/3,500TP ⇒ ラミア/D/220TP ⇒ フォッグスネーク/F/30TP


妖精女王ティターニア★/S/50,000TP ⇒ ハイフェアリー/C/1,000TP ⇒ フェアリー/E/100TP ⇒ ピクシー/F/20TP


□ハーピィクイーン/B/4,000TP ⇒ ハーピィ/D/140TP ⇒ 人面鳥/E/60TP


□ナイトメアクイーン★/S/64,000TP ⇒ ヴァンパイア/A/5,000TP ⇒ ダンピール/C/1,000TP ⇒ ブラッドバット/E/50TP


□ウィッチクイーン/A/18,000TP ⇒ ハイウィッチ/B/3,000TP ⇒ ウィッチ/C/1,300TP


□クイーンアルラウネ/B/4,000TP ⇒ アルラウネ/D/200TP ⇒ キラースプラウト/F/30TP


□ビークイーン/C/1,500TP ⇒ ビーナイト・ビーメイジ/E/50TP ⇒ アーマービー・ランサービー/F/10TP


□クイーンアント/B/2,300TP ⇒ アイアンアント/D/100TP ⇒ ロックアント/E/50TP ⇒ サンドアント/F/10TP



■城に則した魔物系


□ウッドナイト/E/50TP ⇒ ウッドソルジャー/F/10TP


□デュラハン/C/1,000TP ⇒ リビングローブ/D/300TP ⇒ リビングアーマー/D/250TP ⇒ シャドウ/E/50TP


□スライム、クリーナースライム/F/10TP


□ヴァルキリー/B/2,700TP


□ガーゴイル/B/2,000TP



■騎獣、番犬系


□グリフォン/B/3,000TP ⇒ ヒポグリフ/C/1,000TP


□ペガサス/C/1,500TP


□スレイプニル/C/850TP


□ケルベロス/S/21,000TP ⇒ オルトロス/A/7,600TP ⇒ バーゲスト/C/1,200TP



塔主戦争バトル報酬(一回限り)


□シルバーファング/B/2,000TP


□アスラエッジ★/A/30,000TP


□マンティコア/A/8,000TP


□グレイオーガ/B/2,000TP


=====



 もちろんこれ以外にも召喚可能な魔物はいますが【女帝の塔】として使いやすい――他の塔に比べて安上りなものや、塔の個性があるもの――となるとこんな感じですかね。


 基本的にはクイーンを召喚し、配下の魔物を主力とした階層を創る……というのが望ましいとは思います。

 それが【女帝の塔】の強みでもありますし。

 ただそうなると魔物の偏り……属性や耐性、攻撃方法が単一化しやすい。


 ヴィクトリアさん、パトラさん、ラージャさんの配下を部隊のように編制することもできますが、それをしてしまうと階層ごとの特色がなくなってしまう。

 どの階層もその部隊を配置させることになりそうですし。

 やはり階層ごとにコンセプトを変え、それに見合った魔物を配置するべきなのでしょう。


 そして【女帝の塔】で召喚できる魔物の少なさ・・・がネックになるわけです。

 まあノノアさんやフゥさんに比べれば贅沢なのでしょうが。アデルさんやドロシーさんよりは少ないですからね。


 本来であれば塔に配置しやすいであろう汎用性のある魔物。

 例えばゴブリンやオーガなどの亜人系、ウルフなどの獣系、それと虫系もですか。

 そういった魔物が極端に少ないのですよね。それこそクイーン系統に頼るしかありません。


 今ある手札でどうにか構成を練らないといけない。

 それはどこの塔でも同じでしょうが……悩ましいのには変わりありません。


 ……やはり早々に『眷属枠』を埋めるべきですかねぇ。



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