第17章 フォルフォルの秘密

第161話 数的不利はさっさと解消するに限る

 恭介達が瑞穂に来てから37日目、恭介は朝食を取り終えてからドラグレンに乗ってコロシアムにやって来た。


『今日はコロシアムなんだね。5連戦?』


「その通りだ。ナグルファルとタラリアを強化したいんでね」


『はい、開いたよ。恭介君は貴重な戦力なんだから、もうちょっと自分を大切にしてほしいね』


「無理のないペースで挑んでるさ。休みはぼちぼち考える」


 それだけ言って恭介は入場門をくぐってコロシアムの中に入った。


 コロシアムには黄色い蟷螂の特徴を持つ女型生物がいた。


 片足は真鍮製であり、もう片方の脚は大きな鉤爪がある。


 両腕は蟷螂の鎌になっており、背中から蝙蝠の翼を生やす姿は化け物と呼ぶに相応しい。


 その化け物はドラグレンのコックピットをじっと見つめ、野性的な笑みを浮かべる。


「その塊の中に濃厚な雄を感じる」


「虫即撃」


 ドラグレンからゴーレムチェンジャーでタラリアに乗り換えると、恭介はライフル形態のグリムリーパーで容赦なく撃っていく。


「痛い痛い痛い痛い痛い!」


「虫即撃」


 恭介の声には感情がまるで感じられなかったため、フォルフォルはタラリアのモニターに姿を見せていたがガクブル状態だった。


『うぅっ、エンプーサが蜂の巣になってるよ。蟷螂なのに』


 そんな呟きも今の恭介にはスルーされ、エンプーサが光の粒子になって消えたところで恭介は落ち着きを取り戻した。


「不快な敵は早々に処分するに限るね」


『ブラック恭介君のおなぁぁぁりぃぃぃぃぃ』


「煩い。ハウス」


『はーい』


 フォルフォルがモニターから消えると同時に、緑色の鷲型巨人が現れた。


 (フレースヴェルグならドラグレンだな)


 属性的な相性を考え、恭介はゴーレムチェンジャーでドラグレンに乗り換えた。


 それと同時にフレースヴェルグが無数の風の刃を放ち始めた。


 偏差射撃までして来るものだから、恭介は自分に向かって来る風の刃を躱しつつ一対の翼の銃で反撃した。


 フレースヴェルグも偏差射撃に集中していたため、恭介の迎撃に反応が遅れてビームが脇腹を掠めた。


 掠めたビームで集中が斬れ、風の刃による攻撃が途切れた。


「フレェェェェェ!」


 ダメージを受けたことに怒り、フレースヴェルグが叫んだ。


 それと同時にフレースヴェルグが暴風を纏い、そのままドラグレンに突撃して来た。


 (単調な動きだな。あれをやろう)


 怒ったフレースヴェルグの動きを見て、恭介はファルスピースをブーメランに変形させて投げた。


「フ、フレッ」


 何処に投げているんだとフレースヴェルグが笑うのに対し、恭介は冷静に一対の翼の銃で偏差射撃をやり返した。


 フレースヴェルグは自分がやったことをやり返されてムッとしたが、火属性の攻撃を受ける訳にはいかないのでビームが当たらないように動く。


 それこそが恭介の狙いだった。


 ブーメランが背後からフレースヴェルグの左翼に命中し、バランスを崩したフレースヴェルグが地面に墜落した。


 ファルスピースが手元に戻ったため、恭介はそれを銃に変形させて墜落したフレースヴェルグの嘴と右翼、体を撃ち抜いて倒した。


 フレースヴェルグの体が消えるのと同時に、コロシアムを埋め尽くす程の青い大蛇が現れた。


「ギフト発動」


 恭介がギフトの発動を宣言し、彼はドラグレンのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移った。


土精霊槌ノームハンマー


 ドラキオンに乗り換えた直後、恭介が召喚した黄金の大槌が青い大蛇の頭を潰した。


 頭を潰されたミドガルズオルムの生命活動が低下し、ミドガルズオルムの巨体が光の粒子になって消えた。


『ミドガルズオルムゥゥゥゥゥ!』


 属性的に相性が良いとはいえ、まさか一撃でミドガルズオルムを仕留められると思っていなかったから、フォルフォルは思わずミドガルズオルムの名前を叫んでしまった。


「煩いぞフォルフォル。静かにしろ」


『あっはい』


 叱られたフォルフォルはモニターからおとなしく消えた。


 コロシアムを圧迫していたミドガルズオルムの体が消え、その次に現れたのは上半身が銀髪ロングの女性で下半身が蛇のモンスターだった。


「お゛お゛お゛え゛っ」


「うわっ、汚なっ!?」


『これがエキドナのやり方だぁぁぁぁぁ!』


 エキドナは自分の子供として知られるモンスターを口から吐き出し、それを肉壁として扱う。


 モンスターを吐き出す時、エキドナは体力を消耗する。


 強敵を前に体力を消耗をするのは悪手のように思うかもしれないが、体力と引き換えに使える肉壁を召喚できるなら決して悪い手とは言えまい。


 今回、エキドナが吐き出したのは赤い三つ首を持つ多頭犬のケルベロスだった。


 (数的不利はさっさと解消するに限る)


 ラストリゾートをガトリングガンに変形させ、恭介はケルベロスの3つの頭を順番に攻撃した。


「ワォン!?」


「キャイン!?」


「クゥゥゥン!」


「くっ、時間稼ぎにもならないなんて! お゛お゛」


 ケルベロスが倒されたことに驚き、エキドナが次のモンスターを吐き出しそうするのを見て、恭介はラストリゾートをビームソードに変えてエキドナの首を刎ねた。


 (俺の戦闘って日本に知られてるんだろ? こんなの放送禁止だろ)


 エキドナの戦闘スタイルがグロかったので、恭介がそう思うのも無理もない。


 エキドナに変わって次のモンスターが現れた瞬間、コックピットのモニターにフォルフォルの声が響く。


『サプラァァァァァイズ!』


 このアナウンスがあったということは、本来出現するはずだったモンスターではなく別のモンスターが出現するということだ。


 コロシアムに現れた赤い三つ首竜は、ドラキオンを見て凶悪な笑みを浮かべる。


「ドラゴン擬き風情が」


「頭の数が1つなんて雑魚だな」


「やーい、ザーコ、ザーコ」


 (この愚物に実力差をわからせてやる)


 自身の最高傑作であるドラキオンを馬鹿にされたことに対し、恭介は静かにキレた。


 まずは安い挑発をして来た右の頭に狙いを定め、恭介は急接近してからビームソード形態のラストリゾートを横薙ぎにして首を刎ねる。


「「なんだと!?」」


「次は左だ」


「やらせるか!」


 恭介が左側の頭を切断しようとした時、それを阻止せんと真ん中の頭が炎を吐き出した。


 しかし、その動きを恭介は見切っており、吐き出された炎を軽やかに躱して左の首も斬り落とした。


 そして、切断した後に真ん中の頭に攻撃されるとわかっていたため、恭介はその場から離脱した。


 ワンテンポ遅れてドラキオンがいた場所を炎が通過するが、そのせいでアジ・ダハーカが間抜けに見えた。


「雑魚扱いした相手にあっさりと左右の頭を斬り落とされた感想はあるか?」


「おのれぇぇぇぇぇ!」


 斬り落とした首から機体を熔かす毒が噴き出し、それが虫を模ってそれがドラキオンに向かって飛んで行く。


 無視を模った毒を目にした瞬間、恭介はラストリゾートをビームランチャーに変形させて精密機械のように全てを撃ち抜いた。


 その上、毒を撃ち抜いたついでにアジ・ダハーカの体にも命中しており、真ん中の首が虫の息になっていた。


「辞世の句は読ませんぞ」


 そう宣言した後、恭介はビームランチャーでアジ・ダハーカの真ん中の頭を撃ち抜いた。


 アジ・ダハーカの体が光の粒子になって消えたことによって5連戦が終わり、ドラキオンのモニターにコロシアムバトルスコアが表示される。



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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)

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討伐対象:①エンプーサ②フレースヴェルグ

     ③ミドガルズオルム④エキドナ

     ⑤アジ・ダハーカ

部位破壊:①鎌(左右)/脚(左右)②嘴/翼(左右)③全身

     ④召喚器官⑤頭(全て)/翼(左右)

討伐タイム:35分10秒

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10枚

   資源カード(素材)100×10枚

ファーストキルボーナス:鷲巨人砲フレースキャノン

            ギフトレベルアップチケットⅣ

サプライズ撃破ボーナス:リミットブレイクキット

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×50

デイリークエストボーナス:黒金剛アダマンタイト×50

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv30(stay)

コメント:私は考えるのを止めた

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 (それで良い。余計な言葉は不要だ)


 5連戦の戦利品が充実していたこともあり、恭介はフォルフォルの余計な一言で折角の良い気分を害されずに済んだことに安堵した。


 瑞穂に帰った恭介は、キレッキレな戦いに感動した麗華に笑顔で出迎えられるのだった。

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