第139話 見敵必殺!
午後になり、恭介達は宝探しに挑むべくタワーの地下6階層に移動した。
昇降機を降りてすぐに恭介と麗華の耳にアナウンスが届く。
『ミッション! 1時間以内にスプリガンの
GBOにおいて、スプリガンの紫玉は換金アイテムとして知られていた。
2人の乗るゴーレムのモニターに映る紫色の宝玉は、スプリガンを倒すと3%の確率、スプリガンディフェンダーを倒すと10%の確率でドロップする。
「物欲センサーとの戦いだな」
『私、GBOで一度もドロップしたことないんだけど』
「ガンガン倒そう」
『そうだね』
地下6階層の内装は遺跡であり、スタート地点の広間には幸いにもスプリガンがうじゃうじゃいる。
早速、恭介と麗華はそれぞれリュージュとブリュンヒルデを巧みに操り、5分かからず掃討してみせた。
「何体倒した? 俺は20体」
『私も20体だよ』
「40体倒したら1個はドロップする計算だが、確率はあくまで俺と麗華でそれぞれに算出される訳か」
『恭介さん、私の分まで頑張って』
「諦めるな。次に行くぞ」
全速力で通路を抜けると、スタート地点と同様にスプリガンがわらわらと集まっていた。
「紫玉置いてけ!」
『ドロップしてよ!』
恭介と麗華は願いを声に出すけれど、残念ながら広間のスプリガンを全滅させてもスプリガンの紫玉は出なかった。
「最初とさっきので50体は倒したんだが、1つもドロップしないな」
『フォルフォルが因果律操作とかしてるんじゃないの?』
『そんなことしてないよ! というか、そんなことができるならデスゲームで日本がこれまで圧勝できるようにせず調整してるよ! ちゃんとクリアできるように調整してるんだから、言いがかりは止めてよね!』
フォルフォルはプンスカと怒った。
いや、怒っているように見せているだけかもしれない。
恭介は時間がない中、神経を集中させて今いる広間に何か違和感がないか探した。
そして、広間の壁に飛び散った血の跡に注目した。
他の壁には普通にスプリガンの血が飛んでいるのに、恭介が注目している箇所は不自然に血が付いていなかったのだ。
ナイトメアを銃形態に変え、不自然に血の付着していない箇所を的にして連射したところ、壁が壊れてその奥に宝箱を守るスプリガンディフェンダーがいた。
「
今度はナイトメアを三叉槍に変形させ、恭介は一瞬でスプリガンディフェンダーの頭部を貫いた。
スプリガンディフェンダーのドロップはスプリガンの紫玉ではなかったが、宝箱からお目当ての物が出て来た。
「よしっ! ゲットだぜ!」
『やったね!』
スプリガンの紫玉を見つけて喜ぶ2人の耳に、想定外のアナウンスが届く。
『追加ミッション! 30分以内にスプリガンの
「『そんなのあり?』」
『そのリアクションを待ってたよ。30分以内にスプリガンの紫玉を手に入れた場合は追加ミッションが発生するようになってたのさ』
「チッ、フォルフォルと喋ってても時間の無駄だ。先に進もう」
『了解』
フォルフォルの満面の笑みにイラつき、恭介と麗華は通路の奥に進んだ。
先程の通路にはなかった振り子や矢のトラップがあり、追加ミッションは地味に難易度が上がっていることが伺える。
次の広間には30体のスプリガンと2体のスプリガンディフェンダーが待機していた。
時間との勝負だから、麗華は四対の翼の銃から実弾ではなくビームを放った。
そのおかげで一気にスプリガンの数が減り、残ったスプリガンは恭介が蛇腹剣に変えたナイトメアで一方的に狩っていく。
スプリガンディフェンダー達は意外と小狡く、スプリガンを盾にして恭介達の攻撃から身を守っていた。
それでも、肉壁がなくなったことでスプリガンディフェンダーはあっさりと恭介達にやられてしまう。
「外れた」
『同じく』
手短にドロップの結果を報告し合い、空振りだったとわかれば恭介と麗華は通路の奥に急いで進んだ。
通路のトラップには釣り天井と大玉、槍衾が加わるが、恭介達はそれらを難なく躱して進む。
通路を抜けた先には地下6階層で最大の広間があり、そこには巨大な魔法陣が展開されていた。
更に言えば、そこからポコポコとスプリガンが大量に出現しており、その数は100や200なんてものじゃなかった。
「ボーナスタイムだ!」
『私もやる!』
恭介はリュージュを機械竜形態に変形し、左から右に薙ぎ払うようにビームを放った。
少し遅れてしまったが、麗華も広間の上空から
リュージュとブリュンヒルデが相手では、スプリガンがいくらいても足りない。
10分かからずにスプリガンが全滅し、今度は魔法陣からスプリガンディフェンダーが10体現れた。
「スプリガンディフェンダーの価値が大暴落してるぞ」
『今度こそ手に入れるわ!』
やれやれと恭介が苦笑している内に、麗華がまとめて9体倒してしまったため、恭介は残り1体のスプリガンディフェンダーを倒した。
その結果、麗華が9体の内1体からスプリガンの紫玉をドロップした。
『やった~! ゲットした~!』
「グッジョブ!」
これでも出なかったら残り時間が心配だったので、麗華がスプリガンの紫玉を手に入れてくれたことに恭介は安堵した。
宝探しのミッションをクリアしたことで、宝探しスコアが恭介達の見るモニターに表示される。
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宝探しスコア(マルチプレイ)
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ミッション:1時間以内にスプリガンの紫玉を奪え
追加ミッション:30分以内にスプリガンの紫玉を奪え
残り時間:13分7秒
協調性:◎
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総合評価:S
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報酬:80万ゴールド
資源カード(食料)100×8枚
資源カード(素材)100×8枚
ランダムボーナス:100万ゴールド
追加ミッションボーナス:魔石4種セット×100
ギフト:
コメント:ぐぬぬ、スリルが足りない!
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「余計なことすんなよ?」
『もっと楽しませておくれよ』
「余計なことすんなよ?」
『やっちゃいけないことだからこそやる。それが最高に楽しい!』
「余計なことすんなよ?」
『あっはい』
恭介に同じことを3回連続で言われてしまい、フォルフォルはこれ以上の抵抗を止めてモニターから姿を消した。
「麗華のランダムボーナスはどうだった?」
『10万ゴールドだったよ。恭介さんは?』
「すまん、100万ゴールドだ」
『私が恭介さんよりもお金持ちな時間って短いね』
麗華の声はしょんぼりしていた。
瑞穂の強化に大量のゴールドを支払った結果、一時的に麗華の方が貯金は多くなったのだ。
しかし、恭介が今日の宝探しで180万ゴールド獲得し、麗華が90万ゴールド獲得したことでその順番は逆転した。
これも運なのだから、仕方のないことだと言えよう。
宝探しでやるべきことは終わったため、恭介達はタワーから脱出して瑞穂の格納庫に戻った。
2人がコックピットから降りようとした時、モニターに再びフォルフォルが現れる。
『パンパカパーン! 日本の3期パイロット全員がタワーの5階層に到達したよ! 明後日は第1回新人戦に決定!』
「新人戦って俺達関係ないんだよな?」
フォルフォルがイベントの開催を告げるが、恭介にとっては参加できないイベントにあまり興味が湧かないのだ。
『ぶっちゃけ関係ないね。観戦する? ぶっちゃけ、日本チームって恭介君に観戦してもらった方がパフォーマンス上がりそうなんだよね。特に明日奈ちゃん』
『恭介さんには私がいるもん』
『面 白 く な っ て 来 た』
いつの間にかみたらし団子と緑茶を取り出すフォルフォルに対し、恭介は冷ややかな視線を向けた。
その視線に耐えられなくなったため、フォルフォルはみたらし団子と緑茶をしまって話を続ける。
『未来の味方の選抜試験だと思えば良いんじゃない? それにほら、自分の命の危険がないところで命が散る瞬間を眺めるのって金持ちの悪役プレイができるじゃん』
「そんなことをしたいとは微塵も思わないね」
『これだからゲスフォルはゲスフォルなのよ』
『後半の冗談はさておき、後輩を見守るのは先輩の役目だよ。ちゃんと観戦するように』
それだけ言ってフォルフォルはモニターから消えた。
恭介と麗華が新人戦を観戦するのは最初から決定事項だったらしい。
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