第34話 ラブコメの波動を感じて来てみれば激アツだね!
タワーを脱出したところで、恭介はコックピットのモニターに表示されたスコアに目を通し始める。
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タワー探索スコア(マルチプレイ)
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踏破階層:6階層
モンスター討伐数:41体
協調性:◎
宝箱発見:設置なし
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総合評価:S
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報酬:
3万ゴールド
資源カード(食料)5×1
資源カード(素材)5×1
ギフト:
コメント:1桁の階層じゃ
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(だろうね。
レッドキャップジェネラルと戦ってみても、斬った感触は豆腐のようなものだった。
モニター上で不貞腐れたフォルフォルを見て、恭介は
スコアの確認を済ませた後、恭介と麗華は
格納庫で損傷がないか確かめ、魔石も補充したところで2人は
「麗華、探索分の資源カードはカードリーダーでスキャンしよう」
「そう言えば、さっきやってなかったけどレースの方はしなくて良いの?」
「資源カードは代理戦争1回分ぐらい貯めておくつもりだ」
「その心は?」
どんな理由があって日本国民にお預けをさせるのか気になり、麗華は恭介が何を考えているのか訊ねた。
「何かこちらの要求を通したい時に使うんだ。例えば、麗華が家族と喋りたいとする。持木さんが気を利かせて首相官邸に連れて来ると思うか?」
「なるほど。このままだと1週間で10分だけという貴重な時間を政治だけに使われてしまうから、こちらも交渉材料を用意するのね」
「正解。まあ、その、なんだ。前回は俺が私情で話を進めちゃったからな。麗華が家族と喋りたいなら交渉材料1回分を使っても構わない」
恭介が申し訳なさそうに言うと、麗華が目を潤ませて彼に抱き着いた。
「ありがとう!」
「お、おい」
感極まって自分に抱き着いたならば、無理矢理引きはがす訳にもいかない。
麗華のことだから、もう少し時間が経てば恥ずかしくなって離れるだろうと思い直し、恭介は彼女が恥ずかしくなるまで好きにさせた。
恭介の予想通り、5分も経てば麗華の頭は冷静になってきたようで、自分から恭介に抱き着いてしまったことに気づいたらしい。
折角冷静になったのに、麗華の顔が真っ赤になって慌てて恭介から離れた。
その一部始終を音を立てずに見ていたフォルフォルが下卑た笑みを浮かべる。
『ラブコメの波動を感じて来てみれば激アツだね!』
「そのムカつく顔とサムズアップを止めろ」
「失 せ ろ」
『あっはい』
(さっきから麗華に弱いね、フォルフォル)
麗華が自分に見えない角度でどんな表情をしているのかわからないが、調子に乗って人を揶揄うフォルフォルがおとなしく言うことを聞くのは都合が良いから、恭介はスルーしておいた。
フォルフォルがモニターから消えると、微笑んだ麗華が異論を認めない迫力で恭介に声をかける。
「恭介さん、お腹空いたから食堂行こっか」
「だな。ランチにしよう」
空腹なのは間違いないので、恭介は頷いて麗華と食堂に向かった。
「何食べる?」
「俺はカレー食べ比べセットかな」
「えっ、そんなのあったの? 私もそうする」
恭介が目敏く見つけたメニューが気になり、麗華も同じものを注文した。
頼んだ料理が届くまでの間、麗華は暇潰しも兼ねて恭介に質問する。
「恭介さんってなんでグリードアグリに入社したの?」
「いきなりどうした?」
「いや、ほら、拉致された日に私がグリードアグリに内定貰ったって話をしたじゃん。それで、先輩社員がどんなことを思って内定先に入ろうと思ったのか聞きたくなったの」
「俺が答えたら麗華も話せよ?」
「勿論」
急にリクルーター面談みたいなノリになったため、一瞬だけ戸惑った恭介だったけれど、デスゲームが終わって解放されたら会社に戻るつもりがあったので頭の中身をビジネスマンに切り替えた。
「端的に言えば、俺は美味しい農作物が食べたかったからグリードアグリに入社した。グリードアグリのメイン事業が農薬の販売ってことは当然知ってるよな?」
「うん」
「中学校の社会の授業で農家体験をするってのがあったんだ。その時に農家の人が言ってたんだが、昔に比べて農作物の栄養は落ちてるんだそうだ。土中の栄養がどんどん失われてるらしく、その栄養で農作物が育つから土が栄養不足になってる。俺は農家の人達が言ってた昔の美味かった農作物を復活させて食べるため、グリードアグリに入った」
「食欲に忠実なんだね。良いと思う」
恭介は自分がグリードアグリに入社した理由を述べ、それが麗華に受け入れられてホッとした。
食い意地が張っていると笑われるんじゃないかと思ったが、よく考えてみれば麗華も食いしん坊な気配のするのでそれはないかと思い直した。
「麗華はなんでグリードアグリを志望したんだ?」
「私のお母さんの実家って米農家でね、お爺ちゃんとお婆ちゃんが美味しい米を作るのは大変だけどやりがいがあるっていつも言ってたの。だから、いつか私の携わった農薬で楽に美味しい米ができたって言ってもらえるようにグリードアグリを選んだんだ」
「お爺ちゃんお婆ちゃん想いで良いじゃん」
「2人はお父さんやお母さんよりも優しいから懐いてたってのもありますけどね」
そんな話をしている間に、配膳ロボットが2人前のカレー食べ比べセットを持って来た。
「おぉ、美味しそうだ」
「早く食べましょう」
「「いただきます」」
恭介と麗華は複数のカレーを味わった。
福神漬けなんてパイロットネームにしていたことから、麗華はカレーが好きなようで恭介よりも真剣に食べていた。
「左のカレーはチーズがあれば満点。右のカレーは一瞬辛くてびっくりするけど、それがまた癖になる」
(楽しそうで何よりだ)
食べ終わった後にマンゴーラッシーを飲み、2人は一息ついた。
「美味しかったな」
「だね。最後のマンゴーラッシーで満足感倍増だった」
「わかる。さて、食後の休憩がてらショップチャンネルを見ないか?」
「そう言えば朝は見てなかったね。何か良い物があれば良いんだけど」
恭介達は
○設計図
・ブラウニーの設計図 5万ゴールド
・シルキーの設計図 10万ゴールド
・プリンシパリティの設計図 25万ゴールド
・リャナンシーの設計図 25万ゴールド
・スフィンクスの設計図 50万ゴールド
○鉱物マテリアル
・
・
・
・
・
○武器
・グラディウス(
・ポールアックス(
・
○魔石
・4種セット×10 1万ゴールド
・4種セット×50 5万ゴールド
(設計図の方は渋いな。少なくとも俺が無理して買いたい物はない)
気になる設計図があれば買うのもありだと思っていたが、今日のラインナップは恭介のお眼鏡にかなわなかったようだ。
その一方、麗華はぐぬぬと唸っていた。
「麗華、欲しい物があったけど予算オーバーって感じ?」
「うん。プリンシパリティの設計図と双犬銃が欲しいんだけど、35万ゴールドかかっちゃう。午後の探索で
それらを2丁の銃として使うこともできるし、合体させてライフルのように使うことも可能なロマンあふれる銃なのだ。
「よし、わかった。プリンシパリティの設計図は俺が奢ってやる。だから、麗華は
「え? いやいやいや、買ってもらうならせめて
「投資だよ、投資。シミュレーターの情報じゃ7階層は水属性のモンスターが出て来る。ってことは、俺のケット・シーは相性の悪い。だから、麗華のゴーレムを強くしてその分頑張ってもらおうと思ってな」
口ではそう言っているけれど、麗華は恭介が自分の懐事情とプライドを考慮して納得しやすい言い訳を作ってくれたことに気づいた。
「…ありがとう。期待してくれた分は返すから」
「おう」
麗華は恭介にお礼を言った後、購入した設計図と武器でゴーレムを調整した。
麗華が作業を終えてから、恭介達は午後のタワー探索に出かけた。
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