第194話 粉砕! 玉砕! 大喝采!
恭介達が瑞穂に来て45日目、ハイパードライブを終えて瑞穂はニューイングランドに接近していた。
艦内のモニターにニューイングランドが映し出され、それから画面が切り替わってラミアスが映り出す。
『総員、第一種戦闘配備。繰り返します。総員、第一種戦闘配備。これよりニューイングランド侵攻作戦を開始します』
昨日の午後、ニューイングランド侵攻に関する打ち合わせが行われ、誰がどんな役割を担うのか決められた。
各々が役割を全うすることでニューイングランド侵攻作戦は初めて成功するから、
恭介は作戦を成功させることも大事だが、自分を省みない者が出てしまっては困るので集まっているパイロットに声をかける。
「全員、無事に帰還すること。作戦も大事だけど、各々の安全を第一に動いてくれ」
「「「…「「了解!」」…」」」
作戦リーダーは当然のことながら恭介なので、その指示に他のパイロット達が頷いた。
3期パイロットの4人はニューイングランドには攻め入らず、瑞穂の護衛を任されている。
これは明日奈が恭介のためならば無茶をしかねないことに加え、4人のギフトレベルがまだ20に達していないからだ。
いざとなればすぐに瑞穂に帰艦できるような配置でありつつ、恭介達の侵攻に対する反撃に備える意味でも3期パイロットは護衛にしておくべきという考えは恭介とルーナの間で一致した。
ひとまず、ニューイングランドに侵攻するパイロットから先に出陣するため、1期と2期パイロットの4人が先に格納庫に移動してそれぞれのゴーレムに搭乗する。
3期パイロットの4人も後から格納庫に移動し、それぞれのゴーレムには搭乗したもののまだ出撃せずこの場に待機している。
ニューイングランドはトラペゾヘドロンと同じ形の惑星であり、その周囲には怪しい色のガスが舞っている。
『恭介君、そのガスは高性能なチャフの役割をしてるよ。吹き飛ばしてから出撃だからね』
「わかってるさ。ラミアス、頼んだ」
『承知しました。
瑞穂の主砲である
それにより、命中した箇所だけガスが消えて大きな穴ができるが、瑞穂からの攻撃を察知したようでガスが瑞穂の正面だけに集まる。
『ガスは私が吹き飛ばします。総員、衝撃に備えて下さい。
ラミアスの発射許可が下りてすぐに、特装砲の
特装砲と呼ぶに相応しい火力のため、ニューイングランドの表面に
その反動で瑞穂全体が揺れ、恭介達の乗るゴーレムのコックピットにはラミアスの乳揺れシーンが映った。
『恭介君、やったね! 乳揺れだよ、乳揺れ!』
「黙ってろ。ラミアス、予定通りに発進する」
恭介はルーナを黙らせてからドラグレンをカタパルトまで移動させ、それを確認してからラミアスの声がコックピット内に響く。
『進路クリア。ドラグレン、発進どうぞ!』
「明日葉恭介、ドラグレン、出るぞ!」
カタパルトから射出され、ドラグレンが瑞穂の外の宇宙空間に飛び出してから麗華達が続く。
『更科麗華、ブリュンヒルデ、出るわよ!』
『筧沙耶、ガイアドレイク、発進します!』
『尾根晶、サルガタナス、行きまーす!』
ブリュンヒルデとガイアドレイク、サルガタナスも宇宙空間に飛び出し、恭介のドラグレンの後ろに続く。
ガスが消えたことにより、ニューイングランドへの侵入は容易になった。
しかし、攻撃を受けたまま敵が黙っているはずもなく、クトゥルフ神話の侵略者達がニューイングランドからぞろぞろと現れる。
「ラミアス、敵戦力について教えてくれ」
『承知しました。既出の敵はC008クトーニアンとC009黒い仔山羊、C010マガ鳥が10体ずつです。新出はC011レンの蜘蛛とC012忌まわしき狩人が10体ずつに、C013ディープワンが20体です』
レンの蜘蛛は段ボール大の蜘蛛であり、巨大な蜘蛛の怪物アトラク=ナクアの子供と言われている。
忌まわしき狩人は名前に似合わず、空飛ぶ蝮の見た目でナイアルラトホテップの猟犬として知られている。
ディープワンは人の顔をしたグロテスクな魚であり、ダゴンとハイドラを崇拝している。
「排除してやる」
レンの蜘蛛の存在を知って恭介の顔から表情が抜け落ち、ゴーレムチェンジャーでドラストムに乗り換え、爆発する粉をレンの蜘蛛をターゲットにしてばら撒き、そのまま爆発させる。
『私だってやるんだから!』
無視を嫌う恭介がついでに敵を全滅させてしまっては見せ場がないから、麗華もヴォーパルバヨネットを連射して左にいる敵から片付けていく。
『私達の出番はなさそうですね』
『もう全部恭介君達で良いんじゃないかな』
『何を言ってるんですか。次は私達が戦うんですよ』
『はーい』
ものすごい勢いで数を減らす敵集団を見て、沙耶も晶もこの戦闘では加勢は不要と判断した。
だが、沙耶は次こそ自分達が戦うんだと気合を入れており、晶は全て恭介と麗華に任せておけば良いのではないかと考えていて、スタンスが正反対に分かれていた。
それでも、沙耶に注意されれば晶も次は自分達が戦う気になった。
本当に晶にやる気がなかったならば、そもそもニューイングランド侵攻組に入っていなかっただろう。
迎撃舞台を蹴散らした恭介達は、ニューイングランドにできたクレーターに降り立った。
クレーターを囲むようにワラワラと第二陣が集まって来たため、恭介はゴーレムチェンジャーでドラクールに乗り換える。
「敵の数を減らすぞ。フォーメーションを組んで侵攻する」
『『『了解!』』』
ここで散開すれば、各個撃破されてしまう可能性も0ではない。
だからこそ、
ニューイングランドには迎撃時にいなかったショゴスやナイトゴーント、シャンタク鳥等もおり、恭介達が今までに倒して来た
(拠点だけあってやはり数が多いな)
クレーターを起点に北上するも、恭介達を取り囲むように多くの
『侵攻組の皆さん、気を付けて下さい! そちらにC104アトラク=ナクアが接近してます!』
(嘘…だろ…?)
ラミアスの知らせがあった直後、恭介達の進行方向にアトラク=ナクアが出現した。
アトラク=ナクアの大きさは巨大兵器と呼んで遜色ないものであり、恭介はその存在を1秒でも早く消滅させなければならぬと判断した。
「ギフト発動」
恭介がギフトの発動を宣言し、彼はドラクールのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移った。
アトラク=ナクアに余計なことをさせないために、恭介は迷うことなく
アトラク=ナクアの頭上にその大きさを上回るサイズで出現させれば、特注サイズの槌が召喚されて恭介の狙った場所にそれが振り下ろされる。
結果として、アトラク=ナクアがぺちゃんこになるだけでは留まらず、
当然、それぐらい大きなクレーターができればニューイングランド全体が激しく揺れる訳で、周囲にいた他の
『粉砕! 玉砕! 大喝采!』
両手に扇子を持ったルーナがドラキオンのモニターに現れ、アトラク=ナクアを一撃で仕留めた嬉しさを表現すべく喜びの舞を踊り始めた。
「ルーナ」
『はい! なんでしょうか!?』
恭介の雰囲気がとても怖かったため、ルーナはすぐに両手の扇子をしまって直立不動の軍人のような姿勢に移行した。
「ニューイングランドを破壊したって構わないよな?」
『サー、あわよくば乗っ取ってしまえと思いましたが、気に入らなかったら壊しても構いません、サー!』
「ロキの巫女の話は知ってるが、程度ってのは弁えられないのか? 弁えられるよな?」
『あっはい』
冷たい表情と声から、恭介をこれ以上怒らせてはいけないと判断してルーナはモニターから消えた。
なんにせよ、第一陣と第二陣を完封して恭介達はニューイングランド侵攻を再開した。
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