第193話 金ならあるってことですかぁ?

 恭介がコックピットから出て来た時、麗華はその前で待っていた。


「恭介さんってば狡い。30分でハーロットを手に入れるなんて無茶苦茶だよ」


「偶然だよ。それよりも、最高記録到達ボーナスでドラキオン専用兵装ユニット竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムが手に入ったんだ」


「そんなのあるの!?」


「あった。竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムは腰の両側に装備できて、使いたい時に願ってくれれば勝手に発射準備を整えてくれるんだ。具体的に言うと陽電子砲を発射する折畳み式レールガンが2つ追加される感じ」


「私もブリュンヒルデ専用兵装ユニットが欲しい! コレクト&ビルドにチャレンジして来る!」


 麗華は恭介みたいに自分も専用兵装ユニットを手に入れるんだと気合を入れ、ブリュンヒルデに乗り込んでからコロシアムに向かった。


 麗奈がバトルメモリーでコレクト&ビルドに挑戦するべくコロシアムに来た途端、モニターにフォルフォルが現れる。


『麗華ちゃんもコレクト&ビルドに参加したいのかな?』


「そうよ。私だって恭介さんみたいにブリュンヒルデ専用兵装ユニットが欲しいの」


『物欲センサーの作動確認』


「フラグを立てるとか止めてよね。それよりも、さっさと入場門を開いてちょうだい。制限時間は恭介さんと一緒で30分に短縮しといて」


『しょうがないなぁ、麗華ちゃんは』


 やれやれと首を振りつつ、フォルフォルは青い耳なし猫型ロボットの声真似をして入場門を開くが、麗華はそれに気づくことなく入場門を通って行った。


 恭介のようにツッコんでくれないのかとフォルフォルがしょんぼりするけれど、仮に麗華が気づいたとしてもわざわざフォルフォルの喜ぶようなことを麗華はしないだろう。


 入場門をくぐって移動した先は、恭介がコレクト&ビルドにチャレンジした時と同様に闘技場だった。


 運が悪いことに、ブリュンヒルデの隣にはツインヘッドワイバーンがいた。


 そして、ツインヘッドワイバーンとブリュンヒルデを取り囲むように6機のゴーレムがいた。


「悪意の塊じゃないのよ!」


 それら全てを見下ろせる位置に移動してから、麗華はヴォーパルバヨネットと四対の翼の銃をフル稼働して一斉掃射を行う。


 この場においてスペックが最も高いのは麗華のブリュンヒルデだから、眼下にいる全ての敵がその攻撃で掃討された。


 その証拠として、ブリュンヒルデのサイドポケットには黒金剛アダマンタイトが60個とエクスドレイクの設計図が転送されて来た。


 (エクスドレイクの設計図? ナグルファルの設計図があればクライオブドラグーンが作れるわね)


 恭介が自分のハーロットを完成させたのなら、自分だって恭介が会得したゴーレムを完成させたいと思うのは麗華が負けず嫌いだからである。


 ツインヘッドワイバーンの体が消えた後、それと入れ替わるようにしてアンピプテラが闘技場の上空に現れた。


『麗華ちゃんはワイバーン系モンスターに好かれてるね。エッチだからかな?』


「煩い!」


 フォルフォルがニヤニヤしながらモニターに映り出すと、麗華はヴォーパルバヨネットをマシンガンに変形させてアンピプテラを蜂の巣にしてみせた。


 その結果、エースドレイクの設計図がコックピットのサイドポケットに転送されて来た。


 (ナグルファルの設計図はヨトゥンとベルグリシの設計図に加え、設計図合成キットが必要。しかも、ナグルファルの設計図の完成はイレギュラーだから、今から集めるのは厳しいわ)


 恭介に対抗したい気持ちはあれど、それが目的の足枷になるならば麗華は拘らないだけの冷静さを残していた。


 クライオブドラグーンを完成させるのは厳しいと判断した時、闘技場の上空にマンドラゴンが現れる。


「設計図合成キット置いてけ!」


 全武装を一斉掃射することで、麗華はマンドラゴンに何もさせることなく戦闘を終わらせてしまった。


 運が悪いこともあれば良いこともあるということなのか、マンドラゴンを倒して得られたアイテムは設計図合成キットだった。


 (これで違う道筋も見えて来たわ。先を急ぎましょう)


 闘技場の奥に続く鉄格子が上がったことに気づき、麗華はブリュンヒルデを操縦して先に進む。


 進んだ先で鉄格子が激しい音を立てて落下し、ブリュンヒルデが2番目の闘技場の中に閉じ込められた。


 そこは金網に囲まれた地下闘技場と呼ぶべきデザインで、金網デスマッチを行うのに相応しかった。


 闘技場の中心にはデモニックブレードが待機していた。


 ブリュンヒルデを捕捉した瞬間、デモニックブレードは魔法陣を展開して己の鎧になる無数の剣を召喚し始める。


「させないわ!」


 麗華は早撃ちでデモニックブレードの柄にある目玉を射抜き、召喚した大量の剣が硬直した隙を突いてデモニックブレードに接近する。


 それから、ヴォーパルバヨネットを剣形態にしてデモニックブレードを一刀両断してみせた。


 主を失った大量の剣は、デモニックブレードと同時に光の粒子になって消えていく。


 デモニックブレードを倒して得られたアイテムだが、本日2つ目の設計図合成キットだった。


 (良いペースね。後はここで何が現れるかだけど)


 デモニックブレードとその配下の剣が消えるのと入れ替わるようにして、今度はハルキジャミアーが姿を現す。


 その攻撃を受けるとデバフがかかるので、麗華は問答無用でマシンガンを連射する。


 ハルキジャミアーはダメージを負った部位が紫色に変色し、背中にある七対の棘から紫色の霧を噴出した。


 その霧がたちまち闘技場を埋め尽くさんばかりに広がるから、麗華は上空に逃げてから全武装で一斉掃射を開始する。


 霧の中の様子は正確にわからなくとも、ブリュンヒルデの一斉掃射を躱し切るのは至難の業であり、ハルキジャミアーはダメージが積み重なって力尽きた。


 それと同時に霧が晴れ、ハルキジャミアーの体が光の粒子になって消える。


 アイテムをチェックする前にモニターを見ると、映る残り時間があと3分を切っていた。


 最後の相手としてバトルグリモアが闘技場に現れたのを見て、麗華は短期決戦で終わらせることにした。


「ギフト発動!」


 麗華は50万ゴールドをコストとして、金力変換マネーイズゴールドを発動する。


 バトルグリモアがブリュンヒルデと相性の悪い火属性に変化しようと、ごり押しして倒す算段のようだ。


 強化されたヴォーパルバヨネットの一撃で風穴を開ければ、バトルグリモアは力尽きた。


 その瞬間、タイムアップを告げるブザーが闘技場に鳴り響いた。


 それと同時に麗華は格納庫によく似たエリアに転移させられ、そこにはベースゴーレムが目の前に安置されていた。


 ハルキジャミアーを倒して手に入れたのがサイバードレイクの設計図だったことから、麗華はサイバードレイクとエクスドレイク、エースドレイクを設計図合成キットを使って合成する。


 完成したのはサイコドラグーンと言うゴーレムであり、その設計図とバトルグリモアを倒して手に入れたジャンクセージの設計図をもう1つの設計図合成キットで合成した。


 それによって完成したゴーレムは、黒金剛アダマンタイト製のエクリプスを完成させた。


 エクリプスは敵の攻撃を吸収して強くなる特性のゴーレムだがクセも強く、GBOでは名立たるパイロットが誰も手に入れようとしないゴーレムとして知られている。


『はい、そこまで! 早速評価を始めるよ~』


 フォルフォルがビルドの時間は終わりだと宣言し、そのまま評価の時間になった。


 ブリュンヒルデの足元に魔法陣が現れてコロシアム前に転送され、それと同時にバトルスコアがモニターに表示される。



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バトルスコア(バトルメモリー・コレクト&ビルド)

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得点:500

モンスター討伐数:6体

ゴーレム撃墜数:6機

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×10枚

   資源カード(素材)100×10枚

   100万ゴールド

ゴーレム撃墜ボーナス:60万ゴールド

最高記録到達ボーナス:ブリュンヒルデ専用兵装ユニット混沌衛砲カオスサテライト

ギフト:金力変換マネーイズゴールドLv30(up)

コメント:金ならあるってことですかぁ?

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「嫌な言い方しないでよ。私がなんでもお金で解決するみたいじゃない」


『ギフトレベルを一気に2つも上げてるんだし、事実だと思うけどね。それよりも、麗華ちゃんも資格を得たみたいだね』


「資格?」


『詳しくは恭介君に甘えた時に聞いてごらん。バイバイ』


 フォルフォルはそれだけ言ってモニターから消えたため、麗華はよくわからないまま瑞穂に帰った。


 恭介に出迎えられた麗華は恭介からフォルフォルの正体を知らされ、微妙な表情になったことを補足しておこう。

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