第66話 当たらなければどうということはないってはっきりわかんだね

 麗華が落ち着いてから、恭介はベースゴーレムを先程のコロシアムで手に入れたアシュラにして、コピーパイロットプログラムのカードを使ってみた。


 それにより、恭介達が出撃する際はそれに続いて出撃できるようになった。


 アシュラの元ネタの阿修羅は三面六臂の神だが、アシュラの腕は6本と同じだけれど頭は1つだけだ。


 顔も1つだけで、両側面には顔の代わりに超小型のマシンガンが設置されていて、横からの襲撃に対抗できるようになっている。


 初期武器は6本のシミターであり、基本的にアシュラは近接戦闘を得意とする。


 恭介達は火属性のリュージュと土属性のドラキオン、風属性のヴァーチャーを所持しているため、アシュラは現在所有していない水属性に設定した。


 アシュラの調整を終えた後、麗華と相談して今日は午後から3機でコロシアムのマルチプレイに挑むことにした。


 そのため、昼食までまだ時間があるから、午後に挑むコロシアムの予習をシミュレーターで行った。


 午後になり、恭介達はそれぞれのゴーレムに搭乗してコロシアムにやって来た。


『麗華ちゃん、恭介君に連れて来てもらえて良かったね』


『煩い。恭介さんは私を見捨てたりしないって言ってくれた。お前の言葉に惑わされたりしない』


 麗華がコックピットのモニターに姿を見せたフォルフォルに対し、自分はお前の精神攻撃に屈したりしないとはっきりとした態度で言った。


 フォルフォルが余計なことを言われては面倒なので、恭介はフォルフォルが再び喋り出す前に口を開く。


「無駄口を叩くなフォルフォル。さっさと入場門を開け。戦闘は2連続で行う。スコアはその後にしてくれ」


『なんか最近私に冷たくなーい?』


「ひ ら け」


『あっはい』


 恭介の目がゴミでも見るようなものになっていたので、フォルフォルはおとなしく入場門を開いた。


 フォルフォルが開いた入場門を通ってみれば、ケルピーが出て来た時とは異なって水のない舞台だった。


 その中央には尻尾が蛇になっている赤い双頭の犬が待機していた。


「サプライズはないな。オルトロスだ。麗華、手筈通りにやるぞ」


『うん!』


 コピーパイロットプログラムが操るアシュラもこの場にいるが、返事をすることはできない。


 あくまで使用者の思考をトレースして無人でゴーレムを動かすだけだから、喋る機能は組み込まれていないのである。


 手筈通りというのは、最初にアシュラが突撃することを意味している。


 アシュラが正面から接近してシミターで攻撃しようとすれば、オルトロスは属性的に相性が悪いのでアシュラから遠ざかる。


 勿論、ただ逃げるだけでは戦闘にならないから、オルトロスは属性的に相性が良い麗華のヴァーチャーを狙って火の玉を次々に吐き出した。


『当たらないわよ、そんな攻撃』


 ヴァーチャーのスペックなら問題なく躱せるので、麗華はオルトロスの2つの頭から放たれる火の玉を避けつつ反撃も行った。


 それにより、オルトロスは自分を追うアシュラから逃げてヴァーチャーを倒すことに気を取られた。


 (ここだ! 今がチャンス!)


 恭介は死角になっていた頭上から急降下して鶏蛇斧槍コッカベルテを振り下ろし、オルトロスの尻尾を切断した。


「「アォン!?」」


 蛇の尻尾が斬られてしまえば、オルトロスは後ろを見る目を奪われたことになる。


 その結果、アシュラの接近を先程までよりもリアルタイムで感知できなくなり、後方からの切り傷が増えていった。


 アシュラからの攻撃が鬱陶しくなったため、オルトロスはヴァーチャーからアシュラにターゲットを変えて襲い掛かる。


『背中ががら空きよ』


 麗華がランプオブカースで連射すれば、鶏蛇斧槍コッカベルテで切断した部分からじわじわと石化していたオルトロスに追い打ちで石化の効果が発生し、オルトロスの動きが鈍っていく。


 (これ以上は弱い者虐めになりそうだ。早く仕留めてやろう)


 恭介は再びオルトロスの頭上から鶏蛇斧槍コッカベルテを振り下ろし、オルトロスの右の頭を斬り落とした。


 怒りに震えて叫ぼうとした左の頭に、麗華が放った銃弾が命中して爆発する。


 そこにアシュラが攻撃を畳みかけ、オルトロスは力尽きて光の粒子になった。


 (ゴーレムが3機になるとかなり戦闘が楽になるな)


 オルトロス戦では楽ができたため、恭介はコピーパイロットプログラムの利便性を実感できた。


『コピーパイロットプログラムが恭介君の手に渡ったのは駄目だったかもしれない』


 (今更気づいたって遅いさ)


 フォルフォルがしまったという表情でモニターに現れるが、恭介はオルトロスの次に現れたモンスターに注意を向けつつ何を今更と心の中でツッコんだ。


 2戦目に現れたモンスターだが、全身に百の目を持ったアルゴスという巨人である。


 手荷物のは特注の棒であり、赤と青、黄、緑の4つの棒が連結して1本の棒になっているようだった。


「麗華、アルゴスは棒を組み替えて有利な属性で攻撃してくるから気を付けろよ」


『わかってる!』


 アルゴス自体に属性はないのだが、持っている武器が火と水、土、風の全ての属性を使えるので厄介だ。


 しかも、全身に目があるから死角がない。


 そういった意味では、オルトロス戦の時のように恭介が楽をするのは難しいだろう。


 今回もアシュラがヘイトを集めるべくアルゴスに接近しようとしたのだが、アルゴスが叫び出す。


「チカヅクナ!」


 その瞬間、アルゴスの全身にたくさんある目のいくつかからビームが放たれた。


 この攻撃はシミュレーターで予習済みだったので、恭介達は誰もダメージを負わずに済んだ。


 自分の攻撃が全く当たらないことに腹を立て、アルゴスのビームの本数が増えていく。


 麗華は避けながら地道に反撃し、ランプオブカースの効果でアルゴスの攻撃を邪魔する。


 恭介もリュージュを機械竜の姿に変形させ、リュージュの口からビームを発射してアルゴスが怯むようなダメージを与えた。


 その隙にアシュラが接近し、片っ端からアルゴスの目をシミターで傷つけ始める。


 目を潰していけば、確実にアルゴスの放てるビームの本数は減るので、アシュラの攻撃はアルゴス攻略の観点で正しい。


 麗華も攻撃が止んだのをチャンスと捉え、ランプオブカースを連射して爆発や石化、毒といった追撃でアルゴスの動きを鈍らせていく。


 恭介が脳天を狙ってリュージュの口から再びビームを放ったことで、アルゴスが膝をついた。


『ギフト発動』


 とどめを狙えると判断したらしく、麗華は金力変換マネーイズパワーを発動してアルゴスに強力な一撃を放って倒した。


 アルゴスが光の粒子になって消えたことにより、戦闘が終わってコロシアムバトルスコアが各々のゴーレムのモニターに表示された。



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コロシアムバトルスコア(マルチプレイ)

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討伐対象:①オルトロス②アルゴス

部位破壊:①頭(左右)/尻尾②目×78

討伐タイム:13分27秒

協調性:◎

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総合評価:S

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報酬:60万ゴールド

   資源カード(食料)100×6

   資源カード(素材)100×6

ファーストキルボーナス:黒金剛アダマンタイト×60

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×60

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv10(stay)

コメント:当たらなければどうということはないってはっきりわかんだね

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 (アルゴス戦のことを言ってるようだな)


 恭介がそんな風に思っていると、麗華から通信が入って来る。


『恭介さん、これで私もヴァーチャーを黒金剛アダマンタイトにできるよ』


「おめでとう。さっきチラッと見たけど、ショップチャンネルにドミニオンの設計図があったぞ」


『値段次第かな』


「買っとけ。足りなきゃ俺が出すから。次回のデスゲームに備えて少しでも戦力は強化しとくべきだ」


 恭介の言うことはもっともだったので、麗華は恭介の好意に甘えることにした。


『お金が足りなかったらお願いします』


「それで良い。じゃあ、帰ろうか」


『うん』


 恭介達はコロシアムでやるべきことは全て済ませたので脱出し、そのまま格納庫に戻った。

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