第67話 心折設計のコースに涙が出そうだ
ホームに来て15日目にして第2回デスゲーム開催前日の朝、恭介は朝食後にリュージュに乗ってレース会場にやって来た。
『恭介君が3日間休みを与えても毎日ゴーレムに乗ってる件について』
「明日からのデスゲームに備えてのことだ。3日間サボったとして、後で苦しむのは俺達だからな」
『もうちょっと怠惰でも良いと思うんだけどね。まあ、怠惰な恭介君って想像できないからしょうがないか。今日はどのコースに挑むの?』
「ストームタワーだ。入場門を開いてくれ」
『はーい』
フォルフォルは恭介のリクエストに応じ、ストームタワーに繋がる入場門を開いた。
入場門を通った先には、既に9機のゴーレムがスタートラインに待機していた。
先頭から順番にスフィンクス、アラクネ、イフリート、リャナンシー、メビィ、ブラストキャリッジ、ケット・シー、ラセツ、パワーと並んでいる。
第2回代理戦争の時と違うのは、9機全てを構成する鉱物マテリアルが
リュージュが位置に着いたことにより、全員の準備ができたところでレース開始のカウントダウンが始まる。
『3,2,1』
「ギフト発動」
恭介がギフトの発動を宣言し、彼はリュージュのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移動した。
『GO!』
スタートの合図が聞こえたタイミングで、恭介はドラキオンを斜め上に飛ばせたていた。
ところが、ケット・シーのパイロットがマーリンと同様に全員の位置をランダムに入れ替えた。
前回は6位のブラストキャリッジと位置が入れ替わっていたが、今回は3位のイフリートと入れ替わった。
順位が上がった状態でスタートできるのはありがたいけれど、2位がブラストキャリッジだと気づいた瞬間にブラストキャリッジと距離を取った。
ブラストキャリッジは走る火薬庫だから、どのゴーレムもさっさと仕留めてやろうと狙っており、4位のメビィの銃撃が命中してブラストキャリッジが爆散した。
(
既にブラストキャリッジの爆発で機体を損傷しない辺りまで進んでいたため、恭介は爆風を追い風にして1位のケット・シーを追い抜いた。
スタート地点では大爆発が起きたせいで5位以下のゴーレムが軒並み損傷しており、酷い機体については走行不能の状態に陥っていた。
ストームタワーは巨大な螺旋スロープを上がっていき、最後に頂上から地上まで飛び降りて1周が終わるコースだ。
吹き曝しでストームタワー内に嵐による強風や雷の影響を受けやすい訳だが、今はまだ強風だけなのでトップスピードに突入して風を纏っているドラキオンに影響はない。
恭介が全く強風に影響されず進んで行くと、今度は地面に穴が開いたり棘が飛び出したりし始めるゾーンに入った。
それだけに留まらず、スロープの上から金属球が等間隔で転がり落ちて来る。
(ん? なんか罠が凶悪になってないか?)
ドラキオンのスペックがあれば避けるのは容易いが、地面に開く穴の数や飛び出す棘の数が前回のレースよりも倍近く増えていた。
金属球もまさかの
後ろを走る敵を足止めしてもらうため、恭介はどの罠にもノータッチで先に進む。
タワーの頂上には避雷針には、雷が落ちた時にギミックが作動してタワー内部がランダムに爆発する仕掛けがある。
前回は頂上の穴から飛び降りて恭介が2周目に突入した時から作動したのだが、今回のレースでは恭介が頂上の穴に跳び下りた直後に落雷が発生し、ストームタワーの数ヶ所で爆発が起きた。
(
なんて心の中で思っているけれど、恭介はギミックに引っ掛かるつもりなんて毛頭ない。
2周目に入り、ブラストキャリッジの大爆発で走行不能になったリャナンシーとラセツ、パワーを周回遅れにして、罠が増えたゾーンまであっという間に進んだ。
落雷によるギミックの爆発に巻き込まれたらしく、アラクネとイフリートが走行不能になっていた。
頂上まであと少しの地点にはスフィンクスがいて、穴や棘を躱したところで
もしもドラキオンが空を飛べなかったなら、スフィンクスが邪魔で先に進めなかっただろう。
のろのろと進むスフィンクスをドラキオンがあっさりと抜かした直後、落雷のギミックによる爆発でほんの少し前に恭介が通過した場所が爆発した。
(ふぅ、危なかったぜ。間一髪だったな)
爆発でヒヤッとした恭介だったが、頂上に到着してすぐに穴から飛び降りる。
前方に小破したアラクネがいたけれど、ドラキオンが重力によってトップスピードを超えて纏った風圧に吹き飛ばされた。
(許せアラクネ。悪気はあった)
3周目に入る時点でまだ周回遅れにしていないゴーレムは、2位のケット・シーと3位のメビィだけだ。
落雷による爆発と転がり落ちて来た
その間にメビィが2位に浮上したため、恭介はメビィを追い抜こうとラストリゾートをライフルに変形させた。
『おっ、やっと武器を使うんだね! やっちゃえやっちゃえ! メビィを撃っちゃいなYO!』
フォルフォルは嬉しそうにそう言うが、恭介はメビィをロックオンするだけに留めた。
メビィは自分がロックオンされたと気づき、無駄な動きをすることで狙いが定まらなくなるようにした。
それこそが恭介の狙いだった。
ドラキオンが無駄のない走行をし続ければ、無駄な動きをするメビィとの距離は当然どんどん詰められれていくことになり、恭介はあと少しでメビィに追いつく所まで来た。
その時、恭介の接近に気を取られたメビィが突然飛び出した棘で底部を刺され、スロープの途中で止まった。
(計算通りだ)
恭介はニヤリと笑みを浮かべ、ラストリゾートを使わずに頂上まで進んだ。
もう恭介を邪魔するものは存在せず、そのまま穴を飛び降りてゴールした。
『ゴォォォル! 優勝は瑞穂の黄色い弾丸、トゥモロー&ドラキオンだぁぁぁぁぁ!』
恭介はストームタワーから脱出し、レース会場前に戻って
自動的にリュージュのコックピットに移動させられ、そのモニターに映し出されたレーススコアを確認し始める。
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レーススコア(ソロプレイ・ストームタワー)
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走行タイム:22分45秒
障害物接触数:0回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:0回
他パイロット周回遅れ人数:9人
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×6枚
資源カード(素材)100×6枚
60万ゴールド
非殺生ボーナス:魔石4種セット×60
ぶっちぎりボーナス:
ギフト:
コメント:おのれ、武器を使うと思わせて私を弄んだな!?
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「勝手に弄ばれたと思ってるだけだろ」
『酷い! なんてことを言うんだ! 私は長年支えてくれた右腕に裏切られた気分だよ!』
「俺は大した付き合いもなければ右腕でもないから、その表現には無理がある」
『ぐぬぬ。使うと見せかけて武器を使わない。こんなやり方で私の楽しみをぶち壊すだなんてやるじゃないか』
何言っているんだこいつという目を恭介が向ければ、フォルフォルはその視線に耐えられなくなってモニターから消えた。
(騒がしい奴め。少しはおとなしくできないのかね?)
フォルフォルに呆れつつ、恭介は麗華が待っているのでリュージュを動かして格納庫へと帰還した。
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