第36話 五七五で言ったって認めないから
デスゲーム7日目の朝、恭介は朝食後の休憩を終えて立ち上がる。
「じゃあ、エキサイトプールでレースして来るわ」
「行ってらっしゃい」
恭介は麗華に手を振ってから、格納庫からイフリートに搭乗してレース会場に向かった。
『恭介君は本当に毎日レースをするよね』
「やれる時にやるのが俺の流儀だ」
『プロフェッショナルですね、わかります。さあ、エキサイトプールに行けるようにしたよ』
「サンキュー」
フォルフォルが入場門を開いてくれたから、恭介はイフリートをその中に進める。
移動した先のエキサイトプールでは、既に7機のゴーレムが位置に着いて待っていた。
そのいずれもリッジハイウェイと同じく、
7機の内訳だが、鮫人間型ゴーレムのジョーズマンが4機に加え、人魚型のセイレーンが3機である。
エキサイトプールはGBOのレースにおける5番目で、巨大レジャーランドのプールがモチーフになっているコースだ。
水辺のコースだけどコースアウトはせず、ジョーズマンやセイレーンのような水中仕様の機体でなければ、水に触れると速度が落ちる。
間違ってもイフリートでは挑むコースではない。
空を飛べれば速度は落ちないと考えられるから、ドラキオンなら問題なくレースで戦えるというのが昨晩シミュレーターをやってみての恭介の感想だ。
スタートラインは陸と水中の両方にかかっていたため、恭介はイフリートを外側にある陸地のスタート位置まで移動させてから、レース開始のカウントダウンを待つ。
『3,2,1』
「ギフト発動」
恭介がギフトの発動を宣言し、彼はイフリートのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移動した。
『GO!』
スタートの合図と同時にドラキオンが翼を広げ、見事なスタートダッシュを決めて他の7機の前を陣取ると、その風圧で7機はスタートダッシュに失敗した。
無理に前に行こうとした結果、風圧に負けて横にいるゴーレム同士がぶつかり、スピードが出せなかったのだ。
恭介はドラキオンでプールの上を水に触れないラインで飛び、風圧で自分の後ろに波を作る。
その波が水中を進む後ろのゴーレム達の動きを更に鈍らせた。
後方への妨害を行いつつ、恭介は前方から群れでやって来るグサダーツを素早く躱して受け流す。
グサダーツはダツによく似たモンスターであり、水面に浮上してから着水するまで左右に曲がれないから、その特徴さえ理解して対応できれば武器を出さずとも避けられる。
(最初のアクセルリングはあれか)
エキサイトプールにはレースゲームによくある加速装置が設置されており、それはフラフープの形をしたアクセルリングと言われるものだ。
それがコース内の水上と水中の両方にいくつも設置されており、上手く利用することでラップタイムを大幅に短縮できる。
恭介は最初のアクセルリングを潜り抜け、精密な操縦で次々にアクセルリングを通過して加速していく。
水上のアクセルリングはどんどん飛び込み台の上へと続いていき、恭介は飛び込み台を高速で通過した。
操縦するのが飛べないゴーレムの場合、徐々に重力に負けて着水する羽目になるが、空を飛べるドラキオンはそんなことにはならない。
限界速度のまま上空を移動し、水やモンスターに邪魔されることなく、2周目に突入する。
(今回も周回遅れにできるか?)
恭介がそう思ったのはエキサイトプールのギミックを考えてのことだ。
レースに参加したゴーレムが1機でも2周目に入ると、水中のコースが進行方向とは逆に流れるプールになった。
なお、2位のゴーレムが2周目に入れば、それが進行方向と同じ流れに変わり、それ以降は奇数の順位のゴーレムが2周目に入ると逆方向の波になり、偶数だと進行方向の波に変わる。
ドラキオンに搭乗する恭介には波の影響が全くないから、水面から飛び出すグサダーツの群れさえ躱せればこのレースはただのタイムアタックと化す。
洗練された動きで進み、アクセルリングで一時的に限界を超えた速度に到達する。
飛び込み台から飛んで行く途中で、水中にいた2機のシャークマンと2機のセイレーンを抜かして恭介は3周目に突入する。
エキサイトプールはゴーレムが1機でも3周目に入ると、流れるプールに大波が等間隔で発生するようになる。
その大波は奇数の順位のゴーレムが3周目に突入すれば、進行方向とは逆向きに生じる。
偶数の順位のゴーレムが3周目に入れば、今度は進行方向と同じ方向に大波が発生する。
今は進行方向と逆向きの大波が発生しており、それが2位のセイレーン、3位と4位のシャークマンを邪魔している。
3周目のエキサイトプールの厄介な点はそれだけではない。
誰かが3周目に入った瞬間、コース全体にクビレグリンという巨大海ぶどうと呼ぶべきモンスターが出現して水中も上空も問わずゴーレムの進行を妨害するのだ。
幸いなことに、クビレグリン自体が暴れるようなことはなく、あくまで水の流れに流された動きをするだけである。
(俺のドラキオンを舐めるなよ)
ドラキオンは限界突破したスピードから限界速度に戻っていたが、その速度によって生じる風圧ならばクビレグリンを吹き飛ばせる。
だからこそ、恭介は特に困った表情にならずにそのままずんずんと進んでいる。
クビレグリンがアクセルリングを通過しようとするゴーレムを邪魔するが、ドラキオンの風圧で吹き飛ばされたため、恭介はまた限界突破したスピードを出す。
そのおかげで4位から2位までごぼう抜きすることに成功し、恭介は飛び込み台を1位で通過した。
空を飛ぶドラキオンにゴールするまで邪魔できるものは存在せず、恭介はそのままゴールした。
『ゴォォォル! 優勝は瑞穂の黄色い弾丸、トゥモロー&ドラキオンだぁぁぁぁぁ!』
恭介は早々コースを離れ、
イフリートに乗り換えたところで、コックピットのモニターにはレーススコアが表示された。
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レーススコア(ソロプレイ・エキサイトプール)
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走行タイム:16分24秒
障害物接触数:0回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:0回
他パイロット周回遅れ人数:7人
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×2枚
資源カード(食料)50×1枚
資源カード(素材)100×2枚
資源カード(素材)50×1枚
25万ゴールド
非殺生ボーナス:魔石4種セット×25
ぶっちぎりボーナス:
ギフト:
コメント:ドラキオン ナーフしたいな どうしよう
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(五七五で言ったって認めないから)
コメント欄でフォルフォルがドラキオンをナーフしたいと伝えて来たが、恭介はそれに対して首を縦に振るつもりはない。
『ドラキオン ナーフしたいな どうしよう』
「コメント欄と同じことを言うんじゃない。言っても無駄だ。約束を違えるなら、フォルフォルは最初から設定ミスを犯した無能だって認めるしかない」
『おのれフォールンゲームズめ。なんてゴーレムを用意してくれたんだ』
恭介にこれ以上文句を言っても意味はないし、もしもドラキオンをナーフしたらその時点で自分のデスゲームは欠陥があるまま始めてしまったと認めることになる。
結果として、フォルフォルはGBOを制作したフォールンゲームズに恨み言を言うしかなかった。
レースが終わればレース会場に用はないので、
そして、素早くイフリートと蛇腹剣を構成する鉱物マテリアルを
帰って来たと思ったら、すぐに出て来ないでイフリートが
「恭介さん狡い。私なんてまだ
「
「良いなぁ。私も
麗華にジト目を向けられれば、それを無視する訳にもいかず恭介は提案する。
「お下がりでも良ければ
「使う!」
鉱物マテリアルのランクが恭介と2つ離れるのは嫌だったようで、麗華はプライドよりも恭介の足手まといにならないよう
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