第37話 翼の折れたアークエンジェル♪
プリンシパリティの全身を
入場門を開く前に、フォルフォルがニヤニヤしながらコックピットのモニターに現れる。
『ねぇねぇ、恭介君のお下がりを使っちゃってるけど今どんな気持ち?』
「煩い。さっさと入場門を開いて」
『ちょっとぐらい私の質問に答えてくれても良くなくなくなーい?』
「ひ ら け」
『あっはい』
麗華の表情から感じる迫力に負け、フォルフォルはおとなしく入場門をを開いてモニターから消えた。
フォルフォルが消えた後、徐々に麗華の顔が赤くなっていく。
(さっきまで何とも思わなかったのに、フォルフォルの馬鹿!)
今までは鉱物マテリアルの有効利用であったり、恭介のイフリートと差が開き過ぎることを避けるために
頭を切り替えなければレースで不甲斐ない結果を出してしまいそうだから、麗華は深呼吸して冷静さを取り戻した。
プライドがないのは問題だが、プライドばかり高くても仕方ない。
恭介は頼りになるパートナーなのだから、彼にできないことを自分がカバーすれば良いと自分に言い聞かせて麗華は冷静になれた。
入場門を通って移動した先には、アークエンジェルとケンタウロス、ジャックフロスト、スロットマン、ニトロキャリッジ、バトルタンク、マッドクラウンの順番で並んでおり、レース開始の合図を待っていた。
麗華の乗るプリンシパリティがスタート位置で待機状態になった瞬間、レース開始のカウントダウンが始まる。
『3,2,1,GO!』
プリンシパリティが翼を広げてスタートダッシュを決め、一気に4位まで浮上した。
今回はニトロキャリッジがスタートダッシュに成功したこともあり、前から順番にアークエンジェル、ケンタウロス、ニトロキャリッジ、プリンシパリティ、ジャックフロスト、スロットマン、バトルタンク、マッドクラウンという順に変わっている。
トゥームレイクは罠こそ設置されていないけれど、ラップ音や不気味な声がBGMと化してパイロットの集中を削ぐ。
その上、アンデッド型モンスターがゴーレムのレースを邪魔するから、ホラーが苦手な者にとって厳しいコースと言えよう。
麗華の場合、ホラーが苦手な訳でもないから鬱陶しい音が聞こえるとしか思っていない。
中心の池からクロコダイルゾンビの群れが現れ、地上を走るゴーレムを邪魔し始める。
2位のケンタウロスが槍を振り回してそれらを後ろに押し出し、3位のニトロキャリッジが機体の両サイドに設置されたマシンガンを連射して倒していく。
ところが、数が多いせいで捌き切れずにニトロキャリッジは前方に溜まったクロコダイルゾンビに衝突して止まってしまう。
「お先に失礼」
麗華はニトロキャリッジを追い抜き、すれ違いざまに
その瞬間、ニトロキャリッジが爆発して5位と6位のゴーレム達が被害に遭った。
それに対し、麗華はその爆風を利用して加速しており、ちゃっかりケンタウロスを抜かして2位に浮上していた。
ケンタウロスが槍を振り回し、盾で身を守っていることで追い抜きざまに撃破することはできなかった。
それでも、遠距離攻撃の手段がほとんどないケンタウロスは麗華に抜かれてしまったから、必死にその後ろに付いていくしかない。
(アークエンジェルとの一騎打ち。予定通りね)
昨晩、何度かシミュレーターでトゥームレイクの練習をしてみたが、毎回アークエンジェルとの一騎打ちになった。
風属性の弾丸での撃ち合いが始まり、最初は縦に並んでいたものの機体のスペックの差のおかげで麗華はアークエンジェルと横に並んだ。
お互いに二丁の銃を使い、撃っては躱すのを繰り返す。
そうしている内に2周目に突入する。
陸上しか移動できないアンデッド型モンスターがいくら現れたところで、麗華の操縦するプリンシパリティとアークエンジェルの邪魔にはならない。
ラップ音や不気味な声というBGMも、撃ち合いの勝負に入ってからは集中しているので麗華の耳に入って来ない。
空を飛べるゴーレムの場合、コースアウトする時は大抵翼を破壊された時である。
だからこそ、麗華はコックピットよりも翼を破壊するつもりで
アークエンジェルはどうにか麗華と戦えていたけれど、数多く撃った中の一撃が麗華の放った銃弾とぶつかり、鉱物マテリアルのレアリティの差で弾き飛ばされてしまった。
その弾丸が自分に当たりそうだったので躱したのだが、アークエンジェルが体勢を変えた先に麗華が何発か弾丸を撃っており、それがアークエンジェルの両翼を破壊した。
『翼の折れたアークエンジェル♪』
「しつこい!」
勝手にモニターに現れただけでなく、昨日使ったボケに被せて来たフォルフォルに対して一喝し、麗華はバランスを崩したアークエンジェルのコックピットを撃ち抜いた。
アークエンジェルがいなくなってしまえば、麗華は1位のまま独走して3周目に突入する。
後ろからニトロキャリッジの爆破による被害を免れたゴーレム達が追いかけて来るが、それでも差は開く一方だ。
そのまま麗華が勝ち逃げし、今回はひやひやすることなく1位を勝ち取った。
『ゴォォォル! 優勝は傭兵アイドル、福神漬け&プリンシパリティだぁぁぁぁぁ!』
「今日は余裕があったわね」
昨日よりも危なげなく勝ちを拾い、麗華は満足した様子でコースから離れた。
それから、コックピットのモニターに映ったレーススコアを確認し始める。
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レーススコア(ソロプレイ・トゥームレイク)
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走行タイム:25分13秒
障害物接触数:0回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:167回
他パイロット周回遅れ人数:2人
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総合評価:B
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報酬:資源カード(食料)100×1枚
資源カード(素材)100×1枚
10万ゴールド
戦闘勝利ボーナス:魔石4種セット×10
ギフト:
コメント:どうせなら全滅ボーナス狙っちゃいなよ
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「評価は昨日より1つ上ね。全滅させたら評価が更に上がるってことかしら?」
『その通り。麗華ちゃんのスタイルからして、非殺生かつ全員周回遅れは厳しいだろう? それなら全滅させて評価を上げた方が良いんじゃない?』
「素朴な疑問なんだけど、レース途中で他のゴーレムを全て倒したらレースが強制終了されるの?」
『その場合はタイムアタックになるね。ちゃんと3周しないとレースは終わらないよ』
「なるほど。参考にさせてもらうわ」
麗華は話を切り上げ、
プリンシパリティのコックピットから降りて来た麗華を恭介が出迎える。
「お疲れ様。今日は安心して見てられたよ」
「恭介さんに
「そっか。それじゃ、資源を150ずつカードリーダーに読み込ませよう」
「着実にへそくりを作るんだね」
「まあな。交渉材料は日本を逼迫しない程度に用意しておきたいじゃん」
麗華も恭介に賛同し、
モニターが国会議事堂を映し出し、そこにある程度まとまった量の食料と素材が送り込まれた。
それらを見つけて小隊規模の自衛隊員が駆け付け、すぐに仕分け作業が始まっていく。
『いつ見ても彼等は蟻のように群がるねぇ。ここに爆竹を投げ込んだらさぞ楽しい光景が広がるだろうなぁ』
「フォルフォル、趣味が悪いぞ」
「だからフォルフォルはフォルフォルなのよ」
『ちょっと待ってよ麗華ちゃん。フォルフォルはフォールンゲームズのマスコットであって、悪口じゃないよ? わかってる?』
「恭介さん、タワー探索に行きましょう」
麗華はフォルフォルをスルーし、恭介に声をかけて格納庫へと歩いていく。
『恭介君、麗華ちゃんが私に冷たい気がするんだけどなんでかな?』
「フォルフォルが麗華に余計なことばかり言うから嫌われたんだろ。もうちょっと考えて発言した方が良いと思うぞ」
恭介はフォルフォルを注意してから、麗華の後を追って格納庫に向かった。
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