第38話 ありったけの壁を打ち砕き~♪ 宝箱を探しに行くけど~♪ Empty♪
それぞれのゴーレムに搭乗してから、恭介達はカタパルトによって
「遺跡みたいだな」
『西洋の遺跡じゃなくて日本の古墳みたいだわ』
「へぇ、詳しいんだ?」
『日本史の教科書だか資料集だかで見たのと似てるって思っただけよ』
「よくもまぁ、そんなものを覚えてるな」
恭介は麗華の記憶力に感心した。
それと同時に8階層で出現するであろうモンスターのことを思い出し、確かに古墳と呼んでもおかしくないと判断した。
タイミングの良いことに、恭介達の前に埴輪そっくりなモンスターの群れがぴょんぴょん跳ねながら現れた。
「ハニワンが出たぞ。こりゃ確かに古墳みたいだ」
『でしょ? 8階層は私の見せ場よ!』
麗華は
「おいおい、俺の分も取っといてくれよ」
恭介は麗華に半分以上のハニワンを狩られ、苦笑しながら蛇腹剣で残り4体を真っ二つに斬った。
風属性は土属性に強いから、風属性のプリンシパリティを操縦する麗華にとって8階層は狩場として申し分ない。
その事実は理解しているけれど、自分だって
ハニワンの群れをあっさりと倒した後、戦利品回収を済ませて恭介と麗華は先に進む。
広間のような場所に出ると、大量のハニワンが待ち伏せていて恭介達に向かって突撃する。
『恭介さん、私と8階層の討伐数で勝負しようよ』
「8階層限定って狡くね? 麗華が相性的に有利じゃん」
『よーいドン!』
「マジかよ」
麗華は恭介の抗議をスルーして
数だけいる訳でもなく、ハニワン達は弾丸を防ぐために自分達の前方に岩壁を重ねて防御した。
3枚ぐらいなら簡単に貫通できるのだが、それが10枚も重なればもはや岩壁ではなく岩塊だ。
弾丸はまっすぐにしか飛ばないので、1枚貫通するごとに落ちるスピードは10枚目に小さな傷をつけることしかできない。
「ストレートが駄目ならカーブで攻めれば良い」
恭介は蛇腹剣を巧みに操り、岩塊を迂回するように剣を伸ばす。
弧を描くような蛇腹剣の軌道は予想できなかったようで、蛇腹剣は次々にハニワンの体を貫通していった。
倒したハニワンが創り出した岩壁が消えたことで、麗華の弾丸も残った岩壁を貫通してハニワンに届き始める。
広間での戦闘では、先にハニワンを倒し始めていた恭介が多く倒しており、恭介と麗華が倒したハニワンの比は大体6:4だ。
最初に遭遇したのは10体だったが、広間には30体のハニワンがいたので恭介が逆転したことになる。
『ぐぬぬ。悔しい』
「偶然だよ、偶然」
『勝負はまだ終わってない。諦めたらそこで試合終了だよ』
「んじゃ、このまま競うか」
『うん。…あれ?』
麗華は広間の壁の溝付近が気になって注目した。
先程まではただの溝だと思っていたのだが、溝の前だけやけに砂がないように見えたのだ。
『思い立ったら即発射!』
その結果、弾丸が溝の中心に命中して壁が壊れた。
『やった! 隠し部屋だわ!』
麗華が喜んで穴に近寄ったのだが、そこにはマッシブな岩球を模ったモンスターが埋まっていただけだった。
『あぁ、もう! ハズレ引いた! マッシブロックじゃん!』
マッシブロックは自分が外に出るのを阻む壁が壊されたため、ゴロゴロと転がって広間に出て来た。
麗華は後方に飛びながら、
「麗華ってなかなか宝箱を見つけられないよね」
『解せぬ』
恭介は何度も宝箱を見つけられているにもかかわらず、自分は一度も宝箱を探し当てられないので麗華は悔しがった。
宝箱じゃなくてマッシブロックが現れる展開なんて、間違っても麗華は望んではいない。
念のため、恭介達はマッシブロックがいた穴を覗き込んでみたが、そこはただの穴で宝箱が安置されているなんてことはなかった。
『プクク、宝箱見つけられないウーマン』
『黙れフォルフォル』
『ありったけの壁を打ち砕き~♪ 宝箱を探しに行くけど~♪ Empty♪』
『だ ま れ』
『あっはい』
調子に乗って歌ったフォルフォルは麗華に怒れられて静かになった。
(怒られるとわかって何故揶揄おうとするんだか。やれやれだぜ)
恭介はフォルフォルがまた麗華に対してやらかしたのを見て呆れた。
「麗華、気持ちを切り替えて行こうぜ。まだ勝負は終わってない。だろ?」
『うん、そうだった。屑野郎の煽りなんて気にしてる場合じゃなかったよ』
フォルフォルは麗華の中で屑野郎認定されたようだ。
特に恭介はフォルフォルを庇うつもりはなかったので、コックピットのモニターにSOSと書かれたプラカードを持ったフォルフォルが映っていてもスルーした。
広間を抜けて通路を進んでいく内に、またハニワンがわらわらと出て来て恭介達の行く手を阻む。
「邪魔だ」
『退いた退いたぁぁぁ!』
恭介も麗華も各々の武器を十全に操り、次々にハニワンを倒していく。
ハニワンだけじゃいくら集まったって物足りないと思っていたら、恭介達は昇降機の前に絵にかいたような土偶と呼ぶべきモンスターが待ち構えていた。
「出たなシャッコウ」
『ギフト発動!』
麗華は躊躇わずに
シャッコウは鉄の壁を自分の前に展開したけれど、それはギフトの力でパワーアップした麗華の一撃に耐えられるな頑丈さはなかった。
あっさりと鉄壁と共に体を撃ち抜かれてしまい、そのまま光の粒子になって消えた。
「午後の探索まで取っておかなかったんだな」
『午後は恭介さんの方が敵と相性が良いと思うから、ここで一撃かました方がレベル上げになると考えたんだ』
「なるほど。タワー探索スコアでギフトのレベルが上がってることを祈ろうか」
『うん』
午後の9階層には風属性モンスターが出て来る。
これはシミュレーターで調べてあるから間違いない。
そうだとするならば、自分が活躍できる階層で気持ち良くワンショットキルしてやろうと麗華が考えるのもわからなくない。
それはそれとして、恭介達は昇降機で9階層まで移動してから魔法陣に乗ってタワーから脱出した。
脱出後すぐにコックピットのモニターにタワー探索スコアが表示され、恭介はそれに目を通し始める。
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タワー探索スコア(マルチプレイ)
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踏破階層:8階層
モンスター討伐数:59体
協調性:◎
宝箱発見:設置なし
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総合評価:S
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報酬:
4万ゴールド
資源カード(食料)10×1
資源カード(素材)10×1
ギフト:
コメント:君達、もうちょっとペースダウンしたって良いんだよ?
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(そう言われるとペースダウンしたくなくなるよね)
フォルフォルが困っているのを見て、恭介の中のSっ気が疼く。
無論、それを声に出したりするような真似はしないけれど、頭の中でならどう考えても良いだろう。
「麗華、ギフトはレベルアップしてた?」
『うん! Lv4になってた!』
ギフトがレベルアップしたことにより、麗華の声は弾んでいた。
「モンスター討伐数は何体だった?」
『59体!』
「マジか。俺も59体。同点だな」
『そっかぁ。でも、いっぱいモンスターを倒したんだし、これでお昼は美味しく食べれるよね』
「そうだな。帰ってランチにしよう」
一仕事して腹が減ったのは恭介も麗華も同じだから、格納庫に戻って各々のゴーレムの調整を終え、2人は食堂で自分達を労った。
午後は9階層に挑む予定なので、休む時にしっかり休んだおかげで恭介達はリフレッシュできた。
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