第48話 ドラキオン半端ないって! もぉ~…アイツ半端ないって!

 デスゲーム10日目の朝、準備を終えた恭介はイフリートに乗り込んでコロシアムに1人で来ていた。


『本当にソロプレイするんだね』


「ああ。予定では5連続で戦うつもりだから、5戦目のモンスターを倒したらスコアを出してくれ」


『・・・なんとなくやろうとしてることがわかった気がする』


「そうか。その答え合わせはこれからしよう。フォルフォル、入場門を開いてくれ」


『はーい』


 フォルフォルは昨日、恭介がシミュレーターを使ってソロプレイでコロシアムの模擬戦をしていたのをこっそり観察していた。


 しかし、その時は恭介がイフリートを使って5体のモンスターの動きを確かめ、時間をかけて倒しているところしか見ていない。


 それに加え、拉致した翌日から代理戦争当日以外は欠かさずにプレイしていたレースを今日はやらないと言い出し、コロシアムバトルスコアの発表は5戦目の後で良いと言われたことで予想できることがあった。


 その予想が正しいかどうかは、恭介が実際にコロシアムに入ってみないとわからないから、フォルフォルは入場門を開いた。


 入場門が開いたところで、恭介はイフリートを操ってその中に入る。


 そこに待ち構えていたのは、カルキノスと呼ばれる群青色に輝く巨大な蟹だった。


「ギフト発動」


『だと思ったー』


 恭介がギフトの発動を宣言し、彼はイフリートのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移動した。


 フォルフォルは自分の予想が的中して両手で顔を覆った。


 恭介の黄竜人機ドラキオンはLv9まで成長しており、ドラキオンを操縦できる時間は54分まで伸びている。


 これから彼が1体あたり10分程度で5体のモンスターを倒すつもりだとわかれば、フォルフォルはその未来が訪れる気しかしなくてこのリアクションになったのだ。


「まずは1体!」


 恭介はドラキオンを動かし、その頭上からドラキオン固有武器のラストリゾートを振り下ろす。


 ラストリゾートには最後の切り札という意味がある。


 その意味で捉えても恥ずかしくないように、この武器はパイロットが使用したいと願う武器に変形させられる機能を持つ。


 GBOにおいて、ゴーレムが扱う武器はモーションアシストが発動したから、パイロット達はそれを使ってゲームを楽しんでいた。


 しかし、ドラキオンのラストリゾートにはそのモーションアシストが発動しない。


 つまり、あらゆる武器を使える代わりにそれら全てを自分の技術のみで使わねばならないのだ。


 そんな縛りがある分、ラストリゾートによる攻撃はGBO内で最高ランクの黒金剛アダマンタイト製武器の中でもトップクラスである。


 恭介はカルキノスに攻撃する際、ラストリゾートを戦槌ウォーハンマーに変形させてから振り下ろした。


 その結果、カルキノスは粉々に砕けて一撃で光の粒子に変わった。


 カルキノスが水属性であり、ドラキオンが土属性のゴーレムだから属性的に相性が良いのは確かだが、一撃でコロシアムに現れるモンスターが倒されるのは異常である。


『やだー、瞬殺じゃないですかー』


 フォルフォルがドラキオンのコックピットのモニターで嘆いていると、カルキノスだった光の粒子が消えて黄色い獅子が現れた。


「次はネメアズライオンか」


「ガォォォォォン!」


 ネメアズライオンはドラキオンに駆け寄り、鋭い爪でドラキオンを攻撃する。


 だがちょっと待ってほしい。


 瑞穂の黄色い弾丸の二つ名を貰うような恭介とドラキオンが、直線的で少し速い程度の攻撃を躱せないなんてことがあるだろうか。


 いや、あり得ない。


 恭介はネメアズライオンの攻撃をするりと躱しつつ、ドラキオンを引っ掻こうとして無防備になった胸部を狙い、ハルバードに変形させたラストリゾートを全力で振り抜く。


「ガォォォ!?」


 胸部に大ダメージを負っただけでなく、その衝撃で吹き飛ばされて地面に背中から落ちたネメアズライオンは隙だらけだ。


 その状態を恭介が見逃すはずもなく、機体を回転させてハルバードを振り回し、尻尾と頭部を順番に切断してみせた。


『あぁ、土属性で硬いはずのネメアズライオンが…』


 フォルフォルが嘆いている間に、ネメアズライオンが光の粒子になって消えた。


 その数秒後にスチュパリデスが空から現れた。


 スチュパリデスは鮮やかな若草色の羽毛に包まれ、嘴と翼の先が緑色に輝く金属に覆われている怪鳥だ。


 ドラキオンが属性の相性で不利な風属性のモンスターであり、今回の5連戦の中で最も時間がかかると恭介は考えている。


「テュパァァァァァ!」


 鳴きながら翼を広げ、突風に自らの羽根を大量に乗せてドラキオンを攻撃する。


 (最初から飛ばすじゃんか)


 恭介は射線から外れるように飛ぶけれど、当たり前のようにスチュパリデスの攻撃は恭介を追尾する。


 それは昨日のコカトリスの攻撃と似ており、GBOにおいては同じモーションが使われていたのだろう。


「折角の攻撃だ。ありがたく利用させてもらう」


 恭介はスチュパリデスに向かって飛び、衝突するギリギリのタイミングで上に躱す。


 大量の羽根を取り込んだ突風は大雑把なコントロールしかできず、スチュパリデスの体に命中してしまう。


「テュパ!?」


 怯んだ隙を逃さず、ラストリゾートをライフルに変形させて嘴に弾丸を命中させる。


 嘴を破壊されたことにより、痛みのせいでスチュパリデスは声も上げられず激昂状態に突入した。


 すぐに先程の倍以上の羽根を突風に乗せて飛ばし始め、恭介は再び敵の攻撃から逃げる。


 風属性の攻撃かつ激昂したスチュパリデスの攻撃を喰らってしまえば、流石のドラキオンだって無視できないダメージを負うことになる。


 それゆえ、恭介はスチュパリデスを自滅させられるタイミングをじっくりと待ち、今だと思った時にスチュパリデスに接近する。


 スチュパリデスは迎撃しようとするけれど、激昂状態で動きが大振りになっているせいで恭介にするりと躱されてしまい、その後ろに迫っていた自身の羽根と突風を喰らってしまった。


 自爆したダメージは思ったよりも多かったようで、スチュパリデスは地面に落下した。


「追い打ち御免」


 恭介はラストリゾートをマシンガンに変形させ、スチュパリデスを蜂の巣にして倒した。


『相性が悪いはずのスチュパリデスなのに…』


 フォルフォルはまたしても嘆くが、恭介はそれをスルーして次に現れた巨大な赤牛との戦いに集中している。


「クレタブル。火属性なら問題ない」


「ブモォォォォォ!」


 侮られたと思ったのか、クレタブルは最初からクライマックスだと言わんばかりに炎を纏ってドラキオンを押し潰さんと突進し始める。


 恭介はクレタブルを壁際まで誘導してから回避し、全速力のクレタブルをコロシアムの壁に激突させた。


 角が壁に刺さって抜けなくなったのを見て、恭介はとても良い笑みを浮かべる。


「抜けないんじゃしょうがないよな。バイバイ」


 マシンガンをライフルに変形させ、クレタブルの背後から肛門目掛けて弾丸を発射したところ、クレタブルは一撃で倒れた。


『惨い! 惨いよ恭介君!』


 フォルフォルはクレタブルの倒し方に物申したいようだけれど、恭介は次で最後と決めていた黄土色の巨大猪と向かい合っていてそれどころではない。


「エリュマントスボア、かかって来い!」


 エリュマントスボアもクレタブルと同様に突撃がメイン攻撃であり、恭介は先程と同様に今回もコロシアムの壁に敵を激突させる。


 クレタブルの角よりもエリュマントスボアの牙の方が長く、コロシアムの壁に深く刺さってしまった。


「その首貰った!」


 恭介はラストリゾートをクレイモアに変形させ、空から急降下したエネルギーを加えてエリュマントスボアの首を刎ねた。


 エリュマントスボアの体が光の粒子になって消え、5連戦が終わったからドラキオンのモニターにコロシアムバトルスコアが表示される。



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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)

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討伐対象:①カルキノス②ネメアズライオン

     ③スチュパリデス④クレタブル

     ⑤エリュマントスボア

部位破壊:①全身②牙/嘴③嘴/翼(左右)

     ④角(左右)/内臓⑤牙(左右)

討伐タイム:35分29秒

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10

   資源カード(素材)100×10

ファーストキルボーナス:サイバードレイクの設計図

            黒金剛アダマンタイト×100

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv10(up)

コメント:ドラキオン半端ないって! もぉ~…アイツ半端ないって!

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 (フォルフォルをギャフンと言わせられて大満足だ)


 モニターでフォルフォルが半泣きになりながらうろうろしているのを見て、恭介は胸がスッとした。


 それからギフトを解除し、コロシアムの挑戦を終了してから格納庫に帰還した。

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