第49話 サプライズだもん。当然普通と違うことが起きるさ
麗華は恭介が戻って来た時に目を輝かせて出迎えた。
「お疲れ様! ドラキオンでの戦闘って初めて見たけどすごいね!」
「ドヤァ」
恭介がドヤ顔を披露するのは珍しいのだが、それだけすごいことを成し遂げた自覚があるのだろう。
「相性が良いカルキノスの粉砕もすごかったけど、相性が悪いスチュパリデスを自分の攻撃で削ったのも驚いたわ」
「それはもうドラキオンのおかげだな。ドラキオンなしじゃ5連戦なんてできなかったし」
「良いなぁ。私もヴァルキリーが恋しいよ…」
「フォルフォルが用意したコンテンツをやり込んで手に入れよう。さっきの5連戦でサイバードレイクの設計図と
「マジで!?」
サイバードレイクも気にならないではないが、麗華が注目したのは恭介が
第2回代理戦争を前にして、GBOでは最高ランクの鉱物マテリアルを手に入れたと聞けば、それに注目しないはずがない。
麗華もファーストキルボーナスは貰えないだろうが、コロシアムには挑むだけの価値があると思ったため、恭介が戻って来る前にショップチャンネルで購入した武器と
『麗華ちゃんもソロプレイか。5連戦やるとか言わないよね?』
「流石に今の私じゃ無理。2連戦でお願い」
『はーい』
フォルフォルが入場門が開いたところで、麗華はパワーを操作してその中に入った。
そこに待ち構えていたのは、先程恭介が一撃で粉砕したカルキノスである。
「ここでワンショットキルできれば良かったんだけどなぁ」
恭介に少しでも追いつきたいから、麗華はカルキノスを一撃で粉砕とはいかずとも一撃で仕留められたらいいのにと希望を口にする。
しかし、それは武器を変えたところで現実的ではないから、すぐに気持ちを切り替えて目の前のカルキノスに集中する。
カルキノスは口元でブクブク泡を溜め、麗華の乗るパワーに向かって細かい泡をジェット噴射した。
「甘いわ」
シミュレーターでその攻撃パターンは予習済みだったので、麗華は必要最小限の動きで躱して反撃に移る。
手に持ったランプを模ったライフルにより、カルキノスの口を狙撃する。
そこから放たれた弾丸は見事にカルキノスの口に命中し、カルキノスを怯ませることに成功した。
その上、弾丸が口内に命中したことでカルキノスの体を痺れさせた。
これが麗華の新しい武器、ランプオブカースの効果だ。
弾丸が命中した者に一定時間ランダムな呪いが発動するのである。
今回は体が麻痺する呪いが発動したらしく、カルキノスの体は痺れて上手く動けないようだ。
「止まってたらただの的よ」
麗華はランプオブカースを素早く連射し、カルキノスの両目を撃ち抜いた。
それにより、右目の方は小さな爆発が生じて左目の方は石化した。
爆発と石化がカルキノスの両目は完全に使い物にならなくなり、麻痺が解除された途端にカルキノスは泡のブレスを四方八方に撃ちまくる。
敵が何処にいるかわからないから、とりあえずあちこちに撃って当たればラッキーという考えのようだ。
麗華はカルキノスの後ろ側に回り込むべく、パワーを操縦士ながらランプオブカースで今度はカルキノスの関節を狙撃する。
鋏や甲殻は硬いから、比較的に柔らかそうな部位を狙ったのである。
右の鋏に近い関節に弾丸が命中すれば、カルキノスの動くスピードがこれまでの半分ぐらいまで落ちた。
「ずっと私のターンよ」
カルキノスの動きが鈍いのはチャンスだから、麗華は次々に関節を狙撃してカルキノスを達磨のように変えていく。
最後の一撃が再び口に命中した際に爆発が生じ、それが決まり手になってカルキノスは光の粒子へと変わった。
恭介のような瞬殺は無理でも、可能な限り部位破壊を狙った戦闘だった。
カルキノスに変わって次のモンスターが現れた瞬間、コックピットのモニターにフォルフォルの声が響く。
『サプラァァァァァイズ!』
「何がサプライズって、なんでネメアズライオンじゃないのよ!」
麗華がツッコんだ通り、彼女と次に戦うべく現れたモンスターはネメアズライオンではなく、悪魔を模った黄色い石像と呼ぶべきガーゴイルである。
『サプライズだもん。当然普通と違うことが起きるさ』
「チッ、これだからフォルフォルは嫌なのよ」
フォルフォルに悪態をつき、麗華は目の前に現れたガーゴイルとの戦いに集中する。
シミュレーターで戦ったことのないモンスターではあるが、ガーゴイルの色が黄色ということは土属性のモンスターであることを意味する。
麗華が搭乗するパワーも武器のランプオブカースも風属性だから、ガーゴイルと属性的な相性は良い。
その事実が麗華を落ち着かせた。
ガーゴイルが両腕を天に伸ばすと、ガーゴイルの頭上にいくつもの岩が現れてパワーを目指して降り注ぐ。
それが一斉に降り注いだのなら避けられなかったかもしれないが、タイミングをずらして攻撃してくれば麗華も対処できる。
できるだけ機体の操縦だけで岩を避け、どうしても避けられないものはランプオブカースで迎撃した。
岩を操っている間、ガーゴイルがその場から動けず岩の操作に集中していたのは麗華にとって救いだった。
もしも一度発動したら自由なんてことならば、麗華が回避と迎撃に意識が向いている隙を突いて攻撃したはずだが、ガーゴイルは両腕を天に伸ばしたまま動かない。
ガーゴイルの攻撃の終わりが見えたところで、次の攻撃に移られる前に麗華はガーゴイルの胸部を狙って弾丸を放つ。
ガーゴイルは慌てて避けようとしたけれど、動き出しが遅れたせいで完全に避け切れずに右肩を撃ち抜かれてしまった。
そして、ランプオブカースの効果で爆発が生じ、右肩から先が破壊された。
「今がチャンスね」
バランスを崩したガーゴイルの動きは鈍っていたため、麗華はそのまま素早く連射してガーゴイルの体に弾丸を次々に当てていく。
結果として、ガーゴイルの体のあちこちに穴が空き、最後の一撃はギフトを発動して放ったところ、追加効果に麻痺が発動して空を飛べなくなって地面に墜落した。
落下による衝撃でガーゴイルの体はバラバラに砕けてしまい、そのまま光の粒子になって消えた。
2連戦が終わり、パワーのモニターにコロシアムバトルスコアが表示される。
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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)
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討伐対象:①カルキノス②ガーゴイル
部位破壊:①両目/口
②全身
討伐タイム:18分29秒
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総合評価:A
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報酬:40万ゴールド
資源カード(食料)100×4
資源カード(素材)100×4
サプライズ撃破ボーナス:ヴァーチャーの設計図
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×40
ギフト:
コメント:サプライズのガーゴイルにはもうちょっと粘ってほしかった
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「フォルフォル、サプライズってどれぐらいの割合で起きるの?」
麗華は自分が本格的にツイていないのではないかと思い、フォルフォルに訊ねてみた。
フォルフォルがひょっこりとモニターに現れて応じる。
『5%の確立だね。麗華ちゃんは持ってると思うよ』
「5%を引き当てちゃったか。ちなみに、サプライズで出現するモンスターって何種類か教えてくれるの?」
『サプライズだもん。そこは内緒だよ』
「そうだと思った。ヴァーチャーの設計図も手に入れたことだし、もう帰るわ」
麗華はコロシアムでの戦闘を打ち切り、格納庫まで戻って来た。
コックピットから出て来た麗華の表情が疲れていたため、恭介は彼女を労う。
「サプライズなんてイレギュラーがあったのによく頑張ったな」
「うん。属性の相性的になんとかなったよ」
「お疲れ様」
「ありがとう。そうだ、ヴァーチャーの設計図を手に入れたよ」
「おめでとう。この後はもうゴーレムの調整と休憩にするか」
無理してケアレスミスで痛い目に遭うのは不味いから、恭介の提案に麗華は頷く。
「賛成。ちょっと疲れちゃったよ」
その時、格納庫のモニターにフォルフォルが現れる。
『パンパカパーン! A国のワイルドレディがタワーの10階層に到達したよ! 明後日は第2回代理戦争に決定!』
フォルフォルの発表により、恭介と麗華は顔を見合わせてやれやれと溜息をついた。
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